2014.10.19
と言う訳で、福知山駐屯地創立記念行事終了後、一旦舞鶴に寄り道です。年内に予定している戦争遺
跡探訪の下調べと地元スーパー巡りを行った後、いよいよ本日の裏メインイベントとも言うべき、ドライブ
インダルマへ。夢のような古い自販機が立ち並ぶレトロなドライブインがあると以前から聞いていたので、
ぜひ一度訪れたいと思っていたのでした。
舞鶴西ICから一般道に降り、由良川に沿った国道178号線を走って行くと、おお、右手に見えてきまし
たドライブインダルマ!いやー、ここかあ・・・。実物を目の前にすると、ちょっと感動してしまいます。
到着したのが17時過ぎだったので既に薄暗く、駐車場に車は一台も無し。全く人気のない無人のドラ
イブインは、正直廃墟にしか見えません。意外と広い室内も照明は一部しかついておらず、これは入っ
ていいのかマズイのか、戸惑ってしまう雰囲気。
左右に長い建物の両側はゲームセンターになっていますが、薄暗く誰もいない空間に電子音だけがピ
コピコ鳴り響いているのは、かなり異様だなあ。場末の古い温泉旅館のゲームコーナーの様な、救難信
号をキャッチして救助に駆け付けた宇宙船の中には誰一人いなかった様な、なんとも不気味な感じです。
入り口正面は自販機が並んだスナックコーナーですが、照明は殆ど消えています。自販機自体はどれ
も生きている様ですが・・・あ、あった、3つ並んだうどん自動販売機!うーん、なんというか・・・凄く怪しい
なあ。自販機というより、焼き場か霊安室のドアに見えてしまうのは、薄暗いからでしょうか。
左から順番に、ラーメン、きつねうどん、天ぷらうどんというラインナップ。残念ながらラーメンは売り切
れでしたが、売り切れるほどお客さんが来ているというのが、申し訳ありませんがちょっと驚き。巨大な自
販機は壁面に埋め込まれた状態で、意地でも動いてやらないぞ、この土地で生きてこの土地で死ぬんだ
という覚悟の様なものが、ひしひしと伝わってきます。しかしこれ、建物の裏が普通にうどん屋だったりし
ないだろうなあ(笑)。
他は飲み物、アイスクリーム、ガム、カップめん。そしてハンバーガーの自動販売機までありました!な
んだここは!ガンダーラなのか?よし、先ずはハンバーガーから買ってみます。麺類を先にすると伸びて
しまいますからね。
ハンバーガーは全部で3種類。レタスバーガー、ホットドッグロースハム、ホットドッグハンバーグという
商品展開ですが、なんか不思議な名前だなあ。とりあえずこのホットドッグハンバーグからいってみましょ
うか。
200円入れてボタンをポチると、赤いカラータイマーがピコピコと点滅開始。暗い室内で点滅する赤ラ
ンプを見ていると、何故かとても危険で悪い事をしている気分(笑)。まるで建物の自爆スイッチを起動さ
せたみたいで、こ、これ脱出した方がいいのかな?と不安になります。一人でアワアワしているうちに加
熱は終了し、受け取り口に小さな白い箱がぼとんと落ちてきました。
間髪いれずに、今度は天ぷらうどんの自販機に250円を投入。傷んだステンレスパネルに埋め込まれ
た表示灯がチカチカと点滅し、なんだか60年代の3流低予算SF映画に出て来る宇宙船の中にいるよう
な気分になりますね。
あちこち錆が浮いた受け取り口の中を覗きこむと、おお、うどんが入っていると思われる容器が、アー
ムに保持された状態で斜めになっています。どうやら湯切りの最中の模様。
そしてズコッと勢いよく出て来た天ぷらうどん。受け取り口から思いっきりはみ出ているのでちょっと焦
りましたが、落ちそうで落ちないギリギリのところで止まる絶妙さに感動です。ケレン味のあるギミックが、
なんだかターターランチャーにミサイルが装填される瞬間を思い起こさせますね。
うどんという呑気の象徴の様な食べ物が、昔の特撮みたいな登場方法で出て来るんですから、もうた
まりません。ウルトラ警備隊の秘密基地から飛び立つウルトラホーク1号を思い出してしまいました。
器こそ安っぽいものの、天ぷらは大きいしかまぼこも色鮮やか。青ネギも瑞々しいなあ。透明感のある
黄金色のダシも美しく、これは美味しそうな関西風天ぷらうどん。さっそく頂いてみましょう。
ほほう、うどんは適度に角ばりつつも柔らかな食感で、コシよりも食べ易さを優先した、実に穏やかで優
しい味わい。ダシは薄味ながらもしっかりとした風味があり、とてもレトロ自販機から出て来たとは思えな
いクラシカルでトラディショナルな関西うどんです。
天ぷらは程良くダシを吸ってモロモロで、かろうじて残っているカリッとした部分とのコントラストが素晴ら
