ポーランド軍24時間戦闘糧食
SRG-4

       さて今回試食するのは、ポーランド軍24時間戦闘糧食『SRG-4』です。このが果たしてメニューナ
      ンバーなのか糧食名なのかは分かりませんが、OD色の細長い樹脂製パッケージフランス軍特殊部隊用戦闘
      糧食RLIC
に似ています。とは言え、あちらがフリーズドライ食品中心の軽量版だったのに対し、このSR
      G-4はずっしりとした重量感があり、なんだかとても頼もしそう。缶詰がメインなのかな?
       ポーランドという国やその食文化ついては、以前試食した同国のS-6で触れているので今回は説明を割愛
      しますが、あのS-6に溢れていた男くささというか不器用さが、非常に戦闘糧食らしい戦闘糧食でとても気
      に入ってたんですよね。そういう意味では、一日三食分をひとまとめにパッキングした今回のSRG-4も期
      待できそうかな?


       パッケージを開封すると、大小4つの缶詰を中心に、意外とたくさんの食品がどさっと出て参りました。
      塗装の缶詰
アルミ素材そのまんまの小袋がメタリックですが、どれも微妙にくすんだギラギラ加減で、まさ
      にポーランド軍戦闘糧食らしい“いぶし銀”だなあ。
       その他の食品類も概ね茶や白の地味系の色あいで、これもポーランドらしい質実剛健さですね。若々しい荒
      さのイタリア軍戦闘糧食
高度に洗練されたフランス軍戦闘糧食とは明らかに異なる、ツワモノのおっさんみ
      たいな渋み
を感じます。
       それにしてもこのSRG-4、細かいキャンディーや飲み物を含めると結構な品目数になるんだなあ。この
      紙箱は、折りたたみ式のストーブですね。固形燃料が12粒も入っていて、お湯を沸かしたり缶詰を温めるだ
      けでなく、ちょっと暖をとるのにも使えそう。


       またよく見ると、紙コップが4つも入っていますね。うーん、要るのかなあ、紙コップって・・・。個人用
      の戦闘糧食に入ってるのは初めて見ました。まあ重ねた紙コップの中に小物類が詰め込まれているので、スペ
      ースの無駄はないのですが、この微妙に方向性を間違えた不器用な気の利かせ方も、いかにもポーランド軍戦
      闘糧食ならではです。


       とりあえず一通り内容物を確認し、朝昼夕の三食分に分けましょう。封入されている説明書には、主な食品
      類がPOSIŁEK(食事)A~Cの3グループに分けて書いてありますが、これが朝昼夕のメニュー分けなのかな?
      しかしこうして見ると、恐らく朝食と思われるPOSIŁEK-Aのボリュームが凄い事になっているのですが。
       まあ朝食はたっぷりで夕食はごく軽く・・・というのは理にかなっていますし、まずはこの説明書の通りに
      食べてみる事にしましょう。



 



【内容】
1:Palpety w sosie warzywny野菜とミートボールの煮込み
2:Karkówka w sosie z warzywami野菜と豚肉の煮込み
3:Mielonka drobiow(チキンのパテ)
4:Konserwa tyrolska(豚肉のパテ)   5:ライ麦パン×2
6:クッキー×2   7:蜂蜜   8:いちごジャム
9:フリーズドライミックスフルーツ   10:シリアルバー
11:チョコレート   12:カトラリー
13:粉末ドリンク(ラズベリー)×3
14:粉末ドリンク(レモン)×2   15:折りたたみストーブ
                         16:アクセサリーパケット   17:ビニール袋(飲料水消毒用)


【アクセサリーパケット内容】
1:粉末コーヒー×2   2:ウェットティッシュ×3
3:塩×2   4:胡椒×2   5:キャンディー×6
6:板ガム   7:砂糖   8:浄水剤×6
9:トイレットペーパー   10:紙コップ×4
11:ビニール袋(チャック付き)×2   12:ビニール袋






