日々のエッセイ

 台風が多かった秋が過ぎて、冬の始まりを感じる11月になりました。街路樹が赤や黄色に色づいて、街を絵画風に染めています。 落ち着いた風景、時間の流れも、夏より緩やかに感じるような気がします。
                

 秋らしいマロンケーキがたくさん売っています。モンブラン、和栗を使ったタルトなど、お店で見掛けると「美味しそう」と足を止めてしまいます。だけど、甘い物は
控えなきゃ、と通り過ぎ、代わりに秋らしいポストカードを買いました。飾って眺めていると、なんとなく食べた気が・・・しませんね、やっぱり。
                 


 この頃は、本も、パソコンやスマホで読みたい、という人が増えています。音楽もダウンロードしてスマホで聴く人が多いのでしょう。図書館も、電子図書館で、という借り方があるようですね。
                
 一宮電子図書館(愛知県)や、斑鳩電子図書館(奈良県)などでは、私の作品『謎解きカフェの事件レシピ ゆめぐるま』をデータの状態で借りて、自分の持っている端末で好きな時に読むことが出来ます。図書館に行くのが面倒、時間がない、という人も、簡単に借りられるのが便利ですね。これからは、そういう図書館がどんどん増えて来るのかなぁ、なんて思います。そうなると、スマホで読み易い文体が好まれるかもしれません。短い文で、サッと読める物語。難しい言い回しや長い風景描写などは敬遠されるかな? スマホの情報は、横書きメインで入って来るので、最近の子どもの本は、日本語でも横書きっていうのが幾つもありますね。それも時代の流れ。

                
 秋が深まり、暖かい洋服やら布団やらを出して、部屋もあったかい小物でぬくぬくした感じに整えたいな、と考え中。ニットの小物が一つ、置いてあるだけで、暖かさがアップしますよね。先日、羊毛フェルト作家の松田富美子さんの展覧会へ行って来て、羊毛フェルト人形たちのふわふわと優しい御作品に、心も温もりました。

               
 この白クマさんと柴犬くん、なんて可愛らしい! 展覧会会場の入り口に飾ってあった大きな御作品で、白クマさんの仕草や柴犬くんの表情が、二匹の仲良しぶりを表していて、見ているだけでとっても温か。肉球もちゃんと丸く膨らんでいて、細かいところまで丁寧に作られています。 松田さんが『HUG! friends』という写真集からインスピレーションを受けて創作された御作品だとのこと。 カナダの野生の白クマが、その土地で飼われている犬と出会い、本来ならば襲ってもおかしくないはずが、ハグをし合うほどの友情を育む、という内容の写真集だそうです。まだ観たことのない写真集ですが、なんだかとっても素敵そう。
              
 松田さんとは、2011年以来、たくさんの私の物語を羊毛フェルト人形で具象化して頂いて、ギャラリーウシンさんで展示しました。最初の頃に作って頂いた、ポストカード。松田さんのお人形と私の物語のコラボです。松田さんのお人形は、そのままで詩情豊か。また何か、ご一緒させて頂けたらいいなと思います。

 今月、読んだ可愛い絵本『おうさまのこどもたち』(偕成社)は、三浦太郎さんの作品。三浦さんと言えば、『くっついた』『なーらんだ』などの赤ちゃん絵本が有名ですね。新しく出た、この大きな絵本は、うんと小さな子も楽しいだろうし、色鮮やかなページに、大人もニコニコしてしまうPOPな絵本。なんとなく、レゴで遊んでいる時のような、組みたてていく感じが漂っています。
              
 王様には、十人の子どもたちがいます。そろそろ引退したくなった王様は「さて、誰に王位を継がせようか?」と考えます。昔なら、兄弟同士の権力争いになりそうですが、今の時代、そんなことは起きません。みーんな、「王様」「女王様」になるよりも、自分の力で自分の夢を叶えたいと思っているからです。現代的ですね。

                    
 ネタバレですが、王女様の一人は、メカニックになりたい、と自動車修理工場へ。長い髪をキュッと結わいて、つなぎを着て、楽しそうに仕事に励む王女様の姿は、キビキビしていて、とっても爽やか。

                    
 王子様の一人は、世話好き、子ども好きなのでしょう、保育園の先生になりました。面倒見が良くて、子どもたちに慕われている王子様、適職ですね。ひと昔前だったら、王子様がメカニックに、王女様が保育士になりそうなところですが、現代は職選びに男女差が無くなりました。社会を反映しています。
 ところで、この絵本では「女王」を「じょおう」と表記していて、確かにこちらのほうが正しいのですが、ひと昔前の絵本では「じょうおう」となっているものが多く、会話でも「じょうおう」と発音していたので、私たちの世代では、ちょっと違和感。今の子どもたちは、そんなことないのでしょうね。
 王様の位を継いだのは、十人の子どもたちのうち、いったい誰? 表紙を見てピンと来た人は、すごいです。だって、どの子も同じ顔(三浦さんの絵本は、そこが特徴で、可愛い点です)。着ている服の色で推測するのでしょうから。

 先日、駅の構内を歩いていたら、大きなポスターがありました。鏑木清方の幻の名画「築地明石町」が、期間限定で今月から公開されるとのこと。そばに寄って、しげしげと絵を眺めました。というのも、ちょうど読んでいたのが『パリ 築地明石町』というタイトルの、まさにこの絵がモチーフになった小説だったので。
                   
 時代は1960年代初め、ところはパリ。画家を目指す三十才の苦学生が、猥雑な安酒場で、60を超えた老娼婦シモーヌと出会います。愛ではないけれど、お互い安息を求めて魅かれ合い、忘れ得ぬ人になっていく・・・。晩秋の枯れ葉の匂いが立ち籠めるストーリーです。折り紙の朝顔に、毎日、香水瓶で水をやるシモーヌ。彼女は、展覧会のカタログに載っていた、この絵の婦人と若い頃の自分とを重ね、傍らの朝顔を慈しんでいたのです。 小説を読み終わったら、実際の絵に会いに行くのもいいかもしれません。

                   
 寒さに気をつけて、良い秋を!
 今年も残り2ヶ月。毎日を大切に過ごしたいですね。

 2019年11月

 トップページへ
 前回のエッセイへ
 次回のエッセイへ