予習挑戦型へ脱皮して
潜在能力を開発する

                               2013年1月 志村英盛
1.予習挑戦型人財が増える
  ポジティブな組織風土にしよう


風土とは土壌・地形・気候を全体としてとらえた自然環境のことである。
恵まれた日本の風土と大きく異なり、アフリカやシナイ半島の砂漠の風土では
種をまいても植物は育たない。

企業の組織風土とは、企業において人々が働くための、組織、ルール、
行動慣習、思考様式、価値観、意思決定
を全体としてとらえた企業環境
のことである。

日本の経済成長を支えてきた、トヨタ、ホンダ、パナソニック、シャープ等、
優れた企業のポジティブな組織風土は社会に貢献する人財、ベネフィットを
創り出す人財を数多く育ててきた。

これとは大きく異なり、一攫千金を至上とした米国の投資銀行・
リーマン・ブラザース等のマネー・ゲーム企業
ネガティブな組織風土
は、米国のビジネス・スクールを出た
優秀な経営修士から、実に多数の金融詐欺師たちを生み出し、
社会に大きな惨禍をもたらした。

大金を懐にいれて、金融詐欺師たちはいち早く遁走して姿を眩ました。
しかしながら、金融工学詐欺=金融危機ため、世界各国は大不況に陥り、
大きな経済的ダメージを蒙った。

特に、まじめに働いていた数千万人の労働者に、失業という惨禍をもたらした。
現在に至も、世界各国で多くの人々が、金融工学詐欺に起因する企業の崩壊、
消費沈滞、設備投資不振などによる経済的惨禍に苦しんでいる。


『アラビアのロレンス』の舞台、シナイ半島の砂漠地帯(NASA衛星画像)

2.予習挑戦型マネジャーが特に重要

黒字企業と赤字企業の大きな違いの一つは、予習挑戦型人財が増えていく
ポジティブな組織風土であるか、それとも予習挑戦型人財が減ってしまう
ネガティブな組織風土であるかという組織風土の違いである。

人財が増えるポジティブな組織風土
は、
また相互信頼感が強まる組織風土でもある。

ドラッカー教授は『現代の経営』(ダイヤモンド社1996年1月発行、原著は1986年発行)
『第10章 フォード物語』で、「わずか15年の間に起こった
成功から崩壊に至るフォード物語ほど、劇的なものはない」
「自動車業界では、この15年の間、フォードは一度として黒字だった年は
なかったと広く信じられている(おそらく間違いではあろうが)

「その現実はあまりにひどく、再建は難しい、あるいは、人によっては
不可能とまでいうほどだった」
「ヘンリー・フォードの経営の失敗の根本原因は、
10億ドル規模という巨大企業を
マネジャー
(=経営管理者)抜きでマネジメントしょうとした
ことにあった」と述べている。

経営者が企業を私物視しているような企業のネガティブな組織風土では
有能な予習挑戦型マネジャーは増えない。

ヘンリー・フォードの経営の失敗の根本原因は、フォードの組織風土を
予習挑戦型マネジャーが増えないネガティブな組織風土にしてしまった
ことである。

日経ビジネス05年1月3日号第46頁~第47頁は
『中間層なき悲劇 西武凋落は人材育成を怠ったツケ』
という見出しで、
「会社を支えるミドル(中間層)が機能せず、現場の活力が失われていく」
「ミドル不在の断層が拡大して組織は機能不全に陥った。
西武グループの悲劇は、
強すぎるカリスマと弱すぎるマネジメント層から成る
前近代的組織が生んだ悲劇だ」と述べている。

ドラッカー教授がフォード物語で取り上げた経営失敗事例の
典型的な日本版が西武グループである。

日経産業新聞05年2月24日第3面は1兆4000億円にも上る
グループ有利子負債を生んだ元凶とされるホテル・リゾート事業は、
食器一つに至るまですべて堤義明氏の一存で決められてきた。
「ホテル・リゾートは前会長のロマンを形にした事業だったが、
もっと採算を考えてほしかった」
「堤義明氏は、自分はグループの管理者ではなく、所有者であると
勘違いした裸の王様」と報じている。

読売新聞(朝刊)05年2月24日第39面は「全国でホテルやスキー場、
ゴルフ場などの観光施設を経営するコクドは、
バブル経済の崩壊で経営が悪化、1996年から昨年まで、
毎年の赤字額は約93億円-約25億円に上った」と報じている。

堤義明氏は巨大な西武グループの組織風土を、
予習挑戦型
人財が増えない
ネガティブな組織風土にしてしまった。

明晰な頭脳、強い意志、迅速な行動力を身に付けていた堤義明氏の失敗は
『現代の経営』でドラッカー教授が指摘した自動車王ヘンリー・フォードの失敗と
完全に同じである。

3.予習挑戦型、復唱前例型、漫然先送り型

予習挑戦型とは織田信長や藤吉郎時代の豊臣秀吉のように、
絶えず自発的に情報収集に努め、
情報に基づいて状況変化に果敢に挑戦して、
革新・改革・創造に挑むタイプである。

徳川家康は本能寺の変の「九死に一生を得た」体験で、
情報の重要さを身に沁みて認識し、
織田信長や豊臣秀吉を超える予習挑戦型に脱皮した。

予習挑戦型に対比される復唱前例型とは、
指示されたことや前例を忠実に守り実行するタイプである。
指示待ち型と言い換えてもよいと思う。

真面目で勤勉であるがレーダー的情報収集力が弱く、
予習挑戦型と比べて、変化に対応する迅速な行動力が弱い。

今ひとつ予習挑戦型に対比される漫然先送り型とは、
徳川幕府の長期安定に向けて着々と手を打っていた
徳川家康の豊臣家に対するあからさまな挑発行為に対して、
洞察力皆無で、情報源の開拓も、レーダー的情報力の強化も
全く行わず、
タイムリーに有効な手を打たず、
なすことなく滅び去った淀君秀頼母子のように、
毎日漫然と与えられた仕事を行って、
問題はすべて先送りして、
状況の変化に対応する
革新とか改革とか創造とかを考えないタイプである。

環境の変化に対する危機感が弱い
「アスタマニャーナ(=そのうち)型」とも言える。

これまで27の企業を赤字企業から黒字企業に転換させ、かつ、
黒字転換後も着実に企業成長させている
日本電産の永守重信社長は、
復唱前例型人材や漫然先送り型人材が
予習挑戦型
人財に変わる、
人財が増えるポジティブな組織風土
をつくりあげる名人だと思う。
永守社長は、予習挑戦型人財が減り続けていた企業を、
予習挑戦型人財が増えるポジティブな企業に変えてしまうわけである。

注:
予習挑戦型、復唱前例型漫然先送り型という用語は、いずれも筆者が
考え出した用語である。予習挑戦型に似た英語の語句はproactiveでは
ないかと思う。
Googleによるとproactiveは次のような意味である。

Acting before a situation becomes a source of confrontation or crisis.

descriptive of any event or stimulus or process that has an effect
on events or stimuli or processes that occur subsequently;
"proactive inhibition"; "proactive interference"


(of a policy or person or action) controlling a situation by causing
something to happen rather than waiting to respond to it
after it happens.

4.自由に発言できるポジティブな組織風土をつくれ

会議で積極的に発言したり、積極的に上司に意見具申すると、
「上司をないがしろにしている」、「生意気だ」、「常識がない」、
「チームワークを乱す」、「立場の違いが判っていない」、
「ひとの領分に口出しするな」、「自分の分をわきまえていない」
「事前に根回ししたこと以外の問題を持ち出すな」
などと非難されたり、悪口を言われ、結局、仲間はずれにされたり、
左遷されたり、冷遇されるのが、予習挑戦型マネジャーが減ってしまう
ネガティブな組織風土である。

企業や経営者や上司に対する愛社精神・忠誠心と、会議において
経営者や上司の、現状認識・事実認識・方針・戦略について、
自由に率直に意見を述べることとは別のことである。

太平洋戦争敗戦以前の日本の「タテ社会」構造での思考様式や、
長い時間をかけて培われてきた日本的儒教や武士道の、
「主君に対する忠誠心最重視意識」が、
「会議での積極的な発言を経営者や上司に対する反逆視」する遠因
になっているが、
「自由・率直な意見表明を封じる」
特に「経営者や上司の考え方についての意見表明を封じる」ことが、
逆に、企業や経営者やマネジャーをダメにしてしまうことを、
経営者は十分に理解しなければならない。もちろん
「会議での積極的な発言を経営者や上司に対する反逆視」する
ネガティブな組織風土
では予習挑戦型マネジャーは増えない。

経営環境の複雑な変化の重なり合いが、時々刻々と起きている
時代にあっては、
【自分の目や考えに狂いはないという思い込み】
【情報に基づかない思い込み】
【狭い視野での情報】
【偏った視点からの情報】
【単細胞的な短絡的な考え方】
【前近代的な価値観】【身分意識や先輩意識や個人感情にこだわった意見】
などは、経営者の的確な現状認識や意思決定の妨げとなることを、
経営者は十分に理解しなければならない。

日本経済新聞(朝刊)2008年11月5日第40面【私の履歴書】で
松田昌士(まつだまさたけ)JR東日本相談役は
「国鉄組織はそれぞれの専門分野に合わせて、縦系統の統治を伝統としていた。
機械系、土木系、そして事務系の3系統である。
弊害は言わずと知れた過剰な縦割り意識を生み出すことである。

結局、どの系統も、了見の狭いムラ意識に凝り固まり、広く遠い目で
【国鉄のため】と考えることができなくなる。
国鉄が駄目になった理由の一つは、
風通しのよい組織風土が育たなかったこともあると思う」と述べている。

読売新聞(朝刊)2006年3月2日第8面で日本航空の外部諮問機関
【安全アドバイザリーグループ】の座長を務める作家・柳田邦男氏は
「(日本航空は)これまで【声を上げれば唇寒し】の社風だったが、今回、
管理職が署名運動を展開するなど、経営のあり方に発言するようになったのは、
風通しが良くなる前兆といえる」と語っている。第2面で、社長に就任する
西松遥氏は【社内でものが言えるような風土にしたい】と語っている。
今までは【ものが言えないネガティブな組織風土】であったわけだ。

日本には、日本経済を支えている、トヨタ、松下、ホンダ、シャープなど
優れた企業が数多くある。これらの企業においては、社内に相互信頼感が
定着しており人財が増えるポジティブな組織風土がある。

日本航空は経営者たちのみならず、マネジャーたちも、
労働組合の指導者たちも、
頑なに既得利権を固守するという狭い視野から抜け出し、
視野を広げ、視点を変えたものの見方考え方を取り入れて、
虚心坦懐に日本経済を支えている優れた諸企業の
人財が増えるポジティブな組織風土を見習って、
まず、相互信頼感が強まる組織風土づくり
真剣に取り組まなければならないと思う。

社内において相互信頼感が欠けている
のに、
顧客に
【日本航空を信頼して下さい】と言えるのだろうか?

