『平和新聞ながさき版』コラム
(2014年12月25日) 先日、東北の被災地を見て「百聞は一見に如かず」の感を強くした。石巻の高台にある日和山公園の眼下には荒涼とした更地が続いていた。無造作に積まれた傷ついた墓石、その無残な姿に胸が痛み、「まだ何も復興していない」と実感した▼地元の初老男性が写真を開いて教えてくれた。「200段もある急な石段をみんな走って上った」「車の逃げ道は一本だけ。道という道は車で埋まり7メートルの津波が10数回も押し寄せ、やがて車の出口は炎につつまれた…。街角にあったお菓子屋も隣の郵便局も街中が一夜にして消えた」と▼被爆直後の長崎の街の姿が頭をよぎった。ただ、多くのボランティアの人たちが駆けつけて活動した足跡を見て、救われた気がした▼4年近く過ぎてなお、毎日ここを眺めにくる人。古い仮設住宅でまた寒い冬を越さなければならない人たち。帰る土地も家もあるのに、わが家に戻れない福島の被災者。「4年間、政治は何をしてきたのだろうか」、今その責任が問われている。この目で見た被災地の現実だった。(☆) |
(2014年11月25日) 知事選挙が終わったばかりの沖縄で20日に起きた出来事には誰もが怒り心頭し、呆れたことだろう▼辺野古新基地建設に反対する人々が工事車両の搬入を阻止しようとして県警機動隊ともみ合いになり、84歳の女性が転倒して救急搬送された。警察は取材陣たちから力づくで排除にかかった。琉球新報の記者が眼鏡を破壊された後に「また壊れるぞ!」と威嚇の言葉を浴びせられ、腕をねじあげられた。この現代に信じられない事態だと言わざるを得ない▼動画サイトで当時の様子を記録したものを見つけた。座り込みの住民1人に対し2人以上の警察官が無理矢理その場から引きはがそうとしていた。抵抗する人たちに罵声を浴びせかけるシーンもあた▼警察法第2条「警察は個人の生命や身体を保護する」を無視し、憲法第21条で保障されている「報道の自由」を侵害している。この出来事は、選挙結果を受けての焦りからかと穿った見方をしてしまうのだが、一般市民を傷つけるまでに日本の警察も堕ちたのかと情けなくなる。(み) |
(2014年11月5日) 「政治とカネ」の問題で安倍内閣の面々の醜態が続いている。当人らの開き直りの弁も見苦しい。許せないのは何の反省もせず、幾度となく繰り返されていることだ。根は深い▼この国の政治の後進性は「政治とカネ」に限ったことではない。原発事故の責任すら曖昧にして再稼働に突き進むことしか考えない政治。最悪の大衆課税である消費税を、「平等な負担」「福祉のため」と平気で言い放って恥じない政治。圧倒的な沖縄県民の声を無視した米軍の新基地づくり。すべて同じ根から出ている▼共通している病根は、国民に知らせるべき事実を意図的に覆い隠し、国民が真実を知る前に悪法を強行し、結果については頬かむりして悪政の上塗りをしていること▼極めつけは、「政治とカネ」の悪循環を断つと称して導入した「政党助成金」という名の税金分け取りだ。税金に群がって自らの政党活動を堕落させてきた姿は滑稽ですらある。国民無視の暴走政治は必ず国民の反撃に直面する。経験と学びによって国民の怒りのマグマは蓄積している。(☆) |
(2014年10月15日) 市民と一緒にジュゴンの形の折り紙を折る。沖縄連帯のジュゴンアクションに毎回参加して思うことは、意外と意識が高い人は多いということだ。沖縄・辺野古の新基地建設に反対する思いで、それぞれのジュゴンにメッセージを書く▼子どもが多い。わらわら・よちよちと、風船や折り紙に群がる。この世代に残してやれる未来、自然、環境…それがあるだろうか?▼未来はいつだって子どもたちのものだ。今、どんなに健康を維持しても、百年先に生きていることは、恐らく私たちには、できないのだから。だから、子どものために何か残してやらなければならない▼「希望」。ギリシャ神話であらゆる災厄を振り撒いたパンドラの匣の底に残ったのは希望だった。希望だけは子どもたちにせめて残さなければならない▼ジュゴンを折るだけだが、単純な分、伝わりやすい。U40+のメンバーも、入れ替わり立ち替わり、頑張っている。こういった活動は元気をもらえる。続けていってほしい。それが希望になる。(む) |
