*****山崎正樹の手紙4枚目*****



みゆきの手術は見事成功した。彼女は以前の元気だった頃と全く変わりない姿にまで回復し、みゆきの笑顔をもう一度見る事ができた。
そして彼女が言葉を話せるようになってから、初めてみゆきの本当の心を知る事ができた。みゆきが俺と同じ事を今まで思っていた事を・・・。決して俺を憎んでなどいなく俺を本当に愛しているという事を。
嬉しかった。
俺はようやく本当の幸福を手にしたような気がした・・・。今までの心の引っ掛かりがすべて取れ、この素晴らしい奇跡に心から感謝した。

それからすぐに俺達は結婚した。友人数人だけしかいない、本当に小さな結婚式だったけど俺達は誰よりも幸福だった。
彼女の言葉で愛している、と言われるだけで俺は舞い上がってしまうくらい幸せだった・・・。

そして、俺達の間に子供が生まれたんだ。
しかも双子の男の子と女の子で、名前は由里と智也。この子達が生まれてから、俺はこんなにも子供というものが素晴らしい存在なんだという事を実感した。
二人の安らかな眠りを見ているだけで俺は心が安らいだ・・・。
このままずっと一緒にいてあげたいと心からそう思った。
彼女と俺と智也と由里で、未来を見ていきたいと心から願った。

だが・・・、俺は3年しか生きられない。
そしてすでに1年が経ってしまったんだ。みゆきの奇跡と、智也と由利の奇跡の次は・・・俺の死が待っている。
彼女の涙が目を瞑っていても浮かんでくる。
きっと彼女をまた泣かせてしまう。すべてを知らない彼女は、突然の俺の死に訳もわからず泣いてしまうに違いない・・・。

生きたい。

出来る事ならば生きて、家族と共に歩んでいきたい。

だけど・・・、俺はもう一度あの時へ戻って、再び同じ選択をする事になったとしてもきっと同じ道を歩んだはずだ。
それだけ彼女の笑顔は俺にとって大切なものだから。
子供達の安らかな眠りは宝だから。


・・・だから、俺という存在がいたという事だけを忘れないでいてくれればそれでいい。・・・それだけでいいんだ。
中途半端に消えてしまった俺を憎んでもいい、笑ってもいい、どんな形だっていいんだ。
忘れないでいてくれれば・・・。

俺は大丈夫だから。





最後に、
愛する彼女、またいつかどこかで会いましょう・・・。

****愛する家族へ****


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