読売新聞(朝刊)2006年3月3日第3面の【社説】『日航再出発-危機感
共有し輝きを取り戻せ』は「相次ぐ運航トラブルで元々揺らいでいた
日航への信頼感は、内紛によってさらに低下した。客離れは深刻だ」と
論じている。筆者は、この点について、日本航空の九つの労働組合の指導者
たちは真剣に反省する必要があると思う。


資料出所:読売新聞(朝刊)10年1月21日第1面
     

参考サイト:日本航空(JAL)V字回復ー東日本大震災の衝撃

読売新聞(朝刊)2005年1月25日第38面は『三菱ふそうトラック・バスは24日
「三菱自動車から分離する以前から【リコール(回収無償交換)は1年に2件程度】
とする企業風土があった」などとする社内調査結果をまとめ国土交通省に提出
した』と報じている。同紙はまた『品質保証部門の担当者が「歴代役員から
【リコールは乗用車と大型車あわせて2件ぐらいまで】という無言の圧力があった」
と証言した』と報じている。

結果として、これらの歴代役員は【顧客の信頼感を絶対に裏切らない。
誠心誠意社会に尽くす。法を遵守する】という三菱グループの基本精神を
踏みにじってしまったのではないだろうか。

結果として、歴代役員は藤本隆宏東大教授がいわれる企業の【組織能力】
【進化能力】を台無しにしてしまったのではないだろうか。結果から見るならば
歴代役員は多数の優秀な人財を復唱前例型や漫然先送り型にしてしまったと
考えざるをえない。

「和を以て(もって)尊し(とおとし)と為す(なす)」と言われる。
筆者は企業においては、この「和」は決して静的な「和」ではないと思う。
停滞的な「見ざる、言わざる、聞かざる」の状態での「和」ではない。
企業を取り巻く環境の共通認識を欠いた状態での「和」でもない。
企業の経営理念やマーケティング戦略が不明確なまま、
仲良くしようという「和」でもない。

企業で言う「和」とは企業を取り巻く環境の共通認識に基づいて、
企業の経営理念とマーケティング戦略を確認したうえで、
価値観や、視点や、考え方の相違を克服して相互信頼・相互協力する
動的な「和」であると思う。
対話を重視する「和」であると思う。

積極的に自分の意見を述べることは
決して企業の「和」を乱す(みだす)ことではない。
積極的に自分の意見を発表して、相互信頼・相互協力することが
企業における「和」である。
企業における「和」の意味を誤解してはならない。

日経ビジネス01年9月24日号第184頁の『マイカル破綻の泥沼-
敗軍の将 四方修前社長が激白』のなかで、四万前社長は「一言で言って、
マイカルは常識外の世界だった。経営戦略会議ではほとんど発言がなく、
極めていい加減だった。過大な投資をしても投資効果が上がらずに
回収がままならない。最大の原因は、自由にものが言えない組織風土にある。
ものが言えないから、あれやこれやと言われれば、うまくいかないことが
分かっていても適当な数字を作ってやってしまう」と語っている。

1986年、どん底状態にあり、ドイツ本社が日本からの撤退を考えていた
時期にトリンプ・インターナショナル・ジャパン社に入社した吉越浩一郎社長は、
日本経済新聞04年6月28日第17面で
【とんでもないところに来た】と心底(しんそこ)落ち込んだ。
多少英語はできるが、事なかれ主義の社員ばかり。悪い情報は一切、
上にはあげない。トップもドイツ本社の顔色ばかりうかがっている。

だから、ずっと赤字続きだった。何年か後、【あのまま赤字を垂れ流していたら、
日本から撤退しようと考えていた】とドイツ本社から聞かされた」と語っている。

日本電産系の企業では、これと正反対に「ひとの領分に口出しする」
「違う立場から見た意見を言う」人財が増えるポジティブな組織風土である。
日本経済新聞(朝刊)04年2月4日第13面で、日本電産の永守重信社長は
「うちにはメーカーや金融機関のほか、旧大蔵省や日銀の出身者もいる。
こういう人たちは、会議で何か言わないとクビになるから、
いっぱしのことを言う。
外部の視点でどんどん発言してくれるから役立つ
」と述べている。

また
「日本企業の人材評価は間違っている。学歴が象徴的に示す知能や
頭の良さばかりを重視している。高学歴の人とそうでない人との能力差は
あまりない。大きくて5倍程度。それより大事なのはやる気や情熱だ。
仕事に対する意識は人によって百倍の差がある」
とも述べている。

日経ビジネス04年5月24日号第32頁で、永守社長は
「普通の再建の仕方は間違っている。『年齢が高いから切る』とか
『能力がないからいらない』なんて僕は言わないよ。
怠け者にはやめてもらうということだけや」と述べている。

永守社長は日本経済新聞(朝刊)04年10月20日第9面に
掲載された第6回日経フォーラム『世界経営者会議』での講演の抄録の中で、
「1973年に創業して32年目になる。この10年は企業買収と買収した企業の
再生に重点を置いてきた。23社を買収し、こうした企業を付け加えながら、
売り上げや雇用を拡大してきた。この間
企業の社会的貢献は何か
聞かれれば、それは、
雇用の拡大だと答えてきた。将来は従業員数で世界最大にしたい。」

「企業の再生でも従業員を削減しないことに力点を置いている」「病は気から
というが企業もおかしくなるのは社員の心や経営者の心情からだ。まず、
心を治さないと会社は良くならない」「企業が病むとなぜ赤字が出るのか。
23社の再建で感じるのは社員の心が病んでいること。社員の心が病むのは
経営者の人心掌握力と実行力が欠如しているからだ。地位で人を動かし
業績が悪化しても責任をとらない。使いやすい人間を後継者に選ぶ。
社員の士気はどんどん落ち、品質やサービスの質が低下する。
経営者への不満と不安の繰り返しで業績は更に落ちていく。」

「社員がやる気を無くすと何が起きるのか。遅刻や欠勤が増えていく。
23社では出勤率は90%、悪いと80%台前半だった。次に
整理、整頓、清潔、清掃、作法、しつけ の6Sが悪化して職場が汚れていく。
6Sは良い社員、良い会社、良い品質の3Qにつながる。
社員の士気はこの二つに収れんする。
個人の能力とはまったく別の世界だ」
「日本の企業の再生に必要なのは社員の心の再生」
「社員の心をつかんで変えるのがトップの役割だ」と述べている。

読売新聞(朝刊)07年8月24日第9面より転載
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5.おいしいキウイフルーツを実らせる風土とは

日本経済新聞(朝刊)2004年11月1日第40面の【私の履歴書】で
武田國男武田薬品工業会長は、10年前の社長就任時の組織風土について
次のように述べている。
「長く窓際にいたので会社のだめなところが、手にとるようにわかっていた。
ぬるま湯の中で仲良しクラブや部門エゴにうつつを抜かし茶坊主しか出世しない。
万事ドンブリ勘定で、責任の所在などあってないようなもの。
日本の製薬業界でトップと威張っていても、世界を見渡せばけし粒みたいな
ものだ。それでも《武田だけはつぶれない》と危機感のかけらもない」。

武田会長は11月17日の同欄では次のように述べている。「1978年食品
事業部マーケティング室課長になった」「失敗分析と新製品導入を目的とした
横断組織をつくった」「いろいろ話していくうちに、感心できない実態が
明らかになった。開発の人間は営業の声をあまり聞こうとせず、営業側も
現場のニーズや他社の動きなどに意見を持っていても積極的に発言していない。
まず組織間の風通しをよくすることが必要だった。

これまで順調にきた食品事業部には、そこそこ利益も上がっていることだし、
失敗に触れるのはお互いにやめようという雰囲気があった。
上司の批判はもちろんだめ。私は食品事業部にタブーなしということにしないか、
偉くても威張らず、みんなフランクに自由に話し合おうと言い続けた」。

キウイフルーツという果物がある。ニュージーランド産がおいしいことで
有名である。しかしキウイフルーツの原産地は中国の揚子江流域で、
もともとはチャイニーズブルーベリーと呼ばれていた。酸っぱい果物で、
あまりおいしいものではなかった。

とろが1906年、中国を旅行したニュージーランド人が、この果物の種子を
ニュージーランドに持ち帰って植えてみたところ、中国産の2倍の実をつけ、
味も甘くておいしいものができた。

そのため、またたく間にニュージーランド中で栽培されるようになり、
名前もニュージーランドの國の鳥「キウイバード」にちなんで1950年ごろ
キウイという名前がつけられたとのことである。つまり、キウイフルーツは、
中国の風土から、ニュージーランドの風土(=土壌・地形・気候)に移った
ことで甘くておいしいという潜在能力が開発されたわけである。

2004年5月28日、NHK教育テレビ21世紀ビジネス塾で
『町づくりは変人からはじまる』という放送があった。
そのなかで、「ワインについての世界的最新資料『Wine Report 2004』の
[最も注目すべき新しい銘柄ベスト100]のなかに
[Miyazaki Tsuno Wines (Japan,\1220)]が選ばれている」との紹介があった。