(2014年9月25日) 「南十字星/波照間恋しと/星になった/みたまたち…」日本最南端の小学校、波照間小学校の児童が卒業制作として残した歌の歌い出しだ▼戦時中の作戦で波照間島の全島民が当時マラリアの発生地だった西表島に疎開させられ、マラリアにより多くの人が亡くなったいたましい記憶を想い作られたそうだ。沖縄は戦争中、本土決戦を遅らせるために住民の多くが犠牲となった▼世界で最も危険とされる米軍普天間基地が辺野古へ移されようとしている。人々の生活が危険にさらされること、ジュゴンなどの海洋生物の生息が危ぶまれること、地元の人にとって基地の移設を許すわけにはいかない。県内での基地のたらい回し▼他都道府県にも負担の分散を、との声もある。しかし今だからこそ本筋からそれずに日本国内における米軍基地の存在、安保、地位協定の存在を改めて問い直すことが大事。70年前のように沖縄の人をスケープゴートにしない。国民みんなが同じ温度で考えていけたら、未来は明るいかもしれない。(み) |
(2014年9月15日) 何十種もの昆虫、生き物を容器や檻に閉じ込めて共喰いさせ、最後に生き残った一匹を呪力の呪詛に活用する?これを「蠱毒(こどく)」という。蠱道、蠱術、巫蠱などともいう虫を使った呪術▼「一握りの勝者」と「大多数の敗者」を生み出すこと。これが競争社会の真実だ。しかし、競争だけで社会は成り立ってはいない。助け合い、支え合い、励まし合って人間は生きている。競争の中でも、それがなければ、多分この社会で生きたいとは思わない▼佐世保市でまた、傷ましい事件が起きた。「なぜ」という思いとともに「やはり」という思いもある。度重なる少年事件の根底には、「若者が希望を持てない社会」に遠因があるのではないか。日本での自殺者の数を思う。誰しもが、この競争社会に「生きづらさ」を感じている▼「受験戦争」などという言葉も、蠱毒の中から一匹の毒虫を選び取る程度のものでしかない。そんなものよりも、もっと大事なものがある。「孤独の毒」。私は、この競争社会を憎む。(む) |
(2014年8月25日) 今年の原水爆禁止世界大会が終わった。第一印象は、集団的自衛権容認決定の根拠とされている「抑止力論」が世界中から批判され、いかに時代に逆行しているかが浮きぼりにされたこと▼「抑止力」とは相手国を圧倒する軍事力が前提。防衛省から早くもオスプレイ購入など兆単位の新たな軍備増強計画が出てきた。一方、なすべき平和外交の努力はさっぱり見えない▼いま一つは、核兵器の残虐性と非人道性が改めて注目されたことだ。先日TVで「長崎原爆・謎の衝撃波」と題して、爆心から五百?地点にあった旧城山国民学校を襲った爆風の破壊力について、最近の研究結果が放映された。アメリカは、どの高さで爆発させれば破壊力が最大になるかを事前に研究していた。投下後も、検証結果の詳細を本国に持ち帰っただけでなく、判明した犠牲者の名前すら明らかにしていなかった▼長崎が実験台にされていたことを改めて実感した。世界大会後の会見で、被爆者の声すら正面から受けとめない安倍首相の平然とした態度を国民は絶対に容認しない。(☆) |
(2014年7月25日) 終戦から69年目、戦争体験者が年々減る中「再び戦争できる国」づくりの為に、戦争を知らない世代の中で戦争美化の傾向がある▼書店でおすすめコーナーに並べられていた『国防男子』。イケメンの海上自衛隊員ばかりの写真集。女性自衛官の『国防女子』も。「兵隊さんてすてき」そんな意識を女性に与える入口になりそうだ。自衛官との結婚「J婚」もブームだ。制服、高収入、真面目そう等の理由で独身女性に人気なのだとか▼男性側にも戦争美化の入口がある。戦時中活躍した戦艦たちをかわいい女の子キャラクターにしたオンラインゲーム。自ら育てて闘わせるから愛着がわく。ドラマや映画でも、特攻隊や戦争を美化したものが増えている。聖地巡礼と称して戦没者慰霊施設や戦跡をまわるツアーも流行っている▼実際の戦争が暗く苦しく悲しいことだという記憶が薄れつつある。多くの人が解釈改憲や集団的自衛権に危機感を抱かないのもこのような文化が影響しているように思える。戦争体験や被曝体験を語り継いでいくことが今改めて必要である。(み) |
