新発田駐屯地開設63周年
第30普通科連隊創隊54周年記念行事

2016.05.15


       新潟県新発田市に所在する、新発田駐屯地の創立記念行事に行ってきました。新発田駐屯地は佐渡・粟島を
      含む新潟県北部の防衛警備・災害派遣
を担任し、第30普通科連隊を基幹として会計通信警務、駐屯地業
      務隊
新潟地方協力本部の各部隊が駐屯しています。明治初期に陸軍東京鎮台歩兵第8番大隊が新発田城跡に
      設置された事が始まりで、今も駐屯地の敷地内にお城があるということで微妙に有名とか。
       ちなみに今回の新発田駐屯地行き、私にとって第12旅団への初めての遠征となりました。新潟北部ですが、
      私の感覚的にはほとんど秋田の手前。第12旅団の中では大阪から最も遠く離れた、防衛警備区最北端&最東
      端
の駐屯地が一発目になるとは・・・。ここに比べれば群馬県の相馬原栃木県の宇都宮も、大した距離とは
      思えなくなくなりますね。
       当日早朝、車中泊地となった北陸自動車道黒埼PAを出発します。見事に晴れ上がった日本海東北自動車道
      をひた走り、聖籠新発田(せいろうしばた)という微妙に中二病くさい名前のICから一般道へ。しばらく走
      って、一般用臨時駐車場に指定された新発田カルチャーセンター駐車場に到着です。いかにも初夏の新潟らし
      い爽やかな風が吹いていて、気分がいいですねえ。

       しばらくしてやってきたシャトルバスに乗り込みますが、うーん、隊員さんの制服に輝く、地元第3師団で
      はまず見る事のない東部方面隊の部隊章が新鮮だなあ。
       0825、シャトルバスはスタート。静かな住宅街を縫う様に走り、新発田駐屯地の東門に到着です。やっ
      ぱり初めての駐屯地は気分が高揚しますね。既に沢山の人で賑わっていますが、新発田は一般客にも観閲壇席
      を用意してくれている
ので、一人位ならなんとかなるでしょう。

       手荷物検査のブースで少々時間を取られましたが、ようやく式典会場に到着。一般用観閲壇席にどうにか拠
      点を確保しましたが、会場右端か・・・。隊員さんによると訓練展示は左←右へと進行するそうなので、見ど
      ころとなる後半がここからでは遠いなあ・・・。
       試しに会場左側へ向かうと、観閲壇脇のロープ際にまだスペースが空いていました。観閲壇席よりも視点は
      低くなりますが、普通科を中核とした訓練展示を見るなら、終盤の展開が目の前になるこっちの方がよさそう。
      
 という訳で、素早く陣地転換。細長いグラウンドの向こうには、まるでプラモデルの様な新発田城がちんま
      りと収まっています。石垣も低いですし、オモチャみたいで可愛いなあ

       さて、さっそく駐屯地を歩いてみましょう。観閲壇のあちこちには『菖城魂』と書かれた紫の幟がはためい
      ていて、隊員さんに尋ねると
       「ああ、これは新発田城の名物である菖蒲からとった、駐屯地のキャッチフレーズなんですよ」
       との事。へー、菖蒲で有名なんですね。知りませんでした。

       正門の方へと歩いて行くと、屋台の方から焼きトウモロコシのいい匂いが漂ってきました。例によって朝食
      を抜いてきたので、吸い寄せられる様に早足で歩いて行くと、ここで突然
       「ええっ!?」
       という大声が。目の前にいたのは富山県のRSさんでした!一緒に来たSAA水兵さんは、駐車場からこち
      らに向かっているとの事。あとで『てへっ、実は新発田に来ていまーす』ってメールして驚かせようと、あえ
      て黙って来ていたのに・・・まさか二人とも来ていたとは(笑)。

       一旦拠点に戻り、二人でSAA水兵さんが来るのを待ちますが、こうなったらせめて彼だけでも驚かせてや
      ろう
と、私が来ている事は内緒にして、いつ隣にいる私に気づくかイタズラする事に。前フリとして移動中の
      SAA水兵さんに、いかにも大阪にいるふりをして嘘メールを送りますこれがいい歳したオッサンのやる事
      か・・・
とRSさんが呆れている様な気がしますが、まあ気にするな俺