【簡易ストーブキット】
1:折りたたみストーブ   2:固形燃料×12   3:取っ手
4:マッチ   5:防水マッチ   6:ビニール袋(ゴミ用)











       まずはPOSIŁEK-A、朝食です。しかしこうして見ても、朝食とは思えないボリュームだなあ・・・。とり
      あえずメインの缶詰を温めたいので、簡易ストーブキットを展開しましょう。
       切り込みの入った金属板の上下左右を折り曲げると、パッと見はチャチながらも意外としっかりしたストー
      ブ
の出来上がり。燃焼効率を上げる為のスリットも入っていて、妙にカッコイイ造形です。


       メイン缶であるPalpety w sosie warzywny(野菜とミートボールの煮込)をパッカンします。缶の中みっち
      みちに中身が詰め込まれていて、なんだか自衛隊戦闘糧食Ⅰ型の缶飯を思い出すなあ。
       火傷に気をつけつつ固形燃料に着火し、缶詰を火にかけます。うーん、今日はかなり風が強いので、固形燃
      料の炎が暴れ気味。煮込み料理の割には水分が殆ど無い様な・・・と思っていましたが、しばらくすると缶の
      内側からぶじゅぶじゅと汁気が噴き出して参りました。


       さて、このまま缶詰を加熱している間に付属のウェットティッシュで手を拭きますが、なんだか男子用トイ
      レの玉ころみたいな刺激臭
が漂い、これはちょっとゲンナリします。
       Koncentrat napoju herbacianego instant o smaku malinowym(ラズベリー風胃のインスタント濃縮飲料)は、以
      前試食したS-6に入っていたものと同じですね。熱帯魚のエサみたいなフレーク状の内容物を、説明書通り
      250mlの冷水で溶かすと、あっさりさっぱりなラズベリードリンクの出来上がり。無果汁のインチキくさ
      い粉末ドリンクの割には嫌味のない穏やかな味わいで、なかなかイケますね。ラズベリーというより、スイカ
      の様な爽やかな甘味
が特徴的です。


       続いては、PIECZYWO CHRUPKIE Ź YTNIE BEZ CUKRU(パリッとしたライ麦パン)を開封。中から
      は携帯を縦に長くしたサイズの薄いパンが、12枚出てきました。ウエハースの様にサクサクのフワフワで、
      噛むとペしゃっと潰れる実に頼りない口当たり。なんか乾いた泡の塊を食べてるみたいだなあ。
       しかしその味わいは穀物の持つ素材の風味そのもので、ほんの少し塩気が効いていて意外と食べやすいです。
      最初はこのやる気の無いバルサ材みたいな歯応えに拍子抜けでしたが、これはこれで消化吸収がよく胃腸への
      負担も軽そう。


       Miód(はちみつ)のパックを開封。うーん、半分固まっています。付属の小さなスプーンで一口掬って食べ
      てみると、ざらざら感の強いワイルドな口当たり。ジャリジャリした食感がちょっとアレですが、ほんのり塩
      味のライ麦パンとの相性がなかなか。うん、けっこう美味しいなあ。
       ここでメイン缶が湯気をあげながら沸騰してきたので、説明書の通りに慎重に中身をかき混ぜます。おお、
      よく見ると固形燃料が燃え尽きる寸前。しっかり中まで温めたいので、もう一個燃料を追加しておきましょう。


       小さい方の缶詰はMielonka drobiowa(チキンの昼食)。へ?昼食?という事は、これって朝食じゃなかっ
      たの?まあいいかと思いつつふたをパッカンすると、中身はS-6に封入されていたポークパテそっくり。
      ちらの方が明るく淡い色合いで、なるほどこれは鶏肉っぽいですね。
       一口掬って食べてみると、なるほど確かに鶏肉の味です。蒸し鶏の脂肪のないところを丁寧にほぐして、塩
      味を効かせた感じでしょうか。
       鶏肉独特の臭みは殆ど感じられず、食べやすいですね。鶏肉の繊維っぽさも結構残っていて、穏やかながら
      もしっかりした鶏肉の旨味
柔らかな塩味が、軽快な歯ごたえのライ麦パンとよく合います。さしずめシーチ
      キンの陸上版、グランドチキンとでも呼ぶべきでしょうか。いや、普通にチキン缶でいいのか・・・。


