ある双子兄弟の異常な夜
SCENE2 熱い夜の一戦

 息を継ぐ間もない濃厚なキス。
 まるで離れていた時間を埋めようとするかのように、お互いを貪り合いながら、レイフは腰の奥が次第に熱くなっていくのを感じていた。
 ピチャピチャ…何度も角度を変えて唇を重ね、擦り合う粘膜が、絡めあう舌がたてる、ひどくみだらな音が、一層体の熱をかきたてる。
 クリスターの背中に回されたレイフの手。久しぶりに触れる恋人の肌や筋肉の手触りを味わうかのように、ゆっくりと撫で擦っている。
 クリスターも、レイフと同じくひどく興奮しているらしい。手の下に感じられる、彼のよく鍛えられた体は熱く、きめ細かな肌はしっとりと汗ばんでいた。
(はっ…はぁ…はっ…)
 普段ほとんど息を乱した姿など見せないクリスターなのに、その呼吸は速く、せわしない。
 一体どんな顔をしているのだろう。レイフがそっと目を開けてみれば、たちまちクリスターの強い眼差しに瞳を射抜かれ、息がとまりそうになった。
(うわ…クリスターでも、こんな熱っぽい目をするんだ…)
 レイフを見据えるその目は、凄みのある金色に光っていて、まるで飢えた獣のよう。
(うわぁ、すげぇ綺麗んだけれど、本当に食われそうな気がして、ちょっと怖いぜ)
 そう思いながらも、レイフはクリスターの顔から目を離せない。
 レイフの注視に気がついたのか、クリスターはふっと笑った。それもまた凄艶とでも形容したくなるような色気があって、レイフはたまらず、顔を背けてしまう。
 すると、クリスターは露わになったレイフの首筋に、濡れた唇を押し付けてきた。
「ひゃっ…くすぐってぇ…」
 敏感な部分を舐めまわされたレイフは思わず肩をすくめ、クリスターの執拗な愛撫から逃れようと密着する体の間に手を入れて、押しのけようとする。
 レイフの抵抗に、余計にその気をそそられたのか。クリスターは胸を押し返す手を捕まえてシーツの上に押さえつけると、今度はレイフの鎖骨の部分に舌を這わせ、そこに軽く歯をたてた。
「ちょっ…そこ、やめっ…!」
 びくんとレイフの上体が跳ね上がるのをクリスターが全身で押さえかかる。相手が相手だけに、たぶん彼も必死なはずだ。
「う…ウっ…うっ…ん…」
 こそばゆいのか気持ちいいのか分からない、しびれるような感覚が、たちまち全身に広がって、レイフの力を奪っていく。ついに彼は、クリスターの下に長々と伸びたまま、くったりとおとなしくなってしまった。
「どう、レイフ、感じる…?」
 笑いを含んだ甘い声が、耳たぶに息を吹きかけながら囁くのに、レイフはぎゅっと目をつむって、こくこくと頷いた。
「ほんとだ、ここ、もうこんなに固くなってるね」
「えっ…」
 とっさに目をむき、うろたえながら頭を上げるレイフ。
 クリスターは悪そうな顔で笑うと、大きく上下するレイフの胸に手を滑らせ、固くとがった突起を指の腹で押し潰した。
「馬鹿、ここのことだよ」
「アッ…あ…」
 レイフは喉をのけぞらせ、ぶるぶるっと震えた。変な声が口から出てしまうのが我ながら恥ずかしかったが、どうしても抑えられないのだから、仕方がない。
(いや、もう、そこもあそこもギンギンになってるとも…気持ち良すぎてもう大変。クリスター、いいから、もっと触ってくれよ…)
 この期に及んで恥ずかしがっているのも馬鹿らしい。積極的に受け入れモードになったレイフは、愛撫をねだるように、クリスターの逞しい肩や胸を手の平で擦った。
