藤田令菜の日記5 〜言葉編〜


6月23日(雨)



声が聞こえました。
「心臓が急速に弱っています・・・。こんな事、私共でも初めての事でして対処しようがありません」
「そんな!! だって昨日までは元気だったのよ!! こんな事って!!」
お母さんと知らない人の声が聞こえました。
お母さんは泣いているようでした。父の声も聞こえます。


目を開けると、私の傍には茂原直樹さんがいました。
「令菜!!」
「・・・・わた・・・し」
話したくても、うまく口が動いてくれませんでした。
「いいんだよ、喋らないで。・・・・大丈夫!! 大丈夫だから!!」
何が大丈夫なのかよく解らなかったけど、彼は私にそう言ってくれました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ようやく、理解しました。

私はもうすぐ、死ぬって事を。

手を動かしてみました、指を動かしてみました・・・・。
大丈夫、まだ書ける。
「にっ・・・・・・・き、かき・・・た・・い」
私のその言葉に彼は驚きの表情を見せました。
お母さんが言いました。
「日記って、あなたがいつも大事に持ってる日記?」
「・・・だい・・じょう・・ぶ。だから・・・にっき・・かかせて・・。ひとりで・・・」
しばらく苦悩の表情を見せた母は、私がいつも持ち歩いている日記を出してくれました。
そして、母と父は部屋から出ていきます。
「令菜、無理はするなよ。・・・・生きるんだよ、二人で必ず」
彼の言葉がとても苦しかったです。
私がゆっくりと頷くと、彼も部屋から出て行きました。

私は震える手で、最後のペンを持ちました。
ここからは・・・・・・、私の最後の言葉です。



たぶん、この日記は私の愛する皆に読まれる事になると思います。
私が死んでしまう理由、私が変わった理由を全部知ってしまう事になると思います。
だけど、お願いだから私を卑怯と呼ばないで。
他人の力を借りて変わった私だけど、・・・だけど、私はそれでも変われてよかったと思ってます。
人の暖かさに気づく事ができました。
自分という存在が、どんなに大切にされているのかも解りました。
人を本気で好きになる事もできました。

だから、お願いだから私の存在を否定しないでください。



・・・・でも、でもね。
本当は生きたいんだよ。
死にたくない。
死ぬのが恐い。
生きて生きて生きて、ずっと生きて、飽きるくらいまで生きたい。


・・・・ごめんね。お父さん、お母さん。
もっともっとたくさんお喋りして、色々な所に遊びに行って、たくさん親孝行したかった。
せっかく本当の家族になれたんだから、いっぱいいっぱい甘えたかったよ。
ごめんね。


ごめんね、おばあちゃん。
せっかく私を必死で励ましてくれたのに、こんな事になっちゃって。
本当はね。おばあちゃんの所に言って『ありがとう』って言いたかったの。
たくさん元気をくれたから、何倍にもしておばあちゃんが喜ぶ事たくさんしたかった。
ごめんね。



そして、茂原直樹さん。
好きです。大好きです!!
本当は口で言いたかった。けど、恥ずかしくてずっと言えませんでした。
もっとたくさん遊んで、たくさん話したかったよ。
・・・だけど、茂原さんはもう大丈夫だよね。
きっとたくさんの友人が出来て、私より何倍も素敵な彼女だってできるはず。
ちょっと悔しいけど、あなたには幸せになってもらいたいんです。

どうか、自分の思うままの道を歩いてください。
・・・・決して、後悔しないで。



最後に。
願い事、違うことを書けばよかったなって思ってます。
『茂原直樹さんが愛するような女性になりたい』
って書けばよかった。



藤田令菜より、愛する皆様に捧げる日記。



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