       さて、そろそろ火にかけていたメイン缶がしっかり温まって参りました。2個目の固形燃料も燃焼終了です
      し、さっそく頂くとしましょう。
       ちなみにこの簡易ストーブキットには缶詰用の取っ手が同封されていて、ただの細長い金属板をくりっと曲
      げると、実に使いやすい取っ手になるのが驚きです。缶詰自体かなり重いですが、持ってもほとんどぐらつき
      ませんし、これはよく出来ているなあ。感心しつつ、まずはミートボールを一口。
       うわっ!熱っ!直火でグツグツ煮込んだので、めちゃくちゃ熱くなっていました。ミートボールはピンポン
      玉 サイズのものが4つ
入っていて、かなりのボリューム。その隙間を埋めるようにジャガイモニンジン
      ダイスカットが詰め込まれていて、見た目以上の食べごたえがありますね。


       ミートボールは意外とフワフワの口当たりで、僅かに豚肉っぽいくさみがありますが、濃厚なのに優しい味
      わい
でイケるなあ。クリーミー塩味とでも言えばいいでしょうか。屈強の兵士達もこれを食べる時だけは穏や
      かな笑顔になりそうな、母性的でホッとするマザコン風味。直火調理のお陰でソースがいい塩梅に煮詰まって、
      ぐっとコクを増した芯のある味わいになっています。
       ただ、この味だけでひと缶食べ切るのは、やや単調かな・・・。という訳で付属の黒胡椒をかけてみると、
      おお!これは美味い!
先程までとろりと柔らかな味わいだった煮込み料理が、黒胡椒の香りと辛味でぎゅっと
      引き締まりました。


       よく見ると、缶の底には直火ならではのおこげが出来ていて、これをこそげ取りつつスープに溶かすと
      ばしさでより一層風味が引き立ちます
。いやあこれは、米軍や自衛隊の加水式加熱剤では決して味わう事が出
      来ない、直火調理ならではの醍醐味ですね!あれはあれで水を入れるだけで簡単に糧食を加熱してくれるスグ
      レモノですが、やはりこの直火ならではの味わいというか熱さが、なんとも嬉しく感じます。
       またこうして外で、炎で温めた缶詰にスプーンを突っ込んで食べていると、訳もなくワイルドな気分になり
      ます。意図した演出でも何でもないんでしょうけど、これぞ戦闘糧食!という雰囲気が楽しめました。


       最後はKofikと書かれたキャンディー。黒い豆のイラストが描かれているのでコーヒー味なのだと思われま
      すが、口に入れてみると黒蜜を焦がしたようなキツい味・・・。確かにコーヒーっぽくはありますが、質の高
      い力強さを堪能できた食事
の後では、このわざとらしさにちょっと白けてしまいます。これなら氷砂糖でも入
      れておく方がよかった様な・・・。まあキャンディーは3種類あるので、これは私の組み合わせミスだったか
      もしれません。
       朝食としては異様にボリュームあり過ぎというか濃厚過ぎましたが、説明書のメニュー分けに捉われず、独
      自に食品を組み合わせた方がよかったかも。とは言え、それぞれの味のバランスも素晴らしいものがありまし
      たし、非常に満足度の高い高い朝食でありました。




       続いてはPOSIŁEK-B、昼食です。まずはメインのKarkówka w sosie z warzywami(野菜と豚肉の煮込み)を
      開封。直径100mm、高さ45mmという戦車砲弾を輪切りにした様なサイズなので、これひと缶だけでも
      相当なボリュームがありそう。EO式のフタをパッカンすると、水分がほとんど無く中身がみちみちに詰まっ
      た内容です。


