日々のエッセイ

 長い雨が明け、夏がやって来ました! 道をゆく車の多くは、エアコンをつけているのだろうけれど、窓を大きく開け、換気に気をつかっているようです。歩く人たちも、使い捨てマスクや色とりどりの布マスク、ネックゲーターで防備。サングラスやサンバイザーをしている人もたくさんいるので、すれ違っても誰だかわからないことも。まぁ、知り合いに会っても、立ち話が嫌がられる時代ですから、今はそれでいいのかも。
          

 先月に続いて、長雨の間、豆本作りにハマっていました。雨から連想するものといえば、てるてる坊主。だから、てるてる坊主を主人公にした物語を創りました。
              
 てるてる坊主製造工場で、量産される時、一つのてるてる坊主だけは、ちょっとしたミスで黒くなってしまいます。

              
 黒てるてる坊主の運命は、いかに? という、ありがちな内容ですが、書くほうは思いきり楽しんでいます。もちろん、「晴れ」で終わるハッピーストーリーですよ。
              
 もう何年も使っていなかった色鉛筆を取り出して、色塗り。これも楽しい作業でした。豆本は、これからも作っていきたいな。実は次回作も、もうアイディアが固まっていて、愛にまつわる小さなお話になる予定です。

                

 創作の合間のコーヒーブレイクに、可愛い動物クッキーをパクパク。このクッキーのデザインは、画家であり、染色家でもある柚木沙弥郎さんによるもの。ユーモラスで温かみのあるフォルムです。この8月に、千葉で柚木さんの「絵本」を集めた展覧会があり、行ってきました。とっても良かったです。御年97歳の柚木さん、最近作もますます躍動的で色鮮やかで、素敵です。いくつになっても情熱の火を絶やさなければ、若々しい芸術作品が生まれることを、この展覧会で証明してくださっています。絵本って楽しいな、と素直に思える展覧会でした。

          

 ギャラリーウシンの企画展『8月の見る夢』に、参加させていただくことになりました。メリーゴーランドをテーマにした展示です。なぜ今、メリーゴーランドなのかというと、かつては遊園地の代名詞にもなっていた「豊島園」が、今月末で閉園され、そこにある日本最古のメリーゴーランド『エルドラド』を惜しんでの企画。色とりどりの飾りがついた木馬や馬車、哀愁漂う音楽にのって回るメリーゴーランドは、大人になってから乗ると、どんな気分なのでしょう? いつかどこかの遊園地で試してみたいです。

          
 夏らしい表紙の本をいただき、外出のままならない今年の夏、何度か読み返しています。『海からの贈り物』。作者はリンドバーグ夫人としても知られるアン・モロウ。リンドバーグ大佐と聞くと、初の大西洋横断飛行という輝かしい功績を思い浮かべ、同時に愛児誘拐の悲しい事件も思い出します。アンも、アメリカ女性として初めてグライダーのライセンスを取得したという、アクティブで進歩的な人。
 この本は、当時の女性の想いを、浜辺に打ち寄せられる貝殻に託したエッセイです。「ほら貝」の章では、シンプルな生活が一番とわかっていながら、そうすることの難しさを説き、「日の出貝」の章では、美しい貝の形を恋愛の初期段階に重ねます。自分一人だけ愛されたい、それを実現する瞬間は存在しても永久ではないことを知るべきだ、と。恋愛初期の想いは、儚いけれど、完璧な形の日の出貝のごとく、価値のあるものだと教えてくれます。
 読者の私は小さな女の子になって、浜辺のバルコニーでほおづえをつきながら、人生の先輩・アンの話を、わかるようなわからないような気持ちで聞いている気分になります。アンの言葉はクールで理知的、だけれど、決して古びていなくて、時代がこんなに変わったのに、人間の本質的な悩みや疑問は、ぜんぜん変わらないのだなぁと、不思議な思いに捕らわれます。
            
 伸びたサボテンの先っぽが折れて、がっかりしていたら、断面のところから、まん丸いサボテンが生えてきました。ツヤツヤした緑色で、とても成長が早くて、サボテンの赤ちゃんみたいで可愛いです。どんな風に育っていくのか、見守っています。

             
 去年の今頃は、浜辺の花火大会に出掛けて、大きく美しい花火を見物したものですが、今年は人が密集するので、花火も中止されるところがほとんど。TV中継でもやっていますが、やっぱり迫力はその場で観るのとは全然違いますね。夏らしい風景っていうのは、たくさんの人が笑顔で集う風景でもあったんだなぁ、と改めて気づきました。

          
 何もかも、例年と異なる夏だけれど、うかうかしているとあっという間に過ぎてしまう、まぶしい季節でもあります。手の届く範囲の「夏」を探して、味わいましょう。毎日暑いですし、マスクでの外出も大変ですが、コロナ不安を吹き飛ばすくらいの嬉しい事がありますように!

 2020年8月

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