このワインは宮崎県都農町の都農ワイナリーの製品である。
この製品づくりは、ぶどうの木が育つ土壌の改良から始まっている。
良い土壌に育ったぶどうの木は良いぶどうを実らせる。
良いぶどうがあって始めて良いワインができたという
たいへん感動的な内容であった。
ちなみに都農町は、町全体で『土壌づくり』に取り組んでいるとのこと。

6.マネジャーは稀少で高価な資源

ドラッカー教授は名著『現代の経営』(ダイヤモンド社1996年版上巻)の
第164頁第10章『フォード物語』の始めのところで、「マネジャーは、企業に
とって、最も基礎的にして稀少な資源であり、かつ高価な資源である。
最も早く陳腐化する資源であって、最も補充を必要とする資源である」と
述べている。

ドラッカー教授はまた『ポスト資本主義社会-21世紀の組織と人間はどう変わるか
(ダイヤモンド社1993年7月発行)の第91頁で「1950年代のはじめにはすでに、
マネジャーとは
【他の人間の働きに責任を持つ者】と定義されるようになって
いた。しかも今日、われわれは、この定義でさえ、あまりにも狭義であることを
知っている。マネジャーとは、正しくは、
【知識の適用と、知識の働きに
責任を持つ者】
と定義されなければならない」と述べている。

筆者はマネジャーは、仕事の質の良し悪しを見分けられる専門能力の他に、
下記の
五つの能力を身につけていなければならないと思う。


部門や職場のいちばん難しい問題には、自ら取り組み、解決できる能力

部下の業務処理上の問題点を的確に見抜き、部下に問題解決のヒントを
与えられる能力

業務処理のピークタイム、あるいは非常事態発生時においては、現場で
指揮をして部下の一人ひとりに最優先行動事項を指示して、深刻な問題の
発生を事前に防ぐ能力

部門や職場の目標、方針、仕事の仕組み、仕事のプロセス、仕事の結果を、
メンバー全員に共通認識させ、メンバー全員に、役割、分担、必要な技能を認識、
自覚させる能力

部門や職場が、未経験の問題に直面した時は、自ら現場で事実調査を行い、
問題の本質を見抜き、その調査事実及び問題の本質を文書にして経営者に
報告できる能力
(=作文能力)

ドラッカー教授は、企業は経営者、マネジャー、ワーカー
(一般従業員)
構成されるとしたうえで、「企業にとってマネジャーは欠かすことのできないもの
である」と述べている。筆者はドラッカー教授の言われる「企業において欠かす
ことのできないマネジャー」とは予習挑戦型マネジャーだけだと考えている。

復唱前例型
マネジャーや漫然先送り型マネジャーは、肩書きがマネジャー
であっても上記五つの能力を欠いており実質はワーカーである。従って
復唱前例型マネジャーや漫然先送り型マネジャーが多数を占める企業の
業績は低下する。
上記五つの能力を欠くワーカーを年功序列でマネジャーにしてはならない。

終身雇用と年功序列人事管理・年功賃金は別のことと考えなくてはならない。
終身雇用を維持できる企業体力があれば終身雇用は続けるべきである。
しかし、年功序列人事管理や年功賃金は廃止しなければならない。


読売新聞2005年3月28日の『ぴーぷる首都圏版』第1面で『新・日本の経営』
の著者で、著名な経営コンサルタント、ジェームス・アベグレン氏は、「今回、
50年近く前に調査した会社を再調査した結果、日本企業の価値観はそれほど
変わっておらず、現在でも【終身の関係】を大事にし、株主ではなく、何よりも
従業員を第一に考えていることがわかりました。年功序列制は大規模な
再設計の過程にあり、企業内組合の立場や力も変わりました。また
財務システムも新しくなりました。しかし、基本的な価値観は変わっていない」と
語っている。

参考情報:
年功序列人事管理と年功賃金の廃止は、数値成果主義の全面的採用ではない。
限界利益労働分配率が80%を超えると企業は倒産する。
従って人件費の大幅削減のため年功賃金を廃止して、職能給と職務給と結果給の
三つを組み合わせた賃金システムに移行せざるを得ない。
しかし、そのためには経営者は経営理念とマーケティング戦略を明確にして、
数値目標だけではなく、経営理念とマーケティング戦略の実践度・企業の存在
価値増大に対する貢献度を中心に評価が行われるようなマネジメント・
イノベーションを行わなければならない。
商品やサービスは「売る」ものではなく、顧客が「買う」ものであり、
販売員一人の努力だけで「買っていただいている」ものではない。
数値結果は重要である。
特に経営者の責任である本業の赤字は絶対に許されない。
しかしマネジャーやワーカーを数値結果のみで評価する数値成果主義は誤り
である。数値成果主義は経営者に適用されるべきものである。


日本語で陳腐化と訳されている言葉の原文の英語はデプリシェートである。
減価償却のデプリシェートである。デプリシェートとは時間の経過と共に価値が
減っていくということを表す言葉である。筆者はドラッカー教授が言われる
陳腐化とは、初めは予習挑戦型であったものが、時間の経過につれて、
復唱前例型や漫然先送り型に変わってしまうことであると考えている。
予習挑戦の意欲を失って経営環境の変化に絶えず適応する努力を欠くように
なると、かっては予習挑戦型であっても、復唱前例型や漫然先送り型になって
しまう。おそろしいことである。
復唱前例型や漫然先送り型は、実質的にはマネジャーの機能を果たして
いないから、肩書きはどうあれ、もはやマネジャーとは言えない。
かっては予習挑戦型であったが、陳腐化して実質的にワーカーになれば
賃金が減ることもあり得る。

7.勤務年数=経験年数ではない

復唱前例や漫然先送りで過ごしていれば能力は向上しない。
逆に、絶えず予習挑戦で日々の仕事に取り組んでいれば能力は
大きく向上する。

意識して専門技能・専門技術・専門知識・専門ノウハウを体得する
ことが重要である。たとえば文科系の大学を卒業して、企業で事務系の
業務のみに従事した場合である。

第1に、パソコンのワープロ・ソフトと表計算ソフトと映像処理ソフトを
完全に使いこなす技能が基礎になる。現在、どの企業においても、
コンピュータ操作のできない人はいないと思うが、毎日は操作していない
人はかなり存在すると思う。特に幹部といわれる中高年層である。
車の運転と同じで、毎日やっていないと技能が低下する。
努力して、毎日、ワープロ、表計算、映像処理の、なんらかのパソコン
操作を行わなければならない。

第2が作文能力である。筆者は、現在は、
A4判1枚=40字×50行=2000字の報告書・手紙は30分以内に
作文できる。簡単なビジネス・レターは即座に数分で書ける。
しかし、新入社員の時は1枚のビジネス・レターを書くのに3時間かかった。
【はがき】すら即座に書けなかった。

タナベ経営の時は、最初は、10枚程度の報告書を書くのに10日以上
かかった。振り返って見て、作文能力が低いために、あまりにも多くの
ムダな残業をせざるをえなかったと後悔している。

作文能力開発のためには、社内において、重要な指示は全て文書に
基づいて行う。文書を説明、理解させるという形で行うという習慣を定着させる
ことである。従って重要な報告は、メモ書きでよいから、文書に基づいて行う。
文書を説明するという形で行うという習慣を定着させることである。

第3が財務会計ソフトを完全に使いこなす専門知識と専門技能・ノウハウで
ある。会社での仕事が直接財務や経理や原価計算にタッチしていなくても
ホワイト・カラーの仕事においは財務経理の専門知識・専門技能は欠かせない。
総務・営業・購買・人事・調査・渉外・営繕などの業務に従事していても
財務経理の専門技能体得努力を怠ってはいけない。

第4がレーダー的情報収集能力の体得である。【木下藤吉郎時代】の
豊臣秀吉が身につけていた専門能力・専門技能である。

第5が英語コミュニケーション能力の体得である。

予習挑戦型マネジャーを増やし続けるためには、企業の経営理念と
マーケティング戦略を理解し、かつチャレンジ精神旺盛なマネジャーや
ワーカーへの【権限委譲】を積極的に進めることが必要である。

しかしここで十分に注意しなければならないことは、【権限委譲】は
【定期結果報告義務】とセットになっているということである。
【定期】とは【権限委譲】の内容によって変わってくるが、毎月1回、
あるいは毎週1回ということである。

【結果報告義務】を伴わない【権限委譲】は潜在能力開発に繋がらない。

日経ビジネス誌2005年2月14日号第142頁で、カルロス・ゴーン
日産自動車社長は「例えば、重責を担って難しいプロジェクトに挑戦し、
成功した実績のある40歳の社員と、難題に取り組むことなく何となく
過ごしてきた60歳と、どちらが経験豊富だろうか。もちろん前者である。
戦場で過ごした3年間の経験は、静かで平穏な環境で過ごした30年の経験に
値する、もしくは上回るかもしれない。勤続年数よりも、いかに深い経験を
積んできたかを重視し、信頼の対象とすべきだ」と述べている。

プロと素人の違いは、状況の変化に遭遇したとき、プロは「迅速・的確」に
対処できるが、素人は「どうしたら良いかわからない」ということである。
「体系化された知識+対処経験+状況変化判断力+技能・技術」の違いである。
たとえば自動車運転である。安全運転のベテランは3000回以上運転しており
「安全運転する」ということを身体(からだ)でおぼえている。どのような状況の
変化に遭遇しても即座に身体(からだ)全体が対応するから事故を起こさない
のである。

今一つ重要なことは、マネジャーやワーカー(一般従業員)に、
「自分の潜在能力を開発することが、社員として義務であり、
社会貢献である」
との意識を浸透させることである。

