*****渡辺みゆきの記録*****



『今思えば、彼のあの時の決断は正しかったのかもしれない。
途方もないくらい一人で悩んで決めた決断。

けど、彼は考え直してしまいました。
永遠という時間から抜け出すために、
彼は、ある決断をしました・・・』



***3月12日晴れ***


この日は一日中、海を見ていました。
子供の頃から大好きだった海。
海の匂い、海の音、海の感触。私は全部が大好きでした。もし・・・、もし夢が叶うのならば、私はもう一度海に入って自由に泳いでみたい・・・。
このベットから飛び上がって、海まで走っていきたい。
「・・・・・」
そう考えていたら、自然と涙がこぼれてきました。拭き取る事のできない涙は永久に止まらないんじゃないかと思うくらい流れ続けました。
「・・・みゆき?」
するとそこに、彼が部屋に入ってきました。
「みゆき、泣いているのか?」
私は必死で涙を抑えようとしました。けど彼の姿を見たら、よけいに涙が止まらなくなってしまいました。
「みゆき!!どこか苦しいのか!みゆき!!」
私は必死で海の方を見ました。
涙の理由を教えるために、彼に今の気持ちを知ってもらうために。
「・・・・?」
彼は海を見ました。
「あ・・・・・・・・」

彼は呆然と立ち尽くします。

浜辺には、小さな男の子と女の子が楽しそうに遊んでいました。
心から楽しそうに、決して作り物ではない笑顔で。
・・・走り回っていました。

「・・・・そっか・・・・・・・・・・そ・・・だよな」
一人で何かを納得するように、彼はその光景を見ながら呟きました。
「解ったよ・・・・みゆき。ありがとう」
そう言うと、彼は私を真剣な瞳で見つめました。
「みゆき」



そして、彼は私に信じられない言葉を言ったんです。

「もしかしたら・・・、もしかしたら君は、治るかもしれない」

彼の思いのよらない言葉に、私は一瞬頭が真っ白になりました。
彼は酷く・・・酷く悲しげな瞳をし、とても苦しそうに言います。
「けど、それはとても危険な手術で・・・。もしかしたら君は死んでしまうかもしれない」



そして最後に、彼はこれだけ言いました。



「君がそれでもその手術を受けたいというのならば、俺は止めたりなんかしない。だから・・・、だから君自信の心で決めてくれ」






私には彼の言葉が
しばらく理解できませんでした・・・・。

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