        とりあえずこの缶詰を説明書の通りに固形燃料で温める訳ですが、昼前から急に強くなった風の所為で
       火させたマッチが2秒と持たずに消えてしまい、なかなか固形燃料に点火できません。アワアワしているう
       ちに付属のマッチは残り数本になってしまいした。
        まあ缶詰なので、最悪温めずこのまま食べる事は出来ますが、見るからに脂っこそうなこれを、冷えた状
       態で一缶食べるとかちょっと勘弁
だなあ・・・。体を盾にして必死に火種を守りますが、前後左右から間断
       なく吹きつける強風は、かよわいマッチの火を容赦なく消し飛ばしてしまいます。さてどうしたものやら。


        あ、そう言えば着火剤を増量した防水マッチが封入されていましたね。とは言え、それも3本しかありま
       せん。残り少ないマッチで確実に着火すべく、まずは折りたたみストーブの中央に丸めたティッシュを置き、
       その周囲に火の消えたマッチの軸でキャンプファイヤー風のやぐらを組みたてます。
        この時点で組み上げたマッチの軸が風で飛ばされそうになりましたが、風が止まった一瞬の隙をついて
       んとか丸めたティッシュに着火成功
。周囲に組んだマッチ棒に火が移った所で、素早く固形燃料を投下しま
       す。かなりヒヤヒヤしましたが、燃え上がる固形燃料の上に缶詰をセットし、これでどうにか一安心。


       お次はMIESZANKA OWOCÓW LIOFILIZOWANYCH(フリーズドライミックスフルーツ)を開封。シエラ
      カップにあけると、カラカラに乾いた果物粒がざらざらと出て参りました。これをお湯または水で戻す訳です
      が、パッケージを見ても水の量が書かれていません。とりあえず、袋の1/3位の水を適当に入れておきまし
      ょう。


       で、しばらくして出来あがったのがこれ。水が多かったのか若干だぶついていますが、どこかアナトミーな
      ワインレッドが実に美味しそう
。まずは一口頂いてみます。
       うぐぐ、これはまた強烈な酸味ですね。僅かな甘味もありますが、ここまで思い切って酸っぱいとは驚き
      す。眠い時に食べると一発で目が覚めそうなレベルですが、それでも果物らしいフルーティーでジューシーな
      酸味
なので、結構イケますよ。


       入っているのはイチゴ、クランベリー、ぶどう、あとこの白いのは洋梨かな?とにかく酸っぱいの一言に尽
      きますが、それぞれに異なる味わいと食感がちゃんと残っている所は、流石にフリーズドライ食品。
       とは言え、この畳みかけてくる酸っぱさはキツイので、Koncentrat napoju herbacianego instant o smaku
       cytrynawym
(レモン風味のインスタント茶飲料)を作ります。薄茶色い顆粒を250mlの冷水で溶かすと、
      妙にニセモノ臭い駄菓子屋テイストのレモンティーの出来上がり。米軍MREのそれなりに美味しい粉末レモ
      ンティーに比べると、随分とオモチャっぽいというか物足りない味であります。


       ここでふと思いつき、先程のミックスフルーツをレモンティーに混ぜてティーパンチ風にしてみると、おお、
      これは美味しい!
ミックスフルーツの過激な酸味がレモンティーで和らぐと同時に、レモンティーののっぺり
      した味
が引き締まり、お前ら宇宙鉄人キョーダインかよ!と突っ込みたくなる見事なマリアージュ。酸味のお
      陰かレモンティーらしいほのかな渋みも表に出て来て、最初からこうして飲めばよかったんだなあ。
       おっと、最初に点火した固形燃料が燃え尽きかけています。炎が強風で右に左に煽られるので、一つだけで
      は足りなさそう。この火を絶やすと再点火は絶望的なので、慌てて固形燃料を追加します。
       缶のフチあたりは少し沸騰し始めているので、一旦中身をほぐしてかき混ぜて・・・と思いましたが、この
      でかい缶詰の9割近くが巨大な豚肉の塊
なので、ちょっと難しいなあ。しっかり温まるまで結構時間がかかり
      そうです。