(2014年7月15日) ウルトラマンシリーズにはメトロン星人という一風変わった宇宙人がいる。ウルトラセブン(1967年~68年放送)では「狙われた街」というタイトルで登場。タバコに人間を凶暴化させる赤い粒を入れて、侵略を企む▼ウルトラマンマックス(2005年~06年放送)では「狙われない街」というタイトルで再登場。携帯電話の電波によって人間を凶暴化させるが、今回は侵略が目的ではなかった。呆れたようにメトロン星人は言う。「地球人は私たちが手を下さなくても、自分たちの文明によって便利さ・快適さを追求して堕落し、いつか私たちの手に必ず落ちると確信した」と▼今はどうだろう。原発の問題では、自分たちのつくり出した文明で、自分たちの首を絞めている。メトロン星人の言うように、「人間の堕落」を指摘されるのかも知れない▼宇宙人の侵略など絵空事だが、メトロン星人の指摘には含蓄がある。メトロン星人は、下町の夕焼けを愛した。私たちは、果たして何を愛するのだろうか?(む) |
(2014年6月25日) 熊本から人吉を走るSLのゆっくり旅を楽しんだ。車内は子ども連れやシニア世代でいっぱい。各駅停車の度にホームに降りて古い駅舎を眺め、地元の特産品を試食して言葉を交わし、みんな笑顔に。車内に戻ると、「この列車遅いネ?」「バカだね、そのゆっくりがいいんだよ」と初老夫婦の会話が聞こえた▼車窓には新緑がいっぱいで、静かに流れる川面の輝きまで見えるスピードがいい。沿線を歩いていた男性が両手を広げ、丸を描いてあいさつしてくれた。畑仕事や洗濯物干しの手を休め、手ぬぐいを振ってくれる女性たちの顔も。車内からも「お~い!」と手を振る。こころがほのぼのとする光景に、SLもモクモクと煙をはき、力強く汽笛を鳴らし応えていた▼長崎市郊外の静かな里に住む友人が「新幹線のトンネル工事が始まったけど、ホタルがいなくなるのでは?」と心配している。自然を壊してまでスピードを求め、その先はどうなるのだろうか。住民が求めている方向とは思えない。いま、各駅停車のローカル線や路線バスの旅が静かなブームだという。(☆) |
(2014年5月25日) 先週、久しぶりに映画を観に行った。『ある精肉店のはなし』というドキュメンタリー映画。食肉に関わる仕事をしているため、職場でも話題となり皆で行こうということになったのだ▼大阪で百年以上続く市営屠畜場の閉鎖、部落差別、この地域で屠畜から精肉への加工までを行い販売する商店とその家族を描いたドキュメンタリー映画だ。ネタバレになってしまうが、冒頭と終盤には牛の屠畜シーンがある。衝撃的ではあるが、命を頂くとはそういうこと。知らずに肉を食すことの方がむしろ恐ろしい気がする▼先日首相が交渉の加速を表明したTPP。私たちの生活がおびやかされる可能性も加速している。TPPで外国産食肉がどんどん国内に流れ込んでくる。BSEの更なる規制緩和など不安が募る。日本の低い食料自給率がゼロに近づく危険が迫っている▼育てた牛を屠畜して解体し、スライスして食卓へ…今では贅沢ですらあるのかもしれない。しかしそれが本当の幸せな食生活であり、私たちに与えられて当然の権利なのだ。(み) |
