ゴルフ見聞録
(1.技術編)



* 心の目でナイスショット
スウィング信仰の落とし穴 パッティング改善
「ゴルフの科学」の教え 横田プロのフック、スライスの打ち方


心の目で
ナイスショット!

 身体障害者の人達のゴルフも、いろいろ企画されており大会も開催されていることは、雑誌・テレビで見聞している。また、片足を失った障害をもちながら、プロゴルファーとして活躍して人の存在も、かなり以前に雑誌で知った。しかし、全盲でありながら、ゴルフを楽しんでいる人達のことは、1999年に初めて知って、驚くとともに多いに励まされた。

 視覚障害ゴルフは、ブラインドゴルフと称して、欧米ではかなり前から行われており、世界的な大会も開催されているという。日本でも、ブラインドゴルファーは100人以上もいるとのことである。

 その記事によれば、中西 由夫さん(京都視覚障害ゴルファーズ協会会長)は、1994年に交通事故の後遺症が原因で突然視力を失った。仕事も諦め、絶望のどん底に突き落とされいる時、NHKの福祉番組でブラインドゴルフを知り、腕に覚えのあったゴルフに再度挑戦する気になった。今は、飛距離も往年の7割程度に回復し、平均スコアも90台だという。海外の大会にも積極的に参加し、全英ブラインドゴルフオープンでは総合優勝を果たしているという。

 中西さんの場合は、障害を持つ以前はシングル・ハンディキャップの腕前であったという条件はあるが、人間の力の偉大さに驚くばかりである。

 畔上氏は、その著書「ゴルフの科学」のなかで、ゴルフのショットの瞬間は条件反射であること、従いゴルフの上達の為には、繰り返し条件付け(練習)を行い条件反射を強化(汎かと分化)することであると力説されているが、当にいい得ている一例ではなかろうか。

スイング信仰の
落とし穴


 古い話であるが、金田武明氏が「ぐりーん・さろん」のなかで次のような事を書いている。

「ジャック・ニクラウスが“日本のプレイヤーはスイングの形はよいが、よいスイングをしていれば勝てると信じているんじゃないかな。よい形のスイングと勝つことは全く違うと思う”とつぶやいたことがある。その彼でさえ、不振に陥った時診断してもらったら、メカニックスを追うあまり、自分を見失っていたという。スイングを練習し過ぎ、意識し過ぎて、ゴルフをするのでなく、ゴルフのスイングをプレーしてしまうことになっていたという。

 ゴルファーがスイングを意識することができるのはミスする時だけだという名言もある。ゴルファーが出来ることは、スイングの感覚を予知し、クラブを選び、目標を考えながらボールの前に立つこと(予備手順)である。スイングが始まったら、完全にフィニッシュまで何もできない。」

 この話は「ゴルフの科学」でも類似の記述があったように思う。ゴルフでは、それに合致したスイングの基本形、理想形というものは当然あるだろう。「薪割り」をする場合と違った、長い道具で小さなボールを打つゴルフに合ったスイングの形があるのは当然である。スイングの始動からフィニッシュまでの全工程をことこまやかに解説している教科書が多く、またプロの美しいフォームを連続写真で示した出版物が多い。そのため、多くのゴルファーがスイングの追及に走り、肝心のボールを打つという一番大事なことが疎かになりがちである。ゴルフのスイングは、長いクラブでボールを叩いて、自分のねらう方向へ、ねらう距離だけボールを運ぶのが目的である。ボールを打つことが最も重要な動作であり、自分の力の限界内で自分の求める打球が可能ならば、その人の体形、体力に応じて自分なりのスイングに徹すればよい、と小生は思う。どんな打球が打ち出せるかに集中すべきであって、どんなスイングをするかに意識が集中してはまともな打球は得られない。繰り返し練習するなかで、自分が求める打球のでるスイングが自分の理想のスイングと認識して、スイングの形に囚われることは必要ない。と、自分なりに解釈することとした。

 ただし、この境地に到るまでには長い道程があったように思う。コースで買い求めた自分のスイングの連続写真を見る度に、あまりにも「美しいフォーム」からかけ離れた自分のスイングに愕然とし、写真から目を背けたいと思ったものだ。ただ、スイングはゴルフの最も重要な動作であり、言うは易いが、ここまで達するには練習量を増やし条件反射の強化が何より必要であることは事実である。

  