       続いてはSUCHARY SPECJALNE(スペシャルクッキー)。これはS-6に入っていたものと同じですね。
      確かリトアニア軍の糧食にも入っていたので、食べるのはこれで3度目。乾パンを更に固く素っ気無くした感
      じ
ですが、ほんのりした甘さとキャラウェイシードのスースー感がなかなか。やけに分厚く噛みごたえもある
      ので、軽量ながらも食べた以上の満腹感を得られる戦闘糧食向きの一品です。


       うあああああ、更に風が強くなってきました。スプーンや空パッケージどころか、油断すると飲み物やクッ
      キーまでもが風に持って行かれそう。気がつくと紙コップの中に細かい枯葉の屑が浮いていますが、まあ兵隊
      
さんの糧食です。細かい事は気にするな!
       固形燃料を追加している間に、Czekolada gorzka(ビタースイートチョコレート)を半分頂きます。戦闘糧
      食にありがちなプラスチック板の如きハードタイプではなく、もっくりとした歯ごたえの柔らかいミルクチョ
      コ
。甘さ控えめでカカオの香りも高く、結構美味しいなあ。酸味の効いたティーパンチとの相性も上々で、
      きつける強風にめげそうになっている私を勇気づけてくれる味わい
です。


       さて、そろそろメイン缶が温まって参りました。中の肉塊は上下を入れ替える途中でいくつかに割れてしま
      ったので、見た目はお肉たっぷりのシチューの様でとても美味しそう。さっそく頂きましょう。
       おおおおお、これは美味い!巨大な豚肉の塊から溶けだしたまろやかな脂肪の旨味が、ごく控えめな塩胡椒
      に引き立てられて実に見事な味わいになっています。とにかく缶の殆どが豚肉の塊なので、この旨味の塊が口
      の中で雪崩を起こしている様な豪快さ
がたまりません。
       味付けはごくごくシンプルですが、これだけ脂っこい豚肉の塊を一切の臭みも無く食べさせるという事は、
      素人の舌では感じ取れない様な香辛料隠し味が使われているんでしょう。


       それにしても、頬張る程についニヤケてしまう様な、実に食べごたえのある美味しさです。味付けの秀逸さ
      もさることながら、やはりこの肉の塊を直火で温めて、ガツガツ喰らいつく高揚感が素晴らしい!この日は自
      転車での山越え谷越えでかなり疲労した状態で試食に臨んだのですが、食べた瞬間から全身にエネルギーが沁
      みわたって行くこの感覚
。まさしく戦う兵士の為の糧食!といった感じです。
       入っている野菜はキドニービーンズニンジン、白いんげん豆、セロリ。巨大な肉塊にかろうじてひっつい
      ている・・・という風情ですが、それぞれ豚肉の旨味を全身に浴びるように吸いこんでいて、これも驚く程の
      美味。
       また、缶の底に当たる豚肉が、直火と溶けだした脂肪に焼かれてチャーシューみたいになっているのも感動
      ものの美味しさです。こうなるともう、缶詰を温めると言うよりステーキを焼く感覚ですね。ほっこりと煮込
      まれた部分とカリッと焼き上げられた部分の両方を一気に楽しめる、筆舌に尽くしがたい美味であります。


       ここのところフリーズドライやレトルトの戦闘糧食の便利さ味の良さに慣れ切っていましたが、やはりこ
      ういった肉の塊の存在感脂肪の焼けた風味という点において、缶詰&直火もまだまだ捨てたもんじゃない
      すね。
       固形燃料による加熱方式も、火を扱う危険性や気象条件に左右されやすい面倒さばかりが目立っていました
      が、この脂肪でパリパリに焼けた豚肉の味を知ってしまうと、ただレトルトを加熱剤で温めるだけの食事が急
      に味気ないものに思えてきます。
       もちろん使用状況によって一長一短はありますが、缶詰&固形燃料ならではの食の快楽というものも、戦場
      では決してバカに出来ないと思いました。
       いやあ、ほんと美味かったです。終始吹きつける強風に悩まされた食事だったので、1000kcal摂取
      する為に800kcalぐらい体力を使ってしまった様な本末転倒な疲労感
もないではなかったですが、風の
      弱い条件下だったらもっと楽しめただろうなあ。そういう意味では、兵隊さんはメシひとつ食うのも命懸けの
      仕事であり戦い
なのだと痛感させられました。