潜在能力を開発することは経営者の義務であり社会貢献であるが、
同時に、潜在能力を開発することは社員の義務であり社会貢献である。

8.経営能力のない経営者は企業を破綻させる

経営者も例外ではない。日本経済新聞(朝刊)2004年3月1日第2面の社説は
企業が活力を失って業績低迷に陥る原因は、突き詰めれば経営者の劣化に
ある。
成功した経営者は従来の路線を変えたがらない。社内の人脈や取引先
とのつながりなど様々なしがらみが根を張る。それらを絶ち切って企業を
変革するのは容易ではない。
しかし、グローバル化や情報化などの進展により市場競争はますます
活発になる。
企業は絶えざる変革を迫られている。このため社内の人脈や取引先などとの
しがらみの無い、戦略的に企業を変革できる経営者を社外から招く動きが
増えている」と述べている。かっては予習挑戦型であった経営者が、
漫然先送り型や復唱前例型に劣化したならば、企業が生き残るためには
プロの予習挑戦型経営者にバトンタッチすべきである。

日本経済新聞(朝刊)2007年2月7日第1面は、2005年度末において、
全国の地方自治体が50%以上出資して運営する地方公社や第三セクターの
債務が合計で15兆9000億円の巨額に達すると報じた。長期間にわたって
業績が低迷している公営企業や地方公社や、赤字の累積を続けている
第三セクターや特殊法人に共通する原因は、経営能力を欠く人が経営者の
座を占めており、実質的には【経営不在】ということである。

経営者はマネジャーやワーカーの一人ひとりの総合的な人間的能力を的確に
見抜く識別力の錬磨を怠らないことと、男女差別、学歴差別、学閥差別、
出身母体差別、社内身分差別、採用時差別、国籍差別、派閥差別などの
差別を完全に無くして、企業に対する貢献実績に応じた、競争を前提とした、
公平な人事管理を行うことが必要である。

貢献実績とは、
①企業の信用(=企業に対する顧客の信頼感)の維持向上行動の実践度
②企業のマーケティング戦略の具体的実践度
③組織の活力増大と業績向上のためのリーダーシップ発揮度
④組織の業務処理の革新・システム化・合理化等の実績
⑤新商品開発・新ベネフィツト開発・新分野開拓等の実績       である。

日本経済新聞(朝刊)2005年(平成17年)3月26日第44面【私の履歴書】
の中で、著名な免疫学者、石坂公成(いしざかきみしげ)氏は
「多民族国家の米国では各民族がそれぞれの伝統や宗教を保持したまま、
彼らが共有する社会に貢献する道が開かれた。人種差別を無くすことは
人種の違いを認め合い、それぞれの伝統を尊重することから始まっている。」

「あげた業績からいってジョンスホプキンス大学が照子(夫人)に準教授を
オファーしたのは不思議ではない。しかし、日本ではパートタイムで働いていた
研究者を昇格させることはしないだろう。そのあたりに、考え方の根本的な
違いがあるのではないだろうか。」

「照子(夫人)は1980年に教授に昇格した。おそらく米国の大学の教授に
なった最初の日本女性だろう」「私は74年から79年まで京都大学教授を
兼任した。兼任の終わりのころに、照子(夫人)も一緒に日本で教授に、という
声があった。しかし、京大の教授会が出した結論は【医学部では女性の教授の
前例はこれまでない】であった」と述べている。

9.潜在能力を掘り起こしプロを増やすことが
  人間尊重経営である


ドラッカー教授は、名著『現代の経営』(原題:The Practice of Management)に
おいて、企業は、経営者、マネジャー、及びワーカーで構成されるとして論を進めて
いる。経営者の子息を含めて、学校を出て仕事に就いた時には、一般的には、
まずワーカーの仕事から始める。最近の著書ではこれらにテクノロジストを
加えている。

入社した時は、一部のコンピュータ関連の技術者を除いて、一般的には仕事に
必要なノウハウ・技能・体験・技術・専門知識を持たない素人のワーカーに
過ぎなかった人たちの潜在能力を掘り起こして、テクノロジスト、プロマネジャー、
プロ経営者に脱皮・成長させる経営を行っていくことが人間尊重経営であると
思う。

潜在能力を開発するということはたいへんなことである。原石を輸入して石財に
加工している、わが国有数の関ヶ原石材株式会社の本社工場を見学したことが
ある。石財は輸入された原石の状態では大きな石の塊に過ぎない。原石を
切断して、研磨機の砥石でくり返しくり返し水磨きを続けると美しい石財に
変わっていく。工場の方に、何十万回位磨くのでしょうかとお尋ねした。
ケース・バイ・ケースで、回数は一概には言えないとのことであった。
原石から石財を磨き出すということは、数えきれない位の回数磨くことかと、
原石と磨き出された美しい石財を見比べてつくづくと感じ入った。

仕事という研磨機に原因自分論という砥石をつけて、くり返しくり返し、
数えきれない位自分を磨いていけば、潜在能力を磨き出すことができる
のではないだろうか。

原因自分論とは、結果がよくないことや赤字の原因は自分の情報収集不足や
予測の誤りや、方針の誤りや、自分のやり方が間違っていたためと考えること
である。知恵や工夫が足りなかったと考えることである。 

原因自分論で反省するということは、
辛いことである。
悔しいことである。
感情を抑えきれない時にはできないことである。

しかし結果を冷静に受け止め、原因自分論で結果がよくないことの原因を
とことん考え、その反省にたってよい結果を出すための問題解決に何度でも
挑戦していくことで、潜在能力を磨き出し人生を黒字にすることができる
のではないだろうか。

自社のことや、自社の顧客のことや、あるいは自分自身の仕事に関することでも、
知らないことは数多い。最低限必要な情報すら入手していないで失敗する
ケースも数限り無い。しかし、また、必要な情報を入手し、必要な技術を体得し、
タイミングよく行動すれば成功する確率は非常に高いということも事実である。

マネジャーは言うまでもなく、勤続年数の長いテクノロジストやワーカーにも、
視野が広がる視点を身につけさせることも潜在能力を開発する人間尊重経営の
一つである。

筆者は、「マーケティング戦略とは、顧客が気づいていなかった隠れている
ニーズを顧客に気づかせ、継続的にベネフィット
(=顧客が認める価値)を開発し、
絶えずプライスベネフィット(=価格対満足感比=割安感、値ごろ感、値打感)
向上させることによって顧客に新鮮な購入満足感を持ってもらう企業全体の
活動である。流通経路全体のシステム構築、あるいはシステム改善を必要
とする
」と定義している。

販売・営業担当者がマーケティング戦略の視点を身につければ、毎日の仕事
から現在の数倍・数十倍の情報を収集でき、潜在能力を開発することができる。

たとえば、小売業において、自社の売場とライバルの売場を、毎日、
見比べていたとする。
マーケティング戦略の視点が有ると無いとでは、得られる情報の質と量は
大きく異なる。単に販売するという視点で「値段中心」に観察することから、
マーケティング戦略の視点で「どのような顧客が来ているのか、
新しく仕入れることが必要な商品は何々か、中心価格帯は今のままでよいか、
販促はどのような工夫が必要か」というような観察へ変わることで
情報の質と量は大きく異なる。

日経MJ(日経流通新聞)2004年10月18日第11面に、京都のMKタクシーの
中村壽男ハイヤー課長のマーケティング戦略実践内容が紹介されている。
中村課長は、ロックフェラー夫妻や、ゴルバチョフ元ソ連大統領、俳優の
リチャード・ギア氏など世界のVIPからも指名を受ける業界で広く名前を知られて
いるベテラン・ハイヤー・ドライバーである。

数多くのVIPから指名を受ける『秘密』
『顧客の好みを徹底的に予習することと、細かい気配りをすること』である。

中村課長は、例えば外国の有名映画俳優が乗車する際には、自分の
携帯電話の着信メロディを顧客が出演した映画の主題歌にする。
琵琶湖を廻る時は『琵琶湖周遊の歌』を流す。
名所、旧跡の解説をするときにも、顧客に応じて分かりやすい例を出す。
たとえば、金閣寺が再建された1955年を外国人の顧客に説明する時は、
「オーストリアが永世中立を宣言したり、米国のディズニ-ランドが開園した年」と
いった具合だ。毎日、数時間は翌日の顧客に関する情報収集や共通の話題に
ついて予習しているとのことである。入社前にはほとんどできなかった英語も、
社内の英会話サークルや英国への短期留学制度を活用して習得。
今や、外国人顧客にジョークを交えて(まじえて)会話できるまでに上達した
とのことである。

10.個別原価計算の視点を身につける

生産管理担当者が個別原価計算の視点を身につければ、毎日の仕事から
今よりはるかに多くの情報を吸収できる。個別原価計算の視点を身につける
ためには、原価を大きく七つに区分して情報収集すればよい。

原材料・副資材・包装材等の材料費

マシン・レートと呼ばれる機械時間1時間当たりの機械設備のコスト
(減価償却費・諸税金・金利等や、電力費、マシン油等機械設備稼働の
諸費用及び修繕費)で計算 した機械加工費(=マシン・コスト)

マン・レートと呼ばれる作業時間1時間当たりの作業従事者の総人件費で
計算した直接労務費(=マン・コスト)

完成部品費


外注加工費

工場全体と生産管理システムの工場生産管理経費(管理人件費、事務所の
建物設備・ 機器・運搬具・システムの減価償却費・税金・金利、業務経費等を
含む)の負担率によって賦課される製造間接費

材料・仕掛品・完成部品の保管・移動等の在庫管理費
この七つの区分で発生費用を把握し、その金額の合計を良品生産個数で
割ったものと理解すればよい。

参考資料1:
Cost Accounting
A Managerial Emphasis
Eleventh Edition
Charles T. Horngren
Srikant M. Datar
George Foster
    共著
2003年 Prentice Hall 刊
第36頁-第47頁 
Direct Material Costs,Direct manufacturing labor costs,
Indirect manufacturing costs,Inventoriable costs,Period costs 等

参考資料2:
生産管理ソリューションの手引き
(有)篠研コムウェア 
代表取締役
篠 康太郎 著
平成13年(2001年)11月 自主制作・出版
第212頁-第227頁
第8章 原価概念と原価データ収集システム


