ホテル公楽園(6号室)

2016.05.15


       新潟遠征二日目。新潟市西区の旭湯を満喫した後は、本日の宿泊先であるホテル公楽園に移動します。今回
      で2回目となる公楽園には1840に到着。まだ空に明るさが残っているうちに、建物全景の撮影を済ませて
      しまいましょう。広大な駐車場に車は4台だけで、前回に比べるとちょっと寂しい風景です。

       その後は近くのスーパーにて夕食の買い出し。新潟まで来てスーパーのおかずかよ!と言われそうですが、
      やはり公楽園に来たら公楽園の雰囲気の中で飲み食いしたいんですよね。それに私、知らない土地のスーパー
      好きですし(笑)。おかずや調味料一つとっても、色々珍しいものがあったりして結構楽しめます。
       という訳で、1920に改めて公楽園に到着。もう完全に真っ暗です。2880円払ってフロントのオジサ
      ンから鍵を受け取ると、おっ、今回は6号室。昨年宿泊した5号室の隣でした。
       建物外の階段を上がり自販機横のドアを開けると、いきなり無音の静寂空間。なんというか、洋上で遭遇し
      た人気のない難破船に乗り込む気分
。誰かいませんかー!?と呼びかけてもしんと静まり返った船内っぽいの
      がちょっと不気味ですが、これも公楽園の醍醐味であります(笑)。

       という訳で、不気味な通路を歩いて6号室のドアの前へ。音を立てない様、意味もなくそっと扉を開きます。
      入ってすぐの玄関は赤レンガ風。もちろん本物のレンガではなく壁紙ですが、触ってみるとちゃんとレンガら
      しい凹凸
の手触りがあり、照明の暗さも相まってかなり本物っぽいなあ。

       左右にドアがありますが、まずは左手から。ああ、こっちが客室なのか。カーテンのかかった窓側には一人
      掛けの小さなソファとテーブル
があり、壁面にはクローゼット、左手にはベッドがありました。概ね前回の5
      号室と同じ。ちなみに部屋には冷房がかかっていました。
       「今日は気温が高かったので、部屋を冷やしてありますから。室温は適当に調節してくださいね」
       とフロントのオジサンが言ってた事を思い出しました。建物の怪しい見た目とは裏腹に、とても細やかな気
      づかい
には頭が下がります。

       それにしてもこの、妙に赤っぽい照明が強烈です。天井には安っぽくも豪華なシャンデリアがぶら下がって
      いて、江戸川乱歩チックな実に妖しい雰囲気。ただでさえ70年代のラブホっぽいのに、怪しさ倍掛けです。
       とは言え、前回の5号室は建物の雰囲気に似合わない白色LEDのシーリングライトだった事を思えば、こ
      ちらの方が断然公楽園のイメージに合っていますね。

       お、部屋の隅に冷蔵庫が!これは前回の5号室にはなかった装備品です。さっそく買ってきた食品を入れま
      しょう。その冷蔵庫の上には調味料ケースがあり、中にはガラスのコップ小皿、あと栓抜きがありました。
      単品の栓抜きって久しぶりに見たなあ・・・。すぐ近くに飲食店がないという事情もありますが、やっぱり
      の室内でこの空気を味わいつつ、ひとり静かに夕食をとりたい人
は多いのかも。

       部屋奥の扉を開けると、風呂場でした。前回の5号室の風呂が衝撃的だったのでちょっと身構えてしまいま
      したが(笑)、こちらは天井も浴槽も予想外に普通で拍子抜け。とはいえ壁がワインレッドで床は黒緑、浴槽
      はスカイブルーという色彩センスはかなりキテます。長時間ここで過ごすと目眩がしそう。

       あと前回の5号室とは違い、こっちの風呂はトイレ併設じゃないんですね。という事は、さっきの玄関入っ
      て右側にあったのがトイレかな?果たしてその通りでしたが、なんというか・・・このトイレの内装も独特で
      す。狭い四方が小さな黒タイル貼りで、なんだか昔のCG画像というか、幾何学的な電子空間に迷い込んだ気
      分。無機質極まるデジタル空間の様なトイレで有機的な生産活動を行うというジレンマが面白いというか、人
      間という存在も原子レベルまで分解してしまえばしょせんデジタルデータに過ぎないのか・・・なんて変な事
      を考えてしまいました。

       おっ、よく見るとクローゼットの扉の取っ手がビニテでぐるぐる巻きにされていますよ。ビス止めするか接
      着剤を使えばいいのに、なんでまたこんな(笑)。
       ちなみにクローゼットの中には、キレイに畳まれた浴衣と帯が。そして吊るされたハンガーのバラエティの
      豊かさ・・・どれでもお好きなものをお使いくださいというホスピタリティです。
       いやあ、凄いな6号室。ここまで素晴らしい味わいに満ちていると、ベッドの脇の部分が破れて垂れ下がっ
      ている
事なんか、もはやどうでもよくなります。

       窓を開けると、カエルの大合唱が鳴り響く真っ暗な田んぼが一面に広がっています。遥か地平線の彼方には
      ぽつりぽつりと街路灯が散らばっていますが、この公楽園からあの灯りがある場所まで何万光年も隔たってい
      る気分になる
のが不思議だなあ・・・。