       おっと、最後に残っていたROXiESというキャンディーを忘れる所でした。まるで昔銭湯で飲んだフルー
      ツ牛乳の様な懐かしい風味
がいい感じ。安っぽいながらも、最後にホッとする味わいでした。


       朝食に引き続き、強風が吹きつける野外での試食となりましたが、それだけに厳しい気象条件を克服して疲
      弊した兵士の気力体力を保証する戦闘糧食の醍醐味
を味わえた、実に得難い経験でした。普段は仕事場で昼食
      として試食する事が多いのですが、やっぱりこうして半日フルに体を動かして外で食べてこそ、実感できたり
      発見できる事もあるんでしょう。
       ちなみに朝食の缶詰を温める際に2個使用した固形燃料ですが、昼食では5個も使用する羽目になりました。
      最初固形燃料が12粒も入っているのを見て、半分あれば十分だろうとタカをくくっていたのですが、やはり
      燃料には十分な余裕があった方が安心ですね。経験を積んだベテラン山男のアドバイスは聞くものだ・・・と、
      痛感させられた昼食でありました。    




       さて、夕食の前におやつを頂きます。用意したのはCzekolada gorzka(ビタースィートチョコレート)の残
      り半分と、Koncentrat napoju herbacianego instant o smaku cytrynawym(レモン風味のインスタント茶飲料)、
      そしてKoncentrat napoju herbacianego instant o smaku malinowym(ラズベリー風味のインスタント濃縮飲料)。
      あとROXiESというキャンディーと板ガム


       飲み物2品とチョコレート、キャンディーに関しては、朝食と昼食で同じものを食べましたが、ふと思いつ
      いて2種類の飲み物を混ぜてみると、なんだかフレーバーティーっぽくなってちょっと得した気分です。同じ
      分量で混ぜても、あっさりしている方の紅茶の風味が勝っているのが意外でした。
       3枚入っていた板ガムは、シンプルな甘いミントフレーバー。何と言うかおっさんの味がする古臭いミント
      ガム
で、今時のすっきり洗練されたミントガムとは一線を画しているのがイイ感じ。安物なので噛んでいると
      すぐに味が抜けてしまいましたが、そうそう、昔のガムってこんな感じだったなあ・・・と、変な感慨にひた
      る事が出来ました。




       最後はPOSIŁEK(食事)A、夕食です。Koncentrat napoju herbacianego instant o smaku malinowym(ラズベ
      リー風味のインスタント濃縮飲料)を若干薄めに作ってみると、さっぱりした味わいがより一層軽やかになり、
      私的にはこちらの方が好みかな。飲むと胃粘膜にすーっと染みて行くような、穏やかで優しい味わいが実にい
      い塩梅です。


       続いては、こちらも朝食べたものと同じPIECZYWO CHRUPKIE Ź YTNIE BEZ CUKRU(パリッとした
      ライ麦パン)。見た目はかなり大きいですがごく軽い口当たりで、パリパリサクサクした食感が面白いなあ。
      とは言え食べごたえは無いに等しいので、さすがにボリューム的に物足りないなあ・・・。
       また、生地自体がウエハースに近く、噛み砕いた小片が口の中のあちこちにべたべたとひっつきます。食べ
      づらいと言えばその通りですが、飲み物類が充実しているので大した問題ではありません。それよりもこの、
      繊維質が豊富そうな素朴な風味がいいですね。