パッティング改善

 ここ1年、インドネシアの遅いグリーンでプレイしているうちに、パッティングの調子を全く崩してしまった。気にすればするほど不調になっていく傾向がある。スコアーメイクはパッティングにかかっている。目指そう「シングルへの道」を掲げた今となっては、真剣に改善に取り組まねばなるまい。

 プロ・ゴルファーは、練習の約8割をパッティングの練習に当てるという。98年の日本女子プロの賞金女王となった服部美智子は、シーズン前にレッスン・プロについて徹底的にフォーム改造ほか練習を重ねたが、中でもパッティングの練習に力を注いだそうだ。パッティングが大幅に改善されたことが、賞金女王という結果に繋がったという話をテレビ解説者が述べていた。ゴルフのスコアーメイクにはパッティングが重要である、ということは言い尽くされているし、そのことは十分に認識していても、素人ゴルファーはパッティングの練習は疎かにする傾向がある。小生もその例にもれない。何故か?。面白くないからだ。ドライバーのように打った打球がはるか遠くへ飛んで行き、しかも自分の意図した結果が得られた時のような快感は得られないと感じているからである。

 畔上氏は、その著書「ゴルフの科学」の中で、「パッティングもショットの一つである。ショットは条件反射の活用にほかならない。繰り返しの練習によって条件反射の強化を行うことがゴルフの上達の道である。パッティングは体力に関係無く、誰でも容易にできるショットであり、練習による条件反射の強化も一番易しい」という趣旨で、パッティングの練習の重要性を説いている。

 ゴルフ全般にわたっていろんな理論があり、素人ゴルファーを迷わせる結果となっているが、パッティングに関しては特に理論じみたものはない。千差万別、各人各様、その人の最もやり易い方法を使えば良い。ただ、繰り返し練習して自分の形を作り上げ、それを実践で再現できるように“条件反射の強化”に努める以外に方法はない。練習をするにも、場所を選ばない。自宅の部屋の中でも、練習のスペースが確保でできるし、やる気になれば何時でも何処でもやれるのがパッチングである。

 何はともあれ、練習しかない!と分かっているけど実践できないのがパッティングだ  
          
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「ゴルフの科学」
の教え

群馬大学名誉教授、工学博士で生態情報科学(大脳生理学、電子工学、心理学などの学際領域)を専門とされていた畔上道雄という科学者が「ゴルフの科学」という本を出されている。

 数年前に、その一部を読んで興味を持っていたが、その後機会もなく時が経ってしまった。最近、その本を書店で発見して、ようやく通読することが出来た。素人ゴルファーにとっては、非常に得るものが多い「ゴルフ レッスン書」である。

 多くの素人ゴルファーが、トッププロのスイング写真を見て、またはトッププロの書いた「レッスン書」を読んで、自らの技術向上に努めているが、小生は些か疑問を抱いていた。体格・体力も、練習量も全く違うプロと同じことをやろうと夢見ても、容易なことではない。美しいフォームが、飛距離を伸ばし、好スコアに繋がると考えている素人が多い。それも間違いではないが、それが総てでもない。

 小生は、教科書的でない個性的なフォームながら、トッププロの地位を保っているプロのスイングにこそ学ぶべきことが多いと考えており、それをヒントにすることが多い。教科書の理想的なスウイングはなかなか出来ないが、個性派プロのスウイングのなかには、その人の体質、体力に応じて容易に真似られる型が発見出来るからである。ただ、歳を重ねるにつれ、体力も体質も変化することを十分に認識しておくことも重要で、その結果参考にするプロのサンプルも違ってくるようだ。

 「ゴルフの科学」は、このような疑問を多く抱えていた小生に多くの回答を与えてくれた。その幾つかを簡潔にメモしておくことにしよう。<残念ながら、実際は、練習の時も実践の時も頭から消え去っているのが実態である>

1)    クラブは軽い方がよい!

・クラブヘッドがボールに当たった時の「運動量保存の法則」から、次の事は明瞭

*クラブヘッドの質量が大きいほどボールの初速も大きくなるが、その影響度は非常に小さい。例えば、質量が10%(バランスにして8の差)増えてもボール初速は1%しか増えない。

*一方、衝突時のクラブヘッドの速度はボールの初速に比例する。

*ボールの飛距離は速度の二乗に比例する。

ゴルフの生命はコントロールであり、クラブは軽いほどコントロールし易い。また、素人は軽いクラブほど早く振れることも事実である。


クラブの速度をあげる重要なポイントは手首のコックのため(プロは230度、初心者は170度)であり、手首のコックを解く動作でボールを打つ。 

2)      クラブのバランス:ドライバーは小さいほうがよい!

