シュタイナーの円環の定理
偶数個の円がシュタイナーの円環をなしているとき, 向かい合っている円環の円の半径の逆数の和は一定である.
★ 証明 ★
円O_1が円O_2を含んで定まり,半径がRとrとする. そして円 C_1, C_2, ・・・ C_2nが円環をなしている.
点Oを中心とする半径pの反転で 円O_1,O_2が同心円O_1',O_2'になりその半径がR', r'とする.
C_i', i=1, 2,・・・ , 2nの半径はすべて等しいのでこれをr_0'とする.

R'-r'=2r_0'
である. そして,このときC_1'とC_n+'の中心 C_1'と C_n+1' およびO_1',O_2'の中心 O_1'は同じ直線上にある.
定理3 より
r_1/r_0'.= p^2/(OC_1'^2-r_0'.^2) ,.r_n+1/r_0' = p^2/(OC_n+1'^2-r_0'^2)
よって中線定理を用いると
1/r_1+1/r_n+1= (1/r_0'p^2)+ OC_n+1'^2 - 2r_0'^2) = (2/r_0'p^2)(OO_1'^2+ O_1'C_1'^2 - r_0'^2)
= (2/r_0'p^2)(OO_1'^2+ (r' + r_0)^2 - r_0'^2) = (2/r_0'p^2)(OO_1'^2+ r'^2 + 2r'r_0')
= (4/ (R'-r')p^2)(OO_1'^2+ r'^2 + r^(R'-r')) = (4/ (R'-r')p^2)(OO_1'^2+ r'R')
一方,定理3 を R, r, R', rに用いて
1/r - 1/R = (OO_1'^2 - r'^2)/r'p^2 - (OO_1'^2 - R'^2)/R'p^2 = (R'-r')(OO_1'^2+ r'R')/r'R'p^2
∴ 1/r - 1/R = 1/r_1+1/r_n+1= 4r'R'( 1/r - 1/R)/(R'-r')^2・・・(一定となる)
定理2よりO_1, O_2の中心間の距離をdとすれば
d^2 = (R−r')^2 −4Rrtan^2(Π/n) ((R−r')^2 - d^2) /4Rr = tan^2(Π/n)
((R-r)^2 - d^2)/rR = (R'-r')^2/r'R' これから
1/r_1+1/r_n+1= 4(R-r)/((R-r)^2 - d^2) となる。 n = 4 のときは
((R-r)^2 - d^2)/rR = 4 1/r 1 + 1/r 3 = 1/r 2 + 1/r 4 = 1/r - 1/R が成立する
【n = 6 のときは】
1/r 1 + 1/r 4 = 1/r 2 + 1/r 5 = 1/r 3 + 1/r 6 が成立する
■定理 1■
互いに交わらない二円C_1,C_2がある.二円の焦点Fを中心とする反転でこれら二円は
同心円 にうつる.
★証明★ 二円の
根軸と二円C, C'の中心を結ぶ直線Jとの交点をKを中心とし, 二つの焦点を通る円Sは二円C_1, C_2と直交している.
円SはFを通るので, F中心とする反転で直線mになる. 一方,二円C_1,C_2はそれぞれ再び円 C_1',C_2にうつるが, これらの円はmと直交しているので,
その中心はm上にある.
一方,二円C_1, C_2の中心と反転の中心は二円C_1, C_2の焦点を結ぶ直線J上にあるので, 円 C_1',C_2'の中心もJ上にある.
従って円 C_1',C_2'の中心はm上かつJ上にあるので, その交点に一致する.つまり円 C_1',C_2'の中心は一致する.
本定理は,一方の円が他方に含まれる場合も同様である.
◆焦点の説明◆
円の集合があってそのどの二つの根軸をとってもすべて一致するとき, この円の集合を根軸によって定まる円束という.
二円C, C'が共有点をもたないとする. この二円の根軸と二円C, C'の中心を結ぶ直線Jとの交点をKとする.
Kから C, C'への接線の長さ KT=KT'に対して J上の点で KT=KF となる点は二点ある.
