登山手帖

南アルプス 甲斐駒ヶ岳・千丈ヶ岳
昭和55年(1980年)12月27日(土) 〜 12月31日(水)

雪景色の甲斐駒ヶ岳
甲斐駒ヶ岳


12月27日(土) 戸台 ・・・ 丹渓 ・・・ 北沢峠 ・・・ 北沢小屋

戸台 8:30着 8:50発
歌宿沢の手前 10:07着 10:20発
丹渓 11:03着 11:34発
大平山荘 13:03着 13:14発
北沢小屋 14:25着  

年末の帰省、スキー客と共に夜行列車は相当混むかと内心不安であったが、思ったより少なく、安眠できる。塩尻駅も伊那北駅も積雪があった。伊那北からは国鉄バス。予想した通り臨時バスがあった。周遊券があれば荷物料だけで戸台まで行ける。タクシーを利用する人はなかった。

戸台から丹渓まで河原歩き。トレースがあるのでラッセルはなし。後ろから自動車が河原の車道を追い越していった。先の方で停まった車から降りたのはボッカで、その人に追いついて見ると登山の指導員だった。丹渓山荘で登山届を出すよう指導されたので、それに従う。この人はボッカの傍ら、赤テープを登山道のあちこちに付けていた。

下山する人に数多くすれ違う。トレースはどんどん踏み固められる。トレースを外すと膝くらいのラッセルになる。スーパー林道の傍に大平山荘があり営業していた。北沢峠小屋と長衛小屋は無人閉鎖の様子。北沢峠の沢筋は水が流れている。

やっとの思いで北沢小屋に到着。挽きたてのコーヒーが出る。お茶が出る。落花生が出る。夕食は鮭切身汁。日本酒もブランデーもウィスキーも出る。夜食にご飯とたらこが出る。山小屋の泊まりで飽食するとは思ってもみなかった。コタツに入って雑談のうち夜がふける。0:20就寝。

12月28日(日) 北沢小屋で沈

北沢小屋 7:00起床  
     

昨夜の飲酒が過ぎたか、体の調子がすぐれない。上空は雲の流れが速く、甲斐駒ヶ岳の登山は見合わせる。終日、小屋で沈。小屋の便所壷の下には、「糞塔」がそそり立つ。同じ日に泊まった人が単独で登頂に向かった。昨日テントだった4人パーティーは、雪と強風で駒津峰から引き返してきた。

昼頃に鋸岳から4日かかって縦走してきた山形の5人パーティーが到着、積雪の深さに難儀したそう。14時過ぎから小屋泊まりの人が入り始める。単独で行った人が約6時間後帰ってくる。頂上はガスで何も見えなかったとか。

胸やけが何とか収まったので、ラーメンを作って食べる。ラジオは東京NHK第2が入る。21:00就寝。寒くて夜中に目が覚める。日本全土を強い寒気団が覆ったらしく、すぐには天気は回復しそうにない模様。

12月29日(月) 北沢小屋 ・・・ 仙水峠 ・・・ 駒津峰 ・・・ 甲斐駒ヶ岳(往復)

北沢小屋 6:30起床 7:45発
駒津峰の手前 7:45着 8:25発
駒ヶ岳登り途中 10:15着 10:30発
甲斐駒ヶ岳 10:45着 11:15発
北沢小屋 12:40着  

昨日と同じ様な空模様だが、行けないことはないはずと考え、駒ヶ岳ピストンの準備を整える。アルファ米とコンソメスープの簡単な朝食を済ませ、すぐ出発。

仙水峠付近は賽の河原のよう。風が強く、甲斐駒ヶ岳の山頂は厚い雲で覆われ、摩利支天の岩壁も霞んで見える程度。駒津峰への登り途中、樹林が切れる高さまでいってからアイゼン、目出帽、手袋を着装。じっとしていると、すぐ手がかじかんでしまう。このあたりから足の指も冷え始める。

