夏も真っ盛りですね。 朝、カーテンを開けると、まぶしい光がいっぱい降り注ぎ、今日も暑くなりそう、少しでも涼しいうちに、いろいろやってしまおう、なんて思います。 小さな頃の宿題と同じで、そう思っても、なかなか実行できないのですけど。
チュニジア大使館の前を通ったら、ウィンドウにこんな飾りがありました。 背景は、目の覚める青色。 チュニジアといったら、チュニジアン・ブルーですものね。 まだ行ったことのない国だけれど、美しい街並みを想像して、通り過ぎました。
夏の朝に読むと、元気が出る絵本。『たなのうえ ひこうじょう』が今、気に入っています。 シンプルな絵と、さっぱりした色づかい。 はぎれのいい文章。 棚の上の、小さな小さな飛行機が、部屋の中を飛びまわるお話です。
本文の文字が、青色でさわやか。 小さな飛行機は、電気スタンドや、えんぴつ立てや、ガス台の上のやかんなど、さまざまな障害物をうまく避けながら、快適に飛行を続けます。 スイスイスイ、気持ちよさそう。 ミクロの視点が楽しめます。 機長は「テイクオフじゃ」と叫びながら、飛行を開始したように、「〜じゃ」という、おじいさん言葉を使い、同乗の助手と会話します。 そのやりとりが、なんてことないのに、とぼけた感じが漂い、肩の力が抜けます。
この絵本は、グラフィカルな絵本をたくさん作っている、中村至男さんの作品。 この絵本の機長と助手さんと、そっくりな二人が出てくる、もう一つの絵本も、夏にお勧め。
『はかせのふしぎなプール』(福音館)では、中に入れると、何でも巨大になってしまうプールが出てきます。 なんとなく金沢の二十一世紀美術館にある、展示用プールを思い出しました。
プールに沈んでいる物を、読者に当てさせるという趣向。 簡単なものもありますが、上のページは、最初、ちょっとわからず、とまどいました。 答えは、夏といえば、あの果物・・・です。
中村さんは、デザインユニット『明和電機』でも、お仕事をたくさんなさっていたそうで、ユーモアたっぷりな作品が、共通しています。 いかにも、な博士が出てくるのも、パロディっぽくて、画風にぴったり。
好きな絵本を、もう一つ。 アメリカの絵本作家、ヴァージニア・リー・バートンの、日本でもお馴染みの一冊『ちいさいおうち』(岩波書店)。 6歳くらいの頃に買ってもらい、すごく好きで、繰り返し読み、感想文まで本にはさんでいました。
その『ちいさいおうち』が、現実に現れた、と聞いて、東陽町まで行ってきました。 竹中工務店の一階がギャラリー(エークワッド)になっていて、建築に関する展示をやっています。 今回は、バートンの絵画やデザインにまつわる展示。
ありました! 絵本で親しんだ、かわいい小さなお家が。まわりのリンゴの木や、ひなぎくたちまで再現されていました。 中に入ってみたいけれど、ドアは開かないようですよ。 小さな頃は、二つの窓が、目みたいに思えたものです。
原画もありました。 ちいさいおうちの周辺が、どんどん都会化されていく様子。
高層ビルが次々に建ち、高架に電車が通り、地面の下では地下鉄が走り・・・。騒がしい街に、おうちはうんざり。 こんなモノクロのスケッチも。
バートンは、優れたデザイナーでもあったので、たくさんのテキスタイルデザインも展示されていました。 この服は、バートンがデザインした布で作られたワンピース。 とても上品な感じ。
木の枝に本が実る絵柄が、いくつも見られました。『ちいさいおうち』を思わせる家をモチーフにしたデザインも、目立ちました。
上の絵本は、私の書いた物語で、『すてきなおかいもの』(トムズ・ボックス)の一場面。 可愛い切り絵は、伊藤知紗さんの手によるもの。 主人公の小鳥のリラちゃんが、買い物を続けていくうちに、「本のなる木」と出会う場面です。読書好きな人にとって、本のなる木は憧れかな?
家に帰って『ちいさいおうち』を再読。 何度読んでも、ラストにホッとします。
『ちいさいおうち』の他にも、バートン作品は、日本の子どもたちに昔から読み継がれていますね。 『せいめいのれきし』も、その一冊。 『ちいさいおうち』同様に、時が経つにつれ、世の中が変っていく様子が、ページごとに丁寧に描かれています。
ギャラリー入り口にあったオブジェ。 横から見た時はわからなかったのですが、正面から見たら、クジラだったことに気づきました。 夏らしい、涼しげなクジラ。
神戸のお土産屋さんで売っていた、港町を描いたミニ・マットも、夏らしくて、部屋のアクセントになります。 港町って、いいですよね。 異国情緒があって、坂道をのぼると、町や海を見渡せて。 ゆっくり出掛けてみたいです。
夏バテせずに過ごしてくださいね。
2017年 8月
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