(2014年5月15日) 今年のメーデーのリレートークで、高教組からの発言に次のような言葉があった。「暴走政治を続ける安倍首相は、国民の逆鱗に触れる」と▼「逆鱗に触れる」とは、中国の思想書『韓非子』にある。普段はおとなしい龍が、一枚だけ逆向きについた鱗に触れた途端、怒り出す。転じて目上の人からの怒りを買うときに用いられるが、国民から「選んでもらった」安倍首相にとっては、まさに「国民」が目上の者▼聞き耳話だが、「セイテンタイセイ」という言葉がこれに似ている。『西遊記』で知られる孫悟空が神様になったときの名前、「斉天大聖」。民衆を虐げ過ぎると、この「セイテンタイセイ」が現れて世の中をひっくり返すそうな。だから古来より為政者は、これが現れないように、行き過ぎた暴政を控えた…とのこと▼「逆鱗に触れる」も「セイテンタイセイ」も中身は同じ「世論」のことだ。世論無視の政治がいつまで続くか。龍や猿が怒るのを待つよりも前に、国民の怒りが頂点に達することだろう。(む) |
(2014年4月25日) 「非戦闘地域だから」と自衛隊がイラクに派遣されたのは03年12月。5年間でのべ1万人にも。「1人の犠牲者も出さず終了した」と政府は強調したが、派遣から10年を経た今日、帰還後の自殺者が28人にも▼「非戦闘地域」といえども戦場、敵味方の区別はむずかしい。帰還した隊員は「何がどこから飛んでくるか不安で眠れない」「着弾を近くに感じ恐怖が走る」と語る。自殺した隊員の家族は「派遣された隊員の直面する実態をもっと知って」と訴える▼帰還兵の精神疾患が大問題となっているアメリカ。先日も南部の基地で3人を射殺した事件があった。米紙の調査では、「戦争が心や感情の問題を引き起こしている」と応えた帰還兵が31%にのぼる▼人を殺し合う戦場とはそういう所だ。災害被災地の救援活動を誇大に宣伝しても自衛隊の本質は隠せない。「平和な日本を」というなら、集団的自衛権行使に血道を上げるのでなく、こうした実態を直視し、「憲法9条をノーベル平和賞候補にした」世界の動きにこそ目をむけるべきだ(☆) |
(2014年4月15日) 【愛国者】部分の利害のほうが全体のそれよりも大事だと考えているらしい人。政治家に手もなくだまされるお人好し。征服者のお先棒をかつぐ人▼これは、ビアスの『悪魔の辞典』にある一文。自称「愛国者」を皮肉る言葉だ▼「愛国心」に関する名言を引くと、皮肉的な言葉が多い。国家というものに人々が信頼を寄せていない証拠なのかも知れない▼愛国心を唱え、戦争を賛美する人間は、どこにいる?他人の犠牲と死を強要する人間は、どこにいる? 後方の安全なところで、最後まで「愛国心」というウソを吐き通すはずだ▼真実とイカサマが手を組んだら大変なことになる。実例を挙げれば、「福祉のための消費税増税」「経済のための原発輸出」「国家安全保障のための集団的自衛権」…今の政治のすべてがきな臭い▼「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理されるな」とは、ジミ・ヘンドリックスの言葉。愛する対象は広く持って、それを守りたい。原発からも、核兵器からも、戦争からも。(む) |
(2014年3月25日) 4月1日から消費税率が8%に増税される。商店や飲食店に行くと早速、価格表示に「外税・税別」の文字が足されている。財布の紐はますます固くなり消費は冷え込みそうだ▼消費税とは、製造業者、卸売業者、小売業者と資産等が移転するにつれて負担が次々に転嫁され、最終的には消費者の負担になる。最終的に消費者が負担するか否かは作り手売り手次第だ▼原価率を極端に低く設定した商品は内税のまま価格を据え置き出来るかもしれない。しかし良いものをなるべく低価格で提供したい業者は消費税分を価格に上乗せせざるを得ない。病院などでは、注射器や脱脂綿など消耗品費が上がっても、診療費を上げることは出来ない。一部の医師会や保険医協会でも増税に反対している▼そもそもが使い道のわからない税金として我々消費者を悩ませて来た。安倍政権の暴挙ぶりがいよいよ露わになる。軍事費に回っているかもしれない謎の消費税。国民全てが軍事に加担しているかもしれないと思えば、二重の苦しみである。(み) |