       しばらくして、なにも知らないSAA水兵さんがやってきました(笑)。さりげなく隣に位置しますが、
      のままいつまでたっても気付かれないとお腹が減ってつらい
ので、早々にネタばらしメールを送信。振り向い
      たSAA水兵さんは、
       「いやあ、なんか似た人がいるな・・・って思ってたんですけど(笑)」
       後からメールして驚かせるつもりだったのに、まさか現地に来てるとは思いませんでしたと言うと、
       「それはこっちのセリフですよ・・・」
       そりゃそうか。しばしお互いの近況を報告しあった後、私は屋台に向かいます。まずは一回りして屋台広場
      の全容を把握。綿菓子焼きトウモロコシオムそば玉こんにゃくフライドポテトカレー。あと、なぜ
      か宇都宮焼きそば&餃子が出てますね。それ以外には、様々な自衛隊グッズのテントが出ています。

       これといって地域性を感じさせる屋台はありませんが、宇都宮以外の食べ物屋台は全て隊員さん達による出
      店の模様
。外部の業者が入る事の多い昨今、これは私的にはとても嬉しいなあ。『味の山商』『田中さんちの
      カレー屋さん』『高橋商店』『石井商店』
など、各屋台にそれぞれ屋号がある様ですが、これは各部隊の中隊
      長さんの名前
かな?お腹が減ったので、まずは田中さんちのカレーから行ってみましょう。
       一見して普通科の屋台にしてはご飯のボリュームが控えめですが、色々と種類を食べて回りたい私にとって
      はむしろ好都合。さっそくひと口頂いてみます。
       ほほう、豚肉、ジャガイモタマネギニンジンの入った、実に伝統的なニッポンのカレー。ご飯に対して
      カレーの量がやや多い気がしますが、ジャガイモのボリュームがある上に辛さもごくマイルドなので、トータ
      ルバランスは良好
です。

       これといった特徴のないごく普通のカレーですが、演習の最中に食べるなら、変に凝ったカレーよりもこれ
      ぐらいスタンダードな味わいの方がホッとする
んでしょうね。水も好きなだけ飲める訳ではないので、あまり
      辛かったり濃厚だったりで喉が渇くのもまずい
でしょうし。同じカレーでも、求められるものは海と陸で随分
      と違う
気がします。
       続いては石井商店オムレツ焼きそば。やっぱり私的に焼きそばは外せません(笑)。300円払って受領
      したオムそばですが、焼きそばを覆った薄焼き卵マヨネーズがべったりと塗ってあって驚きました。如何に
      も寒い土地の普通科らしい、とにかくカロリー第一!という思想が垣間見えます。あの冬季レンジャーでも、
      夏とは違ってその日の行動に最低限必要な食料は用意されるそうですからね。

       中の焼きそばに関しては、豚肉キャベツがきちんと入っています。外部業者でこの価格なら間違いなく具
      は省かれますが、この辺りは隊員さん屋台の良心的なところ。焼きそば自体の味つけはさっぱりドライタイプ
      
で、この緩くて甘酸っぱいマヨネーズぱらりとした辛口焼きそばによく合っています。
       屋台広場の片隅には制服試着体験コーナーや人命救助システムの拡張型コンテナ6人用天幕、あと野外指
      揮所
が展示してありました。天幕の中には簡易ベッドが2つ、あと地べたにマットを敷いて寝るスペースが4
      人分ありますが、やっぱり階級が上の人がベッドを使うんですか?と傍にいた隊員さんに尋ねると、
       「いやあ、あんまり関係ないですよ(笑)」
       との事。あと、天幕の真ん中に小さなOD色のストーブがあったのが印象的。日本有数の豪雪地帯である新
      潟県、野外演習では遅い時期までストーブが必須なんでしょうねえ。

