*****渡辺みゆきの記録*****



『彼のあの言葉を聞いてから、
私は手術をする決意をしました・・・。

彼は私にとても大切な事を話してくれた。
それは、私が思っていた事と全く同じ事でした・・・。
けど・・・、私には彼と同じ言葉を放つ事ができなかった。
私も好きだよって、私もあなたと別れてしまった事を後悔していたんだよって。過去も今も未来もずっと好きだよって言えなかった。
だから私は言いたい。
私の本当の気持ちを、今度こそ誤魔化す事なく正直になりたい。

だから私は、後悔なんてしないんです』



***3月15日晴***


吸い込まれそうな暗闇、不思議な黒い空間。じめじめして、まるでここは私の知っている世界ではないような不思議な雰囲気を漂わせる、奇妙な黒い部屋。
そう・・・ 私はまた黒い人のいるあの場所へ来ていました。
不思議な文様が描かれた台の上に寝かされ、服を着ていない私の体には黒い布がかけられていました。
そして、黒い人が私を見つめています。
『もう、迷いはないか?』
黒い人の言葉に、私はゆっくりと一度だけ目を瞑りました。
「・・・・・」
以前見た時より、なんだか黒い人が小さく見えます。
なぜだろう? 前はあんなに恐かったのに今は何ともない。
不安も恐怖も、むしろ安心してる・・・・・。

「みゆき、本当にいいのか? 本当にこれでいいんだな?」

彼が私を心配そうに、今にも泣き出してしまいそうな瞳で見つめていました。
「・・・・・」
私は再び、瞳を閉じました。



私は手術をうける決心をしました。
私はこの手術に賭けます、たとえ成功しても3年の命だったとしても、それでも彼と共に歩んでみたい。私の言葉でしっかりと伝えたい。私の気持ちをすべて伝えたい。
だから、後悔なんて絶対にしない。
私は生きるんだ。誰よりも強く生きて誰よりも誇れる未来を作るんだ!

『目を瞑れ、おまえが再び目覚めた時、それは自由になった証だ』

「・・・・・」
最後に私は彼を見ました。
・・・私は何度彼にこんな表情をさせてしまったのだろう。きっと、これからも何度もこんな顔をさせてしまうのかもしれない。
だから私は目をそむけず、真っ直ぐと彼を見つめました。
決して消える事のないように・・・。
暗闇の中でも、必ず思い出せ永遠に忘れないように・・・・。
彼の本当の笑顔をもう一度見るために。

「みゆき、また会おう・・・」





私はゆっくりと目を瞑りました。

吸い込まれるような不思議な感じ。
頭がぼんやりして、だんだん眠くなってきました。
不思議と恐くはなかった。私にはこれから先の未来が見えているのかもしれない・・・。なぜなのか、私には解っているような気がした。

だから・・・・・。








きっと大丈夫。


また、会えるよ。

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