駒津峰あたりまで行くとガスに巻かれ始め、例のごとく睫毛が凍り始める。西風なので駒ヶ岳に登る分には強い寒風も大して苦にならない。六方石への下りが険悪なはずだが、積雪が多くてなんとなく通過してしまう。

摩利支天の分岐で凍える記念写真
睫が凍りつく寒さ

駒ヶ岳の最後の直登は、視界が狭いと人の通った跡だけが頼りになる。うまく歩けば岩を乗り越すことなく頂上に出られる。

甲斐駒ヶ岳の登り
甲斐駒ヶ岳の登り

頂上からガスの切れ間に八ヶ岳がわずかに見えた他は全く展望なし。風を避けてじっとしていたが、変化がないので下山する。つまらないところでつまずいて、オーバーミトンに穴をあける。雲量が少なくなり始め、陽が差しはじめる。アサヨ峰、鳳凰三山が姿を見せる。

雪煙舞う早川尾根
鳳凰三山 雪煙舞う早川尾根

千丈ヶ岳へ行った山形パーティーとほぼ同時刻に小屋へ帰着。21:30就寝。

12月30日(火) 北沢小屋 ・・・ 北沢峠 ・・・ 仙丈ヶ岳(往復)

北沢小屋 6:40起床 8:05発
登り途中 9:10着 9:25発
小千丈岳の手前 10:15着 10:25発
千丈ヶ岳 11:17着 12:00発
北沢小屋 13:40着  

晴れ。小屋から小千丈の朝焼けが見られる。

朝日に映える小千丈岳
小千丈岳

起きたのが遅く、出発は最後になる。北沢と峠のテントサイトはひっそりとして、ほとんど出発した後のようだった。樹林帯の中をアイゼンを利かせてどんどん高度を稼ぐ。

雪景色の北岳
樹林の合間から北岳を望む

しっかりと踏みしめられたトレースはほとんどアイゼン歩行らしくステップは刻まれてない。小千丈にかかるころ樹林が切れて展望が開ける。上空の雲が広がり始める。富士山の上につるし雲。北アルプスの峰々は雲に隠れている。雲量が多く、遠方の景色はなんとなく暗い。

千丈ヶ岳の展望(伊那・高遠・美ヶ原・霧ヶ峰・八ヶ岳)
 伊那・高遠 北アルプス方面 美ヶ原・霧ヶ峰 馬ノ背 鋸岳 八ヶ岳

小千丈から千丈ヶ岳までたいした登りも、険悪なところもなく難なく頂上に到着。

千丈ヶ岳の展望(北岳・富士山)
北岳 と 笠雲の富士山

山頂の標石
山頂の標石

微風。気温もそんなに低くない。大展望を満喫する。間ノ岳より先の南アルプスの南部の峰は雲に隠れて見えない。

千丈ヶ岳の展望(間ノ岳・聖岳)
 間ノ岳 雲間の遠方に聖岳 大千丈岳

やがて千丈の頂上もガスに巻かれる。下山途中シリセードをしていて、サブザックの吊り紐を引きちぎる。北沢峠付近のテントサイトは賑やかだった。左足首にまめができていた。20:30就寝

12月31日(水) 北沢小屋 ・・・ 北沢峠 ・・・ 戸台

北沢小屋 5:30起床 7:10発
戸台バス停 10:17着  

快晴。北沢峠付近から北アルプス遠望。霞みもしない槍ヶ岳・穂高岳を見て、今回の山行の見納めとする。赤河原の丹渓荘まで、先を行くパーティーの後ろをついてゆっくり下る。

戸台川河原
戸台川河原から甲斐駒ヶ岳(左奥)

戸台までの河原歩きはペースが速くなる。正月登山の人の列がひっきりなしに続く。トレースは平坦によく踏み固められているので、夏道よりずっと歩きやすい。

戸台のバス停に早く着く。タクシーを呼んだ人が同乗を求めてきたので、それに応じた。下山してきた先着の4名が相乗りして10:50出発。約1時間で伊那市へ。タクシー料金は4970円。13:05発の国鉄バスを待つことを考えれば安いかも。

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