「で、それがそのとき拾った指輪?」
スフィア・ザ・ヘッジホッグはソニックから指輪を受け取りじっくり眺めた。
銀色で装飾は石一つのシンプルなデザイン。その石にしても半透明にくすんだ土色をしていて、洒落ているとは言い難い。何という宝石だろう。
「ソイツの言う事は気にしないほうがいい。向こうから関わるなって言ってることだし。」
そう言いながらもソニックが訝しげな顔をやめないことは予想がついていた。困っている人を見ると放っておけない性格は昔とちっとも変わらない。
普段はひとり気ままを気取っているくせに、きっと見過ごしているとどこか心が晴れないから、もやもやしたものを心に抱えない為になのだろう。
そう、気持ちがすっきりしないと楽しいことも楽しめない。
今回のソニックの旅は一人ではない。途中で再会した幼い頃の親友、スフィア・ザ・ヘッジホッグが同行者だ。
ソニックはよく一人で旅をする。ソニックがいつも単独で世界中をまわる理由にその自身の速度がある。
早すぎるソニックに対して追いつけない同行者というのは彼のペースを乱す枷にしかならない。
もとより一人で行動することにためらいのない性格もあって彼の基本スタンスは一人だ。
逆を言えば追いつく速度を持つ者がいれば一人きりの旅をしないで済む。
「やはり、目つきが引っかかるか。」
「ああ。」
ソニックは顔を上げないで返事をした。
考える顔が似合わないなと思いながらも、それが他人の事を思ってしている為だから軽くからかいたくなる衝動を抑える。
初めて出会ったのはもう十年くらい前のことだ。スフィアの住む町にソニックがやって来た。
理由やいきさつなどはもう覚えていない。その頃の記憶は二人で毎日遊んでいたことしか思い起こせない。たぶんソニックもそうだろう。
同い年で気が合い気付いた時にはすでに大事な友達になっていた。
二人は今ホテルの部屋の中で話をしている。昨晩の出来事を聞き終え、スフィアは天井を見上げていた。彼の考える時の癖だ。
「その理由が鍵だな。それさえわかれば妙な態度も何かわかりそうな気がする。」
他人の心など考えたってわかりやしない。実際に本人から話してもらう以外ないだろう。
どうしても、と言葉を続けるつもりだった。どうしても知りたいのなら探し出して聞いてみろ、どうやって見つけるかは知らないが。
話し出す為に息を吸った、ちょうどソニックが話し出した。ソニックの声を吸い込んでいるような錯覚を覚える。
「気になることはそれだけじゃない。後でスタンを捕まえてあの時何を話していたか聞いたんだ。」
短いブレスを入れて続ける。聞く準備には十分な間だ。
「そしたらアイツ、カオスがなんだかっていうのを持っていないかを訊かれた、そう答えた。」
ここで質問を投げかけるようにスフィアに視線を送った。どういう意味だと思う。
その答えはスフィアにとってあまりに単純で、かえって何かジョークを飛ばしたほうがいいのかと思えるような、ネタの振りに思えた。
どうするかはソニックの目を見てから決めた。
「カオスエメラルドを探している・・・」
「おそらくな。スタンの奴がちゃんと聞き取っていれば、多分。」
別れ際の事もすっかり記憶から抜け落ちていた。気付いたら仲良しで、気付いたら離れ離れ。幼い頃の一時の思い出だ。
カオスエメラルド。無限の力を秘めているとされ、七つ全てを集めればいかなる願いも叶えられるという宝石。
これまでにも何度も事件に絡んできたその名に緊張を覚える。またなにか大きな動きの前兆がすでに起こっているというのか。
それは、新しい冒険が待っている、面白いことが待っていると捉えていいのだろうか。
スフィアは再び天井を仰いだ。
「それならソニック、俺たちもエメラルドを探そう。」
元に向き直って話し出した。思案顔だったソニックは呼びかけられそのしかめた眉根を緩める。そしてスフィアを見る。
「一つでも持っていればエメラルドを探すついでに向こうがこちらを探し出してくれるだろう。もしかすると探している最中に見つかるかもしれない。
訊きたいことはそのときに話してみれはいい。それに・・・」
語感に変化をもたらす間を取る。
「万が一の為だ。悪用されるんだったら、止めなきゃな。」
マジメな返答をしていて、よっぽど自分のほうが似合わないことをしているなと、一気に言い終えてからつくづく思った。
内心下らないことを考え表に出たスフィアの苦る顔にソニックは無関心。彼の言うことに納得してすでに探す方法を検討していた。
「それじゃあテイルスの所に行こう。テイルスだったらエメラルドレーダーを持っている。」
自身の振る舞いに気を取られていたのと、知らない単語がソニックからさも当然であるように飛び出したので、スフィアは返事にまごついてしまった。
「テイルス?」
「ああ。俺の仲間だ。結構頼りになる奴だぜ。」
ソニックの仲間か。それならまぁ信頼できるだろう。具体的にすることが決まっていたわけでもないし、ネタが思いついたわけでもないし、
言うとおりにテイルスの所に行くことに同意した。
それにしても変わった名前だ。
「ふぅん。じゃソイツは名前の通り尻尾が二本だったりぃ?」
「That's Right!」
「?え」
当面の指針が決定し、二人は部屋を出た。
オリジナルキャラクター「スフィア・ザ・ヘッジホッグ」の登場。詳細はPictureにて。
文章でふざけるのムズイ。会話文って苦手なんだよなぁ