ほんなら・・・
  ほんでも・・・


     27回目 
    『樹村みのり』さん。
・・・]Y
      ・・・・・2005年2月5日・・・・・


 このページに載せたものは、雑誌の切り抜きです。
 切り抜いたほとんどの物は単行本化されていたので、五点しか載せていません。
 自分で気がついて切り抜いたのも有りますが、貰った方が多いです。


『夏の歌』
夏の歌

樹村みのり 著

Jotomo 6月号が初掲載
らしいけれど、この切抜き
は、急遽穴埋めの為に使
われたギヤルズ・コミックDX
1997年発行


夏の歌


 義兄の遠い親戚の十五歳の女の子恵美が、小さい頃両親を亡くし親戚を転々とした末、一時的に預かる事になったと父が言った時、同じ歳だが一学年上の息子の良は妙に嬉しがった。

 恵美は一人でやって来た。
 良は男と見間違う風貌の恵美を好ましく思ったが、家を案内して彼女の部屋に連れて行った時、部屋の隅に座り込む恵美を見て影を感じた。
 夕食時、家族の話に反応しない寡黙な恵美を見て、すぐには打ち解けないのも仕方ないと思った。
 急に立ち上がった良が机の上のお皿を割った時、恵美は慄いた表情で「ぶたないで ぶたないで」
躰を震わせて言った。
家に来て初めて言った言葉だった。

 数ヶ月経った夏、髪を切ってもらった恵美を見て「似合う」と良が言った。
 屋根上に布団を干した恵美を見て、良は「危ない」と自分も屋根に上り恵美の横まで恐る恐る近づいたが恵美は平気だった。
 屋根上から見える海を見て恵美は目を輝かせ、良に「一度も海た事がなかった」
「歩いて行けるから行こうか」良が誘った。
 海を前にし、恵美の生き生きとした顔を良は初めて見た。

 恵美はしだいに明るさを取り戻し、家族の中に打ち解けてきた。
ある日、「良が好き」とみんなの前で恵美が言った。
親達のけげんな顔を前にして、良はあせった。
 「これまで親切にされなかったから、あのように言ったんだ」そう言う良に父親は「それで良ぇやんか」「そんなん、嫌や!誰にでも言えるやんか」と良。

 その後、自意識過剰になった良は、解消すべく「つきあってみなよ」と自分が選んだ男を恵美に紹介した。
 帰宅した恵美は、良に「良い男みたいだけれど、どうしてつきあいさせるのか分からない」

 翌日、学校で男に聞くと「良い女だけれど、話題は君の事と君の両親の事だけだった。お前、好きなんだろ?」
『ふたりの人間のあいだで同時に恋がはじまるなんてまれなことさ どちらか先に気がついたほうが大事にしていかなければね・・・』
 歳の割には気の利いた事を良に言った。

 夏休みが終わっても恵美は帰る事なく、校区の中学に通う事になった。

 いつの日か、深く思っている僕の”心”を恵美は見つけるだろう。
その時が来たら、二人の夏に向かって二人で船をゆっくりと漕ぎ出す、そう思う良だった。



 幼年・少年期に、親を含めた他人様からの愛情を受けずに育った女の子を描くのが多い樹村みのりさんで・・・
(少女漫画で多く見られるモノでも有るけれど)・・・薄幸の少女に手を差しのべるののも、これまた若い男(今回は青年ではなくて少年)で・・・(少女漫画で多く見られるモノでも有るけれど)・・・読み終わって「良かったねぇ〜」って気分にさせるのも・・・。

 本誌のコマ枠の外に広告が載せられていて
春が来ぬ間に、みっちり研究・男の子『ボーイズ ボーイズ ボーイズ』ギヤルズライフ・シリーズ 定価880円
なんてのから、
『女のキャリアカタログ 女の仕事100』キミのお仕事を決める前に、絶対読むこと!! 880円”。
なんてのも。
 ギャル・コミを読む年齢層向けの『夏の歌』ですね。
 当時はまだ、こう言う広告を樹村みのりさんは許容していたのかどうか知らないし、自分の漫画が掲載されているページに載る広告までは事前に分からないでしょうが、五年後の『
女性学・男性学・・・ジェンダー論入門』時ではきっと、眉をひそめたでしょうねぇ〜。