       既に部隊の入場が始まっている様ですが、人が少ないうちに厚生センターを覗いてみましょう。厳冬期は隊
      舎に閉じこめられる日が多そうなので、さぞかし厚生センターは充実しているのかと思いきや、意外と慎まし
      い感じ。妙に薄暗いし、もうちょっと立派な施設を建ててあげてほしいなあ。それとも新発田の隊員さんは、
      雪が積もろうが吹雪が吹こうが休日は平気で外に遊びに出る
んでしょうか。それはそれで頼もしいかも
       売店を覗いてみると、お、これは面白いな。戦車や艦艇、航空機が描かれた陸海空絆創膏。つい買ってしま
      いましたが、勿体なくて使う機会がなさそう(笑)

       式典会場に戻ると観閲部隊指揮官を務める第30普通科連隊副連隊長が、旗手の3曹を伴って入場するとこ
      ろでした。部隊は観閲部隊指揮官に対し、敬礼。
       続いて本式典の執行者である、第30普通科連隊長兼ねて新発田駐屯地司令関根一等陸佐が入場。感謝状贈
      呈者の紹介
が行われた後は、4月の熊本大震災で亡くなった犠牲者の方々に1分間の黙祷が捧げられました。

       その後部隊は着剣、国旗の入場を来場者一同起立で迎えます。さらに執行者による部隊巡閲式辞、そして
      来賓祝辞が披露されました。来賓の議員さんの話によると、ここ新発田駐屯地のグラウンドは新発田城のお濠
      
を埋めて造られたらしく、お陰で大雨の後は水はけが悪くて大変だそうです。またグラウンドを取り囲む様に
      電線がある為、有事の際のヘリコプターの運用に制限があるとか。
       その議員さんはグラウンドの整備や電線の埋設及び電柱の撤去、さらに隊員さんの処遇の改善も含めて新発
      田駐屯地がその力を十分に発揮できる様、国に働きかけているとの事。私は地域の有権者ではありませんが、
      是非とも頑張って頂きたいものです。

       その後は来賓紹介祝電披露と記念式典は粛々と進行し、観閲行進準備のために部隊はここで退場。お、よ
      く見ると行進待ちの車両の中に、トラックに乗せられた雪上車がいますよ。観閲行進で見るのは初めてです。
      私
の大好きな資材運搬車と似た匂いがする車両なので、好感度高いなあ。

       そして観閲行進が始まりました。まずは第12音楽隊が先頭を切って入場。観閲壇正面の位置についたとこ
      ろで演奏が『抜刀隊』に切り替わり、第30普通科連隊副連隊長の座乗する指揮通信車と、幕僚の乗った軽装
      甲機動車がやってきました。
       続いては第30普通科連隊各中隊による徒歩行進。各隊を指揮する中隊長の出身地が紹介されますが、先頭
      を切る第1中隊長は地元新潟県上越市出身。文字通り、故郷に錦を飾る赴任ですね。

       続く第2中隊長は熊本県出身。4月の熊本大震災では、さぞかし気が気ではなかった事でしょう。親族や知
      人に被災した方もおられたのではないでしょうか。すぐにでも故郷に飛んで行きたかったと思いますが、現地
      に展開している仲間を信じ、遠く離れた土地で自分の責任を全うしている姿
にはいち国民として頭が下がる思
      い
です。

       第3中隊が行進して来たあとは、今年4月に入隊したばかりの自衛官候補生48名による行進。いやあ、同
      じ戦闘服を着ていても、本職である先の1~3中隊とは雰囲気が違うもんですね。まだ前期教育の最中、シャ
      バでの生活とはまるで異なる大変な日々を送っていると思いますが、頑張って早くプロの自衛官の顔になって
      ほしいなあ。
       ここからは車両行進。本部管理中隊の軽装甲機動車中距離多目的誘導弾、同中隊情報小隊の偵察オート、
      
対戦車小隊の01式軽対戦車誘導弾79式対舟艇対戦車誘導弾、重迫撃砲小隊の120㎜迫撃砲RTが続き
      ます。

       さらに本部管理中隊の小型ショベルドーザ及び資材運搬車を搭載したダンプ、渡河ボートを搭載したトラッ
      ク、さらに可愛らしくもカッコイイ雪上車を乗せたトラックがやってきました。ああ、これは実際に走らせて
      ほしかったなあ。雪原ではスキーをはいた大勢の隊員さんをロープで牽引するそうですが、うーん、私も牽引
      されてみたい・・・。スキーはできませんが、引っ張られる位ならなんとかなる!・・・気がします(笑)。