クラブの重さより、そのバランスがより大切。バランスの小さい(弱い)クラブが取り扱い易い。

バランスの同じ二つのクラブでは、重心がヘッドよりにある、即ち全重量が軽いクラブがよい。

シャフトについては、「振りぬけていく良い感じ」が大切で、硬さや屈曲点がスイングに致命的な影響を与えないが、一般的には次の事がいえる。

*元調子より先調子が振りぬき易い。

*ドライバーはバランスが一番小さく(弱く)、PWは一番大きく(強く)という変化がよい。

3)    グリップはフックグリップがよい!

「右手はエンジン、左手は舵」−飛ばすのは右手、方向は左手。従って右手はパワーを十分にボールに伝えればよく、厳密に考えることはない。

左手は非常にデリケート。少しの狂いが大幅なショットの狂いにつながる。

左手のフックグリップは、振り下ろした時の手首の返しが自然に出来る。人間の自然の要求と合致している。プロの多くもフックグリップが実態である。

打ったボールのフック、スライスはグリップよりも打ち方による場合が多い。

4)    アドレスはスイングの始まり!

アドレスに関しては教訓が多すぎる。基本的な1,2に留め、次のスイングを妨害いないこと。アドレスはスイングの始まりである。

出来るだけ簡単で自然なのがよい。僅かのパルス電流が短時間流れただけでアドレスがきまるのが理想的である。アドレス中も打つことに関心が向けられているべき。

ボールの位置はプロでもまちまち、絶対的なものはない。次の点に気をつけて、後は自分のショットがやり易いように、またボールを打つことに集中できるよう心がければ良い。

*ウッドとロングアイアンは、ボール位置は左足のつま先より少し右

*アイアンは、ボール位置は両足爪先の中央

5)     インパクトは条件反射!

インパクトの時、クラブフェースとボールがくっついている時間は平均で約十万分の5秒、距離にして約2cmである。この間で、その後のボールの行方が総て決まってしまう。

スポーツにおける体の動きは、反射と条件反射の占める割合が圧倒的に大きい。特にゴルフは条件反射が支配的である。従い、繰り返し条件刺激(練習)を行い、条件反射の強化を行うことが大事である。条件刺激には目に入るボールの他に多くのものがあるので、条件反射の汎化(条件刺激の多様化への対応)・分化(より厳しい狭い条件への絞り込み)が非常に重要である。

インパクトの瞬間の最良の心の状態は無心である。クラブヘッドをボールに当てるというただ一つのことに集中すること。

目がどのぐらい長く、どのぐらいしっかりとボールを見ているかで、その人のゴルフの腕前はわかる。

6)     ボールは柔らかいほうが良い!

一般の素人は硬度80(柔かい)のボールで十分。硬いボールはミスショットが起こり易い。ボールは柔らかいほどスウィートスポットを外した時のぶれが少ない

柔らかいボールは傷つきにくく、耐久性がある。「柳に雪折れなし」に合致。


硬いボールほどスピンがかかり、グリーン上でも芝目の影響を受け難いが、近距離での寄せはボールを打つ力も弱くスピンはかからないし、グリーン上はボールへの慣れの影響度が大きい。

ボールはメーカーによって、さらに同じ種類のものでもバラツキが大きい。コースで使うボールを決めておいて、練習でも大差のないものを使うことがよい。

ボールの温度差の影響は大きいものではない。

7)     バックスイングは緩から急への滑らかな変化!

プロのスイングは、初めはゆっくりであるが途中(トップスイング)から速くなり、スイング全体では素人よりかなり速い。プロは体中を動かしてその動きの一部としてクラブを振り上げるので時間がかかる。初心者は体を動かさず、手の先だけでクラブを上げるから、短い時間で終わる。

スイングの平面は存在しないし、クラブヘッドの軌道は円を描かない。(多くのレッスン書でこれに立脚した説が多いが)

バックスイングは右ななめ後ろへクラブを振り上げながら、体全体をゆっくり回していけば良い。肩を、または腰をどう回すかを考える必要はない。ただ、バックスイングで確実に動かないのは腰の中心である。<大城あかねプロ:軸は背骨など一本の棒を想定するのではなく、体の真中にある腰を中心に意識する>

