日々のエッセイ


  6月に入ると、空の色や風のなまぬるさに、「夏が近い!」と実感しますね。 梅雨の季節、傘を持って出掛けなければならないのが鬱陶しいですが、雨の晴れ間は本当にさわやか。 新しい夏は、もうすぐそこです。

             


 初めて脚本を担当した、NHK東京児童劇団の公演『空気のようなボクだから』が、この夏、パルテノン多摩で行われます。 歴史ある児童劇団の大きな公演、45年以上前の初期の頃は井上ひさしさんや筒井敬介さんが脚本を書かれ、去年は森忠明さんと園田英樹さんのオリジナル作品でした。 去年の夏、NHK放送センター内のスタジオで、子どもたちの輝くような演技と歌声を間近に見せて頂き、大人の役者さん以上の迫力に驚かされました。のびのび、いきいきした演技、すごいですよ。
 夏の公演に参加するのは、小学校一年生から高校三年生までの子どもたち、約120人だとか。二日間公演で、日によってキャストが変わります。夏休みのほとんどを練習にかけて創りあげる舞台。素敵な演出や、音楽や美術や光によって、どんな世界を見せてもらえるのか、私も楽しみにしています。台本の表紙の色は、ストーリーに出てくる「森」のイメージだそうで、さわやかです。

NHK東京児童劇団 第45回公演
 場所 パルテノン多摩 大ホール
 日時 8月18日(土) 14:30開場
             15:00開演

              17:30開場
              18:00開演

     8月19日(日) 13:30開場
              14:00開演

              17:30開場
              18:00開演
 全席自由 2500円

 NHK東京児童劇団のホームページ(n.t-jigeki.jp)でも、これまでの公演のことなど詳しく紹介されていますので、ご覧になってくださいね。

       
  普段はもっぱら、車を運転して出掛けていますが、たまには風景をゆっくり楽しむのもいいかなと思い、ローカル線の小さな旅へ。 千葉県の五井駅から出ている小湊鉄道に乗りました。コトコトという音が似合う、昔懐かしい電車。 車両の片隅に、こんなハンドルがあり、幼い子が運転手さん気分で回して遊んでしまいそうですが、実はこれ、手ブレーキだそうです。 車でいうところの「サイドブレーキ」。 運転中は使いませんが、一日の終わりに、車両を完全に停止する際には、今も活躍しています。

 小湊鉄道は、休日には”里山トロッコ電車”にもなって、養老渓谷へ向かう線として賑わっています。 私が下車したのは、その途中にある「高滝」という無人駅。ここからタクシーで五分も走らないうちに、大きな「高滝湖」が見えてきます。

           
 千葉のまん中に、こんなに大きな湖があるなんて! 地元の大切な水源だそうです。 あたりはアートの町としても知られ、湖の中からニョキッと、巨大なカゲロウやヤマセミのオブジェが飛び出していて、目を引きます。写真のカゲロウ、すごく大きいんですよ。 もう十年くらい前に、ニューファミリー新聞で、風景写真をモチーフにした物語を書いて連載していましたが、その時にも高滝湖に来て、ヤマセミオブジェの写真を撮り、物語を創りましたっけ。 

            

  湖は、その頃と全然変わっていませんが、湖畔に佇む美術館は、手が加わって、ずいぶん綺麗になっていました。外階段には林のように密集したチューブが。 硬そうに見えますが、手で触れるとフニャとしなり、チューブの間をかき分けて進めて、ちょっとした冒険気分。 この『市原湖畔美術館』では、コスチューム・アーティスト、ひびのこづえさんの大規模な展覧会が開かれていました。

      
 ひびのさんの創るコスチュームは、なんともいえない浮遊感があり、現実離れしていて、でも着てみたくなるような、楽しくなるような作品ばかり。海底の生物を思わせる服や、野原で遊ぶ昆虫になぞらえた服などが並んでいます。

            
 ゆらゆら気持ち良さそうな、ワイヤードレス。 

            
  ”カエルのたまご”という名前のついた衣装。なるほど、カエルのたまごです。 涼しげでゴージャス。 真夏のパーティに着て行ったら人気者になれそう。

                 
 カエルといえば、友人に頂いた”カップのフタ”が、ハスに乗ったアマガエルのデザインで、可愛くて愛用しています。6月の空模様をじっと見上げるようなカエルの視線。

            


 今月読んだ新しい絵本は、『ガラスのなかのくじら』(あすなろ書房)。  物心つかないうちから、街の中の大きな水槽で育った鯨は、遠く小さく眺められる海の色に惹かれながらも、特に不満もなく暮らしていました。でも、ある日。 ガラスの向こうで、海とそっくりな色の瞳をした少女から、こう言われます。「ここは、あなたの本当の居場所じゃない」。 それからの鯨は、悩みに悩み、自分を本当に輝かせる場所を求めて、動き出します。

             

 折りたたまれたページを広げると、鯨と一緒に広い世界へ飛び出した気分。やがてたどり着く海では、「水槽にいたのでは出来ない経験」が待っています。それが何かは、絵本のラストを見てくださいね。きっとハッピーになれます。

 外の雨が少し収まってきたすきに、買い物へ出掛けましょうか。そろそろ、ビネガーをたくさん使った、さっぱりした料理を作ってみようかな、なんて考えながら。

              2018年6月

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