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広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像と中宮寺の菩薩半跏像(伝如意輪観音像)は飛鳥時代を代表する二体の半跏像である。いずれも日本の仏像を代表する世界に誇れる美しい仏像である。両者は光背の有無を除けばほぼ同じポーズで、右足を左足の腿にのせ、手を頬に寄せて瞑想しており、アルカイックスマイルと称される優しさに満ちた微笑みを浮かべており、神々しい気品にあふれている。
50枚限定 6色 W23.1 × H32.7 (p)
広隆寺は603年推古天皇の時代に創建された京都最古の寺院である。聖徳太子建立の日本7大寺のひとつとのこと。広隆寺は818年火災で焼失、弘法大師の弟子であり秦氏出身の道昌僧都によって再建されたが、1150年にも火災にあい、現在の広隆寺はその後に復興したものとのこと。
中宮寺菩薩像の表情は女性的で母性を感じさせるが、広隆寺の菩薩半跏思惟像は中性的で、知性的穏やかさを感じさせ、両者甲乙付けがたいすばらしい穏やかな笑みは見るものの心を癒やしてくれる。いずれも日本一美しい仏像と言えよう。
広隆寺のこの像は国宝指定第一号で、像高は123.3cmと等身大である。広隆寺にはもう一体弥勒菩薩像が安置されているが、こちらの弥勒菩薩は、宝冠を冠っているようにみえることからもう一体の弥勒菩薩と区別して宝冠弥勒と呼ばれている。
この像を版画にしたのは今回で3回目である。再任用も後一年弱を残すこの時期に来て、この仏像だけは、是非もう一度大判に仕上げてみたいと考え取り組んでみた。しかし毎回オリジナルのすばらしさを十分に表現出来ないでいる。私の作品はそもそもオリジナルを忠実に再現することを考えているわけではないが、形を変えることは出来ないので、色の表現を微妙に変えている。今回はあえて、暖かい笑みの中にもいささかクールな涼やかさを表現したいと考え、少し緑系の色を紛れ込ませた。毎回のことながら、摺る際に既に彫ったところに色が付き、画面を汚してしまい、中々思うように摺れない。また摺った直後は意図した色になっても、絵の具が乾いてくると、いささか白っぽくなり、しかも摺りむらが出てしまう。しかもホームページ用に写真に撮ると実物以上に色むらが目立ってしまう。何年やっても思うような作品に仕上げらない悩みがある。