+あまい誘惑+




「飛影ーーーーーー!!!
貴様、躯様とやはり、そういう関係だったのだなっ!!!」

「拙者、必ずやトーナメントでおぬしを倒す!!
今度は腕ではなく、頭をすっ飛ばしてやるから覚悟せい!」


「おい、奇淋。時雨。
今、オレの部屋にノックなしで入ってきやがったな。
貴様等、トーナメントの前にここで殺されるハメになるぜ。
それに、『そういう関係』ってどういう関係だ?」

躯の怒れるオーラが部屋中を取り巻く。

「こ、交友関係・・・。」

ぴしっ。




ちゅどーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!


哀れ、奇淋は、闇の彼方へ吹っ飛ばされた。


「さ、さすが奇淋殿!素晴らしいオヤジっぷりでしたな!
それにしても躯様、いつもよりも万倍はお美しい!」

「そうか?」

なんだ、褒め殺し作戦か?

「こうなんと言いますか、
太ももの見え具合といい、胸のすっきり具合といい・・・」

これではただのエロオヤジである。
躯が胸を張って言うには。

「コンセプトは『永遠のピッチピチ』。」


そうすると、今までだんまりを決め込んでいた飛影が躯に向かって、

「却下だ!」

「なんだよ、飛影。急にデカイ声出しやがって。」

「躯様に、大いにお似合いじゃないか。」

「そんな、露出した服!このオヤジの鼻の下が伸びるだけだぜ。」

「飛影、おぬしももうすこし正直になれ。」

「そもそも貴様等、なぜここに来た?」

「おお、そうだった。
黄泉のところのキツネから、躯様が人間界に行くという話を聞きつけ、
拙者等もぜひご同行願いたく。」

「オレが、『ノックしろ』という規律を破った奴等に
同行を許すとで思ってるのか?」

「というと、拙者も・・・。」


どごぉーーーーーーーーーーーーーーん!!!!


調子に乗りすぎた時雨。黄泉の彼方へはじき飛ばされた。



「そうだな。こんな服、オレには似合わないよな。オレはオレだ。」

そう振り返った躯の顔に、豪奢な笑みが広がった。


この笑顔だけでじゅうぶんなんだが・・・。
花嫁の螢子が、どんな素晴らしいドレスを着、
高価な宝石を身に着けようとも、
きっと躯はこの笑みだけで、花嫁よりも目立つ存在になってしまうのだろう。

「貴様にはあんなもの必要ない。とっとと闘技場に行くぞ。」

「やけに気合が入ってるんだな。昼寝はもういいのか?」

「時間がない。人間界で余計なことをする羽目になったからな。」


そして、部屋を出て行こうとした飛影だが、視線がある一点に止まった。
あれは・・・。


「何してる?手合わせするんだろ?行くぞ。」

そして二人は闘技場へと消えていった。