しい。真っ赤な桜エビも沢山入っていて、まるで桜エビ達が小さなどんぶりの中でシンクロナイズドスイミン
グを披露しているかの様。青ネギの爽やかな香りも生きていますし、これは予想以上に美味しいうどんだ
なあ。ネタ的な捉え方だけでは決して語れない、確かな実力を見せつけています。
もう一方のホットドッグハンバーグ。紙包みをあけると、まるで蒸し上がった様な小さなバンズが収まっ
ています。恐る恐る上下に分割してみると、小さなハンバーグを切ったものが2切れ、ケチャップとマスタ
ードにまみれて鎮座していました。うーん、言っちゃあなんですが、こうしてみると食欲を失わせるものが
ありますね。ハンバーガーを司法解剖しているみたい・・・。
改めてAパーツとBパーツを合体させて、さっそく一口。うむむ、ミートパテが若干薄めなので、食べ応え
がやや物足りませんが、薄いなりにしっかりと鉄板で焼いた風味があり、味わいの満足度はかなり高いで
すよ。
柔らかいのに何故か噛み切りにくい、安物のバンズが蒸し上がったこの食感。懐かしの自販機ハンバ
ーガーならではの味わいに、自然に笑顔になってしまいます。マスタードは朝塗ってから時間が経ったせ
いか、独特の刺激的な芳香は殆ど抜けていますが、甘いケチャップをほんの少しだけ引き締める隠し味
的な役割を立派に果たしています。
いやーこの天ぷらうどんといいハンバーガーといい、何なんでしょう、この味わい。お世辞にも美味とは
言えませんが、
「どうだ雄山!所詮お前如きにこの味は分かるまい!」
と、無意味に上から目線で勝ち誇ってやりたい気分です。いやあ堪能しました。どれもスモールサイズ
なので正直もう一品ぐらいいっときたいのですが、あまり満腹にしても帰りの高速道路が不安ですし。
その後は、人気のないゲームセンター内をなんとなく見て歩きます。ピコピコというチープな電子音、プ
シプシという格闘ゲームのパンチ音が薄暗い室内に弱々しく鳴り響き、窓の外に広がる静かな湿地帯か
ら流れ込んでくる冷たい夕暮れの風が、埃だらけの蜘蛛の巣を揺らしています。
なんて言うんでしょうねえ、この感覚。そもそも私は小さい頃からゲームにまるで興味がなく、ゲーセン
で遊んだ記憶も思い入れも殆ど無いのですが、記憶にない記憶を強引に引っ張り起こされる様な、不思
議な気分。足の裏から背筋にじわじわ這い上がって来る微弱な電流みたいなこの感覚・・・。只今絶賛営
業中のドライブインダルマには大変失礼な言い方ですが、私が戦争遺跡でいつも感じる、消えゆくもの特
有のにおいにすごく似ているんだよなあ・・・。
ふと見ると、ジュークボックスの上に『旅の便り』という寄せ書きノートがありました。ここを目当てに訪れ
たモノ好きな人達が、さまざまな感想を書き残しています。この店のオーナーさんは、そういう人達の期待
に応えたいが為に、この人気のない古いドライブインを維持し続けているんでしょうね。その心意気に、心
の中で敬礼。
大切なものが次々と姿を変えたり消えてゆく一方のご時世ではありますが、また来る時も、今日と全く同
じままのドライブインダルマでいてほしいものです。
あと、やっぱりもう一品食べて帰ろう(笑)。残念ながらラーメンは売り切れですが、どうやら店の奥にいる
人(気配ゼロでした)に声をかければ、すぐ新しいのを補充してくれる模様。とは言え、今日ラーメンを食べ
る事ができなかったのは、これも一つの縁なのでしょう。次来る時のお楽しみに取っておいた方がよさそう
です。
と言う訳で、締めはレタスバーガーです。出て来たレタスバーガーはこんな感じで、レンジアップされて
しなしなになったレタスの骸みたいなものが、ハンバーガーからちょろっと見えています。しかしこの、熱
を通したレタスが結構イケるんですよね。シャリシャリした食感は意外と残っていますし、先程のホットド
ッグハンバーグとはまた異なった個性を、十分に発揮しています。
いやあ満足満足。さて、そろそろ帰るとしますか。日はすっかり山影に落ち、上空に残った弱々しい明
るさが日本海側の秋を感じさせます。すっかり薄暗くなった空。田んぼから吹いてくる冷たい風。時折車
が通るだけのしんとした国道。そこにぽつんと灯った、ドライブインダルマの小さな看板。
舞鶴まで寄り道して本当によかったです。呉で言えば神原湯に匹敵する、圧倒的な存在感を魅せてく
れました。また来るぞ、ドライブインダルマ。
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