・戸田藤一郎プロの「肩を回すな。肩をひねれ。右肩を後ろに開け。そうすれば、左肩は自然に入ってくる」を引用。<大城あかね:レッスン書に「テークバックは30cmほど真っ直ぐ後ろに引く」とあるが、スイングは円運動だから「真っ直ぐ」はありえない。グリップと肘、肩、胸(体)の間隔を変えずに、一緒に回転させるという意味>

ゴルフスイングは手首のコックで行う。コックはバックスイングの過程で自然に行われていく。肘を使ってはいけない。

バックスイングとダウンスイングが切れ目なく滑らかに繋がる為には、バックスイングを途中で止めようと意識するとよい。トップを作るという意識はいらない。

8)    ダウンスイングとフォロースルー

「始めは処女のごとく、終わりは脱兎の如し」のとおり、始めはゆっくりし、インパクトの間じかになると、一度にそのもてる全力をボールに叩きつける。

ダウン スイングは腰から始める。<腰の左方向へのスウェイから>

フォロー スルーは無理につくるな! インパクトの自然な結果であり、あくまでもインパクトで決まる方向へ自然のまま打ち抜いていく。両腕の折りたたまれていく過程がフォロー スルーであるし、空間に向かってクラブを放り出す姿勢が出来ることも必要である。

クラブヘッドの加速に効果的なスイングは、スピードの頂点をインパクト後、フォロースルーに求める振り方になっている方が良い。ただ「打ち抜く」という意識をしっかり持つこと。

左腕を伸ばすな! スイング全体を通じて、両腕は常に曲がっているのが本当である。腕が伸びきれば、筋肉の働きは死んでしまい力は入らない。ゴルフは徹底して伸筋のスポーツ、瞬発力のスポーツである。

9)    パット・アプローチ

パットこそゴルフの基本、プロは練習時間の8割はパッチングにあてる。スイングを正しく行うただ一つの方法は、条件反射の条件付けを繰り返し行って、これを強化することである。条件反射の形成・強化は簡単なものを先にやるとよい。この意味でパットの練習は最も大切(練習を繰り返し行う以外にない)である。毎日5分、10分でも絨毯の上で真っ直ぐ打つ練習をするとよい。

アプローチでは、バック スイングは小さく、振りぬきは長く大きい。そして、ダウン スイングは、ぴしっと鋭く打ち込むのが正しい。<大きい振りでゆっくりスイングするのは間違い>バック スイングは短であり、緩である。ダウン スイングからフォロー スルーは、緊張度としては急であり、タイミングとしては長い。

練習量の多いプロを除けば、アプローチは一種類でよい。使うクラブも種類の少ないほうがよい。大事なことは、条件反射の強化(練習)である。

バンカー ショットは単にアプローチを少しダフればよい。アプローチで形成された条件反射は、少し条件刺激が変わっただけでそのまま成り立つ。<青木功:ボールの真下をえぐりぬく感じがいい。打ち方はピッチ ショットの要領でよい>

バンカー ショットの秘訣は、砂の質を判断して打ち分けることにつきる。他のショットと同じように、結局、ライとの戦いである。

10) ゴルフはライとの勝負!

芝が適度な深さでその下の土が適度に固い時(日本の条件のいい時の状態)と、芝がかなり浅くてその下の土が湿っている時(雨季のFINNA GOLF(インドネシア)の状態)では、同じショットをしても結果はおおいに違う。前者は易しく、後者は難しい。ライが極端に悪い場合には、アプローチも7番アイアンあるいは5番アイアンを使うとよい。

・ゴルフのスイングの最大のポイントは、いかにしてジャスト ミートするかである。条件反射の汎か(条件刺激の多様化への対応)と、分化(より厳しい狭い条件への絞り込み)を押し詰めて、どんな場合でもジャスト ミートに近い当たりをすることである。<マット上での練習と芝の上ではライがおおいに違うことに注意>

横田プロのフック、
スライスの打ち方
1.フックの打ち方

 球の打ち出し方向(例えばグリーンの右端)にスタンスをとって、

クラブのフェイスのみ狙っている方向(例えばピン方向)に合わせ、

 そのままストレイトを打つつもりで打っていく

2.スライスの打ち方

 玉の打ち出し方向(例えばグリーンの左端)にスタンスをとって、

 クラブのフェイスのみ狙っている方向(例えばピン方向)に合わせ、

 そのままストレイトを打つつもりで打っていく


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