PEKIN

北  京


 北京は中国の首都とはいえ、全てがスケールが大きい。道幅は広く真っ直ぐであり、都市計画に基づいた緑が多く大きな近代的ビルが建ち並んでいる。しかし中心部においても昔ながらの煉瓦造りの一般の庶民の家が街の至る所に見られ、その古さと新しい中国の姿とが何ともアンバランスに感ずる。つい先頃オリンピックの開催が決まったばかりであり、あちらこちらにオリンピック歓迎の広告が貼られている。またオリンピックが決まり一段と古い住宅が取り壊され新しいビルの建設が加速しているかのように至るところで見られる。こうした様を見るにつけ、中国は国の力で都市計画が思い道理に出来るという一面の強みがあることを強く感ずる。また中国のめざましい発展ぶりとそのスケールの大きさ等を見るに付け、日本の行く末に思いを寄せずにはいられない。

京  劇

 今回の旅行では、各都市に行くごとにその都市の代表的演劇を見てきた。北京では中国を代表する伝統劇である京劇を見に行く。開演前京劇の役者がお化粧をしているところが見られるとのことで、客席横の部屋へ見に行く。会場内には欧米からのお客さんが多く見られた。舞台横の上には電光掲示板が用意され、役者のせりふを中国語と英語で表示してくれている。しかし喋る速さに合わせて表示されるため、舞台を見つつ文字を追っかけるのが大変で何となく話の筋が分かるという感じであった。2本立てで、最初のものは恋愛もので動きが少なく、2人の役者の話が中心で筋がよく分からずそれほど面白く感じない。その後は歴史物で善悪がはっきりし、筋は単純で動きが激しく見応えがあった。最後は曲芸を見ているような演技で、子供達はそれなりに楽しめた様子。

万里の長城(八達嶺)

 敦煌最後の夕市で現地の人の自家製の杏子ジュースを子供に飲ませたのが原因と思われる下痢のため長男がダウンしてしまい、妻と長男は一日中ホテルに缶詰状態となる。長男は結局北京まで来て北京の見所をほとんど何も見ずに終わってしまった。前回のタイへ旅行の際も長男は最終日に椰子の実ジュースが原因と思われる下痢のためダウンしたが、またもややってくれた。子供を連れての旅行では一番注意しなくてはならないことをあらためて肝に銘ずるのであった。
 長男と妻を残し、娘と2人で出かけることになる。万里の長城へ向かう途中、オリンピックの水泳会場となるところが見える。またその近くで、大規模な遊園地らしきものが途中で建設が中止しているところがあり、ガイドさんに聞くと外国資本が途中で手を引きいつ完成するか未定とのこと。北京市内でもそれらしきところが何カ所か目に付いた。
 高速道路が次第に山の中に入っていくが、途中から我々の進む一方の車線しかないことに気が付き不思議に思い、ガイドさんに聞くと別のところに反対車線はあるとのこと。その時はそれで納得したが、帰りになりその仕組みが分かる。
 長城に着く。向かって左手が男坂で右手が女坂とのことで娘と一緒のため比較的緩やかな女坂の方へ進む。まさに写真等でよく見る万里の長城である。ちょうど土曜日のため中国国内の観光客が多く通路はすごいにぎわいである。途中で写真を撮りながら進むがとにかく人が多くて、思うように前に進めない。とりあえず下から見えた小高い砦まで登ろうと考えて進む。思いのほか急なところも多く、天気は曇り空ではあるが夏であり、汗を拭き拭き前に進んでいく。ここは8世紀に作られたというがその壮大さに感心する。上部へ登れば登るほどさらにその先に繋がっているのが見え、これが敦煌の方まで繋がり総延長6000kmにも及ぶということにただ驚くばかりである。
 当初からあそこまで登ろうと思っていたところまでくると、その最後のヶ所が坂が急で人々がつまり流れが極端に悪くなる。おりる段になり前がつまり、注意しながらやっとそこをおりてくる。この長城のすごさもさることながら、人の数もすごい。幸い曇り空で照りつける暑さはないものの、汗だくであった。写真で見るだけではなく自分で来て自分の足で歩いてみて初めて分かる満足感と感激がこみ上げてくる。それにつけても妻と長男が北京まで来ていながらここにこれなかったのが何とも残念であった。多分2人はもっと無念に思ったことであろう。
 来るときは高速道であったが、帰りはどんな道を通るかと思っていたところ、高速道にほぼ並行して走る一般道(旧道)を走ることになる。途中何カ所にもミツバチの養蜂場が見られた。

