日々のエッセイ

  新緑が美しく、風もさわやかな5月です。 いつもより遠くへ出掛けてみたくなる気候ですね。 お休みの日も多くて、「今日は何をしようかな?」なんて気ままに考えられる、予定のない日もまた贅沢。

       
  タケノコをいただいたので、タケノコごはんや、タケノコの煮ものなど、あれこれ作って、5月の味を楽しみました。 ふだんは簡単な水煮の袋入りをつい買ってしまうけれど、たまには、皮をはぐところからやってみると、季節を実感できて、いいですね。

      

  天気につられて、国分寺へ。 駅から数分歩くと、静かな住宅街に、アーティスティックなガレージのような建物が。 入り口に彫刻が飾られています。 ここは、洋画家・児島善三郎画伯の作品を展示した、アトリエ風な個人美術館、『丘の上APT』なんです。

        
  看板のシマウマが、素朴で楽しげ。 のどかな5月の空気に似合う看板です。 中では、この辺りの風景を描いた児島画伯の絵が、ふつうの家のインテリアのように、気軽な感じで展示されていました。
       
  ロフト部分には、イーゼルが置かれ、年輪を漂わせるアトリエの雰囲気。 窓から見渡せる穏やかな武蔵野の風景が、創作のインスピレーションを掻き立てることでしょう。

       
 
  美術館の裏手に、風変りな家が建っていて、ここも絵になります。 町の人たちから「チョコレートハウス」と呼ばれ、親しまれている茶色の家は、画伯のご家族が住んでいるそう。 なんだか東京じゃないみたい。画伯といえば、私の書いた『うす灯』(偕成社)にも、一風変わった画家が出てきます。彼が、どんな才能を持った人物なのか、もし興味持たれたら、図書館などで探してみてくださいね。

       
 国分寺の駅近くには、絵本の専門店『おばあちゃんの知恵袋』もあり、寄ってみました。 お店のドアに、大きくて目立つミミズクがとまっていて、お出迎え。 遠くからでも目印になりそう。

        
 レンガの外壁に嵌め込まれた、古い電話機も、ノスタルジックで物語の世界へ誘います。 AI時代の今じゃ、見慣れなくなった古い電話機、なんだかロボットの顔のように思えてきませんか? お店は、ちょうど貸し切りイベントの時間帯だったので、また今度、ゆっくり出掛けてみたいです。

 小さな美術館に、小さな絵本屋さん、国分寺には本やアートに関する、たくさんの素敵な場所がありますが、雑誌の好きな人なら一度は行きたい、大きな図書館だってあるのです。

        
 都立多摩図書館には、東京で最大級の数の雑誌が保存されているそうです。雑誌の創刊号を集めたコレクションも見どころ。 子どもの読書活動を推進する資料サービスにも力を入れているので、大切な本と出会うために、時間をかけて訪れてみたいな。

        
  以前、月刊絵本として出していただいた『ふなのり たんてい ラッタさん』(フレーベル館)が、今年、中国でも発売されることになりました。若い船員のラッタさんが、小さなお魚から「ぼくのマントが消えちゃった」と、捜査の依頼を受けて、船の中のいろいろな部屋を歩きまわります。 船の様子については、南極へ向かう船に二回乗ったことのある夫から、詳しく聞いて書いてみました。オーロラを見たり、南極の氷でお酒を飲んだり、船の生活は意外と楽しそう。ラッタさんの船の旅、中国の子どもたちにも楽しんでもらいたいです。

            
 近所に続けて二軒の、古民家カフェがオープンしました。 築80年くらいの和洋折衷の立派なお家を、リフォームして出来たカフェで、ゆったりしたひととき。 オーナーのお母様が、古い時代の文房具や眼鏡などを見せてくださりました。 お洒落なご婦人で、「年をとればとるほど、赤い服を着たり、アクセサリーをつけたり。朝、何を着ようか選ぶのが、元気の素になるのよ」と、教えてくれました。 なるほど。私もぜひ、と思いますね。

 5月のひざし、たっぷりあびて、健やかな毎日を!

            2018年5月

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