世界のシェアの17%と国際競争力を失った日本の造船業は再編が進み、加えて軍事部門へのシフトが目立つようになった。「防衛生産・技術基盤は、いわば防衛力そのもの(国家安全保障戦略)」と位置づける岸田政権は軍需産業支援法を成立させ、軍事企業の手厚い保護に乗り出した。そんな中、造船業にとって「米軍特需」となる事態が進行中である。
5月24日付のNikkei Asiaは「米艦補修、日本の造船所で迅速に」という記事を配信した。在日米海軍が日本に配備している20数隻の戦闘艦(駆逐艦、巡洋艦、揚陸艦)の整備、修理、オーバーホールまでを日本の造船所で行う検討をしているという。エマニュエル駐日大使が中心となって関係機関に打診を行っており、造船業界は受け入れるとみられている。
現在、米戦闘艦の定期整備は米軍基地の艦船修理廠(横須賀、佐世保)で、造船業から派遣された日本人労働者が行っている。本格的な補修や数年にわたるオーバーホールでは艦を交替して米本国へ戻すことになる。日本での補修が実現すればこの移動の労力が減り、米国の造船所の負担も軽減できるという。
すでに横須賀配備の駆逐艦「ミリウス」の試験的な定期整備が、19年4月19日〜5月10日まで三菱重工横浜本牧工場で行われた。米国はアジア地域を通過する米国本土を拠点とする戦闘艦の短期的な整備を行うことを想定し、さらに日米共同による日本での戦闘艦建造も狙っているという。
(2023年5月26日)