DA・M 近作紹介5 2000  BackNext
 
 
Hong Kong-Tokyo Image Theatre ProjectClick! to Album
撞Clash+DA・M共同公演

Unbearable Dreams
タ・エ・ラ・レ・ナ・イ・ユ・メ

企画趣旨(※企画書より)
この度の企画の狙いは、東京と香港在住の現代演劇人たちによる共同作業を通してひとつの舞台作品を0の地点(テーマや題材、創作方法を話し合う)から創作することにあります。
それは一つには、自国言語の枠にとどまることのない国境を越えた演劇地平を創造することであり、二つには、立場や所属(国家)から離れて、一人の人間として相互に出会えるようなコラボレーションのあり方を模索していくことであり、ひいては三つ目に、アジアにおける国際的な演劇アンサンブルの可能性を開いていくことを期待するものです。

DA・M(Tokyo)と撞Clash(Hong Kong)は、'97年、'98年と開催されました"Asia meets Asia"にて出会い、交流し、この度コラボレーション・ワーク(共同公演)を目指すことになりました。また、今回音楽参加します邱立信Nelson Hiu(Hong Kong)と竹田賢一Kenichi Takeda(Tokyo)は西洋と東洋の境界線上で世界的に活躍する音楽達で、それぞれの劇団とはすでに数回の共演歴があります。周知の通り東京も香港も人やモノ、情報が絶え間なく行き交う世界的な大都市です。その中で現在お互いに、どのように人間のあり方を見つめているのか? そしてこれから見つめていくのか? 今回の共同公演がやる者、見る者双方にとりまして、生への新鮮な刺激(勇気)となり豊かな想像力を喚起できるものとなりますよう、参加者一同全力を尽くし舞台を準備していきます。つきましては皆様のご理解、ご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます

●構成・演出 DA・M+Clash共同構成  
●出演 撞Clash 湯時康 Tom Tong
駱竟才K.C.Lok
朱秀文Virginia Chu
許朗養Teresa Hui
蕭耀翔Reggae Siu
  DA・M サキSaki
八重樫聖Hijiri Yaegashi
今井あゆみAyumi Imai
中島彰宏Akihiro Nakajima
(※東京公演)
  Musician 邱立信Nelson Hiu  中国フルート 香港
竹田賢一Kenichi Takeda
大正琴  日本
  Lighting 大橋宏Hiroshi Ohashi
●公演日時
 &会場 

東京公演・・・・・2000年10月
会場・・・・・・プロト・シアター
           (高田馬場)
           

27日(金) 7:30pm
28日(土) 7:30pm
29日(日) 5:00pm
  香港公演・・・・・・2000年11月
会場・Hong kong Arts Center
     McAulay Studio
17日(金)
18日(土)
19日(日
●制作 DA・M+撞Clash共同制作 湯時康 Tom Tong+大橋宏
●助成 The Hong Kong Arts Development Council
舞台紹介にかえて

今回の企画では「夢」という"個人的なもの(記憶)と社会的なもの(記憶)とが交錯する場"を出発点にして、参加者それぞれが、自らの生が欲望する、あるいは逃避する、願望、恐怖、エロス、妄想、覚醒を身体化してく・・・・・・

―――舞台は、言語的な筋(プロット)の展開はなく、動き、言葉、声、サウンド、オブジェ等が、時に突発的に、時に組織的に、ぶつかりあい、協調しあい、離反と合一を繰り返しながら、いくつもの記憶と夢想が重なり合う、未知の時間を生み出していく。

参加メンバー・プロフィール
劇団 撞Clash Hong Kong
Clashは、香港の社会運動に文化的な面で大きな力を発揮してきた「民衆劇場」にいたメンバーにより新しく設立され、資格や制限なくさまざまな人達によって自由に形作られる劇団である。全員が階級的な運営や分業のない創作空間を求め、その舞台スタイルは意識と無意識、社会的関心と人間的表現、形式と無形式の間から生まれ出てくる。日本では、97年と98年にAsia meets Asiaに参加。"Who got Amesia? Be Emperor Tsang Not?"('97)と"Hong Kong Fify Years Bugs"('98)で日本とアジア各地からのアーティスト達と交流している。