天安門・紫禁城

 前門の左手の方からこの広場に入り毛主席記念堂の横を通り、天安門広場を縦断する。最大50万人の人が入ることが出来るというが本当に広い広場である。次に地下道をくぐり天安門の正面から故宮博物院へ入る。ここは東西750m、南北1000mの長方形の敷地とのことであるが、天安門をくぐり続いて端門、午門、太和門、太和殿、中和殿、保和殿、乾清門・・・・と進むがその広さと大きさにただ圧倒されるばかりである。かつての皇帝の権力の大きさを偲ばせるというばかりではなく、中国の国の大きさはさることながら、中国という国の底知れぬ潜在力の大きさをひしひしと感ずるのであった。見るもの全てのスケールが大きくかつての皇帝の権力の大きさと、歴史の重さを感じさせるに十分すぎる。
 太和殿は、映画「ラストエンペーラー」の即位式の場面で使われていたが実際にそうした儀式に使われた所とのこと。またここは現存する中国最大の木造建築とのこと。内部には皇帝の座った王座が残っている。大分くすんではいるが内部の柱や天井等も金の彩色が施され見事であった。
 保和殿の後ろにある写真の大石雕は長さ16.6m、幅3.1mで重さも250tの1枚岩を彫ったものとのことだが北京から50kmも離れた場所から冬に道を凍らせ運んできたという。これだけ見ても桁はずれたそのスケールに驚くばかりである。
 乾清門の裏手の内廷は皇帝の日常の執務や生活の場とのことであるが、外朝の人を圧倒するような建物に比べこじんまりとした印象を与える。御花園には中国各地から集められたと思われる珍しい石が沢山飾られた庭園が出来ている。
 その後裏門のすぐ北にある景山公園へ移動 。ここは故宮の外壕を掘った土で作ったものとのこと。東側の階段の登り口に明の最後の皇帝崇禎帝が首をつって自殺したと伝えられる樹(当時の木はすでに枯れ現在のものはその後に植えられたもの)がある。大分歩いた後で階段を上るのは大変であるが、比較的緩やかな階段で頂上まで登る。故宮の真後ろにあり高さ108mからの景色は故宮を見渡すことが出来すばらしい。またここから北京の四方を一望できる。
 この後裏手のお茶の店に案内される。そこで色々なお茶を出され、結局お茶を買う羽目になる。最高級のジャスミン茶2個と、中性脂肪にきくというお茶1個合わせて9000円を支払う。後から値段を聞きしまったと思うのであった。

天壇公園

 
 北京最後の日の午前中天壇公園へ行く。ここは明・清代の皇帝が五穀豊穣を祈った場所とのこと。門をくぐるとその正面に白い大理石作りの基壇が見える。この園丘壇には建物が無く基壇のみ。冬至に皇帝が五穀豊穣を直接祈った場所とのこと。続いて皇穹宇を見る。ここは先祖の位牌を安置したところとのこと。周囲の壁は回音壁と呼ばれ壁にささやくと反対側の人に伝わる仕掛けとのことで早速試したが、人が多くうまくいかない。そこを抜け長い石畳を進んでいくとその前方に祈念殿が建っている。
 円形の屋根が3層となった木造建築である。中国を紹介した写真ではしばしば見かける建物である。梁や釘が1本も使われていないとのこと。屋根には青い瓦を使っている。見終わり右手へ進んでいくと長い回廊がある。そこには中国の老人が集まっており憩いの場所になっている。京劇の練習をしている人々や、碁のようなものをやっている人や胡弓やダンスの練習をしていたり、中には通路に水で見事な字を書いている人等が沢山見られた。