       ここでメイン缶のKonserwa tyrolskaを開封。直訳すると『チロルのメンテナンス』と出たので何の事やら
      さっぱりでしたが、中身はいわゆる豚肉のパテ。おお、これは美味しそう。以前試食した一食分のS-6に入
      っていたポークパテも素晴らしい味でしたし、これも期待できそうですよ。


       一口ナイフで削って食べてみると、おお、美味い!はっきりした塩味が豚肉独特の甘さを引き立てて、めち
      ゃくちゃ美味しいランチョンミート缶
みたいになっています。荒挽きなので豚肉の食感がしっかりと残ってい
      て、質の高さを感じさせます。
       中身のフチにはぷるぷるのゼラチン質が纏わりついていて、豚肉の旨味を濃縮した極上の味わいが堪りませ
      ん。凄く荒々しいのに気品を感じるというか、一見して相反しそうな要素が極めて高い次元でバランスを保っ
      ている
感じです。


       丸いパッケージはDźem truskawkowy(イチゴジャム)。透明感のある色合いが綺麗だなあ。かなり甘くは
      ありますが、ちゃんとイチゴらしい味がしますし、疲労を覚えない程度の甘さがいい感じです。メインのポー
      クパテの塩気を引き立てると言う意味でも、なかなか秀逸な組みあわせと言えます。


       締め括りはBaton zboźowy-owocowy o smaku źurawinowym(クランベリー風味のフルーティーなシリアルバ
      ー)。開封すると、以前オランダ軍戦闘糧食ROEKで食べたのと同じ平べったいシリアルバーが出てきました。
      いや、オランダ軍のは1㎝幅に最初からカットされていましたが、こちらは一枚の板状のままです。これ美味
      しかったんですよね。思わぬお宝を拾った気分で、まずは一口。
       うん、確かにクランベリー風味ながらも、レーズンイチヂクを混ぜた様なこの味わい。美味しいなあ。
      酸っぱく優しい味わいが、速やかな疲労回復とエネルギー補給を保障してくれる感じです。かなりみっしりと
      押し固めた食感ですが、その割には食べやすく満腹感もありそう。


       似た味わいのラズベリードリンクよりも、付属のコーヒーの方がよく合うと思います。決して華やかな味で
      はありませんが、胃腸にじんわりと栄養が染み込み、肝臓を経由してすみやかに体中にエネルギーが回ってい
      くこの感じ・・・実に戦闘糧食向けのエナジーバーだと言えるでしょう。
       最初はちょっとボリューム的に寂しいかな・・・と思った夕食でしたが、缶詰はまるごとお肉でしたしシリ
      アルバーは食べごたえがありましたし、味を含めて予想以上の満足感がありました。いや美味かったなあ。



       以上でポーランド軍戦闘糧食SRG-4の試食を終わります。以前試食した寡黙な登山家みたいだったS-
      6
と比べると、けっこう気がきく様になって丸くなったというか、いい意味で少しずつ世慣れてきた感じがあ
      りました。
       とは言え、全体に漂う質実剛健パワー重視な印象は健在ですし、必要性が微妙な紙コップを4つも入れて
      いた所なんかは、その精一杯の気遣いがどこかトンチンカンな方向へ向かっていたS-6そのまんま。不器用
      で媚びないけれど、どこか的を外した温かみが妙に微笑ましい・・・
。もしかしたらこれは、ポーランド人の
      国民性
が反映されているのかもしれません。
       食品の一つ一つに骨太さが感じられ、兵隊さんの体力の維持に何が必要なのかをストイックに考えていると
      いう意味では、やはりポーランド軍の戦闘糧食はブレてないというか、もっとも戦闘糧食らしい戦闘糧食なの
      だと思いました。
       どれだけギアが発達し、どれだけ正確な気象情報を得る事が出来ても、8000m級の山々の頂を征服して
      きたのは結局は血の通った人間の手足であり頭脳であり、そして勇気である・・・
というような、戦闘糧食の
      本質
が最も純粋に味わえるポーランド軍戦闘糧食。最後まで堪能させて頂きました。




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