劇団 DA・M  Japan
1986年設立。同年利賀国際演劇祭参加。日米演劇人共同公演。1988年より、自ら運営する<プロト・シアター>を拠点に、ジャンルや国籍の枠を越えたアーティスト達との実験的な共同公演を精力的に展開。一貫して戯曲の物語性やテーマ性を排し、断片的な動き・言葉・イメージによる即興的な舞台構成により、カオスとしての生そのものの形を探り出す。始源性と今日性の融合する未知の演劇地平に多くの支持を集めている。1997年アヴィニヨン演劇祭参加、97、98年アジアにおける現代演劇の国際交流を目指すAsia meets Asiaを開催。現在、言語の壁を越えて活動の幅を広げている。

音楽 邱立信Nelson Hiu  Hong Kong
ハワイ生まれ。ハワイ大学にて民族音楽を専攻、修士課程途中よりダンスカンパニーの音楽を担当。1985年より香港に移り、数多くの前衛的な音楽家達と、中国、台湾他、世界各地での演奏ツアーを続ける。また香港とハワイにてニューミュージックのアンサンブルを積極的に組織する。即興的な音やサウンドをダンスや演劇作品に幅広く提供する一方、独自の実験作品を自身のグループ"Dancing stone&Yihk"とともに創作、7枚のCDを発表している。"Suedeutsche Zeitung"(ドイツ)紙は彼の音楽を「初期のヴェルヴェットアンダーグランドのような暗闇に潜む生々しさ」と評している

音楽 竹田賢一Kenichi Takeda Japan
先鋭の作曲・演奏・批評家。1974年坂本龍一とマルチメディアパフォーマンス・グループ<学習団>を結成。翌年エレキ大正琴に出会う。1979年より大正琴ソロ活動を開始。81年アンチポップグループ<A-Musik>結成。以降、国内外のフェスティバル・演奏ツアーに多数参加し、海外交流イベントも企画する。またダンスや演劇との共同作業も継続的に行う。プリミティブな音からシンセサイザー音楽までの全てを暗示する彼の演奏は海外でも高く評価され、THE CUARDIAN紙(ロンドン)にて、「日本的なひずみ音を限りなく発展させていく独創的なアーティスト」として紹介される。

公演評


DA.Mの舞台で起こる事態とは、まず歩行だ。歩くこと。とはいえ、能やダンスのように歩行自体が求心的に様式化されることはない。たとえば、平仮名の一つを無意識にではなく意識しながら書き続けていくと、いつしかその単純なものの形が怪しくなりついにはそれが崩れてしまうことがあるように歩行もまたずっと「.....」で続く文章のように遠心的に、しかし意識のうねりを効かせ続ければやがて単純な歩行さえもがままならない破綻が訪れる。それは身体と意識の分離などということではなく、歩行する自我そのものの分裂の瞬間なのかもしれず、その分裂した自我が思わず起こしてしまう次の動きとやはりどこかで分裂した他者の動きとが時に結び振動し、また離れていく。そんな部分の繰り返しに、断片化された言葉や音、そしてこれだけは少し心地いい湿りを帯びた、しかし決して過剰にはならないサウンドが絡み付き、それぞれの部分の境界線を縫い合わせ、また解きほぐしていって、テキストや演出という近代のヒエラルキーを放棄した舞台でありながら、ある瞬間、劇場全体を(つまりは客席までも含めて)大きなうねりが共振する、それこそ鳥肌立つような時間が訪れてくる、ことがある。とはいえ、たぶん彼らはその瞬間を目指してはいない。それを目指す構造そのものもまた、モダンの内なのだから。その僥倖のような共振の時間は、あくまで分裂の過程の部分が網目のようにつながり、重なりそしてズレる、その一瞬に生じるモアレのようにして訪れるだけなのだ。香港の鐘Cーashとのコラボレーションでは、鐘の持つアジア的メッセージと絡み合うことでDA.Mの歩行のリズムが意味の側に引きずり込まれそうな危なさを感じさせながら、しかし一方では無意味のナルシズムを切開するという、スリリングなふくらみを感じさせてくれたのだった。

堀浩哉 
美術家 ベニスビエンナーレ出品など。絵画、映像作品の他ユニット00(ゼロゼロ)でパフォーマンスも行う。


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