『1980年の未婚貴婦人』
1980年の未婚貴婦人

樹村みのり 著

掲載誌・年月日不明ですが、
「1981年7月21日
昨年 秋の号?」
と書いてあるので多分、
ギャルズ・コミックDX
秋の号
1980年発行


1980年の未婚貴婦人


 一コマ目
1980年の未婚貴婦人 彼女は素直で謙虚 小さいときから家の人のいいつけを よく聞きよく従った あるとき一家の家事が 彼女ひとりに負わされたときも 不平をいわず ただ黙々と働いた

 二コマ目
彼女の兄は(年上なのに) 男性だからという理由で 彼女と同じ苦役からはまぬがれた 彼女の妹も(同じ女性なのに)年下だという理由で 彼女と同じ苦役からはまぬがれた

 三コマ目
かくしてクラスメイトが 幼い恋愛と 受験のなかで 自分自身を 試行錯誤していたとき 彼女の頭の中は その晩の夕食の 献立の心配で しめられていた


 四コマ目
にわかに湧きだした 校庭の向こうの黒雲には 6時間の体育の授業の中止よりも 干したままでてきた洗濯物が 心に浮かんだ

 五コマ目
『兄弟たちが 進学したときも (同じように優秀な 頭脳をもっていながら)彼女ひとりは断念した 毎日の洗濯物と 毎日の皿洗いが あまりにもおおかったので』

 六〜十コマは飛ばす。

 十一コマ目
『けれど 年長の兄 彼女にとって 判断の絶対者 兄の判断は 神の啓示にも似て いわば彼女の専制君主』

 十二コマは省略す。

 十三コマ目
本来 彼女の明るく 優しい性格が これですっかり ビクビクおどおど 自信なげな外貌をおびた』
      ・
   ・・・略す・・・
      ・
 一九コマ目
 『・・・・彼女はただ 黙々と従った』

 二十コマ目
 『そしてキミたち 彼女の自主性のなさを 指摘する前に 思え 彼女が境遇を 受けいれた素直さを 不平不満を 思いつくことなく 黙々と耐えたけなげさを 受け入れ耐えた現実の その年齢の女のコに ふさわしくない あまりの夢のなさを』

 二十一コマ目
 『それゆえ彼女が ねむりにつく前の ほんのひとときの枕辺を 華麗な空想で飾ったとしても いったいだれに”現実逃避”と 責める権利があるだろう? 年長の同性に 導かれ 愛される少年 なぜかそれが彼女の夢物語』

 二十二コマは抜かす。

 二十三コマ目
 『空想はだれも傷つけはしない ただ彼女をなぐさめ その年ごろの好奇心を充たした・・・性の秘密を垣間見る 彼女はまた 現実の幸福をも追い求めた 彼女にとって神に等しき存在の 兄の紹介で ひとりの男性と交際した 25をいくつかすぎた 遅い春』
       ・
       ・
 清楚と控えめで身をまとった彼女と、一流づくしの男。
連れ込み旅館前で「行きまっか?」には従順な態度で応じた。
       ・
       ・
 三十三コマ目
 『・・・このとき 彼女が”結婚できる”と快哉を叫んだとて』

 三十四コマ目
 『ムリはない 彼女は結婚したかった 友人たちに遅れては ならじと』

 三十五コマ目
 『彼女が 兄(異性)から学んだのは 従順さと謙虚さ ということ そして確かに 彼女の一番よく知っている 異性(兄)は そうしたとき 彼女を庇護して くれたもの 彼女は期待したのだった 今度もまた そうであるものと (キャリア・ウーマンが生き生きと働く職場の相手に)』
            
            
 で、寝たものの振られた。
        ・
        ・
 三十九コマ目
 『ほとんどなにも知らなかった 相手の男性については 敬い畏れた兄の 紹介だというだけで 兄の幻想を相手に 重ねて見ていただけ 彼女は そんな相手と身体を重ねても それはまるで通り魔のように 彼女を襲って通りすぎた だけの人間・・・去っていった今となっては』

 で、二十一コマ目が脳裏に浮かんできたんだとさ。

 四十二コマ目〜四十六コマ目
 『兄弟に恋こがれるなら タブーを犯さなければならない』
 『それは”遺伝”ということ 一番 現実的なタブーはといえば』
 『”遺伝”なく・・・生殖なく 物事が行われれば それは少しもタブーには とれない 社会的には』
 『なんという符丁の一致 ではあの空想のなかの 非生産的な男たちは 深層心理の兄と自分? あれ〜〜〜〜〜』

