塩ラーメン・野菜煮もの

2016.05.14


       新発田駐屯地創立記念行事をメインとした、2泊3日の新潟遠征に行って参りました。初日は午後に大阪を
      出発、名神自動車道と北陸自動車道を北上し、程良くお腹が空いて来た18時過ぎに立山ICから一般道へ。
      しばらく走って日本海食堂に到着です。
       先客は50過ぎぐらいのオジサンが2人。それぞれ離れたところで黙々と夕食を摂っている感じです。とりあ
      えず今日は塩ラーメン。あとショーケースの中から何か一品ですが、今日も色々並んでるなあ。2泊3日の旅
      になるので、今回は意識して野菜を摂っておきたいところ・・・よしこれ、野菜の煮もの。小奇麗な炊き合わせ
      風ではなく、すき焼きの残りっぽいところがなかなか美味しそうです。

       ポットのお茶を入れ、いつもの席に。つけっ放しのテレビから流れている古い時代劇が、いかにも日本食堂
      の夕暮れ
という雰囲気。ここでおばちゃんが私に気を使ってか、すぐ隣にあった古いラジカセの電源を入れて
      くれましたが、流れてくるのはなんかアメリカ西海岸で流れてそうな洋楽。ものすごいチグハグさに目眩がしま
      すが、これはこれで飲み込んでしまうのが、ここ日本海食堂の懐の深さでしょう。
       しばらくして、塩ラーメンと野菜の煮ものが到着。ほほう、これが日本海食堂の塩ラーメンか。淡い色合いの
      スープに野菜がたっぷり乗っていて、いわゆるタンメンってやつですね。ビタミンやミネラル、食物繊維がたっ
      ぷり摂れそうで、おっさんの一人旅には有り難いなあ。
       入っている野菜はキャベツ、ニンジン、もやし、白ネギ、小松菜。おっ、野菜の下には大きなチャーシュー
      隠れていました!ここの煮豚タイプの甘辛いチャーシュー、美味しいんですよねえ。メンマもしっかり入ってい
      ますし、パッと見は淡白ながらも結構な食べ応えが期待できそう。

       おっと、よく見るピーマンキクラゲも入っていますよ。この具の充実ぶりはほとんどちゃんぽん。まずは一
      口いってみましょう。
       おお、野菜の火の通し加減はギリギリまで生の固さを残していて、しゃきしゃきの歯応えが絶妙の一言。キ
      ャベツの端がほんの少し焦げているところをから察するに、軽く炒めてから塩スープで煮込んで味を馴染ませ
      た
様ですが、油滴は殆ど浮いておらず実にさっぱりした味わい。大きなチャーシューの存在感が強烈ですが、
      それと肩を並べるしなやかな野菜力瑞々しいコクをビンビンに感じます。
       ここでスープをひと口。野菜の優しい味わいが、鶏ガラベースのスープによく合います。そこにさりげなく加わ
      る熟成メンマと、甘い脂の濃厚チャーシューが実にいいコントラスト。味の濃淡がはっきりと分かれているので
      たっぷりの野菜を少しも飽きることなく味わえます
       それにしても、以前これとよく似た個性の料理を食べた事があるなあ、なんだったっけ・・・あ、あれです、鶏
      飯!『とりめし』ではなく、『けいはん』の方の鶏飯。骨付きの鶏肉でとったあっさりスープをご飯にかけて、シイ
      タケの煮付けやかんきつ類の皮、漬物等を添えて頂く九州南部の郷土料理。基本さっぱりなのに滋味たっぷ
      りで、深酒の後でもさらさらと入ってしまうあの味わいが、この塩ラーメンにそっくり。

       そういう意味では飲んだあとにしみじみ食べたいなあ、この塩ラーメン。いやむしろ、酒の後の締めでこそ本
      領を発揮する一品
と言えるでしょう。
       「もう若くないんだから、調子に乗ってあまり飲み過ぎちゃダメですよ(笑)」
       と、野菜達に優しくお説教されている気分。色々と思い当たる節のあるおっさんとしては、俯いて素直に聞き
      入ってしまいます。
       逆に言うと、飲んだ次の日もシャキシャキしてる若い人は、この植物的な優しい味わいを理解できるんだろ
      うか。同じラーメンなら、もっとこってりした背脂醤油系やトンコツ系に流れる気がします。飲んだ後の締めの
      ラーメンなどカロリー的にも塩分的にも許されない年齢になってから、初めて気づくこの一杯の優しさ・・・
       この塩ラーメンの真価を骨身にしみて理解できるのは、ある程度の年齢になったおっさんでないと難しいの
      に、いざおっさんになってしまうとこのラーメンの一番美味しい食べ方である『飲んだ後の締めの一杯』が許さ
      れなくなるとは。なんという皮肉・・・
       目の前にあった時はその価値に気付かなかったのに、失った途端にその有難味を思い知らされる。そんな
      チグハグさに、ちょっと切ない気分にさせられました。そうだ、俺の人生はいっつもこうなんだ・・・
       野菜の優しさと人生のほろ苦さをたっぷりと湛えた極上のスープを、後ろ髪引かれる思いで半分残しながら、
      切なさでいっぱいの日本海食堂を後にしました。

       ・・・おっと、野菜の煮ものを忘れていました(笑)。キャベツ、ニンジン、もやしを軽く炒めて甘辛醤油味でくた
      くたになるまで煮込んだ、まさにスキヤキの残り物風の味付け。肉は入っていませんが、甘辛のバランスが絶
      妙
なので物足りなさは感じません。くそう、これは白ご飯で食べたかった!なんというか、山奥のお寺のお祝
      いの席で、壇家婦人部のおばさま達が作ってくれそうな一品。しみじみとした美味しさです。これはやっぱり
      ご飯
を追加・・・いや、さっき野菜にお説教されたばっかりだしな(笑)。やめときましょう。
       その後は再び北陸自動車道に入り、21時前に三条燕ICを通過。ここから先は初めて通るルートです。そし
      て21時過ぎに、本日の車中泊地である黒埼PAに到着。手早く車内の準備を整え、寝袋にくるまります。明日
      は新発田駐屯地創立記念行事、その後は以前からずっとあこがれ続けていた新潟市内の超レトロ銭湯旭湯
      
で暖まり、あのホテル公楽園に2回目の宿泊・・・。
       あ、しまった、さっき野菜にお説教されたばかりなのにバーボン飲んでるよ俺(笑)。まあ、この後ろめたさも
      人生の味のうちよ・・・
などと呟いてはフフフと笑いつつ、眠りにつきました。




新潟遠征2日目、新発田駐屯地開設63周年第30普通科連隊創隊53周年記念行事に続く
トップページに戻る
自衛隊イベント以外のお出かけ目次に戻る