「おまえのだって、ちゃんと尖ってるじゃん…ほら…」
 お返しとばかり、乳首を軽くつねってやる。気持ち良かったのか、クリスターは、くぐもったような低い声を漏らした。
「ん…ふ…」
 下腹部にずきんと重い熱が落ちてくる。レイフの股間のものは見なくても分かるくらい、きつくそそり立っていて、そこに直接触れてもらいたくてしきりに腰を擦りつけようとするのだが、クリスターはまだ焦らすつもりか、なかなか触れようとはしない。
 レイフは苛々と歯がみした。
(おまえさぁ、オレよりはるかにやる気満々だったはずだろ。そんな痩せ我慢してねぇで、やるならいっそひと思いにやってくれよぉっ)
 何だか無性に腹が立ってきたレイフは、割られた膝の間にしっかり収まっているクリスターの腰に、がつんと踵で軽い蹴りを入れてやった。
「痛っ…レイフ…!」
 レイフがベッドの上から涙目で睨み上げると、クリスターは蹴られた所をさすりながら、唇をすぼめた。
「そんなに焦るなよと言いたいところだけれど…ちょっと意地悪しすぎたかな…?」
 クリスターは素直に謝って、レイフの唇にちゅっとなだめるようなキスをすると、勃起した彼の性器を手の平で優しく包み込んだ。
「ハッ…ッ…!」
 体中の神経がそこに集中しているのではないかというほど敏感になった部分への接触は、強烈だった。レイフは息を飲み込み、反射的に腰を動かしそうになった。
「ひ…ん…っく…」
 待ちわびた刺激をようやく得られたレイフは、震える唇を噛みしめ、期待に満ちて、瞼を震わせながら目を閉じる。
「ああ、そうだ。忘れるところだった」
 思い出したかのように呟くクリスターの声はやけに現実的で、レイフは訝しげに眉根を寄せた。
 クリスターの体が一瞬レイフの上から離れたかと思うと、ペット脇のサイドテーブルをごそごそと探る気配がする。まさかと思ってレイフが目を見開くと、例のラブローションを2本両手に持ったクリスターが、彼を上から覗き込みながら、極めて真面目な顔つきで聞いてきた。
「おまえ、どっちを試したい…?」
 グレープフルーツ? それとも、キウィ&ミント? 安心安全、どちらも食べられるよ?
 レイフは何かがのどに詰まったように顔を真っ赤にしながら、息も絶え絶えの風情で囁き返した。
「キ…キウィ…」
 キウィだろうがキュウリだろうが、何でもいい。とにかく早くどうにかしてくれというのがレイフの本音だが、クリスターは気付いているのかいないのか、慣れた手つきでラブローションの蓋を開け、とろりとした液体を彼の胸から下腹部にかけて垂らしていった。
「ひゃあ、何すんだよ、冷てっ…」
 火照って敏感になった肌は、それさえも快感ととらえるのだろうか。レイフの声はわななき、吐く息はまたあがってしまった。
「さっきよりも、もっとよくしてやるよ、レイフ」
 レイフの反応を楽しみながら、クリスターは手の平でゆっくりとマッサージするようにローションを塗り広げていく。
 たちまち体温でふわりと甘い香りが立ち上り、レイフは鼻をひくひくさせた。
 確かに、これはおいしそう。
「ほら、口、開けろよ」
 反射的に開いたレイフの口に、クリスターは濡れた指を差しこんだ。
「あ、ほんほ…はまい…」
 いきなり指を突っ込まれて目を白黒させたレイフだが、本当に食べられそうな甘い味だったので、抵抗なくクリスターの指に舌を這わせ、ちゅうちゅうと吸った。
