2月22日、原発ゼロ長崎連絡会は「原発事故からもうすぐ10年、福島のいまについて学ぼう」とオンライン学習講演会を行いました。講師は福島県労連議長でふくしま復興共同センター代表委員でもある齋藤富春さんにお願いしました。
原発事故から10年ですが、近年も19年の台風被害、つい最近(2月13日)の福島沖地震と、災害に見舞われている福島。台風では除染廃棄物が流出し、雨水が建屋に流入して汚染水が増えました。台風被害で改めて原発事故の被害がまだまだ続いていることを感じたとのことです。そしてまた起きた地震。「大きな影響はない」という報道でしたが、処理水のタンクに「ずれ」が生じており、それはすぐには発表されませんでした。隠ぺい体質が変わっていないことがわかります。
福島では約8万人の住民が未だ避難しているそうですが、県と市町村の集計が一致していません。「避難者の概念がバラバラだから」ということでした。避難先で「定住」とみなされればカウントされないということですが、それは「引っ越し」とみなされるということでしょうか。とても納得のいくものではないと思いました。また「復興」についても歪んだ構造が見えます。廃炉やロボットなどといった新たな産業基盤を築く国家プロジェクト「イノベーション・コースト構想」は、航空産業や宇宙産業といった大企業呼び込み型で、地域や人々の復興になっていません。ハコモノをたくさん造り、大企業が潤うような政策で本当の復興と言えるのか、これが原発事故から10年経っての現状です。
さらにいまある課題として「汚染水」の問題があります。1,000トンの汚染水をためるタンクが1,000基。22年夏には限界を迎えます。「海洋放出」「水蒸気放出」という垂れ流す方法しかない汚染水。他にも子どもの甲状腺がん、原発の格納容器上ぶたの汚染、廃炉作業の人手不足、そして人々の意識の「風化」など、数えればきりがないほどの問題が山積しています。
しかし展望もあります。昨年9月の国と東電の責任を認めた仙台高裁での画期的な判決や市民と野党の共通政策に「原発ゼロ実現」が盛り込まれるなど、確実に変わってきている部分もあります。原発事故からの10年で「原発がなくても電気が足りてる」ことがわかり「原発は全然安上がりではない」こともわかりました。そしてその先には「国の原子力政策は誤り」と認めさせるという展望があります。棚上げされている「原発ゼロ基本法」を成立させることこそ本当の復興だと気づかされました。
今回のお話を聞いて、「義務だから」と思っていた「原発ゼロ基本法の制定を求める署名」について「心からやらなければ」と思うようになりました。まだまだ復興には程遠い現状もありますが、1日1日を福島のみなさんといっしょに歩んでいくつもりで頑張っていこうと思えるそんな講演会でした。今後は「原発ゼロ基本法」の学習会も計画しています。
(2021年2月23日)