(2014年3月15日) 「日本の経済力は世界第3位」と、政府が胸を張って何十年たつだろう。社会の矛盾に無知だったころ、「それなら、国民の暮らし向きも3位で当然では?」と考えていたことを思い出した▼先日、極寒の地で自然と共生し、アザラシを糧に暮らすイヌイットの人たちのTV番組でみた。日本の印象を聞かれ「日本には水でお尻を洗うトイレがあるらしい!そんな豊かな国に、貧しい人がいるんだって?」と驚いていた▼「普通に考えたら、そうだよな」と妙に納得した。ところが、天下の「ワタミ」が都道府県の最低賃金に一円の上乗せもせずにバイトの労働力を確保し、使い捨てている実態が国会で取り上げられた。これに「ワタミ」の創業者・渡辺参院議員は、「職業選択の自由もあるから」と開き直ったという▼欧米の6割程度の最低賃金。非正規がまかり通る雇用形態の横行、大企業の内部留保ばかりが膨れ上がるこの国の現実。イヌイットの人たちは「経済力と国民の暮らしは同じじゃないんだね。豊かさって何!」と大笑いするかも…。(☆) |
(2014年2月25日) 「平和とは何か?」と長崎原爆の被爆者から問われた。「平和とは人の痛みが分かること。平和教育はそのためにある」がその人の答えだった▼「いじめ問題もそうですよね?」と私が言うと、首肯して答える。「一人の子どもの命が失われる。あれほどひどいことはない」。原爆投下によって、生活の困窮と病苦に陥ったと言う。悲惨な経験を証言してもらったのに、その体験よりも他人の安寧を案じる。なかなかできることではない▼岩波新書の『ヘイト・スピーチとは何か』(師岡康子著)を読むと、心無い人たちによる憎悪表現がたくさん掲載してあった。「他国のことを悪く言うのは戦争前夜によく起こること」という話もある。インターネット上に蔓延する憎悪表現に、軍靴の音が迫る恐怖を感じる▼共通の敵をつくること。これほど権力者にとって都合の良いことはない私には肩を貸し合うのが自然で、「争いのない、手をつなぎ合う世の中になってほしい」。被爆者の言葉だが、私もそう強く感じる。(む) |
(2014年2月15日) 我が身とお腹の子を放射能被曝から守るため、住み慣れた土地を離れて移り住んだ夫婦。「ここも安全かわからない」新しい町の産婦人科で隣り合わせた妊婦の言葉に衝撃を受け、外の空気が真っ赤に染まって見える…。園子温監督の映画『希望の国』のワンシーンだ▼放射能に色が付いていたら、パニックが起こるかもしれないが、被曝を防ぎやすくなるだろう…そう思うことがある。福島や関東地方で子育てするお母さんたちは、もっと思っているに違いない▼柚木ミサトさんの『あかつぶ』のイラストは、そんな気持ちを代弁してくれる。降り注ぐ赤いつぶつぶから両手でこどもたちを守るシンプルなイラスト。その上には「まもろう」の文字。赤いつぶつぶはもちろん放射能▼日本列島が赤いつぶつぶに覆われているイラストもある。ポストカード、缶バッジなどに商品化もされている。Tシャツを着てさりげなくアピール、毎日プチデモ作戦もできる。なかったことにならないために、原発を考えるために、あかつぶは世界中に訴え続けている。(み) |
(2014年1月25日) 男の名は尾生。逢瀬の誓いを守り、橋の下で女を待つ。女は来ない。雨が降り出す。尾生は待つ。女は来ない。やがて、大雨に。川は増水し、尾生は約束を違えることなく、溺れ死ぬ▼『荘子』にある「尾生の信」の故事。広辞苑には、「固く約束を守ること。愚直なこと」とある▼さて、尾生は立派か? TPPなどのさまざまな公約をかなぐり捨てた自公政権には、その爪の垢を煎じて飲ませたい。尾生は約束を守った。しかし、尾生は立派ではない▼この場合、「待つ」のは重要ではない。「会う」のが重要で、その方法は様々だ。待つばかりでは愚直に過ぎない▼憲法を守るべき立場にある人間が、様々な形で憲法違反をする。安倍晋三首相は憲法を殺して、多くの国民を戦争に追いやって殺そうと目論む▼この場合、「生かす」のが重要で、「待つ」ばかりでは愚直だ。「生かす」方法は様々、近くのデモに参加するだけでも大丈夫。私たちは自分の手足で歴史をつくらねばならない。一つひとつ、丁寧に。(む) |