       無線装置を搭載したトラックと救急車が通過した後は、静岡県富士駐屯地の戦車教導隊から参加した96式
      装輪装甲車
が。見慣れた装備品ですが、戦車教導隊から来たと思うと感慨深い。

       さらに群馬県相馬原駐屯地の第12通信隊からは、野外通信システム。車両前面にいかついアニマルガード
      
がありますが、やっぱり演習地で野生動物とぶつかったりするんでしょうか。同相馬原駐屯地からは、第48
      普通科連隊のパジェロ高機動車が。荷台にいるのは即応予備自衛官の人達です。
       新発田の第12後方支援隊第2整備中隊のパジェロ重レッカが車両行進を締め括ったあとは、航空観閲
      移ります。
       まずはOH-6D観測ヘリCH-47輸送ヘリがやってきました。おおお、チヌークを見るのは久しぶり。
      やっぱり迫力ありますね。回転翼機の中では一番好きかも。第12旅団の編成についてはあまり詳しくないの
      ですが、北宇都宮から来たのかな?

       そして航空自衛隊新潟救難隊からのUH-60J救難ヘリ、あと救難捜索ジェット機U-125A。キャノ
      ピーをきらりと煌めかせながら、真っ青な空を通過して行きました。

       観閲行進の終了報告が行われ、国旗が退場。さてこの後はアトラクションです。まずは第12音楽隊新発
      田駐屯地音楽クラブによる合同演奏。一曲目はエドウィン・バグリーの『国民の象徴』です。
       二曲目は自衛隊創隊10周年を記念して作られた『この国は』ですが、創隊10周年とはこれまた随分昔の
      話
だなあ。曲に合わせて新発田駐屯地音楽クラブ所属の山口陸士長による歌が披露されましたが、まだお若
      いのに古臭くも男臭い歌を堂々と歌いきっていたのはお見事。

       三曲目はJ.P.スーザ『星条旗よ永遠なれ』で、今日だけの臨時編成とは思えない位に見事な演奏を締め
      括りました。
       続いては第30普通科連隊拳法訓練隊による格闘展示。へー、格闘訓練隊ではなく拳法訓練隊という呼び方
      は初めて聞きました。第12旅団独特の呼称なのか、東部方面隊独自のものなのかな?
       ん?式典会場の中央に、何かが運び込まれていますよ。あれは・・・氷の板?おおお、氷柱割りをやるつも
      りか?明野では格闘訓練隊の人が豪快なバット折りを見せていましたが、陸自の訓練展示で氷柱割りを見るの
      は初めて
です。

       そして防具や模擬小銃に身を固めた20名近い隊員さん達がやって来て、それぞれの持ち場につきます。ま
      ずは小銃や拳銃、ナイフ等を使った基本動作を披露。一つの演目につき2回ずつ披露してくれるので、撮影す
      る側としてはタイミングが掴みやすくて有難いなあ。
       拳銃ナイフを向けられた状態から一瞬にして敵を捻り倒したり、背後から突き付けられた小銃を身を翻し
      て奪い取ったりと、普段の訓練の成果を存分に見せつけています。

       バックに流れる勇ましい洋楽が緊迫感を盛り上げますが、その背後にいるのがノホホンとした可愛らしい新
      発田城
というのがいま一つ合っていない気が・・・(笑)。せめて和太鼓だったらよかったのに。新発田に太
      鼓部はないのでしょうか。
       続いては実践的な格闘展示。予め攻防の手順が決められた約束組手ではなく、4つに分かれた各班がその場
      の流れに臨機応変に対処
しています。

