-花とコトバ-
レイ・ブラッドベリ 『たんぽぽのお酒』より


――芝刈り機や"手入れの要らない芝生"を勝手に購入されてしまった時のおじいちゃんの言葉。



茂みのライラックは蘭に勝るんじゃ。
またたんぽぽや芝類もしかり!

花

なぜ?なぜなら、こういうものがあるから、人はかがみこんで、しばらくすべての人たちや町のことは忘れて、汗をかき、大地と顔をつきあわせて、自分も鼻を持っていたことをふたたび思いだすんじゃよ。
カンパニュラ

そのようにして自分がすっかり自分だけのものになったとき、しばらくはほんとうの自分自身になる。

物ごとは、ひとりっきりで考えぬかないといけないんだ。
園芸は、哲学者になるにはいちばん手ごろな口実なんじゃよ。






前後、結構皮肉がこもっているのだけど、「近代合理主義を批判」のような嫌味な感じは全然無く、素直に 「じいちゃん良いこと言うなあ」と感じる。

誰かにとって良いことは、誰にでもいいとは限らない、ことにも気づく。

小指の先ほどのかたつむり





――原因不明の熱病で寝込むダクラスの枕もとで、屑屋のジョウナスさんが語りかける



「人によってはとても若いころから悲しい気持ちに沈んでしまうものなんだよ」


酔芙蓉  
「べつに特別の理由があるともおもえないのだけど、
ほとんどそんなふうに生まれついたみたいなんだ。

カンパニュラ


ひとよりも傷つきやすく、疲れがはやく、すぐ泣いて、いつまでも憶えていて、
わたしがいうように、世界中のだれよりも若くから悲しみを知ってしまうのさ。

わたしにはわかるのだけど、そういうわたしがその人間の一人でね。」



夾竹桃 そう言ったジョウナスさんは、ダグラスに

『夢を見るための緑の黄昏印、純粋な北方の空気』

の入った壜をあげる。






『たんぽぽのお酒』(DANDELION WINE)
レイ・ブラッドベリ
北山克彦訳/晶文社

12歳の少年ダクラスと、弟のトムに起こるひと夏の様々な出来事が綴られています。
最初はとっつきにくかったけれど、少しずつ読んでいくとギクリとするような、又は趣き深く美しい場面がちりばめられていて、貴重なものを読んだ、という心地になりました。

最後まで読んでみると最初はバラバラで意味不明だったパズルが、ひとつの大きな暖かい絵になったみたいだなあ、という気持ちになっていました。



2003.6〜7

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