日々のエッセイ
   
   オリンピックが始まりましたね。メダルに歓声をあげる、そんな夏を過ごしているかたも多いことでしょう。
        
  国立競技場に近い実家で、開会式の様子を見ました。当日はお昼にブルーインパルスが飛ぶと聞いて、屋上で待っていたら、ビルの間から五色の煙をなびかせた飛行機が、渡り鳥のように現れて「これが、伝説の飛行かぁ」と、オリンピックの始まりを実感。まわりのビルでは、窓から、外階段から、屋上から、たくさんの人が同じように空を見上げ、スマホをかざしていて、一体感も味わいました。
         
 空に浮かびあがる五つの輪、ひとつひとつがあまりにも大き過ぎて、全体像までカメラに収まりきれません。当日は雲が多かったので、円が部分的にしか見えなかったのが残念だけれど、ダイナミックな飛行に釘付けでした。

           
  実家の窓から見たドローンの地球。刻々と模様が変化していく様子を眺めていると、暑さも忘れるくらい。取材のヘリコプターなどがもっと多いかと思ったのに、わりと静かな都心の夜空でした。やっぱり無観客だからでしょうね。

         

 お家でオリンピック・パラリンピックを観戦して、コロナ拡大を防ぎたい2021年夏です。

         
   NHK東京児童劇団のお芝居の脚本を書かせて頂きました。去年の夏に銀座ブロッサムホールで公演を予定していた作品で、コロナ禍のために延期となり、今年も東京では4度目の緊急事態宣言中。舞台は無理そうなので、新しい形での発表になりそうです。サウンド・ファンタジーという試み。なんだか素敵な響きです。どんなお芝居になるのか、とても楽しみにしています。子どもたちだけの劇団という特徴を活かして、「もし社会が子どもたちだけで構成されたら」と考え始めーーーストーリーが展開していきます。音声で魅せるお芝居、期待しています!

          
  今月の手作り豆本は、こんな感じに仕上がりました。東欧雑貨を扱うお店で、ブーツの形の小さなチャームを手に入れたので、それをモチーフにした物語。

          
  赤と白と黒、三色だけを使って、ちょっと大人っぽい内容になっています。現実に不満を持つ女性が、不思議なブーツを買って、夢を叶えて、その果てに心に残った燻る想いとは? 豆本作り、相変わらず楽しいです。

             
  靴といえば、吉祥寺のスニーカー屋さんの看板が、空に映えて軽快な雰囲気で、思わず写真を撮ってしまいました。夏って、運動靴がよく似合いますよね。まっ白とか、明るい色の靴を履いてみたくなります。ブラッドベリの小説にも、夏の象徴みたいにテニスシューズが出てくる話がありましたっけ。

            
    ニガウリが立派に実ったお庭がありました。そのお家のかたが丹精込めて育てたのでしょう、お庭自体も季節の花が咲いていて、動物の彫像なども置いてあり、とても綺麗で、そのお家の前を通るのが楽しみでした。ところが先日、久しぶりに通ってみたら、住むかたが変わったらしく、お庭が更地になっていました。やがて背の高い建物が建ち、風景が塗り替えられていくのでしょう。お庭の記憶は、私の心の中に大事にとっておくことにします。

           
   夏休みに入っても、あちこち出掛けられないご時世。「海に行きたいなぁ」なんて思った時に、この絵本を読むと、目の前に海が広がり、海辺の家にいる気分になれます。『海のアトリエ』(偕成社) 堀川理万子さんの作品です。帯に「映画のような絵本」とありますが、本当にゆったりとした美しい映像を見ているみたい。答えのなかなか見つからない悩みとか、いくつかの分岐点を前にした迷いとか、そういう重たいものを抱え込んだ時に、広々とした場所へ出掛けると、心がスーッと解放されて、すごく自由な気分になりますよね。この本に出てくる画家さんは、それと同じような広々としたハートを持った魅力的な人なのです。出会うことによって、自分の生き方がちょっと変わってくるような・・・大人になった私たちは、思い返してみると、そんな大切な巡り合わせをきっといくつか経験しているはずです。なにも「人」とは限らず、「物」とか「事」かもしれません。子どもの頃のきらめく時間は、ずっとずっと宝物になっていくのだな、と気づかされます。
           
   堀川さんとは、もう三十年近く前に一緒に本を作りました。『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)です。初めて、自分から「絵は堀川さんにお願いしたい!」とリクエストした思い出の本。少しホラー風味のある物語なのですが、どこか異国風で妖しい感じの見事な挿絵を描いて頂きました。写真は、魔の森に咲く「やみよみ草」という空想の植物。こわい話がお好きなかたは、こちらも是非読んでみて下さいね。

  自粛生活が続く夏。家で花を育てる人が増えたそうですね。夏の花はうっかりするとすぐに萎れてしまい、「綺麗に咲いた瞬間を写真に残そう!」と、にわかカメラマンになる人もいることでしょう。そんな時に、この本はとても役立ちます。金城真喜子さんの新刊『花写真 How to set up 』(いしだ絵本)。ハウツー本ではあるけれど、美しい花の写真集でもある、愛蔵版です。この本に書いてある方法を実践して、私もロマンティックな花写真にトライしたいな。
       

  暑さ対策とコロナ対策とで大変な夏ですが、毎日を元気に過ごせるように、がんばりましょう。
       
   たくさんの風鈴で、涼を贈ります! 

   2021年8月
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