ながさき平和委員会は、1月16日と20日に「安保3文書」改定を中心としたオンライン学習会を実施しました。参加者は県外を含めて2日間で計45名でした。講師は事務局長の冨塚明さん。
冒頭、2015年に強行採決された安保法制の内容や「台湾有事」について触れられました。アメリカと中国が台湾を巡って衝突を起こした際の自衛隊参戦シナリオが紹介され、自衛隊が後方支援や集団的自衛権にもとづく戦闘に参加し、敵基地攻撃能力を行使すれば全面戦争になると指摘しました。
そのうえで、昨年12月に改定された「安保3文書」の問題点について解説。「安保3文書」の本質はアメリカとすりあわせた戦略だと指摘し、中国・北朝鮮・ロシアを事実上の敵国と想定する方針になっていると紹介。「先進的な民主主義などの普遍的価値を共有する同盟国・同志国との連携を強化する」との方針が世界を2極の対立と描き、分断を持ち込むものだとも指摘しました。「安保3文書」改定の大きな柱の一つである敵基地攻撃能力の保有については、「ミサイル開発競争につながる」「先制攻撃になりかねない」「報復攻撃を受け、交戦状態となる」と解説されました。もう一つの大きな柱であった軍事費増強については、「禁じ手である建設国債に手をつけ始めた」「兵器ローンが膨れ上がる」など、予算案の全体像や想定される支出先などが一つ一つ解説されました。
「安保3文書」を軸とした大軍拡に対し、平和構想研究会の提言「戦争ではなく平和の準備を」が発表されていることに触れ、「過去の合意履行に向けた外交交渉の再開」「朝鮮戦争の終結/平和条約締結をめざす」などの具体策が盛り込まれていると紹介されました。そのうえで、「軍事費を削って暮らしにまわせ」の世論を広げ、この流れを阻止しようと呼びかけました。
両日とも参加者からは「米国や日本は本気で中国との戦争を考えているのか」との質問が出されました。冨塚さんは「基本はインド太平洋での覇権維持の争いではないか。そのための牽制=ジャブの応酬だが、偶発事態=ヒットしてしまったらカウンター(敵基地攻撃能力)の応酬につながりうる危険な状況だ」と答えました。
《参加者の感想・意見から》
・「安保3文書」は、国家とは別の法人格を持つ地方自治体を企業と同列に見ており、国家総動員体制をひしひしと感じる。
・今後の外交は、防衛体制の強化がまずあって、「力」を持って推し進めることになるんですね。周辺国からは日本こそが脅威に見えますよね。
・台湾が独立したとして、米国の介入は内政干渉ではないのか。ここが議論されずに「台湾有事」が煽られているように思う。
(2023年1月21日)