日々のエッセイ
 雨の6月、傘をさしての外出が面倒だなと思う梅雨シーズンですが、最近は「アンブレラ・スカイ」のような色とりどりのビニール傘を並べた装飾が、町の一角や公園などで見られ、6月の風景もずいぶん賑やかになりました。
        

 水滴のついた傘は、すぐさま傘立へ。ある建物の入り口にあったカラフルな傘立は、よく見ると、レゴを積み重ねて作られていました。これだけ大きな物を作るのには、さぞ時間がかかったでしょうね。でも、この玩具っぽさが、雨の日の重たい気分をカラリと軽くしてくれました。
         

 今年の夏は、脚本を担当した児童劇団の公演が行われる予定で、今頃は台本が用意されるはずだったのですが、世の中の状況を顧みて、来年へと延期が決まりました。子どもたちが練習を行うスタジオは「三密」になってしまい、大きな声で台詞を言うお芝居は自粛せざるをえません。児童劇団は、高校三年で卒団という年齢の制限があるため、今年高三の子どもたちにとっては、最後の大きな公演でした。インターハイや高校野球などでも、今夏が晴れ舞台になるはずだった子どもたちがいて、そのチャンスがなくなってしまうのは、とても残念ですが、その子たちには悔しい思いをした分に見合うだけの良い事が、将来きっとあるだろうと思います。
          

 前回のエッセイで、外出を控えるようになって「豆本」作りに目覚めた、と書いたとおり、二冊ほど小さな本が仕上がりました。一つめは、お人形さんをヒロインにした絵本。以前、エストニアの民族衣装を着た大小のお人形を見せて頂き、「小さいほうは、お人形用のお人形」と紹介され、「そうかぁ、お人形だって自分のお人形がほしいよね」というところから発想して、ストーリーを作りました。ビビッドな色合いの絵で、表紙は布張り。
 
  
 もう一つは、モノクロのイラストと詩の、てのひら絵本。シックな感じを心掛けて、まとめてみました。表紙の花型リボンは、昔、ブックカバーを縫った時に栞として使った物の余りで、今回、こうして活用出来て、なんだかスッキリ。豆本作りは、いろいろアイディアが湧いて楽しいです。作っても嵩張らないのもいい。
  
  
 雨の日の絵本でお勧めなのは『ばらいろのかさ』(福音館)です。色鉛筆のやわらかなタッチと、シンプルで可愛い絵、ロマンティックな文章で、大人の女性へのプレゼントとしてもぴったりな一冊。
          
 海辺の村に一つしかないカフェは、村人の憩いの場。店主アデルは、賑やかなことが大好きな、明るい太陽のような女性です。彼女が苦手なのは「雨の日」。お客さんも来ないし、外へ出掛ける気にもなれない。雨の日はベッドにもぐりこんで過ごします。
          
 そんな彼女の気持ちを徐々に変えていくのは、店の片隅に密やかに置き忘れられたレイングッズ。ある時は長靴、ある時はレインコート、そして傘。どれも心を晴れやかにさせる「ばら色」です。「いったい誰のもの?」忘れ物に気づくのは、いつも水曜日。その日は、カフェ内で野菜の販売をするために、地元の青年リュカがやって来ます。「もしかしたら・・・」雨の日のやさしさに気づき、誰かのあたたかな想いに気づきーーー。ラストは、思いっきりハッピーです。長靴の裏のマークも、物語のラストを予感させていて、雨が愛おしくなる絵本です。

     
 4月に開かれていたBOOK展で展示されたストーリーが、『新作の嵐』サイトの「作品」コーナーで読めるようになりました。もしよかったら、見てみてくださいね。

 雨でも、元気に過ごしましょう! 夏は、すぐそこです。

 2020年6月

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