 彼女はその後、時々襲われる夢を見、兄の時もあり、兄の襲われるのは願望なのか?ならば”変態”なのか?と思い悩んだものの、単なる自己形成過程の一つであると。

 五十一コマ目
 『ホモセクシュアルに憧れることは内気な少女の”健全な”夢 今度こそ本当に 愛する人にめぐりあおう』

 五十二コマ目
 これまで、一度も他人を好きになった事がなかったと気付いた彼女なのだけれど、
『・・・けれど そのおかげで どんな結果にあっても それだけにはならなかった 彼女の兄が あんなにも心配した 社会の落伍者だけには(思え 彼女の賢さを)

 で、1980年の未婚貴婦人さんは、雑踏の町の中ではただの年老いたレィディなんだけれど、結婚=メデタイ 老いて独り身=オキノドク と言うけれど『どれだけの人が家族から学んだものから自由でいられるだろう?』
 だもんだで、”オールド・ミス”なんて言わないでくれ!!
求めているのは『純粋至上の恋人との恋愛 だれかかなえさせてくれないものか』

 おしまいのコマ
 『1980年の未婚貴婦人 背すじをしゃんと伸ばして街をゆく やってごらん やってごらん 好きなことを してごらんよ お兄さんとだって恋をしてごらんよ あなたが本当に愛する人が 彼しかいなかったのなら それはそれで しかたないじゃない 聞けば地球も そろそろ終わるという噂 1999年を向かえるころには だからかまやしない 好きなことをしてごらん お兄さんとだって 寝たらいい そうしたら 花束を贈り ベルを鳴らし 花火を打ちあげよう 1980年の未婚貴婦人 眠りの前のひと呼吸』



 何が何だかさっぱり判りません。
判らんから、文字をほとんど載せたんですわ。

 従順・素直・清楚は「あきまへん!」と言うのか?
・・・・あったり前じゃないのかい
 オールド・ミスなんて言ってくれるな。
ただ恋愛したいんねんけど誰もかなえさせてくれないだけやねんもんねって言いたいのか?
・・・・誰かにやってもらうものなのかね。
 好きなら兄貴とでもかましまへんってかいな。
・・・・この漫画上では兄貴は”従順・素直・清楚”がお好みなんだから、兄さえ「かましまへん」って言えば成就しまんがな。

 分裂気味の頭脳をもってして描いたような気がしないでもないけれど・・・と思ったら一番最後のページには樹村みのりさんの自像が描かれ、そこには
『頭痛・心痛・肘痛・胃痛。 髪を切ったら洗髪だけがらくになりました』と上に書き、自像には頭を指す手には『頭は確かにココにあり』と、胸を指す手には『心は確かにココにあり  胃は確かにココにあるはずなのに  あるときは 身体全体が 頭になったり 心になったり 胃になったり  ズキズキ ズンズン ドキドキと 彼らは不規則に 脈打つのです』


『転校生』
転校生

樹村みのり 著

ギャル・コミ
夏休み号(9月)
1982年発行


転校生


 東京からさほど離れていない所とは言え”とうきょう”に憧れを持つ小学校に、都会の匂いを放つ六年生の女の子が二学期に転校してきた。
 白い大きな家に住み、色白、パーマのかかった髪、二重まぶたの可愛い顔。
服装だってかなり違う。
勉強の進度も、前の学校では一学期で全部終わらせたと言う。
 クラスの女の子達は意識し、もちろん男の子達も彼女を意識した。

 二学期のクラス委員長に選ばれてしまった彼女は、別にこれまでと同じように接していたのだが、しだいに男の子からも女の子からも浮き上がりよそよそしくなっていった。
 寂しく思った彼女だが、算数の試験で平均点以下だった事から、”普通の女の子”だと級友達に受け入れられ親しくなっていった。



    
『そのころ 
     わたしたちはみな子どもだった
     思い出すと
     ときどきはボーゼンと
     「あれで子どもだったのだ
     なにもかもわかっていたじゃない?」
     と考えたりもするのだが
     年令的には正式な”子ども”だった』

                  
(扉のページに書かれた文)

 子供の頃を描くと樹村みのりさんの右に出る人はいない・・・ような気がする・・・。
 大人になると子供を美化しがちだが、そうもならず、三十歳半ばになろうかと言う頃に描かれたこの作品は、冷静に子供達の心の動きを爽やかに丁寧に描いた。


ホンダ1300・クーペ9(後ろ)
28回目も、 
『樹村みのり』さん
・・・]Z 
最終回です。


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