六球連鎖の定理の証明
定理は 1つの球の中に互いに外接する2つの球が内接しているとき、これらの隙間に連結して入る半径の異なる球からなる
ネックレスの個数はちょうど6個に限る。また、それぞれの球の半径の間には1/r1+1/r4=1/r2+1/r5という関係がある」というもの。
ソディ―はイオン結合を調べる化学者として、大きな円の中に半径の異なる円柱や円をどれくらい敷き詰められるかという
「充填問題」に関心を持っていた。ニュージーランド出身の物理化学者アーネスト・ラザフォードと共に放射線崩壊による元素の
核変換を発見しアイソトープ(同位元素)の発見で1921年にノーベル化学賞を受賞した大家。
互いに接する3個の球 O_0,O_1,O_2 のどれにも接する球の連鎖 C_i の個数は,常に6個となり,さらに次々の球の半径を
r i(i=1, 2, 3, 4, 5, 6)と すれば 1/r 1 + 1/r 4 = 1/r 2 + 1/r 5 = 1/r 3 + 1/r 6 が成立する
この定理は,百年以上前の1822年, 相州(現在の神奈川県)の寒川神社に掲げられた算額にすでに記されていた.
和算家の解法では,空間におけるデカルトの定理を利用しているが,これ自体が複雑かつ難解なのでここでは
反転法の定理を用いた。この空間におけるデカルトの定理は現代でも非常に難しい。
O_0,O_1の接点をKとし、Kでの反転を考える。
円O_0と円O_1はいずれもKと中心を結ぶ直線と直交している. 従ってその反転平面O_0', O_1'もこの直線に直交し,
従って平行である.・・・ K を通る円は、K を通らない直線に写る。
O_2, C_1, C_2, ・・・はいずれもこの平行面に挟まれ, かつ面に接しているので半径はすべて等しい.
O_2'の周りに互いに半径が等しい球が互いに外接するので,
それらの中心を通る平面での断面の円を考えることにより, 周りの球の個数は6個以外にありえない.
つぎに二円 について,これらの中心と反転の中心K でできる平面での切断面を考えると,そこでは円の反転になっている.
1/r1 + 1/r4 = (4r''R'(1/r1−1/R1))/(R'−r'')^2 = 1/r2 + 1/r5
となる.ただしR'は6個の円に外接する円の半径, Rはその原像の円の半径,rはO_2の半径,r'はO_2'の半径である.
■反転の性質■
定理の証明には、球に関して鏡像を取る反転を用いるのが易しい。一般に、中心 O、半径 Rの球に関する反転では、点 Pの写る先は、
半直線 OP上の点であって、OP×OP'=R2を満たす点 P'である。この定義では、球の中心 Oの写る先が決められないが、便宜上、
仮想的な無限遠点とOが互いに写りあうものとすれば、反転は1対1の写像であり、逆写像は自分自身である。
6球連鎖の定理を示すには、いくつかの反転の性質に着目しておく必要がある。まず、球は反転によってやはり球となる。
ただし、Oを通る球は平面となる。
反転は1対1の写像であるから、接する2球は反転しても接している。ただし、Oで接する2球は、反転すると平行な2平面となる。
平面は「半径が無限大の球」であり、平行な2平面は「無限遠点で接する」と解釈すれば、平面を特別扱いする必要はない。
: 反転された6球連鎖