昨年12月24日付けの『沖縄タイムス』と『琉球新報』の1面トップに「南西諸島、米軍臨時拠点に」という記事が載り、台湾有事に向けて米軍と自衛隊が「日米共同作戦計画」を策定していることが暴露されました。このスクープ記事を書いたのは、反戦平和を常に考えながら約30年にわたって防衛庁/防衛省を取材してきた共同通信専任編集委員の石井暁さん。9月25日に宜野湾市で開かれた石井さんの講演の内容を紹介します。主催は「ノーモア沖縄戦の会」。
【基本は海兵隊のEABO】
この台湾有事に向けた「日米共同作戦計画」(特定秘密!)は2016年に発表された米海兵隊のEABO(遠征前方基地作戦)に基づいている。米軍は「テロとの闘い」から「中国封じ込め」へと戦略目標を変更する中で海兵隊が自分たちの存在感を示すために考えたのがEABOだった。
これは島々を拠点に小規模の部隊を展開し、ミサイルで中国の艦艇や戦闘機を攻撃するもの。昨年12月に青森県の八戸駐屯地と宮城県の王城寺原演習場でこの作戦構想に基づく日米共同の検証訓練が行われた。
【安保法制で定められた2つの事態】
安倍元首相が強行した安保法制では、元々、朝鮮半島有事を想定していた「周辺事態」を改めて、場所を問わない「重要影響事態」が新設された。そして日本と密接な関係にある国への攻撃があった時には、「存立危機事態」を認定して集団的自衛権を行使できるようにした。
安倍氏は国会審議の中で何度も「集団的自衛権行使を認めたからといって米国の戦争に巻き込まれることは絶対ない」とずっと言ってきた。ところが去年12月に「台湾有事は重要影響事態を介して日本有事になる」と言った。安保法制は、台湾有事にアメリカが参戦した時に、自動的に自衛隊が参戦するための仕掛けだった。
【台湾有事での参戦シナリオ】
自衛隊幹部や政府関係者の話をまとめると次のような事態推移を想定しているという。まず中国が台湾に軍事侵攻を始める。米軍の参戦前に海兵隊が南西諸島の水の供給ができる約40島を臨時拠点とし、対艦・対空ミサイルを配備する。日本は「重要影響事態」と認定し、自衛隊は後方支援として米兵や武器・弾薬・食料の輸送にあたる。
米中間で戦闘が開始されると日本は「存立危機事態」と認定し、集団的自衛権を発動して、自衛隊が中国軍と戦うことになる。嘉手納や普天間などの在日米軍基地、南西諸島に展開している海兵隊や自衛隊が攻撃を受ける。日本は「武力攻撃事態」と認定して個別的自衛権を発動して自衛隊が武力行使することになる。
ここで日本が「敵基地攻撃能力」を発揮すれば全面戦争に至ってしまう。
【日本が戦争に巻き込まれないために】
中国が台湾に万が一軍事侵攻しても絶対に日本は参戦してはいけない。米国の参戦を何としても止めなければならない。安保法制を廃止すること。重要影響事態、存立危機事態の認定をさせないこと。在日米軍基地から戦闘機が中国に出撃するのは安保条約の「事前協議」の対象だとして、この協議できっぱりノーと言うこと。
(2022年9月26日)