個別原価計算の内容は企業秘密の最たるもので、どの企業でも限られた
マネジャー以外の者には見せないものである。しかし現場の担当者が
個別原価計算の視点を持てば教えてもらわなくても毎日の仕事から
様々なことを推算できる。レーダー的情報収集力を強化することで
潜在能力を開発することができる。

不良率が高ければコストは高くなる。段取り時間が増えたり、いろいろな
移動のための時間か増え、機械設備のアイドル時間が増えれば、
製品1個当たりのマシン・コストマン・コストは高くなる。機械1台の1か月の
稼働時間数が、100時間の場合と200時間の場合と、300時間の場合
とでは、マシン・レートが変わり、従ってマシン・コストも変わってくる。

総人件費が増えればマン・レートは高くなる。1時間当たりの良品生産個数が
変わればコストは変わってくる。材料や仕掛品の在庫が増えればコストは
増える。
工場生産管理経費の金額や負担率が大きくなれば当然コストは高くなる。

「現場を見れば数字がわかる。数字を見れば現場がわかる」ことが
生産を担当するプロマネジャーに要求される能力である。
個別原価計算の視点を持った現場の生産管理担当者が増えれば、
それだけその企業のコストダウン力は高まる。

11.やりがい、働きがい、生きがい

職場の連携プレー力を高めるために必要なことは、職場が現在置かれている
状況と、職場の目標、方針、戦略、仕事の仕組み、仕事のプロセス、仕事の
結果を、メンバー全員が常に共通認識することである。その共通認識のうえに
たって、一人ひとりが役割・分担・必要な技能・技術を認識・自覚することである。

共通認識と、各人の認識・自覚を徹底させることがマネジャーの仕事である。
このことをマネジャーがはっきりと、認識・自覚して、実践していれば、職場の連携
プレー力は必ず高まる。メンバーに、状況、目標、方針、戦略、仕事の仕組み、
仕事のプロセス、仕事の結果を共通認識させる能力を欠く者は、マネジャーは
務まらない。共通認識させるということは、多くの場合、チームのメンバーの
視点を変えさせることや、視野を広げさせることになる。

視点が変わり、視野が広がり、レーダー的情報収集力が強化されれば、
顧客ニーズの変化をより的確につかむことができる。そうするとベネフィットを
創り出す力も強くなる。
コストダウン力も強くなる。
従って、プライスベネフィットも高まり、
顧客の支持(=継続購入)が増えることによって営業純益(=本業の利益)
増える。

筆者は「やりがい=貢献感」「働きがい=達成感」「生きがい=成長感」だと
思っている。仕事を通じて「やりがい」「働きがい」「生きがい」を実感することが
「自己実現」だと思っている。そうして時間という貴重な経営資源は、
「成り生き任せ」「あなた任せ」「その時の気分任せ」で使うべきではないと
思っている。

時間は「やりがいを感じること」「働きがいを感じること」「生きがいを感じること」に
使うべきである。逆に言えば、やったことに「やりがい」「働きがい」「生きがい」を
感じるように時間を生かして使うことである。

一般的には、われわれは生きるためには、会社においても、家庭においても、
地域社会においても、何か仕事をしなければならない。筆者は「やりがい」とは
「たとえ周囲の人たちに認められない場合があったとしても、自分なりの
自覚的・自発的な貢献感を持つて仕事をすること、自分なりのベネフィット
(=人に喜んでもらえること)創造感を持って仕事をすること
信じている。

表現を変えれば、「嫌々ながらやる」のではなくて「喜んでやる」ということである。
どうしても必要なことだと感じたならば自発的に喜んでやるということである。

筆者は「働きがい」とは「仕事を通じてノウハウ・技能・体験・技術を身に
つけること」
だと思っている。

一般的には、学校を出て初めて仕事についた時には、会社の仕事に必要な
ノウハウ・技能・体験・技術・専門知識・先見力・リーダーシップを持たない
「ど素人」である。会社の仕事をやることによって、自分でも気がつかなかった
潜在能力を掘り起こすことができ、適職が分かり、ノウハウ・技能・体験・技術
・専門知識・先見力・リーダーシップなどを身に付けてていくわけである。
ベネフィットとは何かを認識できる判断力を少しずつ見に付けていくわけである。

筆者のささやかな体験を振り返ってみて、実際に社会に出て社会で、
生きるために必要な仕事をやってみないで、何が適職かが判るわけがない
と思う。

潜在能力を掘り起こすためには、自分で選んだ体得テーマ、
あるいは研修テーマについて3,000回やってみることである。
あるいは商品の場合は3000品目を、頭(あたま)でおぼえるのではなくて
身体(からだ)でおぼえることである。

古代エジプト史の権威、吉村作治早稲田大学教授は、1993年9月に
講談社から発行した著書『平成・学問のすすめ』の第30頁で、
「世の中には、やればできることでも【できない】という人もいる。
やってはみるが、やり方に問題があって途中で挫折する人もいる。
中には最初から【やらない】という人もいる」と述べているが、
けだし名言であると思う。

筆者は「生きがい」とは「視野が広がり、違った視点でものごとを見たり
考えたり
することができるようになり、生き方の選択の種類・組み合わせが
広がり、自分の世界が広がること」
と感じている。

12.作文能力を体得することが特に重要

13.潜在能力の掘り起こしは何歳からでもできる

日経産業新聞2004年6月16日第1面で柳井正ファーストリテイリング会長は
『各々(おのおの)が「自営業者」』とのご意見の中で、
「①
賃金は成果に対する報酬以外の何者でもない。成果以外に物差しがあったら
教えてほしいぐらいだ。

人間の能力は25歳がピークだと思う。

定年を45歳ぐらいに早め、その後は若い人の教育係やパートなど多様な働きが
選べる雇用制度があっていい。」と語っている。

筆者は柳井会長の『各々が「自営業者」』ということには賛同するが、ご意見の
なかの上記3点については反対である。

筆者は企業は経営者とマネジャーとワーカーで構成されるという
ドラッカー教授のお考えを前提に、経営者には100%数値結果による
成果主義評価が適用されるべきだと考えている。

しかし、市場選択、立地選択、先行投資額決定、組織改編、人事等、
成果を大きく左右する戦略的意思決定を行う立場になく、また実際に
それらのことについて意思決定をして実行する権限を持っていない、
マネジャーやワーカーについては、職務給と職能給と結果給の三つを
組み合わせた賃金体系に移行した上で、下記の項目についての
成果評価を行い、それらの評価と数値結果評価を組み合わせた評価を
行うべきである。

①企業の信用(=企業に対する顧客の信頼感)の維持向上行動の実践度
②企業のマーケティング戦略の具体的実践度
③組織の活力増大と業績向上のためのリーダーシップ発揮度
④組織の業務処理の革新・システム化・合理化等の実績
⑤新商品開発・新ベネフィツト開発・新分野開拓等の実績 

筆者は、柳井氏の「賃金は成果に対する報酬以外の何者でもない。
成果以外に物差しがあったら教えてほしいぐらいだ」には100%反対である。


人事管理賃金の専門家、鍋田周一PANフイールド・リサーチ所長は、著書
『これからの人事かわかる本』(PHP研究所 200年12月発行)の第80頁で
「個々人が持っている能力(職務遂行能力)を評価し、その格付けにもとづいて
賃金を決める「能力基準」の賃金制度が「職能給」です」「仕事のグレードに
もとづいて賃金を決める「仕事基準」の制度が「職能給」です」「仕事の出来ばえ
(成果)に応じて賃金を決める「成果基準」が「成果給」(または業績給)です」と
述べている。鍋田周一所長は、最近は、著書で「成果」と表現された用語を
「結果(Result)」という用語に置き換えられ、「成果(Performance)」とは、
能力・仕事・結果に加え、行動も含めた全体のそれぞれについて、
目標(期待値)との距離をさすものを言うと説明されている。

筆者は、経営者以外の者に対する数値結果オンリーの評価には
反対である。


例えば大型小売店の場合、立地条件、顧客構成、店舗面積、競合状態等に
よって、数値成果は大きく変わってくる。筆者は、大型小売店の場合、
固定費生産性の対前年同期比以外の数値で評価することは不公平だと
思っている。

能力については、筆者のささやかな経験では、知的能力に限って言うならば、
年をとっても確実に向上する。体力及び記憶力と組み合わせた能力は、
残念ながら65歳を超えると確実に低下するというのが筆者の実感である。

筆者が㈱タナベ経営に入社してマネジメントと管理会計の実務の勉強を
始めたのは34歳の時である。それまではマーケティングや会計の理論を
企業の現場の実務でどう活用するのかについては全く知らなかった。
ドラッカー教授は『ポスト資本主義社会-21世紀の組織と人間はどう変わるか
(ダイヤモンド社1993年7月発行)の第87頁で「成果を生み出すために【既存】の
知識をいかに有効に適用するかを知るための知識こそが【マネジメント】
である」
と述べている。
つまり筆者は34歳からマネジメントの勉強を始めたわけである。

筆者がパソコンに取り組み始めたの48歳の時である。
パソコンはどんな場合でも間違った操作をすると仕事をしない。

指示する言葉が僅か1字間違ってももう動かない。
インターネットもそうである。
ユーザー登録で字数条件を見落としてパスワードを入力したところ、
何回やり直しても頑として受け付けない。

メーカーに電話して確かめて、やっと字数条件を見落としていたという
自分のミスに気がついた。 

こちらの「やり方を知らない」こと、「間違える」ことについてはいささかも 
同情してくれない。

間違った操作をすると「フリーズ(=ハングアップ)」という、「凍りついた状態」
になってしまって、キーボードやマウスからの 操作を一切受け付けなく
なってしまうことがよく起こる。

ごく稀ではあるが、何か状況が悪いことが発生した時、それに対して間違った
指示を次々に出すと、遂にパソコンは怒りだして暴走して、システムやデータを
破壊してしまう。こちらは何で怒りだしたのかわからないのだが、何か重大な
理由があったのだろう。

2005年春、突然1台が暴れ出しデータを相当破壊した。
修復に1ヶ月かかった。(このホームページにも一部修正作業不能部分がある)

