『マルメロの陽光』 DVD比較


 
はじめに

『ミツバチのささやき』と『エル・スール』が出てから約2年後に発売された『マルメロの陽光』のDVDですが、残念ながら画質クオリティはレーザーディスク版と五十歩百歩というレベルでした。しかもあっという間に廃盤。エリセ作品はDVDも慎ましい、なんて言葉も笑えない冗談でしかありません。しかし2004年末、スペインのRosebud Filmsという小さなメーカーから奇跡のような『マルメロの陽光』DVDがリリースされました。エリセ本人やロペス夫妻が製作に携わったこのDVDは、本編ディスクと膨大な特典が収録された特別ディスクとセットになった2枚組みという素晴らしいもので、本編だけではなく特典映像にもフランス語と英語が収録されている充実ぶり。恐らくこの盤に匹敵するような『マルメロの陽光』のDVDを出せるのは米クライテリオンぐらいのものでしょう。間違いなく現時点での決定盤といって良いと思います。国内盤が同じ仕様で再発されることを願いつつ今回のDVD比較を企画しました。

ジャケット&ディスク紹介

国内盤スペイン盤

仕様、その他のデータ
[国内盤]

・IMAGICA/紀伊国屋書店
・Region 2 - NTSC
・本編2:19:15
・音声:ドルビーデジタル/スペイン語/ステレオ
・画面仕様:4:3 スタンダード・サイズ
・チャプター数:22
・字幕:日本語
・発売日:2002/9/21

映画解説
スタッフ&キャスト紹介
日本版予告編
ポスター画像付

現在廃盤
[スペイン盤]

・Rosebud Films
・Region 2 - PAL
・本編2:13:56
・音声:ドルビーデジタル/スペイン語/2.0ch
・画面仕様:4:3 スタンダード・サイズ
・チャプター数:30
・字幕:ポーランド語/スペイン語/フランス語/英語/イタリア語/ドイツ語/ポルトガル語
・発売日:2004/10/7

特製ブックレット封入(40P)
特典の詳細については下記を参照。

[Shop]
www.fnac.com


メニュー画面比較



国内盤メニュー画面(左上)、国内盤チャプター画面(左中央)、国内盤字幕選択画面(左下)、スペイン盤メニュー画面(右上)、スペイン盤チャプター画面(右中央)、スペイン盤字幕選択画面(右下)


平均ビットレート比較

[国内盤]

[スペイン盤]


画面比較

上が国内盤、下がスペイン盤

映像の鮮度が違います。スペイン盤のマルメロの葉の緑がしっとりと美しいです。

上が国内盤、下がスペイン盤

フラットな国内盤の映像に比べて、スペイン盤の木の幹は陰影に富んでいます。絵の具の白もスペイン盤の方が鮮やかですね。スペイン盤は上下左右に黒味が入っているのですが、それもプライベート・フィルム的な小じんまりとした本作の雰囲気によく合っているような気がします。

上が国内盤、下がスペイン盤

これも映像の鮮度の違いは一目瞭然ですね。国内盤は白っぽいボヤッとした感じの甘い画です。

上が国内盤、下がスペイン盤

マルメロはカリンの一種。よって実の色は黄色なのですが、国内盤のマルメロの実はオレンジっぽい色になってしまっています。スペイン盤の黄色マルメロの実こそ正しい色合いだと言えるでしょう。


特典解説



*メニュー画面は英語、仏語、スペイン語から選択。映像特典には英語と仏語が収録されています。

Sketches(1990-2003)29m10s
 ・Desde el cerro Almodovar (3m27s)
 ・El campo del moro (6m12s)
 ・Terraza de Lucio (5m30)
 ・Gran Via y Madrid desde Torres Blancas (4m24s)
 ・Madrid desde Capitan Haya (5m02s)
 ・Membrillero (3m02s)

エリセはロペスの仕事に密着してビデオを回したりメモをとったりしていたことを「芸術新潮 スペインの歓び」のインタビューの中で語っていて、最後に「この記録は、もうじきDVDになるはずです」と言っているのですが、それがこの「Sketches」なのでしょう。エリセらしいオーバーラップを用いた編集やロペス本人のナレーションなどちゃんと一つの作品として仕上がっています。エリセのフィルモグラフィに加えるべき素晴らしい短篇だと思いますね。

Conversation Victor Erice/Antonio Lopez in TV program: "Version Espanola" (38m19s)

スペインTVE-2チャンネルの映画番組「Version Espanola」が『マルメロの陽光』をプログラム、エリセが放映後の討論会にアントニオ・ロペスとともに参加して自作について語った時の映像です。完全収録かどうかは分かりませんが、メディア露出が極端に少ないエリセの映像はとても貴重であると言えるでしょう。

Discarded scenes

 ・Las Meninas (8m37s)
 ・La visita de los amigos (visit of the friends) (9m31s)

カットされたシーン2種。一つ目はエンリケ・グランとロペスがベラスケスの「ラス・メニーナス」を巡って意見を交わすシーン。『マルメロの陽光』には、この二人がミケランジェロの「最後の審判」を眺めながら意見し合うシーンが出てきますが、エリセのベラスケスに対する思い入れの深さ、「ラス・メニーナス」を題材にした映画の製作を断念したという経緯があることを思えば非常に興味深いシーンだと言えます。二つ目はロペスが庭で友人たちと談笑するシーンの別テイク。カチンコを打つ若い女性と画面上部に一瞬映る収録マイク。

Behind the camera

 ・BIO&FILMOGRAPHY
 ・Los desafios
 ・El espiritu de la colmena
 ・El Sur
 ・Alumbramiento (from Ten Minutes Older, the Trumpet)

何と言っても『Los desafios(対決)』のスチル写真がレアです。早くDVD出して〜。

Shooting stills

『マルメロの陽光』の撮影風景を集めたスチル15点。

Portfolio

 ・Film references(33pics)
 ・Antonio Lopez.Life and work(129pics)
 ・Artists featured in the film(77pics)

アントニオ・ロペスと彼の仲間のアーティスト達の作品やプライベートなスチルが239点も収録された恐るべき資料集。日本ではほとんど知られていないような作品も拝めてしまうのですからこれは何とも嬉しい特典ですね。


総評

スペイン盤はビクトル・エリセが直接製作に参加しているだけあって恐らく現存する最良のマスター素材を使用しているのだと思います。ビデオ版やLD版と同じコンポジット・マスターを使ったと思われる国内盤との画質差は歴然としていますね。映像のノイズ感こそ似たり寄ったりですが、解像度や発色はスペイン盤の方が圧倒的にまさっています。映像の質感が実に瑞々しいのです。様々な表情を見せる秋のマドリッドの光線を繊細に捉えた本作の魅力が十分に伝わってきます。それに比べて国内盤は白いベールがかったようなスッキリしない画です。それとスペイン盤はリマスターされた音声が素晴らしかったですね。非常にクリアで生々しく響いてきます。特典ディスクは本当に感涙モノ。特にエリセ本人が撮影したロペスのスケッチ風景はファンなら狂喜の貴重な映像です。もし国内盤で再発するなら是非スペイン盤のマスターを使って欲しいですね。勿論、特典も付いた2枚組みで。

[国内盤]

画質:
音質:
特典:

[スペイン盤]

画質: 
音質:  
特典:  


 

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