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横瀬貯油所 FAC5039 西海市西海町横瀬郷
土地678,512m2:建物12,786m2

 佐世保港の対岸に位置する西海市の横瀬貯油所。戦前は、旧海軍が貯油施設として使用していたが、戦後は米海軍が接収し、現在に至っている。総貯油量は県内3貯油所の中で最大で43万キロリットルといわれている。山中に埋まるタンク8基の改修に「思いやり予算」128億円が使われた。

●LCAC整備場が完成

 この貯油所の制限水域の一画を埋め立て、12隻のLCACを整備できる本格的な駐機場が完成した。14年間にわたって計上された予算は累計281億円を超えた。
LCACと整備場建設についてはここをクリック

 現在、佐世保配備艦船のLCAC最大搭載可能数は、ワスプ3,アシュランド4,ジャーマンタウン4,グリーン・ベイ2の計13隻。新駐機場に12隻の駐機スペースというのは、LCACの「フル稼働」を見越した、米軍にとってきわめて合理的なものといえる。もし西海市に12隻が配備されるとすれば、太平洋配備分の1/3を占めることになり、ますます前進基地としての機能が増していくことになる。

 LCACは走行時や運転時に大きな騒音をまき散らすため、米軍は崎辺地区での運用を火曜・木曜の午後1時~4時に限定し、佐世保市に内容の事前通知することを余儀なくされた。それでも他曜日や時間帯以外の運用、当日の内容変更や中止は数えきれない程だった。

 ところが横瀬に移転後は事前通知の廃止を通告。本来、テロ対策や保安上の理由から運用予定は公表できないが、崎辺は例外的措置であり、新駐機場には消音施設ができたという言い分である。それでも佐世保市の追求に、海上航行についての事前通知を外部への非公表を条件に再開した(14年3月まで)。しかし西海市には通知なしのままである。さらに米側はLCACの定期的な夜間訓練のために、訓練海域までの夜間航行を強行。市議会、漁民、住民は反対の声を上げている。

一方、水陸機動団=日本版海兵隊の発足を前後し、その構成の一翼を担う海自のLCACがこの整備場をたびたび利用するようになり、共同利用に向けた動きが加速している。

 2004年1月18日、地元の西海町瀬川漁協が臨時総会を開いて建設海域の埋め立て同意と漁業権放棄を賛成151,反対40で可決。3月には瀬川漁協が2億300万円の補償契約を福岡防衛施設局と締結。また西海町が漁業振興資金として5000万円を支出することで合意した。6月には埋め立て地先の自治体である西海町が埋め立てに同意、港湾管理者である佐世保市長は7月12日、「建設予定地の公有水面埋め立てに関する承認書」を福岡防衛施設局に送付した。これによって建設が着工されることになった。

 埋め立て面積は6ha、陸地造成5ha、LCACは現在の2倍の12隻が収容可能になる。敷地内には、整備工場、管理棟、洗機場、駐艇場、消音装置つき試運転場などの施設を建設する予定で、総工費は約150億円。

 新駐機場が米軍の意向に沿った計画であったことは、福岡防衛施設局が西海町(当時)に受け入れ要請をした頃、米海軍ホームページ上に公開されていた文書から明らかになった。これは米海軍自身が構想してきた横瀬新LCAC基地建設計画のねらいを述べた内部資料で、崎辺地区の現在の制約を次のように説明していた。

 そして、横瀬に新駐機場が完成するまで、崎辺でのより長期的使用を考慮して現在の支援を改善するよう勧告していた。
 このことが報道されるやすぐに内部資料89ページのうち、新駐機場に関係する9ページ分だけが削除された。しばらくしてホームページ自体が再編され、内部資料そのものも削除された(消えた9ページ分の翻訳はここをクリック)。

 米テキストロン社はこれまで米海軍に対してLCAC91隻を製造した。現在配備されているのは72隻である。他の7隻は分解され、10隻は使用できない状態にあり、2隻は研究開発に回されている。

 米海軍は現在、バージニア州ノーフォークにある、大西洋艦隊リトル・クリーク揚陸戦基地のACU4(第4強襲揚陸部隊)とカリフォルニア州キャンプ・ペンドルトンにある太平洋艦隊の海兵隊基地のACU5(第5強襲揚陸部隊)に各36隻を実戦配備している。佐世保基地に配備されている7隻は、このACU5の分遣隊であるウエストパック・アルファの所属だったが、12年8月に第7海軍上陸部隊(Naval Beach Unit Seven)として独立した。

 LCACの新規建造計画はないものの、74隻の近代化(延命)計画--本来は20年のLCACの寿命を30年に引き上げる--が進められている。