日々のエッセイ

 赤や黄、茶色に染まった落ち葉の道。虫くい跡のない綺麗な葉っぱを拾いあげて、読みかけの本の栞に・・・なんてことが、なかなか出来ないコロナ時代が続いています。気の早い人たちの間で一年を振り返るニュースなどが、ちらほら交わされる11月。でもまだ、今年の締め括りまでは時間があるのですから、やりたい事や、やるべき事を行動に移してみましょうか?
      

 
 これまで2冊、短編集を出して頂いている愛育出版から、この冬に『ゆめみ荘のふしぎなお客』という本が出る予定です。2011年からニューファミリー新聞で長く連載されていた小さなメルヘンで、それに書下ろしを加えて一冊になりました。
 
 60代の子育てを終えたご夫婦が、ナラ林に囲まれた自宅をペンションに改造して、お客様を迎えます。やって来るのは、どの人もどの人も、一癖ありそうな不思議な雰囲気。一話完結で、全部で70話。本を読む時間も惜しいほど忙しい人でも、仕事の合間に2分で読んで、ほっこりして頂けたら嬉しいです。

        

 物語に登場する、お客様の一人は、こんな風情の若い女性。年齢のわりに幼い趣味があるのか、大きなぬいぐるみを大事そうに抱えて、宿にやって来ます。この女性、スリムな容姿に似合わず、驚くほどの大食漢。その理由は・・・、秋のラブストーリーになっています。

 本の表紙や挿絵は、翻訳小説のイラスト風。ちょっと大人っぽくてドラマティックな絵で、物語を盛り立ててくれます。連載時をご存知の読者さんには、印象が違って、また別のお話みたいに楽しんで頂けるのでは、と思います。こちらが、連載時の挿絵でした。ほのぼのした優しいタッチ。
          
 70話それぞれに、その時の私のまわりで起こった出来事などを混ぜてあるので、読み返すと、なんだか懐かしい気持ちになります。ちなみに、このクマの出てくるお話、近所のワンルームに住んでいたゴスロリ服の若い女性がモデル。お出掛けの際には、巨大なぬいぐるみを抱えて街を歩き、周囲の注目を集めていました。日曜なんかは、同じゴスロリ色の衣装をまとったボーイフレンドと並んで歩いていたりして、一風変わっているけれど、なんとなく微笑ましい。その女性も、もうとっくに引っ越してしまいましたが。

          
 同じ愛育出版のシリーズに、立原えりかさんの『童話作家になりたい!!』があります。私が童話作家になりたいと思ったきっかけは、小学生の頃、立原さんの本を読んで、その美しいメルヘンの世界に魅了されたから。アンデルセンのメルヘン大賞の授賞式で、憧れの立原さんにお目にかかれたのは、もう遥か昔。私がまだ二十代半ばの頃でした。
 それ以後はお会いする機会もありませんが、この御本には、立原メルヘンそのままの優しさ、あたたかさ、ロマンティックさや、リベラルな空気、冒険心、前を向く力が詰まっていて、どんな「書き方の本」よりも役に立つように思えます。独特の世界を持つ立原メルヘン、やっぱりすごいなぁ。

 
 豆本作りは、今月も進めています。この小さな本は、『チョコレートの王冠』というタイトルで、突然、王位を継承された9才の王子が主人公。お菓子の大好きな王子は、戴冠式に間に合うように、「チョコレートで王冠を作って」と命令します。腕利きの職人が作り上げた見事な王冠、こっそり被った王子に、ある変化が・・・。結局、お城を追い出される羽目になる王子ですが、ラストはもちろんハッピーエンド。冠の絵が描きたくて、作った物語です。 

           
 食欲の秋。美味しいお米があると、それだけでも幸せになりますよね。この秋、籾のついたままの千葉コシヒカリをたくさん頂く機会があり、初めて精米機というものを使いました。近くのホームセンターに、専用のコーナーがあると知り、行ってみると、米袋を車で運んで来る人が何人も。美味しいお米を食べるために、直前に精米したいという拘りのある人たちも多いのですね。機械の使い方が難しいのかな、と不安だったのですが、コインを入れたら、あっという間に白米に。無洗米ボタンまであるので、便利でした。スーパーで買う、白いお米が当たり前と思っていた私にとっては、新鮮な体験でした。
 上の写真のお米も頂いたもので、新潟・長岡市の『米百俵まつり』のために作られたチャリティー米。「米百俵」という言葉、もうずいぶん前ですが、小泉純一郎元首相が演説で使って、流行語にもなりました。窮地に届けられた百俵の米を皆で分けるのではなく、その米を売った代金で学校建設の資金とした小林虎三郎の教育方針を称える言葉。今ある百俵が、立派な人材を育てることで、後には千俵にも万俵にもなるという、未来への投資です。苦しい現状の中で、目先のことにしか関心が向かない人たちを説得し、発展させた藩士の似顔絵が米袋にプリントされています。今っぽい絵柄が面白いな。
 どちらのお米もとても美味しくて、つい食べ過ぎてしまいます。

         
 裏道のショーウィンドウに、山吹色の民族衣装みたいなドレスが飾ってありました。山吹というのも、秋らしい色。街で着て歩くには、ちょっと目立ちそうな服だけれど、カジュアルなパーティーなどには良さそうだなぁ、なんて思いながら、眺めていました。コロナ時代、人と会う機会がぐんと減ったから、お洒落はつい後回し。ラクな格好ばかりしていると、いざという時、何を着ようか迷いそうなので、時々はウィンドウショッピングをしておかなくちゃ。

        

 ススキの野原、よく見ると、クリスタルのススキです。風に揺られ、光に反射して、秋の風景を彩っていました。寒くなったので、どうぞ暖かくして過ごして下さいね。

 2020年11月
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