       さて、いつまでも感動ばかりしていられません。お腹も減って来た事ですし、夕食の準備に取り掛かりまし
      ょう。ボイスレコーダー旅本コップ醤油等をぬかりなく配置した後は、今夜のメインディッシ
      ュである自販機トーストを買いに行かねば。
       相変わらず廊下はしんと静まり返ったままで、私が宿泊する6号室以外の客室灯は消えたまま。ひょっとし
      て今夜は私だけなのでしょうか。ホテル公楽園と私のシンクロ率が異様なほど高まる一夜になりそう。

       一階ゲームセンターの自販機コーナーに向かう前に、真っ暗な公楽園を外から撮影。うーん、凄い。営業中
      のホテルには全く見えない・・・
。気の弱い人なら、まず泊まる気にはなれないでしょう。
       ちなみに国道を挟んだ斜め向かいには『ever』という名前のラブホテルっぽいものが見えますが、看板
      の電飾が故障したままなのか『 ev 』しか光っていません。全く、こちらもこちらならあちらもあちら
      す。

       空虚な電子音がピコピコ鳴り響くゲームセンター内には、ぽつぽつと人がいました。誰もが俯いて無表情に
      画面に見入っていて、こういう場に慣れない私には一種異様な光景に思えます。そんな異物感に浸りながら、
      今日も元気に稼働しているトースト自販機ハムサンドを購入。トースト中の表示がしばし点滅したあと、受
      取口にアルミホイルで包まれたトーストがぼとんと出て来ました。相変わらず手加減なしの熱々なので、ヤケ
      ドしない様に気をつけて6号室に持ち帰ります。

       ボイスレコーダーからこの日の為に音声ファイル化してきた鶴光のオールナイトニッポン最終回を流し、一
      人で乾杯。いやあこの、バターがしっかり染み込んだハムサンドが美味しい!最初に食べた時も驚きましたが、
      これが意外な程ビールによく合います。
       そしてこの、やけに赤っぽい妖しい照明が雰囲気抜群。日没後は赤色灯に切り替わる海自艦艇内で食事して
      いる気分になりますが、やっぱり食べ物の色合いがかなり変わってしまうんだなあ。目が楽なのは白色LED
      ライトが奢られた5号室の方ですが、ここ公楽園の味わいをとことん楽しみたいなら、この6号室がお勧め
      あります。

       それにしてもこの、ホテル公楽園で一人飲みながら聴く鶴光のオールナイトニッポン・・・思った通り、
      事にハマる組み合わせ
でした。そうそう、この放送をリアルタイムで聴いていた頃に住んでいた家の私の部屋
      も、ここと同じ砂壁だったなあ。触ってみるとあの頃の記憶が鮮明に蘇ります。
       スターダストレビュー、少年隊、少女隊、なんちゃっておじさん、ミッドナイトストーリー、驚き桃の木ビ
      ックリ話、鶴光のかやくごはん、ルビーの指輪、ブルボンピーパリ、時任三郎、ミスターコーヒー、学光のど
      っきりマイク、この歌はこんな風に聞こえる、ジングル作文、いなかもんのコーナー・・・若い人おいてけぼ
      りだな(笑)!

       ああ、時間が巻き戻るとはこの事か。まるでこの部屋そのものがタイムマシンと化した様。なんという味わ
      い深い夜・・・

       2時間たっぷりの放送が終わって静かになった室内に、ゲコゲコというカエルの大合唱が聞こえてきました。
      そうか、前回は刈り取りの終わった10月の来訪だったっけ。あの時は田んぼに水はなく、カエルもいなかっ
      たんだ・・・。

       3時間ほどのナチュラルトリップを満喫し、最後はベッドに倒れ込みます。あ、ベッドサイドの照明が壊れ
      てますね。念の為にLEDヘッドライトを持ってきてよかったな・・・と酔いの回った頭で考えながら、ぱた
      んと寝入ってしまいました。


       翌朝は0500に目が覚めました。柔らかいマットレスが体に合わなかったのか、結局睡眠は途切れ途切れ
      車中泊の方がぐっすり眠れるというのが変な話です。もう少し寝ていたかったのですが、ええい、もう起きて
      しまいましょう。
       窓の外は一面の水田。ちなみにこの6号室は角部屋で、風呂場からの景色が素晴らしいの一言でした。眩し
      い朝日が入る浴室は、昨夜の妖しい雰囲気とは全然印象が異なります。面倒なので今回は入りませんでしたが、
      これなら朝風呂も快適そう。っていうか、朝の方が断然気分いいでしょうね。

       昨夜の残り物で朝食をとったあとはベッドでゴロゴロして、0700チェックアウト。田んぼが広がるだけ
      の何もない場所に、ぽつんと佇むホテル公楽園。なんだろうこの神々しさは・・・

       その後は近くの弥彦山中にある弥彦無線中継所の廃虚を見に行きましたが、中継所に通じる山道の手前には
      平日の早朝だというのに先客の車が。うーん、中で鉢合わせするのも面倒だなあ。折角ここまで来ましたが、
      いつまでたっても戻ってくる気配がないので諦めて下山。ホテル公楽園はまた来るので、弥彦無線中継所跡の
      探訪は何時かのお楽しみにしておきましょう。
       三条燕ICから北陸自動車道へ入ります。さて、この後は富山県の日本海食堂で昼食をとり、氷見のバアサ
      マ
の顔を見てから大阪へ戻ります。このままでは随分早い時間に到着しそうなので、途中のSAに寄り道して
      いくか・・・と考えつつ、車を走らせました。




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