海外のプロゴルファーのスイングは、画一的でなくヒューリックやフロイドなどのように個性派も多くみられる。日本の、特に若手のプロゴルファーの場合には、フォームにさほどの差はないように見えるが、素人ゴルファーに関しては千差万別、数え上げれば限がない種類のフォームを眼にすることが出来る。かく言う自分もスウィングの写真を見たくないほどの変則であるが、それはさておき、これらの個性派フォーム(またはスタイル)のなかで、小生が特に印象的と感じている2,3の例を挙げておきたい。
1軸回転
O氏は30歳代の後半、若い頃に機械体操をやっていたとのことで、小柄ではあるが筋肉隆々で体力抜群の男性である。スコアは「今一つ」の域にあるが、飛距離は素人離れしていて将来性抜群の魅力を持ち合わせている。
同氏のスイングは、他にあまり例を見ない個性的なものである。ショットの瞬間、左への体重移動につれて右足を跳ね上げる例は先にも書いたように幾つかの事例はあるが、同氏の場合は、左足に体重を乗せた後は左足を一本の軸として体全体を大きく回転させる、その時右足は左足に巻きつくようにして完全に一回転させるという珍しいスイングである。これによって、大きな回転が得られボールは勢い良く遠くへ飛んで行く。ただし、完全な横振りとなるため、強く振りきれば左へ大きくフックし、それを気にして多少力をコントロールすると右へ押し出してしまう。真っ直ぐ行くのはカット気味に入って多少スライスの高いボールが出るときである。クラブヘッドの軌道からみても、玉筋は誰でも推測できるものである。問題点で一番大きいのはバックスイングにあろように思われるが、O氏は他人の忠告に耳をかさず頑固にこのスタイルを3年以上も維持し続けてきた。最近になってようやく少しの変化が見え初めてきたのは、多くの心暖かい友人の忠告に耳を傾け出したということだろうか。
早く改善の効果が出てくることを期待している。ただ、これに近いショットをする人に共通の強さは、ショートアイアンが壷に入ればグリーン上でよく止まる高いボールが出ることである(これも理屈に合っているが)。
海老踊り
スイングでは「逆海老形」、即ち下半身を左へ送り込みながらも頭は元の位置にしっかりと残して体が海老の反りのようにみえる形が理想形だと言われた時期があった。今でもそうであるかは多少の議論はあるようであるが、そのことはここでの話題ではない。
これはパッチングスタイルの話である。
N氏は、性格的に真面目で、粘っこく、かつ几帳面である。仕事上も、手抜きがなく丹念で容易に諦めない、従って業務の内容は信頼性が高い、と多くの人が認めている。
ゴルフでもフォロースルーにその性格が現れているように見受けられる。体の回転よりも、手首と一緒にクラブのヘッドも打球方向と同じとなるよう心がけており、打った後のボールの行方に執着している様子が窺える。ボールを打った後も、ボールの行方をコントロールしているかの如く受け取れる。パッチングにおいては、この傾向がもっと顕著である。パターでボールをヒットしたあと、ゆっくりと体を左に開きながら、顔をボールの行く先の方向へ突き出し、一方腰はうしろへ引いてボールの行方を見つめている。またパターはボールの方向へ突き出されており、ボールがカップに吸い込まれるまでボールを操ろうとしているかの如くである。体の開きが大きくなると、時折 左足でグリーンを掻き毟りながら足を左後方へ引いていく。この動きが極端になると、最後には両足でグリーンをバタバタと叩く現象がでる場合もある。仕事仲間の米国人が、この様子を例えて「海老踊り」と名づけたが、当人がこのことを気付いているかどうかは定かでない。
数多くのゴルファとプレイを重ねており、類似のパッチングスタイルは幾人かお目にかかているし、N氏に限ったことではない。
しかし、N氏のこのパッチングスタイルも、最近では大分違ってきたようだ。上記のような動きがほとんど見られなくなって来ている。そのためか、最近はパッチングの回数が多いという。パッチングは、個性に合わせていろんな形があってもよいとおもう。無理して直さないことが肝要だ!
マシンガン
I氏は仕事上でも決断が早い。処理能力も高く、かつ迅速である。多少短気な面もあるが、淡白でサッパリしている、という表現がよく当てはまる。また、体格もよく、その上に並外れた強靭な体力を有しており、ゴルフでもその飛距離はプロ級との評価がある。パッチングも思いきりがよく、強めに打って難なくカップインさせる。ただし、彼にも弱点はある。ドライバーショットの方向性である。距離の出る素人ゴルファーの共通の悩みでもあるが、ドライバーでのOBが多い。それでも彼は飛距離に大いに拘っているので、右にも左にもOBが出てスコアが纏まらない時もある。
彼のゴルフで最も特徴的なのは、OBが出た後の処理の仕方である。多くのゴルファーは、自分の打ったボールがOB方向に向かい、間違い無くOBゾーンに入ったことが確認されても、暫し呆然とし、気を取り直して打ち直しするまでに多少の時間が必要である。I氏の場合は、全く違った場面が展開される。打ったボールがOB方向に向かったと見えると、彼は次のボールを素早くティーアップしており、OBボールが到着点に辿りつく前に次のボールを打ち出している。打ち直したボールがまた同じ結果なら、また次の行動が開始されている。大袈裟に言えば、普通のゴルファーが一打に要する時間と彼が三打で使う時間に差はない。まさに「マシンガン打法」と名づけたいショットスタイルである。
パッチングも小気味よい。最初のパッチングで大きく外しても、必ず「お先に」で難なくカップインさせてしまう。彼曰く、「最初のパットのイメージが消えないうちに、素早く次のパットをやることが、パットの秘訣」 <99年7月記>
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