+あまい誘惑+




-百足 応接の間にて-



「ハハハ!あの飛影のぎょっとした顔!」

「・・・楽しそうですねぇ。」

「お陰様でアイツが来て以来、退屈しなくってなぁ。」

「また痴話ゲンカの傷の治療をするのは御免ですよ。」

「?何の事だ?」

「いえ、なんでもないです・・・。
飛影。そんなところに隠れてないで、出てきたらどうです?」


どうやら、二人が気になってついてきてしまったらしい。
少々バツの悪い表情をしながらも、案外素直に姿を現す。


「それより、その箱はなんだ?」

見事に飛影と同じ問いを発する躯。

「これはね、ケーキっていうんですよ。
なかなか甘くって美味しいですよ。せっかくお茶も淹れてもらったし、食べてみます?」

「人間界の食い物か・・・。オレの口に合うとも思えんが。
まぁ、ちょっと試してみるか。」



-数分後-



「う・ま・い!!!」

「貴様、ワンホールほとんど一人で食いやがって・・・。」

と悪態をつきつつも、躯があまりに無邪気に喜んでいるので
内心驚いている。

ね?言ったでしょ?
蔵馬の目が、飛影にそう語りかけている。


「ほぉ・・・人間はこんなうまいもの食ってるのか。」

「喜んで頂けて嬉しいですよ。
貴方は人間界に行ったことはないんですか?」

「オレが行ったことがあるのはもう何百年も前のことだ。
今行っても、食料に目の前でうろうろしてたら目の毒なだけだからな。」

「一週間後に幽助と螢子ちゃんの婚約パーティーがあるんですよ。
飛影と一緒に参加してもらえませんか?」

「俺は参加せんといっただろう?」


飛影がすかさず口を挟む。


「トーナメントに向けて調整もしたいしな。
申し訳ないが、今回はパスさせてもらうぜ。」

「そうですか。残念ですね・・・。パーティーでは、これよりもっと美味い
ケーキを用意しようかな、と思ってたんですけどね・・・。」


「飛影!仲間を祝ってやらんでどうする!オレ達も行くぞ!」

「だぁぁっ!なぜそうなる?
貴様、完全に餌に釣られた魚だぞ!??」

どうやら蔵馬にまんまとハメられたらしい。
難なくひっかかる方もどうかと思うが・・・。

「一緒に行くと言うなら、さっきの年寄り発言のことは忘れてやってもいいぜ。」

「年寄りとまでは言っとらんだろう!」

まだ根に持っていたのか。

「飛影、行かないと躯と俺と、二人を相手にすることになりますよ。
トーナメント前に無駄な妖力は使いたくないだろう?」


蔵馬と躯、二人に完全に遊ばれてしまっている飛影であった。
もちろん、渋々と了承せざるを得なくなった。



さてさて、これからどうなる??