 クリスターはレイフの口腔の中をしばらく探りながら、無心に己の指を吸っている彼の無防備な顔をじっと見守っていた。その瞳は、とろんとした蜂蜜色に変じている。
「可愛い…」
 感極まったように呟いて、クリスターはレイフの唇から指を抜き取ると、その胸に舌を這わせ、濡れて光る乳首をぺろりと舐めた。
「はぁ…クリスター…あーっ…」
 耐えかねたような甘い声を漏らして、レイフは、クリスターの指と舌が胸からゆっくりと下腹部の方に向かいながら愛撫していく、気持ちよさに溺れた。
 クリスターのもう片方の手は、再びレイフの性器にかかり、先ばしりの液で濡れたそこに、更にねっとりしたローションを塗り付けるよう、上下にしごき始めている。
 ぞくぞくとした痺れに腰が震える。クリスターの手で容赦なく責めたてられている、その部分に血が集まっていく感覚に、目の奥がちかちかする。
「あっ…そこ、クリスター、もっと強く…気持ち良くして…」
 クリスターの指先にぎゅっと先端を締め付けられ、あまりの刺激に、レイフは一瞬弾け飛ぶかと思った。
「ひっ…く…いい…すごく…クリスター…もっと…もっとぎゅっとしてくれよ…!」
 歯を食いしばり、目からうっすらと涙をにじませ、絶え間なく押し寄せてくる快感の波にレイフは悶える。ぎりぎりまで追いつめられているのに、いけそうでいけないのが、辛い。
「まだ…だよ、レイフ…」
 レイフに比べるとまだ余裕の構えのクリスターだが、ここまで来たら、かなり切羽詰まってきたのか、囁く声は切れ切れに掠れていた。
 クリスターは、レイフのみっしりと引き締まった腹を、舌で正中線を描くように滑り降りていき、脚の付け根に何度も唇を押し付けて強く吸った。そうして、ゆったり扱いていた、そそり立ったレイフの性器にたどりつくと、体液とローションでたっぷり濡れたそれの根元から先天まで、味見でもするかのようにぺろりと舐め上げた。
「!…えっ…えぇっ…?!」
 レイフは思わずはっと息を吸い込み、目を見開いた。温かく濡れた粘膜が、ずきずきと痛いほどに脈打っている己の性器を包み込む感触に、喉をのけぞらせて叫んだ。
「あっ…うあ…あっ…!」
 快感のあまり思わずうねりそうになる腰を、クリスターの手で押さえつけられる。
「ひっ…う、嘘…クリス…あっ…ああっ…!」
 何が起こったのか、とっさに信じられなくて、レイフは両手で顔を覆い、頭をそらせて、その光景から目を背けた。
(ええっ、嘘、ありえない! ク、クリスターが―あのクリスターがオレの……をく、口で…?!)
 すっかりパニック状態のレイフの股間では、まさしくあのクリスターが、レイフの性器を舌と唇で丹念に愛撫していた。ぱんぱんに張りつめた、それの表面に浮き上がった筋や血管を辿って舐め上げたかと思うと、とめどなく透明な液をあふれ出している先端からゆっくりと口に含み、舌を這わせ、口腔の粘膜に擦り付ける。
「ク、クリスタ…そ、そんなこと…やめ…」
 そんな弱々しい訴えなどはね付けるよう、じゅっと、ひときわ大きく、みだらな音をたてて吸われて、レイフは激しく身を震わせた。
(ああ、どうしよう、ショックで見られないよ…て、待て…)
 突然、素に戻ったレイフは、かっと目を見開き、逸らしっぱなしの頭をぐんと振ってもとの位置に戻した。
(い、いや、見るよ、見るとも…こんなすごい画、見ないなんて、もったいない…!)
