玉子どんぶり・イカと茄子の煮もの

2016.05.16


       という訳で2泊3日の新潟遠征最終日、昼食の日本海食堂で締めであります。当日は結構な荒れ模様になる
      との予報でしたが、昼前に到着した日本海食堂の上空は抜ける様な青空。
       「今日は風が強いですね」
       とおばちゃんに声をかけられながら、開店したばかりの店内へ入ります。そうか、私もおばちゃんに普通に
      声をかけられる程度にはこの店に馴染みつつあるという事か。なんか感慨深いなあ。
       本日の注文は玉子どんぶりと最初から決めていたので、問題は一品ものを何にするか。今日も美味しそうな
      おかずが並んでいますが、メインがあっさり軽めの玉子どんぶりなので、濃い目のものがよさそう。よし、こ
      れいっときましょう、イカと茄子の煮もの。見るからに濃い甘辛醤油色が、たまらなく食欲を刺激します。

       開店直後の静かな日本海食堂の空気に浸っていると、お、来ました来ました玉子どんぶり。どんぶり物の
      タンダードである玉子どんぶりは随分久しぶりですが、んん~?なんか色々入っているっぽいですよ?箸先で
      探ってみると、中からはタマネギ、青ネギ、紅白ぐるぐるかまぼこが出て来ました。これは意外だなあ。
       さっぱりした薄甘醤油味の出汁を煮立たせて、そこに溶き卵を流し込んで半熟のところで火からおろしてご
      飯に乗せたもので、具はせいぜいタマネギか上に散らした三つ葉のみ。いっそ超シンプルに玉子だけでも全然
      構わない・・・
というのが私の中の玉子丼です。
       少々あっさりですが栄養価はあるし消化器の負担も少なく、胃腸がお疲れ気味の時や風邪等で弱っている時
      に頼もしい存在
だと思っていましたが、世の中には具が充実した玉子どんぶりというものもあるのか・・・。

       っていうか、かまぼこが入った時点で木の葉丼になるのでは?いや、この紅白ぐるぐるかまぼこは一枚もの
      ではなく、刻んでありますね。なら木の葉とは言えないか。かつ丼も地方地方で驚くほど内容が変わりますが、
      こんな玉子丼もあったんだなあ。
       とりあえず一口。んん~?なんというか、予想外に味の強い玉子どんぶりです。これはこれで美味しいです
      が、あっさり素朴な味わいを期待していたので、この甘辛醤油の個性の強さにはちょっと戸惑いを覚えます。
       玉子自体のボリュームはかなりのもので、2個ぐらい使ってあるのかな?それにしても、玉子を2つ使って
      なおこの味の強さとは
。火の通し加減は8分目といったところで、この辺りは人によって好みが分かれますが、
      私としては丁度いい塩梅でホッとしました。
       それにしても、以前食べたかつ丼はギリギリまであっさり味で留めておきながら、玉子どんぶりがここまで
      濃い味
のはちょっと不思議な感じ。揚げものの油に負けない様、カツ丼の方が味が濃くなるのが普通だと思
      うんですよね。

       ただ、私の予想とは大きく違っていただけの事で、味自体は迫力があって実に美味しい玉子どんぶりです。
      出汁と玉子と米のシンプルなハーモニーを求めて来たとは言え、この具の賑やかさには正直嬉しさも感じてし
      まいます(笑)。うん、最初からこういうものだとわかっていれば、もっと素直に楽しめたかも。
       自分の期待とは違うものが出てくるのは、食事に限らず人生のあらゆる局面で起こり得る事ではありますが、
      まず否定するのではなく、その断層のズレ違和感までも積極的に楽しんでしまえる方が毎日はもっと楽しく
      なる
に違いありません。

       ここで味噌汁をひとすすり。北陸独特の塩味が強いさらさらした味噌汁ですが、このシンプルな塩味が、玉
      子どんぶりの濃厚な甘辛味に疲れかけた舌をそっとリセットしてくれる様。具は豆腐、ワカメ、えのき、青ネ
      ギ、春菊、小松菜
と非常に賑やか。この玉子どんぶりひとつで結構な品目がとれる様になっています。旅人に
      とっては心温まる気遣いと言えるでしょう。

       小皿に添えられているのは、小松菜のおひたし。茹でたものを醤油であえたものですが、ここ2日ほど食生
      活が乱れていたので、小松菜が提供してくれるビタミンと鉄分を有り難く頂きましょう。
       と、ここで後から入って来たオジサンが注文した日替わりランチがやってきました。ほほう、串カツ目玉
      焼き
、あと生野菜が山盛りになっていますね。なんだかすごく美味しそう。とは言え、今は看板メニューを一
      つずつ消化して行くのが喜び
であります。日替わりランチは、全品制覇のあとで試してみたいなあ。

       あと一品もののイカと茄子の煮ものですが、おお、茄子は揚げてあるのか。甘辛の濃い煮汁に染み出たイカ
      の旨味
を存分に吸い込んだ揚げ茄子は、まさにうっとりする様な美味。一般的にイカの煮ものといえば、小芋
      
焼き豆腐、もしくは大根が定番ですが、揚げ茄子という手もあるんだなあ。ほっこり感にはやや欠けるもの
      の、旨味の主張は格段に強くいかにも大衆食堂に似合う味わい。うーん、これは冷酒が欲しいなあ・・・。
       これから夏が近づくにつれてどんどん旨味を増していく茄子。夏に入ってからもう一度食べたいメニュー
      すが、全品制覇の道のりはまだまだ遠く、既に食べたメニューをもう一度試すのは随分先の事になりそう。い
      つの日か、全てのメニューを食べつくしたあとにしみじみと味わうイカと茄子の煮ものは、今回とはまた違っ
      た輝きを見せてくれるに違いありません。日本海食堂全品制覇。それは決してゴールではなく、改めて基本に
      立ち帰るに過ぎない
のでしょう。

       それにしても、このイカと茄子の煮ものの甘辛の強さが玉子どんぶりのそれと重なってしまったのは勿体な
      かったかも。まあこれは、私の組み合わせミスですね。
       と、ここでふと思ったのですが、この強い甘辛味は、気温が上がってくる時期の平日の労働者向けの味なの
      ではないでしょうか。今日はたまたま空いていましたが、以前平日の昼に来た時は作業着姿の人達が多かった
      んですよね。彼らの仕事中の発汗までも計算に入れて、ご主人はこの時期はあえて濃い目の味付けにしていた
      のかも。
       そう考えると、以前食べた土曜日のカツ丼があっさり薄味だった事も納得がいきます。しかもあの時は、
      などかく事もない真冬
でしたし。そこまで考慮しての味付けだったとは・・・というのは流石に考え過ぎかな
      あ。いや、この日本海食堂ならやりかねないかも・・・。

       玉子どんぶり550円、イカと茄子の煮もの400円の締めて950円の満足感を噛みしめます。さて、次
      回は結構暑い時期に来る事になりそうです。ざるそばなんかが美味しそうですが、はじめましたものの雄とで
      も言うべき冷やし中華も、そろそろ食べておきたいなあ。早くも次回の試食に思いを馳せながら、日本海食堂
      を後にしました。




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