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どこへ行こうか? |
前日の時差のせいか、この日は朝5時に目が覚めた。まだ日の出前で、窓の外は真っ暗だった。まだ起きるには早すぎるので、ベッドの中で今日・明日のの予定を考えた。
2度目のソウルなので、候補としては「オドゥ山統一展望台で北側を眺める」「仁川を散策する」「前回行かれなかった景福宮に行く」などがあったが、景福宮に行くのは明日の朝でもできそうだし、釜山に行くことを考えたらわざわざ海を見に仁川へ行く必要もない。それに、いつかしてみたいと思っている中国への船旅の時のために、仁川は残しておきたい。となると残るは・・オドゥ山だけだ。
しかし、オドゥ山は場所が場所だけに、ひとりで行くには心配だ。現地へたどり着くのもハングルが読めない僕には難問だし、それに北側まであと数キロという緊張地帯に乗り込む訳だから、余計に心配になってくる。でも、行ってみたいという好奇心は収まりそうにない。
結局、ゆっくりと朝風呂に入ってから荷物をベルデスクに預けて、午前8:30、いざソウル駅へと向かった。外はどんよりと曇っていて、空は鉛色だった。そういえば2年前もこんな天気だったし、あのときは霧で5時間も飛行機が遅れた。ソウルってこの時期は晴れないんだろうか?? |
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ソウル駅 |
ソウル駅は、2年前の旅行でも使ったことがある。あのときは、水原までセマウルかムグンファで行こうとしたが、ハングルが読めなくて全く為すすべが無く、仕方なく地下鉄に乗って1時間かけて水原まで行った。
しかし、今回は全く勝手が違っていた。駅の外観は2年前と変わったようには思えなかったが、中に入るとほとんどの看板にハングル・英語・漢字が併記してあり、いくつかの窓口には「For
Foreigners」看板までかかっていた。これならば簡単に窓口がわかりそうだ。
早速、1階入り口右にある前売り用の窓口に行って明日のセマウル号(特室)のきっぷを買うことにした。ここには「For
Foreigners」の札のある窓口があったので、英語で頼むと簡単に空席を捜してくれた。しかし・・手持ちがなかったのでカード払いをしたいと行ったところ、「向こうの機械を使って」と言われてしまい、とりあえず機械での発券にチャレンジしてみた。
ソウル駅の指定券自動販売機は、まず韓国語か英語かどちらかを選択して、次にカードを自分でリーダーに通す。さて、ここまでうまくいったのだが、「Now
Ch ecking..」の後で「Invalid Card」ではねられてしまった。セゾンのVISAとAMEX
の2枚で試したがどちらもNGで、結局さっきの窓口で現金で発券してもらった。
ついでに「今日の金村までの切符が欲しいんだけど」と聞いてみると、24番窓口だよと英語で教えてくれた。
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未知なる国へ |
24番窓口の上には時刻表があり、次の列車は10:00発であることがわかった。ちょうどあと15分ほどある。2年前はすべてハングル表記だったので、発車時刻さえわからなかったが、今はすべて英語表記がついているのでずいぶん進歩した。「さすがに大統領自ら観光キャンペーンのCMに出るだけあるな」と思った。
24番窓口に並ぶ人は、みんな現地の人ばかり。日本人の姿は全く見あたらない。おまけにローカル線!?のせいか、外国人窓口もない。仕方ないので、窓口では地図を指さしながら「クムチョン」と言ってみたら、ちゃんと切符(1300W)を出してくれた。
改札がすでに始まっていたので、駅のロッテリアで「プルコギバーガーセット」を買ってから、ホームに下りてみた。ホームにはディーセル機関車に引かれた数両の客車が止まっていた。
早速乗り込んで席につき、周りを見回していると、やはり日本人の姿なんてない。「ほんとに行って大丈夫なんだろうか?」「やはり危険な場所なのだろうか」などだんだん不安になってきた。
列車は定刻どおりに出発した。窓の外は、都市の景色から次第に黄土色の土が広がる農村に変わって行った。駅の風景も、日本のローカル線に乗っているような感じだ。
約1時間ほどで金村についた。乗った当初は「降りる駅がわからないんじゃないか?」などと不安だったが、車内放送でクムチョンという言葉が聞き取れたし、駅名表示は漢字も併記されていたので、自信を持って降りることが出来た。駅を出てからは「地球の歩き方」に従ってバスターミナルまで歩いた。
ターミナルには10分もかからずにつくことが出来た。早速バスに乗ろうと思うが、どれに乗ったら良いのかも、何時に出るのかも、切符をどこで買うのかもわからない。とりあえず窓口で「地球の歩き方」のオドゥ山のページを指さしてみた。すると、窓口のおねぇさんは紙に「Bus
3 Time 12:10」と紙に書いてくれた。
今の時刻は11:15なので、バスの出発までにはあと50分ほどある。しかし、今日は午後にはソウルに戻って、市場を歩きたいと思っていたので、あまり時間をロスさせたくはない。ふと外を見ると、何台かのタクシー(青)が停まっていた。財布には4万Wしか入ってなかったけど、「たぶん足りるだろう」と思ってタクシーに乗り込んだ。