これら F,F'を 2円C, C'の焦点という.
■定理 2■
交わらない二円O_1とO_2があり半径はRとrで, O_2はO_1の内部にある. O_1に内接しO_2に
外接し,互いに外接するn個の円 C_1・・・, C_n よりなるシュタイナーの円環が構成できたとする.
(1) 最初の円C_1をどこにとっても順に外接させて円を描いてゆくとC_nはC_1に外接する.
(2) 二円O_1とO_2の中心間の距離をdとする。 2つの円の間に詰めた円の個数n の間には次のシュタイナーの等式と呼ばれる関係式が成り立っている。
d^2 = (R−r')^2 −4Rrtan^2(Π/n)
★ 証明 ★
1) 図のようにO_1とO_2の焦点Fをとり,Fを中心とする反転をおこなう.定理1によって,Iの状態からIIの状態に反転される
同心円の間にn個の円が互いに外接してはさまれるときは, 半径だけが問題で,n個の円環が一つできればどこからはじめてもn個で円環ができる.
最初O_1とO_2の間にC_1をかく. その反転C_1'からはじめて同心円の方でn個の円環をつくる. これを反転の逆をおこないもとに戻せばC_1からはじまる円環ができている.
2) O_1とO_2を反転した円の半径をR', r'とする. この場合C_1'等の半径は (R'-r')/2で, C_1'とC_2'の中心 C_1'とC_2'が O_1'の中心 O_1'となす角が
2Π/n( 詳細・・・弧度法(ラジアン) 参照).O_1'の中心 O_1',C_1'とC_2'の接点A, C_1'の中心 C_1'が作る直角三角形より
円環の数n を、それらの半径はすべて等しいが、それをxとする。
sinπ/n = x/(R - x) これより (R - x)sinπ/n = x(R - x)/(R - x) (R - x)sinπ/n = x
x = (Rsinπ/n) - xsinπ/n 2x = R - r より 2R - 2r = 2((Rsinπ/n) - (R - r)sinπ/2n)
2R - 2r = 2((2Rsinπ/2n) - Rsinπ/2n + rsinπ/2n) = 2((Rsinπ + rsinπ)/2n)
2R - 2r = (Rsinπ + rsinπ)/n -2r = (Rsinπ + rsinπ)/n - 2R 2r = 2R - (Rsinπ + rsinπ)/n
r = R - (Rsinπ + rsinπ)/2n
この式により、大円の半径R と2つの円に内接する円の数n を指定すれば、小円と内接する円が自動的に決定される。
等式 { d^2 = (R−r')^2 −4Rrtan^2(Π/n) } を次のように変形する。
((R−r')^2 - d^2) /4Rr = tan^2(Π/n)
★ 証明 ★
左辺は反転で不変であることをまず示す。その後、2円を同心円に反転で移した場合でこの値を計算し、
それが右辺に等しいことを示す。
大円とx 軸との交点を座標の小さい方からA(a) , B(b) ,小円とx 軸との交点を座標の小さい方から
C(c ), D(d) とする。
R = (b - a)/2, r = (d - c)/2, d = (a + b)/2 - (c + d)/2
ゆえに R - r + d = (b - a)/2 - (d - c)/2 + (a + b)/2 - (c + d)/2 = b - d
R -.r -.d = (b - a)/2 - (d - c)/2 - (a + b)/2 + (c + d)/2 = c -.a
よって、左辺 = ((R - r )^2 - d^2)/4Rr = (R - r + d )(R -.r -.d )/4Rr =
(b. - d )(c - .a)/(4((b - .a)(d. - c))/4) = (b - d )(c - a)/(b - a)(d - c)・・・B
同じことを反転で移った先でも考える。
反転でA ,B ,C ,D がA0(a0), B0(b0),C0(c0), D0(d0) になったとし、大小2円の半径がR0 , r0 となったとすると、上の
計算と同様にして((R0 - r0)^2 - d0^2)/4R0r0 = (b0 - d 0)(c0 - a0)/(b0 - a0)(d 0 - c0)であるが、反転の性質
