日々のエッセイ

 ずっと前から春だったのかと思うくらい、暖かな毎日でしたが、カレンダーが3月になると、本格的な春! とはいえ、今年は世界的な感染症が警戒されていて、春を楽しむ雰囲気ではないですね。花粉症の季節にもなって、ちょっと目や鼻がグズグズしますが、マスクを探すのもひと苦労。ドラッグストアで開店前に並ばなければ、マスクが手に入らないご時世です。
               
 入学式の子どもたちの背景に満開の桜、というのが春らしい風景だったのですが、それも様変わり。最近の桜は3月には咲き始め、関東では4月になると、すっかり散ってしまいますね。今年も予報では3月中旬の開花とか。よく目を凝らしていないと、春が足早に通り過ぎてしまいます。上の写真は、昨年の桜。コサージュみたいに固まって咲いていました。

               
 毎年、春になると開催されるBOOK展に、今年も小さな物語を書きました。今年のテーマは、会場のある川越にちなんで、ズバリ「川越」物語。大人になってから初めて訪れた川越、小江戸と言われるだけあって、古い時代の街の佇まいが美しく保たれています。観光客も、たくさん。浴衣のレンタルもあるのでしょう、外国からの旅人が楽しげに袂を揺らし、カメラに収まっている姿があちらにもこちらにも。テイクアウトの和菓子屋さんも多いので、お饅頭片手に散策っていうのも、この街ではサマになります。川越をテーマにして、私は三編の物語を展示させて頂く予定です。(4月から、ギャラリーウシンにて)詳細は、また来月のHPで。

               
 都心のビルの中庭で、古本マーケットをやっていたので、ちょっとのぞいてみました。復刻版『赤い鳥』が何冊か、きれいな状態で売っていて、お値段も手ごろ。3月号を買って、読んでいます。鈴木三重吉が創刊した子どものための雑誌は、1918年に発行されてから18年の間、続いていました。掲載作品には、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」「杜子春」や、新美南吉の「ごん狐」、有島武郎の「一房の葡萄」など、今も読み継がれる名作がいくつも。読者の投稿ページや、カルピスの広告など、今の雑誌とそう変わりないところもあって、可愛らしい本です。

              
 小川未明の作品の中で、子どもの頃から好きだった「月夜とめがね」も、初出は『赤い鳥』でした。夜に針仕事をするおばあさんの元へやって来た、どこの誰かもわからない少女の雰囲気がはかなげで、幻想的な作品。私の中で、おばあさんはかなりのお年の和装女性、女の子は髪の長い、内気な少女というイメージでしたが、最近読んだ「乙女の本棚」シリーズの「月夜とめがね」では、女の子がこんなふうに快活に描かれていて、新鮮でした。
              
 こちらは、おばあさん。モダンです。インテリアも素敵。この「乙女の本棚」シリーズ(立東舎)では、太宰治の「女生徒」や梶井基次郎の「檸檬」といった若い世代に好まれる名作を、人気イラストレーターが絵本風に仕立てていて、読み易く、絵の好きな人も、文学の好きな人も、どちらも楽しめる本になっています。雑誌『赤い鳥』がもし現代によみがえったら、きっと表紙もライトノベルみたいなアーバンテイストになるのでしょうね。

              
 本屋さんに「ブックドア」なるディスプレイがありました。ドアのついた箱がいくつも並んでいて、中の作品を示すキーワードが書かれています。興味を引かれたドアを開けてみるとーーーあなたにぴったりの文庫本が出てくる仕掛けです。どんな本を読もうか迷っている時に、わくわくしながら本探しが出来る、面白いアイディアですね。

              
 可愛いアイディアといえば、このUSBメモリ。イギリスの兵隊さんの形をしていて、頭の部分を引き抜いて、USBとして使います。32GBで、パソコンの横に置いておくだけで、なんだか楽しい気分になってきます。このメモリに入れる、ファンタジーを書きたいなぁ。

               
 長年乗っていたオレンジの車から、深いグリーンの車に替えて、今年から走っています。最初はぎこちない感覚だったのに、今ではすっかり馴染んで、「グリーンベル」という愛称を密かにつけて、乗っています。前の車は10万キロ走ったから、グリーンベルでもいろいろな場所に行きたいな。

               
 最近、よく作るサラダは、菜の花や卵、プチトマトを使った春らしい一品。菜の花は、ちょっと苦みがあって、マヨネーズにも合い、美味しいですよね。近くの小学校に、菜の花の花壇があり、春風に優しく揺られていました。子どもたちが大事に育てているのでしょうね。全国的に「外出を控える春」になっているけれど、春はどこにいたって、やっぱり気持ちが晴れやかになります。

 2020年3月

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