2009年1月には1台のハードディスクが壊れてHPの補稿・訂正ができなく
なった。
新しいパソコンにデータをダウンロードして修復するのに5か月かかった。
(このホームページにも一部修正作業不能部分がある)

筆者は、パソコンは実に賢い有能な部下であるが、一面、冷酷極まりない部下
でもあり、「使い方を知らない上司の指示すること」や「間違った指示をする
上司の言うこと」は「一切受け付けない部下」でもあると思っている。

パソコンのフリーズや暴走に負けずに、使いこなすことに必死に取り組んできた
ことで能力開発ができたと思っている。

作文能力は「書く回数」が増えれば確実に向上する。筆者はこのホームページを
2003年4月、69歳の時点でオープンした。ホームページをオープン後は、
「書く回数」及び「書く量」が、それ以前の5倍以上になった。毎日書いている。
作文能力は確実に向上した。考えていることをすぐ書けるようになった。

ドラッカー教授は著書『【新訳】イノベーションと起業家精神(下)』
(ダイヤモンド社 1997年発行)の第190頁-第191頁において、
「これまでの社会では、学習は青年期あるいは少なくとも社会人に達したとき
完了するものと想定することができた。事実、そのように想定されていた。
もちろん例外的に、継続学習と再学習を行う人たちはいた。起業家社会では、
この例外が標準となる。
起業家社会では成人後も、新しいことを一度ならず勉強することが
常識となる。
21歳までに学んだことは、5年から10年で陳腐化し
新たな理論、技能、知識と替えるか、少なくとも磨かなければならなくなる」
と述べている。

「45歳定年説」には反対である。平成16年版高齢社会白書によれば、
2003年10月1日時点で、日本全体の高齢化率は19%に達している。
高齢化率30%以上の町村は平成12年の国勢調査によれば688町村ある。
一方、2003年の出生数は112万1000人と第1次ベビーブームの
269万6638人の42%に過ぎない。

第2次ベビーブームの1973年の209万1983人と比較すると、
その54%に過ぎない。

筆者は45歳定年制など、とんでもないことだと思う。柳井氏の
「人間の能力は25歳がピークだと思う。定年を45歳ぐらいに早め、
その後は、若い人の教育係やパートなどで働いてもらう」には
100%反対である。

25歳をはるかはるか超えられて、45歳をはるか超えて、お働きの、
ご自身は、人間として、きわめて例外的な存在と、お考えなのだろうか?

25歳を超えようとも、45歳を超えようとも、もっとチャンスを与えて、
潜在能力を開発して、もっと、第一線でバリバリ働いてもらわなければ
ならないと思う。



日本経済新聞(朝刊)2005年3月4日第33面の、【経済教室】『再設計を終えた
日本企業』のなかで、著名な経営コンサルタント、ジェームス・アベグレン氏は
「将来の労働力不足を見越して移民を受け入れるべきだとの意見があるが、
これはばかげている。労働集約型の生産は東アジアに移り、日本ではロボットの
導入と自動化が進んでいる。また平均寿命が世界一の日本で、60歳定年は
早すぎる。定年を遅らせば、労働人口は増える。女性が働き続けられる環境を
整えれば、労働人口を100万人以上増やすこともできる。日本のように社会への
結びつきが強い国では、大量の移民を受け入れる社会的コストは高すぎて容認
できまい」と述べている。

個人間の情報収集力、マネジメント能力、専門技能、専門技術知識、
マーケティング能力、英語を含めたコミュニケーション能力などの格差は、
現在より、さらにさらに大きく拡大することは間違いない。年功序列による
マネジャー登用・経営者への昇格(=役職者登用)は無くなる。
勤続年数が増えても、逆に給与は低下することもあり得る。
年代を問わず、個人間の所得格差は米国並み、中国並みに大きくなると思う。
今後、カルロス・ゴーン日産自動車社長が言われる「実績重視」が評価の
中心になることは当然の成り行きである。

日経ビジネス2004年7月26日号第91頁で、丹羽宇一郎伊藤忠商事会長は
「米国の現行の法定最低賃金は時給5㌦15㌣、売上高トップ100の経営者の
平均年収は1320万ドル、時給換算で約6600ドル、

米国の所得格差は1200倍強
である。

日本の場合、東京都の最低賃金は時給708円、国内トップ100社の経営者の
平均年収は5,000万円前後で、時給換算で約2万5000円、
日本の所得格差は35倍でしかない。」と述べている。

著名な経営コンサルタント、ジェームス・アベグレン氏は上記論文の中で、
「社会組織としての日本企業の高潔さを示す指標として、報酬格差がある。
日本企業では、社長の報酬は従業員平均の約10倍である。
これに対して米国では500倍であり、しかもなお開き続けている。
経営幹部にこれほどの搾取を許す企業は日本ではあり得ない。
日本企業に、米国流の統治を受け入れる余地はない」と述べている。」

参考情報:
米国の投資銀行、格付会社、サブプライムローン業者という金融詐欺師集団と、
米国のブッシュ政権は、全世界に歴史上かってなかったグローバル規模の
経済惨禍を引き起こした。この経済惨禍の続く期間と惨禍の程度は世界の歴史に
明確に刻み込まれることになると思う。それと共にこの金融詐欺師集団とGMの
CEO(最高経営指導者)たちの
常軌を逸した超高額報酬の悪どさも歴史的で
あつた。

米国におけるCEO(最高経営責任者)と一般労働者との平均報酬の差は
1970年代半ばまでは20倍台であった。
レーガン政権以後の米政権は、労組の解体と最低賃金の引き下げを進めるのと
併行して、企業経営者の高額な政治献金に動かされて、企業経営者の
高額報酬を後押しする富裕層減税政策を推し進めた。その結果、
2007年にはCEO(最高経営責任者)と一般労働者との平均報酬の差は
実に275倍に達した。20倍台が実に275倍にもなったのである。

米国のCEO(最高経営責任者)の腐敗堕落の事実をリアルに示しているのが、
AIUの惨状であり、シティバンクの惨状であり、GMの惨状である。

大手投資銀行5社はいち早く姿を眩ました。見事な遁走である。
かれら
CEOは目もくらむような超高額報酬を手にしながら、
【企業は社会の公器】という理念をひとかけらも持たず、
企業存続に必要な経営対策を行わなかった詐欺師であつた。

レーダー的情報収集力を磨き、環境の変化に敏感に対応して、
自分で考え、判断し、行動する人と、復唱、前例と他人に頼る度合いが
高い人と、漫然と行動している人との能力格差、所得格差が広がっていくことは
避けられないだろう。

日本経済新聞(朝刊)2005年3月20日第28面で同紙の平田育夫論説副主幹は
「所得格差の拡大は経済のグローバル化、情報化、高齢化、財政悪化といった
様々な潮流がもたらしたものだ。だが、所得格差拡大はそれ自体、潮流となり、
人々の心理を揺さぶって社会に大きな影響を及ぼす。この変化に【自分は中流
階級】と思っていた大半の人は絶えられるか?」

「戦後は平等主義が国是のようになった。【均衡ある国土の発展】の名の下に
財政資金が全国津々浦々に行き渡るようになり、
世界に冠たる平等国家を
築いた。それが今崩れていく。当然、社会の秩序にも影響が及ぶだろう。

最近の凶悪犯罪や自殺の増加とも全く無縁ではあるまい。」
「この不平等社会への対応はかなりの難問題だ。
 あらゆる制度を見直す必要が出てくる。       」
「教育に関しても見直すべきことは多いが、一つは、どうしても残るだろう所得格差
のなかで人生に意味を見いだせるような
【生き方】の教育だ」と述べている。

前節の論文で 花田光世
慶応義塾大学教授が強調の通り、中小企業に
おいても、生き方教育を含めたキャリアプランを個々の従業員に示し、その実行を
強力にサポートすることは、経営において欠かせないことになってきた。

日本経済新聞(朝刊)2008年6月16日第11面は
『労使で社員の「自分磨き」支援』との見出しで、J.フロントリテイリングの
大丸が激しい百貨店業界の競争を勝ち抜くために、労使協力して
「自ら考える社員」の育成強化に積極的に取り組んでいると報じた。
さらに「人は生涯成長し続ける」との考え方で退職前の自己啓発支援も
強化すると報じている。これらの支援は企業の重要な社会貢献活動であり、
このような支援活動が広く産業界全体に広がることを期待したい。



14.心と頭と身体の健康を保持する

老年者にとっていちばん重要なことは
【心と頭と身体の健康を保持する】ということであると思う。
難しいことではあるが、
【健康を保持して些細なことでも感謝貢献の気持ちで行動する】、
【相互扶助を心がけ実行する】
ということであると思う。このことが、
自分自身の幸せのためにも、
家族の幸せのためにも、さらには、
企業や、地方自治体や、国の財政のためにも重要であると思う。

【相互扶助】という考え方は、些細なことでもよいから、極めて短時間でも
よいから、家族や他の老年者のために、「自分ができる仕事をする=働く」
ことを心がけて実行するということである。

15.脳の老化(=廃用性萎縮)を生活習慣で防ぐ

読売新聞(朝刊)2008年7月7日第28面で石浦章一東大教授は、
「運動」 「食」 「年を取っても働く」ことが脳の老化を防ぐと語っている。
70歳を過ぎると「ゼニを稼ぐ長時間労働」はできないが、
「働く」ことが健康保持に大いに役立つことは間違いない。

廃用性萎縮とは、生体の器官が使われないために機能が低下すること
である。不動性萎縮とも呼ぶ。人間のほとんどの器官は、
「使わなければ、使えなくなってしまう」という性質を持っている。

一般的に高等動物は未熟な状態で生まれ、生まれた後、成長に伴い
様々な能力を獲得する。特に人間は巨大な脳を持ったことにより、
胎生期において様々な能力獲得に対する準備と、生後における機能の
学習が不可欠な生物である。しかし、誕生後獲得したすべての能力を
終生維持するためには膨大なエネルギーが必要である。従って、
エネルギー節約のため、生存競争において不要な能力は、使えなくして、
エネルギーの「無駄を省く」ために 【廃用性萎縮】が起こるわけである。