より a0 = 1/a, b0 = 1/b, c0 = 1/c,d 0 = 1/d なので代入して
((R0 - r0)^2 - d0^2) /4R0r0 = (b0 - d 0)(c0 - a0)/(b0 - a0)(d 0 - c0) = (1/b- 1/d )(1/c - 1/a)/
(1/b - 1/a)(1/d - 1/c ) = (b -.d )(c -.a)/(b - a)(d - c)・・・C
BCより、左辺の値は反転で不変である。
次にこの不変値を求める。適当な反転で大小2円は同心円に移されるから、その状況では d = 0 である。
@AよりR - r = 2x = 2 Rsinπ/n/1+sinπ/n, r = R(1- sinπ/n)/1+sinπ/n
よって、左辺= ((R - r )^2 - .d^ 2)/4Rr = (((2Rsinπ/n)/(1+sinπ/n )^2) - 0)/(4RR(1- sinπ/n)/
(1+sinπ/n)) = sin^2π/n/1-.sin2π/n = sin2π/n/cos2π/n = tan^2π/n よって証明された。
(補足)・・・ 半角の公式 説明
cos^2(α/2) = (1 + cos α)/2. sin^2(α/2) = (1 - cos α)/2 ※ α = 2θ (θ は角度)
tan^2(α/2) = sin^2(α/2)/cos^2(α/2) = 2sin^2(α/2)/(2cos^2(α/2)) = (1 - cos α)/(1 + cos α).
tan^2(Π/n) = sin^2(Π/n)/cos2^(Π/n) = 2sin^2(Π/n)/(2cos^2(Π/n)) = (1 - cos α)/(1 + cos α).
■定理 3■
Oを通らない半径rの円C,中心Cがある. その反転の円をC',半径がr'で中心がC'とする.
このとき r/r' = p^2/(OC'^2 - r' ^2) が成り立つ。
★ 証明 ★
OからC,C'までの接線の長さがそれぞれ
_______________ _______
√OC^2 - r^2, √OC'^2 - r'^2 である.かつ接点も反転の関係なので積はp^2である. よって
________________ _________________
r/r' = √OC^2 - r^2 /√OC'^2 - r'^2 = p^2/(OC'^2 - r'^2)
■反転による座標変換は f (x , y ) = ( x/(x2+y2) , y/(x2+y2) ) である。■
★ 反転による証明 ★
まず、一般の位置にある2つの大円と小円を同心円へ移すための反転の中心が存在することを示すことで、2つの円が同心円に移されるような反転が存在することを示す。
大円と小円は下図のような位置にあるとして一般性を失わない。(小円は大円の中に含まれるとする)
x 軸と大円との交点を順にA,D とし、小円との交点を順にB,C とする。
OA = x , AB = b , AC = c , AD = d とおく。 このとき x > 0 , 0 < b <c < d である。
原点を中心とする反転によるA ,B ,C , D の変換後の点を A0, B0,C0, D0 とすると
A0(1/x), B0( 1/x+b ),C0( 1/x+c ),D0( 1/x+d ) となる。 よって反転によって2つの円が同心円に移されるとすると
1/(x+b) -1/x = 1/(x+d) - 1/(x+c) すなわち 1/x + 1/(x+d ) = 1/(x+b) + 1/(x+c) である。
これを整理すれば、(b+c-d )x^2+2bcx+bcd = 0 となる。
この判別式は D/4 = a^2b^2+(b+c-d)・bcd = bc(d-c)(d-b) > 0 となる。
したがって反転の中心は2つある。
以上のことから2つの大円と小円を適当な反転により同心円に移すことは可能である。
以上のことを利用し、証明する。
上のような一般の位置にある大円と小円を考える。(ただし、小円は大円の中に含まれるとする)
そのとき2つの円の間に内接する円を任意の位置から次々と描いていき、最後の円がぴったりとはまったとする。・・・@
このとき適当な反転を行えば大円と小円は同心円に移され、2つの円の間には同じ半径の円がぴったりと内接している。