       そして最後を締めくくるのは、格闘訓練隊長である林曹長による氷柱割り。力強い足取りで会場中央に出て
      きた林曹長は、まず戦闘服の右袖をまくり上げ、素手である事を証明。
       四段重ねになった厚さ15cmもの氷柱に正対して呼吸を合わせたあとは、大きな気合いを入れて一瞬にし
      て氷柱二段を真っ二つ
に。さらに残った二段も片づけて、大きな拍手を浴びながら退場。いやあ、ド迫力なが
      らも涼しげ
で、今日の晴天にぴったりでした。

       そうこうしている間に模擬戦闘訓練展示の準備が整えられ、偵察オートのジャンプ台鉄条網の設置が完了。
      背後の隊舎屋上からはロープが降ろされ、どうやらレンジャーがここから飛び降りる様です。
       ここで本訓練展示の概要と、注意事項がアナウンスされました。向かって左手、敵対抗部隊が占拠した桜の
      台
に対し、陸自の中隊が右手の松の木台より前進開始、陣地の奪還を図るというシナリオです。担当するのは
      第2中隊及び支援部隊
       展示部隊指揮官である第2中隊長山崎三等陸佐が訓練開始報告を行い、3名のラッパ手が状況開始ラッパを
      高らかに吹き鳴らしました。お、よく見ると訓練展示に参加しないラッパ手まで防弾ベストを着用し、フェイ
      スペイント
を施しています。これは本気度高そう。

       まずは第12通信隊野外通信システムが進入してきて、無線中継システムの構築を開始。へー、最初は偵
      察隊ではなく、通信の確保から見せますか。これはひと捻りふた捻りが期待できますね。
       続いて第12飛行隊からのOH-6D観測ヘリがやってきて、上空からの航空偵察を開始。小型軽量な機体
      に搭載されたハイパワーエンジンを生かして、俊敏な飛行性能を披露します。

       さらに情報小隊から偵察オートが2両出撃。観閲壇手前で派手なジャンプを披露した後は敵陣深くまで切り
      込んで、素早く車体を倒し威力偵察を開始。対抗部隊もすかさず反撃を行います。
       返って来た反撃の早さと強度及び方向から敵陣地に関する詳細な情報を収集した偵察隊員は、素早くオート
      を引き起こして脱兎のごとく撤退。上空のOH-6D観測ヘリが派手に飛び回って注意をひきつけ、後方から
      やってきた軽装甲機動車援護射撃を行います。

       偵察隊員と入れ替わる様にして、中隊の狙撃組が会場に進入してきました。素早く地面に飛び込んだあとは、
      匍匐前進で理想的な狙撃ポイントに移動します。
       「中隊長、こちら狙撃、これより狙撃を開始する」
       続いて観測手が状況を読みあげます。

       「距離800ヤード、桜の台中央に1人、風向右から左、風速5マイル、1/4右・・・よし、撃て!」
       パン、と発砲音が鳴り響いたと同時に、前線にいた敵兵士がぱたりと倒れ込みます。ほほう、第3師団の場
      合はもっと芝居がかった倒れ方を披露しますが、こっちの隊員さんは随分あっさりなやられっぷりですね(笑)。
      この辺りは地方地方の気風みたいなものかなあ。
       「中隊長、こちら狙撃、任務終了」
       「中隊長、了解」

       続いては背後の4階建ての隊舎屋上から、レンジャー隊員がロープ降下を開始。屋上の端っこに普通に立っ
      ているレンジャーですが、いくらロープを掴んでいるとはいえ見ているこっちの方がざわざわしてきます。
       小銃を真下に向けて着地地点の安全を確保しつつ、当たり前の様に壁面を駆け降りて来るレンジャーに対し、
      会場からはどよめきが湧き上がります。その技術や体力もさることながら、あって当たり前の恐怖心を完璧に
      克服できる精神力の凄さに驚かされます。

       音もなく地上に降りたレンジャーが周囲を警戒する中、屋上からはもう一人のレンジャーが駆け降りてきま
      した。右手で4㎏もの小銃を構えて降下地点を警戒しつつ、左手一本で降下速度を調節しながら姿勢を安定
      せるとか・・・全くとんでもない話だなあ。
       無事降下した二人のレンジャーは後方からやってきたもう二人のレンジャーと合流し、巧みに連携をとりつ
      つ敵陣地へと距離を詰め、奇襲開始。思わぬ方向からの突然の攻撃に慌てふためいた対抗部隊は、前線から撤
      退。鉄条網後方の陣地に立てこもります。