 レイフのものを含んだクリスターの唇が動いている。そこからちらりと覗く紅い舌。どうしよう、興奮のあまりふらふらする。
 レイフが血走った目を向けているのに気付いたのか、クリスターは目を上げた。
 とろんと霞んだ瞳には、欲情のあまり体を火照らせ、だらしなく開いた口で荒い息をしているレイフが映っている。
(ああ、もう、たまんねぇよ、クリスター…)
 クリスターの手が、レイフの膝にかかった。脚を大きく押し広げ、レイフのこぼした体液でたっぷりと濡れた指を茎の根元に滑らせ、その後ろの陰嚢を撫で下ろし、更に奥にある、穴の部分をつついた。
 何をされるか察知したレイフは、反射的にきゅっとその部分を縮める。
「レイフ、レイフ…ほら、いい子だから、力抜けよ」
 円を描くように周囲を指で辿りながら、クリスターが懇願する。
 レイフはしばし息を詰めて、クリスターの指先がくすぐる感触を堪えていたが、次第に触れられている部分からじわりと熱が内部にしみこんでいくのを覚え、その体からは自然と力が抜けていった。
「っ…あっ…!」
 たっぷりとローションを塗り込みながらレイフの肛門を探っていたクリスターの指先が、ずぶりと内部にめりこんだ。
「う…くっ…き、気持ち悪っ…」
 レイフはクリスターの肩を震える手でつかみ、激しく喘いだ。やはり、この異物感には抵抗がある。
 しかし、制止の声を上げる間もなく、クリスターの長い指は内壁を広げながら、深く押し入ってきた。
「気持ち悪いだけじゃないだろ、レイフ…?」
 潤滑剤の助けを借りてスムーズに指を抜き差ししながら、クリスターはレイフのそこを丁寧にほぐしていった。緩んだところでもう一本指を増やし、ぐるりと肉の壁をかき回しながら、レイフの中を探り続ける。
「ひっ…」
 突然、腰の奥で激しい快感が弾け、レイフはがくんと後ろにひっくり返った。
「な、何した、今…?」
 クリスターが触った個所から腰全体に広がっていく甘い痺れに、レイフは戸惑い、信じられないように目を見開いた。
「ふふ、ここが感じる所なんだ。どれ、もう一度試してみよう」
「ちょっ…待て…ひぁっ…」
 レイフの乱れっぷりが楽しかったのか、クリスターが嬉々として、その部分を執拗に指先でぐりぐりと刺激する。とめることもできず、レイフは言葉にならない悲鳴をあげて、のたうち回った。
 腰から発した快感は電流となって背筋を駆け抜け、頭の芯まで痺れさせる。何が何だか、訳が分からない。
「んっ…ひぃ…あ、あぁっ…!」
 とても自分のものとは思えない、凄い声が口から迸る。嫌々をするように頭を振る度、汗が飛び散る。苦しいのか気持ちいいのかももう分からず、レイフは涙を振りまいた。
「クリス…タ…やめ…オレ、変にな…ひっ…」
 泣いて口では訴えながらも、己の肉の中をかきまわす指先がもっと欲しくて、レイフは無意識に腰を持ち上げている。そこをもっと強く押してほしい、爪先で引っ掻いてほしい。
 レイフの性器は生き物のようにぶるぶると震え、充血した先端から大量にあふれ出した体液が、クリスターの指をたっぷりと濡らしていた。
「潤滑剤なんか、別にいらないくらいだな」
 ローションと体液が混じったとろりとした液を塗りつけるように根元から先端を擦り上げ、ぎゅっと締めつけてはまた滑り下ろす。クリスターの手の動きは一層激しくなって、レイフを追いつめていった
「ん…ヒッ…いっ…あんっ…あっ…」
 レイフは頭を左右に揺らせ、クリスターの肩を掴んだ指先にぐっと力を込める。この部分、きっと青あざになるだろう。構うものか。ささやかな復讐だ。
 その時、抽挿を繰り返していた指が、唐突に引き抜かれた。