関連サイト:視野を広げる、視点を変えて観察する

16.労働生産性と労働分配率

社会経済生産性本部(当時)が08年12月24日発表した
『労働生産性の国際比較・2008年版』は06年の日本の製造業の
労働生産性は年929万円(月77万円)と述べている。

中堅中小企業の経営指標について最も信頼できる
『TKC経営指標(BAST)平成21年度版』によると
金属製品製造業の限界利益労働生産性は月77万円
食品製造業の限界利益労働生産性は月61万円である。

労働生産性落ち込み最大
昨年度の国内製造業 前年度比10.5%減
輸出急減、雇用調整進まず

日本生産性本部によると、08年度は03年度以来、
最も低い水準になった。輸出産業は軒並み2ケタ減になった。


資料出所:日本経済新聞(朝刊)09年6月11日第5面

17.新しく英語脳(ウエルニッケ言語野)を創る
   -英語を上手に話せるようになるためには
     
和文英訳、英文和訳をするな

関連サイト:英語脳創りで情報力・発信力を高める
毎日、量聴、量コピー作文、量音読

1999年(平成11年)10月19日、NHKの『クローズアップ現代』で
『どうすれば英語が話せるか』という番組が放送された。

そのなかで植村研一浜松医科大学名誉教授
大脳生理学の「ウエルニッケ言語野」ご研究の成果である
大脳のスキャン写真を基に、「英語を上手に話せる人」と
「そうでない人」との違いを説明されている。




「英語を上手に話せる人」のウエルニッケ言語野

「そうでない人」のウエルニッケ言語野

本ホームページ掲載について植村名誉教授の許諾をいただいております。
コピーは禁止します。


英語を上手に話せる人は、英語を話す時は、英語を日本語とは違う言語野で
処理している。「そうでない人」は、英語を話す時も日本語と同じ言語野で処理
している。この番組のなかで、グレゴリー・クラーク多摩大学名誉学長は、
このことを「英語を上手に話す人」は、頭のなかに、英語の言語コンピュータと、
日本語の言語コンピュータと二つ持っている。「そうでない人」は日本語の
言語コンピュータ一つしかなく、いちいち英文和訳、和文英訳をしている。
だから英語を上手に話せないのであると話している。

お二方とも「英語を上手に話す」ためには、「英語のウエルニッケ言語野
(=英語の言語コンピュータ)」を大脳の中に新しく作ることが必要である。
そうして英語のウエルニッケ言語野(=英語の言語コンピュータ)を
頭のなかに新しく一つ作りあげるには、毎日、ヒアリングを続けることだと
力説されている。

筆者はこの番組を見て、それから現在まで英和辞典、和英辞典を
一切使っていない。
意味のわからない言葉はすべて英英辞典で調べている。
筆者はBBC放送を毎日聞いているが、最近、やっと放送内容がわかるように
なってきた。ドラッカー教授の本と、マーケティング関係の英語の原書を始終
読んでいるが、最近、以前より速く読めるようになった。ちなみに筆者は、
大学入学前には4年間英語学校に通った。大学在学中は毎週2回、
欠かさずアメリカ文化センターの英会話教室に参加した。
1965年に英検1級に合格している。海外視察旅行に出かけた時以外は
仕事の場で英語で話したことはないが、2004年3月の第105回TOEICの
スコアは、Listening345点、Reading380点、合計725点である。
しかしこの番組を見て、和文英訳、英文和訳を完全に止めるまでは
英会話に自信を持てないでいた。

2003年12月22日の日本経済新聞(朝刊)第5面で、米ペンシルベニア大学
日米経営センター所長、アジア開発銀行研究所所長などを務められ、
国際機関で長く仕事をされてこられた吉富勝氏(現在、独立行政法人 
経済産業研究所所長)
は、「どの国の人たちとも英語で議論し、言いたいことを
英語で十分、的確に伝えられるような、日本人がもっと日本のことを英語で
世界に発信できるような、英語を話す能力を体得させるためには
【英語監獄】を造って、そこでは日本語は一切禁止して英語をたたき込め。
言語の習得に学力、能力は関係ないすべて環境である」と述べている。

日経産業新聞2005年9月30日第25面に、50歳を過ぎてから英語を
学び直そうと一念発起、3年後に受けたTOEICで900点を突破し、
60歳の時には950点取った野村不動産の中野淳一会長(66歳)の勉強法が
紹介されている。初級レベルだった英語力を、海外企業のトップと意思疎通
できるまで引き上げた勉強法の極意は、
【ひたすらカセットテープを聞くこと】であった。

中野会長は、通勤途中、テレビを見る時、就寝前、とにかくひたすら聞き続けた。
【真っ暗な空が1年程たって晴れ間が見え始め、ある時、ぱ-っと青空が
広がった。年齢は障害ではない】
と述懐されている。

最近、昔の名作映画のDVDが信じられない位、安くなった。著作権の保護期間、
50年を経過した映画である。本屋で1枚500円で売っている。50年以上前の
映画だから、皆日本語字幕である。従って、日本語字幕を隠して見ると
すばらしい英語教材となる。
最近は、さらに進歩して、英語字幕がついている。英語字幕を選択すれば
よいわけである。

『マイ・フェア・レディ』『アフリカの女王』『オリバー・トィスト』等々。
毎日ヒアリングを3年間続ければ、英語教員の学力があればヒアリング能力を
体得できる。要は【ヒアリング能力を体得する】という強い意欲があるか無いかの
問題であると思う。



英語と日本語のパスバンド主として使われる周波数の違い

人間の耳が聞き取れる周波数は約16ヘルツ~1万6000ヘルツぐらいと
言われる。例えば100ヘルツというのは1秒間に100回振動するということで、
その振動が音として耳に伝わり、聴覚神経を通って脳に入り、何の音なのかが
わかる。

言語によってパスバンド主として使われる周波数)に違う。
日本語と英語とではパスバンドが違う。
日本語は1500ヘルツ以下の周波数が主として使われる。
英語は2000ヘルツ以上の周波数が主として使われる。

だから、日本人には英語の音が聞き取りにくい。
従って英語コミュニケーション能力を体得するためには、まず、
主に2000ヘルツ以上以上で話される英語を聞き取れる耳」を持つことが
必要である。

英語のウェルニッケ言語野を新しく作ることは、英語の正しい発音のためにも
必要である。一般的に、英語のウェルニッケ言語野が無く、日本語のウェル
ニッケ言語野で、和文英訳をして英語を話している場合、L と R を、
それぞれ正しく発音できないことが多い。World や Girl や Cat や Dog の
母音のように、日本語にない母音を正しく発音できない。the や or や and も
正しく発音できない。

従って、自分の話す英語が米国人に理解されないという英語教員が
かなり存在する。自分では正しい英語の発音と思っている発音が、
英語でも日本語でもないというわけである。

野口悠紀雄スタンフォード大学客員教授(当時)は『「超」英語法』(講談社 
2004年4月発行)の第4頁-第7頁において、「英語を短期間で習得する
ことはできない。時間がかかる。数年程度の期間にわたって訓練を続ける
ことが、どうしても必要だ」「勉強するのに年齢の制限はない。外国語の勉強は
いくつになっても可能であり、いくつになっても楽しいことだ」
「20世紀型の
グローバリゼーションは工業製品が国境を越えることだったが、21世紀型の
グローバリゼーションは、インターネットに代表される新しい通信手段を
駆使して、物理的距離と無関係に分業が進むことだ。

英語を自由に使えないかぎり、この新しいグローバリゼーションの体制に
入ることはできない」
と述べている。

2004年7月3日に放送された『NHKスペシャル-失業率回復への道』では
野口教授が述べた【IT(情報技術)分野での分業の国際化】の米国における
生々しい実例が紹介された。野口教授は同書第46頁で
「英語を日本語に翻訳して理解しようとする人がいる。
これでは、実際の場で英語を使えるはずがない」、
第174頁で「外国語を支障なく使えるようになるために必要な勉強時間は、
4,000時間程度と言われている」とも述べている。

外務事務次官、駐米大使を務められた柳井俊二・国際海洋法裁判所判事は
日本経済新聞(夕刊)09年7月21日第1面【あすへの話題】欄の
『英語上達の妙薬』の中で次の通り述べている。

「日本人は英語がうまくならない。英語が世界語になってしまった今日、
英語下手による発信力不足は国の損失だ。外務省退官後、大学で
教壇に立ち、英語勉強会の指導も頼まれた。

英会話能力向上のため3つのことをした。
①米国大統領の演説の録音を聞かせ、丸暗記させ、皆の前で話させる。
②ジャズ数曲の歌詞を覚えさせ、ピアノ・バーで歌わせる。
③発音練習として、ビオフェルミン1粒を舌に乗せてRを発音させる。」


資料出所:日本経済新聞(朝刊)09年9月7日第38面

文部科学省:平成19年3月3日東京ビッグサイトで開催:
18.英語が使える日本人の育成フォーラム2007」

英語教員の
英検準一級以上取得者
公立中学では25%程度 
公立高校では48%程度






上記フォーラムにおいて報告された「行動計画進捗状況」の中の
【英語教員の英語力について】の記述。

「公立中学校の英語教員は約3万人ですが、
調査に協力していただいた公立中学校の英語教員22,862人のうち、
行動計画の目標としている英検準11以上、
またはTOEFL(トーフル)のPBT550点以上、CBT213点以上、
TOEIC(トーイック)730点以上のスコアを取得している者は、
約25パーセントで5,674名です。

追記:
文部科学省の調査によれば、09年7月の時点で、英検準1級以上の
中学英語教員数は
6,727人で2年間で1,053人増加している。
また横浜市教育委員会によれば、横浜市立中学においては、
09年7月の時点で、英語教員の
33.8%が準一級以上である。

公立高等学校の英語教員は約2万5千人ですが、
調査に協力していただいた公立高等学校英語教員17,627人のうち、
英検準1級以上、または同程度以上のスコアを取得している者は、
約48パーセントで8,539人です。

