序文
2013年の梅雨の最中に、知人が経営している事業所を見せてもらった。
その会社は約四十年の間、小型の機器を製造販売している。地元ではある程度の知名度もある。
工場を見学して驚いた。以前勤めていた事業所の三十年以上前の姿がそこにあった。
懐かしかったが、当時の勤務先事業所がそうであった様に製造現場が適正に管理されていない。
最近はその会社には沢山の人が訪問している。その中には工場の管理者も沢山居ただろう。
その道のプロであれば現場に少なからず問題があるのを見抜いた筈で、ひとりもその事を現在の経営者に伝えていなかった事が残念である。
わたしは、学生時代に大学の先生からある事を教わった。
それは、仕事で人間のエネルギーを有効に活用しないのはその人々が当然として得られるであろう対価を減らす事になり、その人々の労力が十分に報れない事になる。人を活かし生産性の高い作業現場を目指すのが大切だと。
これまでの私の半生はひたすら効率のよい作業現場を追求してきた。
最初は作業動作の分析と改善が主なる仕事だった。そのうち生産量を増やすのと、生産性を高める為に作業の機械化・自動化が求められた。改善対象が作業者ではなく、だんだん設備の設計製作が主流になった。
しかし、どんなに作業の機械化・自動化が進んだとしても、事業所には人間が存在する。その人々の事業に対する意欲があるのとないのでは、会社の実力は大違い。それは今も昔も変らない。
「人は石垣、人は城」と戦国大名は考えたそうだが現代の企業も同じだ。
とりわけ、製造会社においては作業者の力は会社の基盤だ。
円滑に会社を運営するのに「経営学」が必要ように、製造会社では、「現場を管理する知識」が不可欠だ。
私のこのHPが皆様の会社の生産性向上にお役に立てることを願っている。
言うまでもなく管理するというのは「計画」・「実行」・「評価」を繰り返して目標を達成することである。
冒頭で触れた事業所では「あるべき姿」言い換えれば「標準」が明確に示されていない。または、作業者の自主性にゆだねられている。言葉を変えれば作業者が放任されている。
恐らく、その事業所の従業員質が高いとか、製品の性能が他社より優れているなどの特色があり経営が成り立っているのだろう。それはそれで良いことだが、より多くの利益を得る機会を逸しているかもしれない。
日本にはそのような事業所がまだ多数存在すると思われる。
どうか、効率のよい作業がされる事業所を確立して欲しい。
それが人間を人間らしくする道のひとつだと疑わない。
2013年夏
モノつくり畑 管理人
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