       中隊長はこの機を逃さず、火力戦闘部隊を前線に投入。120㎜迫撃砲RT81㎜迫撃砲L16高機動
      車
によって運び込まれ、陣地占領と同時に射撃準備を開始。作業確認の大声がここまで響いてきます。
       「中隊長、こちら迫撃砲、射撃準備完了!」

       さらに本部管理中隊からの対戦車小隊中距離多目的誘導弾がやってきて、素早く陣地占領。発射機を持ち
      上げて、射撃準備が整えられます。

       「てーっ!」
       の号令とともに、火力戦闘部隊は攻撃準備射撃を開始。敵陣地付近に次々と着弾し、対抗部隊は後方陣地に
      釘づけにされます。それにしても対抗部隊の後方陣地って、横倒しにした土管なのか・・・。これも何らかの
      訓練で使用しているんでしょうけど、空き地の原っぱでのび太やジャイアンが戦争ごっこをしているみたい
      見ていて気が抜けるなあ(笑)。せめて事務用のパーテーションか何かで、建物っぽいものを作った方が良か
      ったのでは・・・。
       火力戦闘部隊の畳みかける様な攻撃が続く中、陸自本隊からは96式装輪装甲車が前進開始。ルーフ上の
      2重機関銃を撃ちまくっていますが、ハッチから顔を出している車長の人はイヤーマフをしていてもうるさい
      んだろうなあ。

       さらに軽装甲機動車群が前線に飛び込んできました。双方が派手な銃撃戦を行う中、車両から散弾の様に飛
      び出してきた小銃小隊は一気に散開。地面に飛び込む様に伏せたあとは、各班が巧みに連携をとりつつ前進
      援護射撃を繰り返し、じりじりと敵陣地へと肉薄して行きます。

       この頃には朝から吹いていた風がおさまり、訓練展示会場はたちこめる空包発射と発煙筒の煙で真っ白に。
      おお、よく見ると後方では迫撃砲が分解され、高機動車に積み直されています。位置を特定されない様、射撃
      後は素早く陣地転換を行っているんですね。
       カチカチとマシーンの様に正確に行動して敵陣地へと距離を詰めて行く陸自の中隊ですが、それとは対照的
      に対抗部隊は土管に隠れて地味に反撃。うーん、やっぱりこれ、ドラえもんで見た風景です(笑)。ロケーシ
      ョンと隊員さん達の姿との温度差が凄いですね。

       ここで小銃小隊の一人が被弾し、その場に倒れ込みます。お、よく見ると右下腿部にダミーの傷口をつけて
      ますね。芸が細かいなあ。被弾した隊員はすぐに後方へと引きずられ、別の隊員が救助作業をカバー。

       その間に前線には破壊筒が運び込まれ、敵陣地手前に構築された鉄条網の処理作業が始まりました。まずは
      一人の隊員が飛び込んできて鉄条網手前に取り付き、続いて破壊筒を持った二人の隊員が前進開始。さらにも
      う一組の破壊筒が運び込まれ、鉄条網の真下に設置されます。

       「破壊筒、設置完了!爆破する!」
       破壊筒は見事に鉄条網を吹き飛ばし、突撃通路の開啓に成功。実際は最初に発煙弾を撃ち込んで、一時的に
      対抗部隊からの視界が効かない状態にしてこれらの作業が行われます
が、今回は内容を分かりやすい様に発煙
      弾なしで行っているので、随分と無謀な作業に見えてしまいますね。

       「小銃小隊、こちら中隊長、突撃準備射撃のもと、桜の台を奪取せよ!迫撃砲小隊は突撃準備射撃を実施せ
      よ!」
       「小銃小隊、了解!」
       「迫撃砲小隊、了解!」

       砲弾が敵陣地周辺に雨あられと降り注ぐ中、小銃小隊は粘り強い匍匐前進で鉄条網手前まで到達します。
       「最終弾、弾ちゃーく!小隊、突撃!」
       一斉に立ち上がった小銃小隊は、敵陣地に突撃開始。おお、空包射撃と発煙筒による視界の効かなさ、さら
      に後方からやってきたヘリの爆音すごい臨場感