 クリスターが肩を掴む手を外して身を引いたので、すがりつく場所を失ったレイフは、シーツの上にがくっと沈み込んでしまう。
「レイフ…可愛いてたまらない…僕のレイフ…」
 うっとりと囁いて、クリスターは弛緩したレイフの長い脚を抱え上げると、十分に下拵えして柔らかくなった入口に己の屹立したものの先端をぴたりと押しあてた。それは、クリスター自身の体液で、既にしとどに濡れている、
「くっ…く…」
 クリスターは収まるべき場所を求めて猛っている己のものに手を添え、力を込めて、ゆっくりとねじ込みにかかった。
「う…あっ…!」
 先端を入れられた途端、レイフの小さな悲鳴があがる。
 クリスターはレイフが落ち着くのを待って、挿入を再開した。なるべく相手を傷つけぬよう細心の注意を払って、ゆっくりと慎重に…最初の引っかかりを通過すると、後はローションの助けもあって、クリスターのものはレイフの内部にずぶずぶと沈み込んでいった。
「…ぅんん…ッ!う、あ…あ、あっ…!」
 体内に押し入ってくる異物感に一瞬レイフは手足をばたつかせて抵抗したが、それもすぐにやんで、己をじわじわと侵し満たしていく圧倒的な質量を受け入れていった。赤く染まった、その胸には玉のような汗が噴き出している。
「…はーっ…は…はぁ…っ……」
 クリスターのものを全て飲み込んだ後、レイフは覆い被さってくる彼の体に腕を巻き付け、しばし息を整えた。
 早く発射したいのはもちろんだが、こんなふうに深くつながったまま、クリスターを感じるのも悪くない。
「レイフ…いいかい、動くよ…?」
 切羽詰まったようなクリスターの声がした。早く出したいのは、どうやら向こうも同じようだ。
「あ…う、うん…」
 言うやいなやクリスターの腰が引かれ、次の瞬間レイフの尻を激しく打ち据えた。あまりの衝撃に、レイフの意識は吹っ飛んでしまう。
「!…ひっ…くあ…ああっ…あんっ…あっ…!」
 大きく跳ねるレイフの腰を引き寄せて、クリスターはもっと深くに己自身を突き入れた。そうして、再び接合が外れそうなほど腰を引いて、思い切り打ちつける。
 喉をのけぞらし、全身を痙攣させるレイフ。両目からは、ぶわっと涙が迸った。
「ひぃん…ひっ…あ、あっ…あんっ…」
 力強く、激しく、何度も何度も、クリスターに体内深くえぐるように突き上げられて、すっかりたがの外れたレイフは、頭を振り立てて泣き喚いた。
「ああっ…ハッ…はぁっ…」
 クリスターの口からも、抑えようのない声が溢れてくる。鉄の自制心も、ついには限界を超えたらしい。
 ぎしぎしぎし…2人の下で、買ったばかりのレイフのペッドが今にも壊れそうなほど盛大な音を立てている。
「ああっ…クリスタ…いい…もっと…う…んっ…」
 初めは少しは苦痛もあったのか、苦しげに眉根を寄せていたレイフの顔は、今はすっかり快楽に蕩け、半開きになった目は紗がかかったように霞んでいる。
 唇がほとんど無意識に動いて、もっと欲しいとねだっていた。
 クリスターは応えるよう腰を動かしながら、レイフのびくびくと震えているものを上下に扱いて追い立てる。
「レイフ…レイフ…んんっ…レイフ…!」
 荒い息の合間に洩れる、クリスターの切迫した声。抑制を解いて本能に任せて腰を振り、まるでそれしか言えなくなってしまったかのようにひたすらレイフの名前を呼びながら、彼は己の欲望を打ち込み続けた。
「はぁっ…クリスター…はっ…クリス…」
 レイフも、うわ言のように、クリスターを呼ぶ。熱を持った粘膜でぎゅっと彼のものを締め付けて、貪欲に貪りながら―。
「い…いきそ…ひっ…イク…」
 限界まで固く張りつめたそれへと精嚢から送られてくる、その流れに、射精の瞬間が近いことを感じ、レイフはぶるぶると尻を震わせた。
