2017年仏像シリーズ第45作



法隆寺金堂(奈良)<薬師如来坐像>国宝

 この像は数年前より毎年年賀状の作品候補として上げていたが、彫りが単純になるために何となく見送られてきた。版画にしたい仏像候補がしだいに限られてきたため、ようやく今回取り上げた。
 法隆寺のこの像は、同寺の釈迦如来坐像と大変形が酷似しているが、釈迦如来坐像はお顔がやや日本人離れしているが、こちらの方がお顔が少しふっくらして、涼しげで、穏やかな微笑みをし、親しみやすく感じられる。光背の彫刻も、彫りが浅く、模様も比較的単純で、仏像木版画を作成する上でこの時代以降の仏像と比較して技術的に物足りなく感じていたが、精神性という点で捨てがたい魅力を秘めいている。
 そもそも薬師如来は病気平癒を願っての仏像であるが、最近色々な事件が起き世の中がいささか病んでいるようにも感じられる。あらためてこの薬師如来にあやかりたいものである。
 今回はこれまでの私の仏像版画の作品に比べて技術的に物足りなさを感ずる人もあるかも知れない。しかし最後の6色目の黒を少し押さえ若干ぼやっとさせることにより、この仏像の持つ優しさや精神性が多少表現できたかと考えている。ただ今回も2色目の彫りが少なくなり立体感がそれだけ出せず、しかも6色の色バランスにやや難がある。

番外仏像作品(広隆寺 弥勒菩薩半跏思惟像)