煮込みハンバーグ
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さて今回は、自衛隊非常用糧食『煮込みハンバーグ』です。T型缶詰の味付ハンバーグ、U型無印版のハン
バーグ、U型改善版のハヤシハンバーグと、長年にわたって自衛隊戦闘糧食史の中で燦然と輝き続けてきた由
緒正しいハンバーグ。よくよく考えてみれば、U型無印版から採用されたカレーよりも古い歴史を持つメニュ
ーなんですね。
ちなみに非常用糧食にはもう一つ『すき焼きハンバーグ』があるので、全20メニューのうちハンバーグが
2枠も取っています。カレーが1枠しかない所を見ると、陸自の人達ってカレーよりもハンバーグの方が好き
なんだなあ(子供の分析かよ)。いやいやいや、よく考えたら『かつおカレー煮』がありましたが、果たして
あれをカレー枠に含めていいものかどうか。うーん・・・。
ちなみにT型の缶詰味付ハンバーグは某小説中で「ドッグフードの味がする」と非常に正確に酷評されてい
ましたが(笑)、モデルチェンジを重ねる度にどんどん美味しくなっている自衛隊戦闘糧食のハンバーグです。
最新版の今回も大いに期待したいですね。
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まずはしっかりと温めた煮込みハンバーグから行ってみましょう。ワクワクしつつ開封すると、おお、これ
はでかい!長径120mm×短径90mm、厚さ20mmという実に堂々たるボリュームです。ソースを含め
て170gなので、ハンバーグ自体の重量は160gぐらいかな?なんかもっとありそうに見えますね。
ソースを一口味見。ほほう、ケチャップとウスターソース、少量の黒砂糖を合わせて肉汁で濃度を調節した
ような、一昔前の家庭のごちそうだったハンバーグのソースの様な味わいです。
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ハンバーグ自体は柔らかく、頼りなげな先割れスプーンでも簡単に切り取れます。一口食べてみると、うん、
なかなか美味しいですよ。イシイのハンバーグをぐっと大人向けにした様な、脂肪分は少ないながらも決して
スカスカではない、しっとりと舌に馴染む挽肉の旨味が感じられます。流石に肉汁たっぷりという訳にはいき
ませんが、ソースの甘酸っぱさが唾液の分泌を促し、食べづらさはありません。
若干のレトルト臭さというか加工肉っぽいクセはありますが、こういう作り物っぽさは個人的に嫌いじゃな
いなあ。ソースには赤い透明な脂肪滴がたくさん浮いていますが、ハンバーグ自体の脂肪分は少なく、しっか
り煮込まれたお陰か柔らかめの鶏つくねみたいな食感。これなら冷えた状態でも美味しく頂けそうです。
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とりあえず挽き肉を固めておけばハンバーグみたいなもんだろう!というノリだったT型味付ハンバーグ、
醤油味で強引に日本人の舌に合わせたU型無印版のハンバーグ、突然垢抜けた洋食風味のU型改善版のハヤシ
ハンバーグを経て、非常用糧食では昭和の高度成長期の様な懐かしい味わいを演出して来たんでしょうか。こ
れはなかなか興味深い自衛隊ハンバーグ変遷史だなあ。
とは言え、私は高度成長期を知らない世代なのですが、原体験が無いはずなのに遺伝子の中に刷り込まれて
いる当時の風景や空気を感じさせるような、不思議な味わいであります。
若い隊員さんにとっては新鮮で、程々に年をとった隊員さんには奇妙な懐かしさを、そしていよいよ定年が
見えてきたお年頃の隊員さんにとっては実体験を伴ったリアルな懐かしさを感じさせる味。見る人の立ち位置
によって微妙に形を変える、ブロッケン現象の様な一品だと言えるでしょう。
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一世代前のU型改善版のハヤシハンバーグは小ぶりのハンバーグと炭火焼きチキンがそれぞれの味を競って
いましたが、非常用糧食はでかいハンバーグ一品で勝負をかけている潔さがいいなあ。このぶ厚い挽肉の塊に、
昭和の高度成長期の膨張感を重ね合わせているのかもしれません。こうして白飯とドライカレーの上にハンバ
ーグを乗せてみると、その重量感が一層際立つ気がします。
それにしてもこの不思議に懐かしい味わい、白飯とのマッチングが最高ですね。普段は自己主張をしない控
えめな白飯君も、まるで懐かしい旧友に出会えたかの様な嬉しそうな表情を見せています。
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もう一品の主食はドライカレーですが、こちらはピリリと効かせたスパイスで、ハンバーグのぶ厚い旨味を
引き締めています。久しぶり!懐かしい!元気だった?とはしゃいでいる白飯君を温かく見守りながらも、抜
け目なく周囲を警戒している様なクールさを感じますね。
美味い美味いとハンバーグをパクつく隊員さんに対して、『油断するなよ』とさりげなく注意している様な
ドライカレー君。なんかカッコイイなあ。その姿こそ真っ黄色ですが、戦隊もので青を担当しそうなキャラク
ターです。
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いやあ、実によく出来た煮込みハンバーグでした。U型改善版で一気に洗練されたハヤシハンバーグに続い
た割には、どこかダサさというか野暮ったさを感じさせる味わいでしたが、ハンバーグそのものの、おかずと
しての食べ応えでは歴代ハンバーグ最強と言っても過言ではないでしょう。
それにしても、バカボンのママの様な味わいの鶏肉とひじき煮、長屋住まいの番長みたいなさんまピリカラ、
高度成長期の膨張感を感じさせる煮込みハンバーグ・・・非常用糧食になって以来、微妙に三丁目の夕日テイ
ストというか、昭和の味わいに回帰し始めたような気がしますね、自衛隊戦闘糧食。いや、単に私がおっさん
臭くなってきただけか・・・。
そういう意味では微妙に不安を覚えるというか、他の人の試食レビューをぜひ見てみたい一品でした。
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