 同時に、充血して過敏になったレイフの粘膜は、己の中と外を行き来するクリスターのものが更に膨張し、放出が近いことを伝えてくる。
 こうなると、もう意志の力ではコントロールできない。レイフへの気遣いも忘れ去ったクリスターは、限界まで彼の脚を押し広げて固定し、壊そうとするかのごとく無茶苦茶に突きまくった。
「はっ…はぁっ…あぁっ…!」
 狂ったようにレイフは叫んだ。
「レイフ…っ…ふっ…レイフ…!」
 熱にうかされながらも、レイフは薄っすらと目を開いて、発射のラストスパートに入ったクリスターの顔を見た。
 ぎゅっと目を閉じ、眉間に皺を寄せ、開いた口からはぁはぁと息を吐き出している。その強烈な色気が漂う、雄の顔にぞくりとする。同じ顔を、きっと、今のレイフもしているはずだ。
 まるで一体と化したように繋がって、互いの汗と体液でぐちゃぐちゃになりながら絡み合い、もうどこまでが自分どこまでが相手なのかも分からない。当然だ、2人はもとから一つ生き物なのだから。
「…っ、はぁっ…はあぁっ…!」
 先の達したのはレイフの方だった。勢いよく迸った白濁した液は、クリスターの腹に当たって、跳ね返った。
「は…はぁ…っ…!」
 レイフがまだ放出を続けている時に、クリスターもぐんと体をのけぞらして痙攣し、レイフの中に精液を注ぎ込んだ。
「ふ…うっ…んっ…」
 しばしの放心状態。
 腕を投げ出し、解放後の脱力感に浸っているレイフの上で、クリスターは肩を揺らしてしばし息を整えている。
 自分でも驚くほどの暴走ぶりだったのだろうか、少し戸惑い、呆然としているようだった。その顔に、やがて深い喜びと満足感が浮かび上がってくるのを、レイフは幸せな気分で眺めていた。
「クリスター…」
 レイフはクリスターに向かって手を差しのべながら、甘やかな声で呼びかける。
「レイフ」
 クリスターはレイフの手を取り、それに引かれるがまま体を折り曲げ、繋がったままの少々苦しい姿勢ではあったが、弟の唇に優しいキスをした。
「どう? よかった?」
 レイフはにこっと笑った。
「うん、そりゃ、もう最高。こんなに気持ちのいいことしたの、もしかしたら、生まれて初めてかもってくらい、よかったともさ」
 レイフはクリスターの鼻に自分の鼻先をくっつけて、じっと彼の瞳を覗き込みながら、言った。
「同じこと、また最初からまたしたいって、思うくらいにさ」
 そうして、今度は自分からクリスターの唇に唇を重ね、舌を中に押し入れて、熱をかきたてるよう深くむさぼった。
 あれだけ激しくやったばかりなのに、一度いったくらいでは、まだ体の火はおさまりきらないようだ。こうして触れ合っていると、再び腰の奥からじりじりとあぶられるような感覚が沸き起こってくるのだから、不思議だ。
「…そうだね」
 長いキスの後やっと唇を離したクリスターも、熱のこもった眼差しをレイフにあてて、ゆったりと頷いた。
 体に埋め込まれたままのクリスターのものが再び力を取り戻して、固くなっていくのが分かる。
 レイフの下腹部で一休みしていたそれにもじわじわと熱が下りて、小さく頭をもたげ始めている。
 レイフはクリスターの耳に唇を近付けて、熱い息を吹きかけながら、煽るように囁いた。
「さあ、来いよ、クリスター…まだまだ時間はあるんだし、オレ、もっともっとお前を感じたいんだ」
 それ以上の言葉はいらなかった。
 もつれあうように沈み込む2人の下で、既にさんざん酷使されたベッドのスプリングが、再びぎしぎしときしむ音をたて始めた。
 2人きりの熱い夜は、まだ終わる気配もない―。
 

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