伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2019年8月22日: 生まれて初めてのスマホを買う。T.G.

 長らく愛用していたガラケーが壊れた。ドコモショップへ買い換えに行くと、たくさんのスマホが陳列されている。肝心のガラケーは隅っこの方に少しだけ置いてある。この際スマホにすべきと店員がしきりに言う。ガラケーの説明はせず、スマホの話ばかりする。値段を見比べていたらシャープ製のAQUOS sence2と言う機種が3万円ちょっとである。ガラケーの値段と変わらない。今頃ガラケーなんて時代遅れの化石人間と常々家人に馬鹿にされていたので、この際スマホに換えることにした。家人との電話連絡とメールのやりとりだけで、ほかに使い道がない。日がなスマホをいじっている連中をあちこちで見かける、いったい何をやっているのだろう。単なる暇つぶしか。暇つぶしならほかにやることがありそうなものだが。スマホ中毒は偏差値が10下がって馬鹿になると、東北大の先生が文藝春秋に書いていた。

 スマホを買ったはいいが、店員は何の説明もしてくれない。ポンと渡されおしまい。説明書も添付されていない。仕方がないので家に帰ってあれこれいじっていたら、丸1日がかりで一通りのことを覚えた。基本はパソコンと同じだが、OSがWindowsではなくアンドロイドであること、すべての操作をタッチパネルで指1本でするように作られているところが違う。指一本の操作に慣れるまで半日かかった。パソコンマニアの小生でもこれだけ手こずるのだから、普通の人はどうやっているのだろう。以前からスマホにしていた家人はドコモのスマホ教室に通っていた。誰でもそうするのだろうか。これだけ機能満載で扱いにくい機械がなぜこれだけ普及したのだろう。

 ドコモショップの陳列棚を見ていたら、iPhone以外はほとんどが今話題のファーウェイ製かサムスン製のギャラクシーである。国産品はソニー、シャープ、富士通製などごくわずか。日本製品不買運動でただいま炎上中の韓国とは大違いなのはいいとして、気になったのはファーウェイ製スマホである。あれだけトランプが目の敵にしているファーウエイ製品を白昼堂々と売っている。日本の大企業が、今の米中貿易戦争にこれほど鈍感なのがいささか気になる。前の日誌にも書いたが、これはすでに近未来の覇権を争う米中戦争の始まりであり、金儲けの貿易戦争などではない。ファーウエイはその戦いのシンボルである。トランプの恫喝でいったん売り控えたファーウェイスマホを、またまた大々的に売り出す。トランプ相手に喧嘩を売るとはいい度胸だが、日本人の安全保障感覚の鈍さと戦略性の欠如を象徴しているようだ。これでは歴史認識馬鹿の韓国のことを笑えない。この戦略欠如馬鹿が70年前の敗戦の最大原因である。このままノー天気を続けていると、第二の敗戦を招きかねない。大いに心配だ。

 話をスマホに戻す。家人がラインをやれという。今時メールは流行らないという。あなただけとはメールにしているが、息子や孫とライン友達になっていて、すこぶる便利だという。今時の若い人は電話やメールはしない。もっぱらラインでのやりとりだという。ラインをやらないと誰とも付き合えないし、孫も相手にしてくれないという。葵のご紋の孫を持ち出されては抗いようがない。仕方がないのでやることにした。ラインにまつわるスキャンダルやトラブル話はいろいろ聞いていたが、実際やってみるとかなり剣呑な危うい通信手段である。

 ラインアプリをインストールして起動すると、あちこちに当方の個人情報が勝手にばらまかれるらしい。ほとんどが電話帳に載っているスマホ利用者で、ラインをやっている連中である。なんの連絡もしていない姉や友人からラインの通知が入ってきた。あなたもスマホを買ったのね、ラインが出来るのねと。フェースブックやツイッターと連携しているらしく、見知らぬ人からSNSが入ってきたりする。ラインの基本は「風呂!」、「飯!」、「寝る!」の短い文章のやりとりだが、無料電話もかけられる。試しに家人にかけてみると「通話の録音を許可しろ」とメッセージが出る。許可しないとつながらない。通話が勝手に録音される電話なんて聞いたことがない。危なくて使えない。

 ラインを開設するとき、スマホの小さな画面に長ったらしい契約条件が示され、同意を求められる。誰もが読みもしないで同意をクリックしている。条件の中に、ラインのやりとりから得られた個人情報をラインが勝手に利用できる文言がある。誰も気がつかない。グーグルやフェースブックも似たようなことをやっているが、ラインはなんと言っても通信システムである。本来は通信の秘匿を遵守すべき立場が、自らその義務を放棄して、通信内容から窃取した情報利用の同意を求めるのは本末転倒である。通信の秘匿は憲法でも義務づけられている法治国家の基本だが、それがなぜ問題にならないのだろう。ラインはすでに数千万人の利用者がいると言う。ユーザ数が多すぎて今更止めようがないのだろうか。そうだとしたら法務省や、いつもは憲法にうるさい憲法学者の不作為、怠慢ではないか。最近スマホ利用のトラブルや社会問題が頻発しているのはこれが原因ではなかろうか。

 当方のライン開設に気づいた息子からさっそくラインメッセージが届いた。家族で夏休みの旅行中で、先々から写真付きのラインが届く。孫達の元気そうな写真が見られて有り難い。大いにラインの恩恵に与っている。こういう便利さが難しい法律論議をなし崩しにしているのだろう。ラインの経営主体は韓国企業である。日本政府は他国の通信企業に憲法にも書かれた通信の秘匿義務を蹂躙されて、見て見ぬふりをしている。考えようによっては、徴用工問題よりはるかに深刻な問題ではなかろうか。

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