       破壊した鉄条網を乗り越えて桜の台になだれ込んだ小銃小隊は、3個の班に分かれて連携をとりつつさらに
      敵陣地深くへと突入。96式装輪装甲車もその後に続きます。
       「中隊長、こちら小銃小隊、桜の台、奪取!」

       状況終了のラッパが鳴り響き、以上で訓練展示は終了。会場からは大きな拍手が送られました。
       すぐ目の前をギリースーツ姿の狙撃組が歩いていますが、狙撃に成功した後もずーっとその場に伏せていた
      んですね。今回は展示の都合上、狙撃ポイントに着いてすぐの狙撃でしたが、実際は何時間も、いや十何時間
      も身動き一つせず狙撃ポイントに潜んで、飲みもせず食べもせず集中力を維持しながら一瞬の隙を狙う人達

      す。なんというか、普通の人とはレベルの違う体力や精神力を要求されるんだろうなあ。

       その後はSAA水兵さんRSさんとともに、ぶらぶらと歩き回ります。最先任上級曹長杯陸士銃剣道大会
      と連隊拳法競技会ダブル優勝を果たした第一中隊の誇らしげな集合写真や、なんだかんだで隊員さん達のお
      祭り気分
が伝わってくる各中隊の掲示板の落書き・・・。どうも私は、装備品よりもこういったものに魅かれ
      てしまう
様です。

       その後は式典会場に戻り、地上展示の為にやってきたOH-6D観測ヘリの着陸を見ます。丸っこく可愛ら
      しい機体が、地上すれすれでホバリングした後にふわりと着陸。

       続いて私の趣味丸出しで、駐屯地内の古い隊舎を探して歩きまわります。日本有数の豪雪地帯である新潟県
      
だけあって、木造隊舎は古いながらもかなり頑丈そうで、なかなかいい味を出しています。しかしやけに人が
      多いな・・・
。どうやらすぐ隣で高機動車の体験試乗が行われているらしく、古い隊舎を静かに鑑賞する雰囲
      気ではありません。

       とは言えこれがなかなか面白い隊舎で、等間隔に並んだ二階の窓が一か所だけ飛んでいるのが不思議な感じ。
      入口の真上なので、階段の踊り場に当たるのかな?でも、それならそれで窓があってもおかしくない気がしま
      す。普段は殆ど使われていない雰囲気ですし、なんか怪しいなあ。色々妄想を膨らませてくれと言わんばかり
      です(笑)。
       「絶対に開けてはならない、旧軍時代から受け継がれた呪われた開かずの間があるのかも・・・」
       「いや、○○○○○を〇〇して〇〇する隠し部屋じゃないですかねぇ」

       と、RSさんと盛り上がります。

       ふと見ると、隅の方にレンジャーのロープ渡りの準備が整えられていました。んん~?こんな人気のない所
      でレンジャーの訓練展示をするの?
それにしてはまた随分と低い位置にあるなあ・・・と不思議に思っている
      と、どうやら高機動車の体験試乗コースの途中で様々なアトラクションを行うらしく、これもその一つの模様
      です。

       見学者を満載した2両の高機動車がロープの前まで来ると、アトラクション開始。ブルーシートを敷いた地
      面は湿地帯という設定らしく、一人のレンジャーが匍匐前進でずりずりと突破します。するともう一人のレン
      ジャーが現れて、
       「レンジャー!レンジャー!」
       と号令を上げながらモンキーによるロープ渡りを披露。高機動車の子供たちからは拍手と歓声が贈られ、
      名のレンジャーは満面の笑みで敬礼
。へー、これはなかなか面白い趣向だなあ。

       また、別の場所では寸劇が始まりました。どうやら体験試乗中の高機動車をわるものゲリラが襲撃したらし
      く、たまたま通りかかった正義のレンジャーが派手な大立ち回りを披露。わるいゲリラをコテンパンにやっつ
      けたレンジャーに、車上の子供達は大喜び。

