-花とコトバ-

好きな詩と花・・・ 『三好達治詩集』 神保光太郎編/白凰社

草の上



野原に出て座っていると、

私はあなたを待っている。

それはさうではないのだが、


コスモス

たしかな約束でもしたやうに、

私はあなたを待つている。

それはさうではないのだが、


野原に出て座っていると、

私はあなたを待っている。

さうして日陰は移るのだが――



この後「かなかなはどこで泣いている?林のなかで、霧の中で-」 と長めに続きます。
彼女を待っている、約束はないけれど、こうして座っている−その情景が美しく、後半はいっきに加速して終わります。
意味をふかく考えるというより、うたうような言葉の流れが好きです。




かよわい花


かよわい花です

もろげな花です

はかない花の命です

昼顔


朝さく花の朝がほは

昼にはしぼんでしまひます

昼さく花の昼がほは

夕方しぼんでしまひます


みんな短い命です

けれども時間を守ります

さうしてさつさと帰ります



どこかへ帰つてしまひます




花は”時間を守ります” といわれると、変わってゆくことが怖くてあがいてしまう自分が、イサギ悪いと指摘されているような。
それでもやっぱり、ぐずぐすと中途半端にあがいてしまう。


・コスモスの写真加工はG−Tripさんのサイトを参考にさせていただきました。

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