すき焼きハンバーグ


       さて今回は、自衛隊非常用糧食『すき焼きハンバーグ』です。それにしてもすき焼きハンバーグとは、随
      分と男の子というか力技な組み合わせですね。今回は白飯×2の他に丸かじりチキンも入っていて、相当な肉
      食系
。脂っこいものが苦手になってきたベテラン陸曹よりも若手の曹士に人気が出そうなメニューだなあ。

       アルミ製のパッケ―ジを開封すると、あれ?レトルトのご飯ではなくU型改善版に入っていたトレーご飯
      出てきました。レトルト方式だったりトレー方式だったりと、主食の形態は統一されていない模様ですね。
       2つ入っている副食のレトルトは、それぞれタンカラー。自衛隊の戦闘糧食らしくないというか、なん
      だか米軍のMREっぽい
なあ。とりあえず湯煎にかけて温めます。

       まずはメインのすき焼きハンバーグから。果たしてどんな内容なんだろう・・・とドキドキしつつ皿にあけ
      ると、おお、予想よりもボリュームのある迫力満点のハンバーグです。甘辛い醤油の香りがぷんと漂い、これ
      はかなり美味しそう。まずはハンバーグを一口です。
       ほほう、重量感の割にフワフワした食感の柔らかハンバーグですが、噛みしめるほどにじわっと染み出る
      肉の旨味
がちゃんとありますね。20mmを超す分厚さのお陰もあって、かなりの食べ応えを誇ります。
       パテはもう少し固めの方が噛み応えがあって満足度が高い気がしますが、こちらの方が消化し易く胃腸への
      負担は少ない
のかも。

       いかにも日本人の舌に馴染みそうな甘辛醤油味がご飯にばっちりですが、これをすき焼きというのは、ちょ
      っと無理がある
気がするなあ。薄切り牛肉は十分な質と量を保っていますが、相方が白ネギではなくタマネギ
      
なので、すき焼きというよりも牛丼っぽい気がします。
       せめて白菜や糸こんにゃくの一切れでもあれば、もう少しすき焼きとしての説得力があると思いますが、う
      −ん、やっぱりこれは牛丼ハンバーグといった方が正確でしょうね。
       ただ、一部の地方ではすき焼きにタマネギを入れる所もありますし、とろとろに煮溶ける寸前のタマネギが
      持つ瑞々しい甘味
が牛丼によく合って、これはこれでかなり美味しいですよ。若干のレトルト臭はあるものの、
      相当なおかず力を感じさせる副食だと言えるでしょう。

       ちなみにトレイご飯に乗せてみると、こんな感じ。汁気がいい塩梅にご飯に染み込んでハンバーグとすき焼
      きの見た目が強調され、これは美味しそうだなあ。
       あと、何気なくハンバーグを裏返して見ると、ちゃんと網目の焼き跡がついていたのも高得点。見た目の美
      味しさ
にも十分気を配っていますね。なにぶん食べ始めてから気がついたので、おっさんの齧りかけ画像をア
      ップするのも憚られます(笑)。この食欲をそそる焼き目を披露出来ないのは残念ですが、また入手できる機
      会に恵まれれば、撮影しなおして画像を差し変えたいと思います。

       続いては、もう一方のレトルトである丸かじりチキンを開封。中から出て来たのは、ん?なんだか妙なシロ
      モノ
だなあ。てっきりU型改善版に入っていた炭火焼きチキン風のものを想像していたのですが、この鶏肉を
      覆っているフワフワしたものって・・・あ、もしかしてこれ、衣のついたフライドチキンなのかな?
       一口食べてみますが、うーん、このボソボソでもフワフワでもない不思議な口当たり・・・。確かにフライ
      ドチキンをレトルトの長期保存食にしたら、こんな感じになる気がします。KFCのフライドチキンを薄味に
      して、軽く蒸したらこれに近くなる
かな?

       正直少し物足りない味ですが、これはこれで美味しいかも。とはいえ、相棒のすき焼きハンバーグ君が甘い
      味わいで白飯君としっとり馴染んでいただけに、丸かじりチキン君にはもう少しスパイシーではっちゃけた味
      わいでいてほしかった
気がします。
       それでも、鶏肉の旨味を吸って湿った衣は白ご飯ともいい相性で、こうしてご飯と合体させても美味しいな
      あ。すき焼きハンバーグとともに、副食として十分な実力を発揮してくれています。

       2012年から採用された自衛隊の非常用糧食ですが、いやあ今回もかなり満足のいく味わいでした。U型
      改善版からは主食を、そして非常用糧食からは副食を大きくパワーアップさせた感があり、自衛隊の戦闘糧食
      もここ数年で飛躍的な進化を遂げた
と言えますね。
       ちなみにこのメニューを納入している兜髄富装からは、今回と同内容の保存食がミリメシとして市販され
      ています。こちらは加水式加熱剤もセットになっているので、万が一の際の備蓄食品としても便利そう。
       そういう意味では、官民双方を市場とした大量生産により、調達コストを大幅に下げる事が出来たが故の品
      質の向上
なのでしょう。
       その一方で、自衛隊ならではというレア物感が若干薄れ、私の様な面白半分の糧食マニアとしては微妙に複
      雑な心境
ではありますが、例え国防といえども予算の問題は決して無視できないので、こういう分野での官民
      一体
は歓迎すべきなのでしょう。

       それにしても、揚げものをそのまんまレトルトにしてしまうとは驚きました。海外の戦闘糧食では見た事が
      ありません。味も意外とイケましたし、何かと保守的にまとまりがちな自衛隊の装備品の中で新たな分野に真
      っ先に踏み込んだその心意気
だけでも、十分に評価したいところです。
       伝統革新をそれぞれの形で副食が表現し、その持ち味を安定した白飯が暖かく見守りながら下支えしてい
      る様な、自衛隊戦闘糧食の新たな一歩たる非常用糧食の顔と呼ぶにふさわしいメニューでありました。




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