       いやはや、素晴らしいですね新発田駐屯地。通り一遍の体験試乗で終わらせることなく、来場者をあの手こ
      の手で楽しませようと工夫を重ねています
。お見事。すると隣にいたSAA水兵さん
       「あっ、今度はもずく出てきましたよ」
       へ?もずく?と見てみると、ギリースーツに身を包んだ隊員さんが子供達に手を振っていました。ちょっと
      距離があるので、一体何をやっているのかよく分かりませんが、『目の前の茂みの中に、偽装したお兄さんが
      いるよ!みんなどこにいるかわかるかな?探してみよう!』
的なイベントでしょうか。
       「えー!どこどこ?どこ?」
       と車上の子供達が目を凝らして探す中、思いもよらない所から姿を現した狙撃手にみんなびっくり!的な感
      じで。

       こういうイベント内のプチイベントは、他の駐屯地も大いに参考にして取り入れてほしいものですが、別の
      駐屯地の創立記念行事を見て回る機会って、なかなかないんだろうなあ。私としてはこういうのが大好きなの
      で、ぜひ当HPをご覧頂いて参考にして貰えましたら・・・(笑)
       再び式典会場に戻ると、先程着陸したOH-6D観測ヘリへの給油作業の真っ最中でした。昨年は3機のヘ
      リがやってきたので給油車による給油でしたが、今回は航空燃料の入ったドラム缶から手回しポンプによる給
      油でした。結構な力が要りそうな作業ですが、OH-6Dならタンク容量も少なそうなので、手作業で十分な
      のか。

       その後は装備品展示会場へ。先程訓練展示で暴れまわっていた96式装輪装甲車には、富士駐屯地の戦車教
      導隊第4中隊
のシンボルである黒いペガサスが描かれています。見慣れない部隊章やシンボルマークを見ると、
      ホームグラウンドである第3師団から遠く離れたところまで来たなあ・・・という感慨がありますね。

       その後は屋台広場のかき氷で体を冷却し、新発田駐屯地のもう一つの象徴とも言うべき駐屯地資料館、通称
      白壁兵舎へ向かいます。この白壁兵舎、明治7年に建築された陸軍兵舎をこの場所に移築し、今年5月から
      報資料館として開館したとの事。
       しかし移築に伴い大々的に手を入れ直したせいか明治初期の建築物らしい雰囲気はまるでなく、ほぼ新築同
      然
。内部も豪華な道の駅みたいです。まあ耐震耐火基準を満たす事を考えると、これも致し方なしか・・・。
      移築前のこの建物を、ひと目見てみたかったものです。

       いつの間にか時刻は14時を回り、終了時刻まであとわずか。いやはや、十分な体制ではなかったとは言い
      ながら、いいものを沢山見せてもらえましたね新発田駐屯地。限られた人手と準備期間の中、様々な工夫を凝
      らして来場者を楽しませようと試行錯誤した跡がよく伝わってきました。
       とは言えこの人達、そもそも訓練や災害派遣、海外派遣にしても十分な予算と十分な装備、十分な時間、そ
      して十分な理解を得て臨めた事など殆どなかった
のでは・・・。アレも足りないコレも足りないという状況下
      で、大限の努力を重ねるその姿勢は立派としか言いようがありませんが、いつまでもそれを当たり前として
      いては組織も個人も持ちません
       来賓の議員の方が言っていた隊員さん達がその実力をフルに発揮できる為の様々な環境整備や法整備につい
      て、私を含めた新発田駐屯地を訪れたみんなが少しずつ考える様な流れにして行きたいものです。何よりも
      ざという時に本当に困るのは、私たち日本国の国民に他ならないのですから・・・。

       その後はシャトルバスで臨時駐車場へ移動。富山に戻るお二人を見送った後、私は新潟市内に向かいます。
      この後は西区にある素晴らしいレトロ銭湯『旭湯』と、昨年宿泊したあの知る人ぞ知る名ホテル『公楽園』
      二度目の来訪です!せっかく新潟まで来たんだから、お楽しみはまだまだ続くよ!と胸をときめかせつつ、聖
      籠新発田ICに向けて車を走らせました。




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