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コロナ禍、民主主義の機能するフランス

 12月5日、長崎県9条の会の学習会があり、「コロナ禍をフランスで過ごして考えたこと」と題して、長崎大学経済学部の井田洋子教授が講演しました。

 コロナ禍のフランスと日本の違いをデータで比較すると罹患者は、2021年12月2日現在、782万9045人(仏)127万6751人(日)。死者は、12万0208人(仏)1万8358人(日)と大きな差がありますが、ワクチン接種率では約90%(仏 12歳以上)、77.5%(日)です。

 フランスの政治制度は大統領制と議会内閣制が併存していますが、大統領の権限がかなり強い超大統領制をとっています。コロナ対策には、公衆衛生法典の感染症対策の個所に「衛生緊急事態」条項を追加して、covid-19の蔓延対策に関する時限立法をつくり対処しています。大統領は「最も厳格な外出制限」を呼びかけました。マクロン政権への批判は想像以上に強いそうですが、国家元首である大統領の演説は格調高く、説得力があり多くの国民がテレビの演説を観ているとのことでした。

 医療対策は2017年の医療改革に病院統廃合などの誤りがあったとして方針を転換し、医療従事者全般に対する待遇改善などが図られています。経済対策は、労働者をはじめ最も脆弱な立場の人を支援する対策をとり、アーティスト、職人、個人事業主などへの援助、子どもがいる低所得者と不安定な学生のための特別補助の実施、2021年3月以降は一時休業した従業員には企業が70%補償し、企業に対して政府は段階的に補填するなどきめ細かい政策がとられています。

 井田教授は、「フランスは民主主義がきちんと機能している。主権者及び政治家が自らの立場を理解している。フランス人は人生を楽しむ、自由度の高さが日本と違う」と結ばれました。参加者からは質問が相次ぎ、フランスと日本の違いがより深まりました。

(2021年12月6日)