2011年の調査では、中学では2%増、
高校では5%増の状況改善


英語教員の英検準1級以上取得者
公立中学では27.7%程度 
72.3%は2級以下
公立高校では52.8%程度 47.2%は2級以下


文部科学省が2011年(平成23年)8月~10月に実施した
『国際共通語としての英語力向上のための5つの提言
具体的施策』
に係る状況調査」によると、
公立中学校の英語教員のうち、英検準1級以上、
またはTOEFLのPBT 550点以上、CBT 213点以上、iBT 80点以上、
またはTOEIC 730点以上を取得している者は、全体の27.7%である。

公立高等学校の英語教員のうち、英検準1級以上、またはTOEFLのPBT
550点以上、CBT 213点以上、iBT 80点以上、またはTOEIC 730点以上を
取得している者は、全体では52.8%である。




2005年1月15日実施された大学入試センター試験において、英語の問題は
第1問~第6問あった。全部、選択式で、筆者が大学受験した大昔の試験問題
とは様変わりしている。和文英訳問題はない。2006年1月の大学入試センター
試験においては初めて英語のリスニング試験(聞き取り試験)が行われる。
もう翻訳を仕事にする人を除いて、あるいは特殊な単語を調べる時を除いて、
一般的には、英和辞典や和英辞典を使う必要は無いのではないだろうか。
自動車の運転と同じく、英英辞典を使うということも「慣れ=からだで憶える」
問題だと思う。最低3000回以上、英英辞典を使ってみることである。

『「英語が使える日本人」の育成のための行動計画」に基づいて、平成15年度
から平成19年度までの5年間をかけた
公立の中学・高校の英語教員全員
(約6万人)に対する、期間2週間程度の集中研修が行われている。優れた
英語教員の海外派遣研修も行われている。しかし、本人の数年間の自覚的、
自発的な継続努力が続かなければ2週間程度の研修だけでは効果がないことは
明白である。英語教員の海外派遣も、数十人程度、それも数ヶ月の派遣では
効果は少ない。

筆者は、英語教員というからには、英語圏で放送されているテレビやラジオの
ニュースを聞いて理解できるヒアリング能力は必須条件であると思う。たとえば、
英国の首相の談話とか、マッカーサー元帥の演説や米国の歴代大統領の
諸演説
は、国民向けの談話・演説であるから、ゆっくりと非常にわかり易い表現
で話されている。この談話・演説を十分に理解できる程度のヒアリング能力が
必要である。もし、仮に、現在の英語教員の中に前記の英語の演説を聞いても
内容を理解できない、すなわちTOEICで595点以下程度の方がおられる
としたならば、そのような方には
「英語を聞いてわかる」ようになるため、
最低1年間はヒアリングを必死に勉強していただく必要があると思う。


英語教育を職業としている英語教員が「ナマの英語を聞いて分かる、
ネイティブと英語で意見交換ができる」
という「英語コミュニケーション能力」を
体得できないならば、日本人が
「英語が使える」ようになるのは夢物語
いうことになる。これでは、日本が今後の国際競争を勝ち抜いていくことは
難しくなる。

英語教員の
全員「ナマの英語を聞いて分かる、ネイティブと英語で
意見交換ができる」能力を体得
してもらうことが、日本がこれからの厳しい
メガコンペティションを勝ち抜いていくために欠かせないことだと思う。

やればできることをやらなかったということであれば、
英検2級以下の英語教員ご自身にも悔い(くい)や挫折感が
残るのではないだろうか?

英検2級以下の英語教員の地位は、現在時点においては、
100%安泰である。しかしながら筆者は
5年先、10年先の将来を考えた場合、
【英語のニュース放送を聞いてもまったく聞き取れない、
隣りに米国人夫婦が住んでいても会話ができない、
英語で討論する能力がまったくない】英語教員が、
英語教育を行うことは難しくなる社会的環境になると予測している。

読売新聞(朝刊)2008年4月29日第1面で富山真知子国際基督教
大学大学院教授は「主に書物を通して海外情報を吸収していた時代
とは、質の異なる英語教育が必要となる。」「外国の知識を本から
得るには、文法や読解が中心の教育が効率的だった。でも、現代は、
情報を瞬間的に吟味する力、自分を表現する力にまで引き上げ
なければならない」と語っている。

続いて第2面で中嶋嶺雄国際教養大学学長は「この約20年間で、
グローバル化という歴史的変化が起きた。そうした時代の知力は、
文字通りグローバルな知力でなければならないだろう。

英語は、その変化の中で国際共通語としての地位を固めた。
もはや国際関係の中で、国力をはかる一つの指標と言える。
一般市民も含めて英語ができないというコンプレックスから
日本人を解放する必要がある。そうしなければ、日本の知力は、
相対的に下がるばかりだ」と語っている。

グローバル化、情報化の流れは、加速化こそすれ止まることはない。
あらゆる面において国際競争は激化する。日本の企業や大学は、
すべて、激化する国際競争に対応するためのイノベーションに
取り組んでいる。日本の企業は【相手の英語の意見を理解できる】、
【自分の意見を英語で述べることができる】英語コミュニケーション能力を
体得しているビジネスマンをより多く必要としている。

筆者は、公立中学・公立高校の英語教員で、意欲はあるが今までネイティブと
接触する機会が少なかった人を、年間1000人程度、1年間、英語圏に毎年
順次、派遣して「
英語コミュニケーション能力」を身につける体験(=体得する
体験)研修を実施することが、日本人全体の「英語コミュニケーション能力」の
向上に大いに役立つと思う。現に公立中学・高校で英語を教えている
英語教員の「
英語コミュニケーション能力」の向上がなければ日本人全体の
英語コミュニケーション能力」の向上をはかることはできないと思う。

筆者は、中学・高校の英語教員が生徒に教えることの中で、いちばん重要な
ことは「英語コミュニケーション能力」を
身につけた体験であると思う。
これはネイティブの教員にはできないことである。日本人の教員にしか
できないことである。

自分自身がどのような努力をして「ナマの英語を聞いて分かる、ネイティブと
英語で意見交換ができる」
ようになったかの
体験を生徒に教え、
生徒にそれを実行させる
ことであると思う。

読売新聞(朝刊)08年12月23日第1面及び第3面は、
「脱ゆとり教育」を目指す高校新指導要領について大きく報道した。
英語については【社説】で「「授業を英語で行うことを基本」としたことは、
無理がないか」と指摘している。

筆者は、現状では無理そのものだと思う。
上記の通り公立高校英語教員の中、英検準一級以上は約48%である。
52%は二級以下である。このことは「英語のナマのニュース放送を聞いても
全く聞き取れない。英語の発音がネイティブに通じない。満足に会話できない。
英語で意見を述べることは到底できない」英語教員が約半分ということである。

英検二級以下の英語教員に英語で授業を行わせるということは、
率直に言って文部科学省による英語教員の人権侵害である。
勝つ見込みがないのに無謀な対米英蘭開戦に踏み切った旧日本帝国
陸海軍の最高指導者たちと全く同じな【現状認識の欠如】である。

しかし英検二級以下の英語教員は非常に高い英語基礎能力を体得
している。ウエルニッケ言語野研究成果に従って、必死にやれば
約1年で英検一級以上の英語コミュニケーション能力を体得することが可能
である。「こうすれば英語コミュニケーション能力を体得できる」ということを
生徒に教えることこそ英語教員の最も重要な使命であると思う。
英検二級以下の英語教員の奮起を願ってやまない。

関連サイト:
毎日コピー英作文法実践で英語脳(ウエルニッケ言語野)を創る

19.「英語を教えたことがない教員」による
    「小学英語必修化」に反対


読売新聞09年11月30日第1面は「小学英語 暗雲」と「教材廃止」反対の
動きを大きく報じた。

筆者は一貫して、英語教育において、国が先ずなすべきことは、公立中学の
英語教員の英語コミュニケーション能力の向上であり、小学英語の必修化は、
この目的が達成されてから行うべきであると訴えてきた。

読売新聞の報道のなかで注目すべきことは、全国連合小学校長会
向山行雄会長「英語を教えたことがない教員」が、小学校で生徒に
英語を教えるという事実を明確に述べていることである。

すなわち、「英語のニュース放送を聞いても全く聞き取れない、
ネイティブと会話ができない」という、いわば英語の素人(しろうと)
小学校の生徒に英語を教えるということである。

率直に言って、これらの教員は、小学校の生徒に、ネィテイブには
通用しない【日本式発音英語】と、一生、ナマの英語が聞き取れなくなる
【英文和訳による理解】という「間違った英語」を教えることになる。

英語教員自身が「ナマの英語を聞いて分かる、ネィテイブと会話できる」という
英語コミュニケーション能力を体得していなければ、「間違った英語」
教えることになる。

これからの時代、旧日本陸軍の三八式歩兵銃のような「間違った英語」
では
国際競争に勝ち抜いていけない。




関連サイト:

「感謝貢献-努力達成-成長進化」の経営理念を明確にする

視野を広げる、視点を変えて観察する

マーケティング戦略を実践する


『生きる場を広げるため学び続ける仕組みを創れ』

未経験のこと、すなわち、今までやったことのないことに挑戦すると、
失敗はつきものである。従って、うまくいかないことや、挑戦失敗を、
苦にしたり、悔やんだり、悩んだりすることはない。

しかし、挑戦失敗を教訓にして、学び続けることは必要である。
学び続けることによって新しく蓄積されていく知識・情報が生きる場を
広げる力
(ちから)そのものなのである。

高江常男さんが、何万回もの失敗を乗り越えて、あきらめずに、
学び続けた生き方に深い感銘を受けている。


学び続けることは最高の幸福です。
意識
身体も、使わないと、どんどん錆びつく!
学び続けることは

廃用性萎縮を防ぐ最良の健康法です。





2015年12月 文化出版局 発行

志村冨美子・横浜レース教室、八王子レース教室、本郷台レース教室

TEL:045-352-7184