タクシーに乗って、統一展望台のページを指さしながら「トンイルチョンマンデ」と言ってみた。運転手さんはすぐわかったらしく、頷いて車を出してくれた。しかし、乗ったは良いが気になるのが料金だ。歩き方にはバスで10分(840W)と書いてあったので、たぶんそんなに高くないとは思うのだけど、メーターが非常に気になった。
車窓は、金村の町を出て畑が広がり、やがて軍事基地のようなものも出てきた。だんだん緊張が走ってくる。道ばたでは銃を持った兵士が、検問所!?のようなものを作っていたが、タクシーは問題なくそこも通過し、広い道に出た瞬間、150km
もの猛スピードで突っ走り、あっという間に大きな駐車場の前に着いた。
運転手さんは車を止めて、「Shuttle bus change」と言ってバスを指さして教えてくれた。メーターは9400Wだったので10000Wを出すと、1000Wのお釣りをくれた。とってもありがたかった。
さて、バス停に行くと何台かのバスが止まっていて、1台のバスだけの入り口が開いていて、なかに2人の乗客が乗っていた。とりあえずそのバスに乗り込んで、周囲を見回してみた。バス停の周りには、みやげ物屋や食堂がズラッと並び、奥には巨大な駐車場があって、平日にも関わらずそこそこの台数の車が止まっていた。さっきタクシーで走ってきた道の先には、門のようなものと読めない標識があり、兵士!?が門番をしていた。「いよいよ一般車両も入れない国境ギリギリの場所に入って行くのか?」と、緊張がさらに高まってきた。
そうこうしているうちに、小屋から運転手がひょっこり現れて、バスが発車した。バスは先ほどのゲートを通過して、坂道をどんどん登っていく。途中には橋がかかっていて、しかし、その下には予想もしていなかったモノ・・なんと高速道路が走っていた。なんでこんな国境沿いに?? |
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予想もしていなかった景色 |
バスはすぐに真新しい建物の前に到着した。緊張しながらバスから降りて、入場券を買って入り口に入り、真っ先にその階段の向こうにあるもの、すなわち「北側の景色」を見に行った。が・・なんとこの日は霧で全く視界が無かった。わざわざここまで来たのになんて言うことだぁっ!!そういえば、今日の朝、ソウルも霧だったっけ?何で気づかなかったんだ・・。
しかし、落ち着いて外を見てみると、かすかに建物の影のようなものは見えた。さらに、北のほうからなにやらスピーカーで音楽や言葉が聞こえてきた。これが噂に聞いた宣伝放送なのだろうか?それにしては、合間に音楽を流したりしていて、予想していた感じとはずいぶん違っていた。
落ち着いてきたところで、館内に入り、一気に屋上の展望台まで行ってみた。やはり霧が立ちこめてよく見えなかったが、結構たくさんの人が居た。屋上には売店もあるし、双眼鏡用のトークンを売る係の人も座っていた。しかし、目の前のがけ下には金網が張り巡らされ、偵察用??のアンテナ群もたくさん置いてあり、いくつもの監視所があった。外をみるといかにも緊迫地帯という感じなのだが、自分の立っている場所はどう見ても観光地だ。もし霧が無くて北側がよく見えていたら、このギャップはもっと大きかったのではないだろうか?
さて、建物にはいると、ちょうど日本語の説明ビデオが上映されていて、対岸の生活のことやこの建物の置かれている場所のことなど、よく理解することができた。霧がなかった場合の映像もたくさんあり、今回は自分の目で北側を見ることはできなかったが、このビデオと周りの雰囲気でそれなりに満足することができた。3階では北朝鮮の衣類などが展示され、また統一を願う子供達の絵なども展示されていた。
とりあえず、おなかが減ったので4階の軽食コーナーでうどんを食べて、建物を出ようと2階に行った。すると・・そこにはなんと大食堂と、巨大おみやげコーナーがあり、おみやげコーナーでは北朝鮮の切手や酒まで販売していた。いったいどうやって持ち込んだのだか??さらに、食堂には日本語メニューまであり、「石焼きビビンバおいしいよ」と声までかけられてしまった。もう唖然。
さて、シャトルバスで駐車場まで戻ってきたが、金村行きのバス停がどこにも見あたらない。仕方ないので会話集で「どこ?」という単語を探し出して、それを指さしながら「ボス クムチョン」と行ってみたら、あっちだと言って指をさされた。しかし、その方角にはバス停なんて見あたらない。それに、金村のターミナルで見た時刻表だと、バスは約1時間半間隔。いつになったらバスに乗れるか見当がつかない。とりあえず、大通りまで歩こうと、タクシーで来た道を歩きだした。
歩いていると、駐車場からどんどん乗用車が出てきて後ろから追い抜いていく。「これに乗れればなぁ・・」と思いながら後ろから来る車を眺めていたら、1台の車が止まった。「これはしめた!」と思って、窓を開けて何やら言ってきたおじいさんに「クムチョンクムチョン!」と叫んでみた。そして、乗っても良いか?というジェスチャーで半ば強引に車に乗せてもらった。(^_^;)
走り出してすぐ、おじいさんが「モンゴリアン?」と聞いてきたので「ジャパニーズ」と答えたら、日本語で「にほんごできますか」と言ってきてくれた。なんと日本語ができたのだ。そして、お互いに自己紹介をしているうちに、金村のバスターミナル前に着いた。「ありがとうございました カムサハムニダ」と言って深く頭を下げてお礼を言って、手を振って別れた。やさしいおじいさんだった。 |