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望月衣塑子 講演会

まやかしの政治とジャーナリズムの危機

 7月13日、東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんの講演会がありました。長崎県保険医協会の主催。かつて演劇を志してことを彷彿させる、テンポのいい講談(一人舞台?)で会場を沸かせながら首相官邸のあくどさとジャーナリストのあるべき姿を浮き彫りにしました。

 望月さんが「有名」になったのは菅官房長官の記者会見でしたが、元々は森友・加計学園問題で安倍首相を追求したかったのに首相会見があまりに少ないのでやむなく菅長官になったとのこと。

 当時から記者会見は米国に倣って、「手が上がる限り指し続けるルール」があったそうです。しかししつこい追求にイヤになったのか、途中で会見が打ち切られることも。官邸から圧力がかかり、望月記者だけに質問制限をしたいという「要望」が出されたといます。

 特にひどかったのは辺野古埋め立ての「赤土問題」でした。官邸からは「事実に基づかない質問」と記者クラブに抗議文が出されました。明らかに記者の萎縮を狙ったものです。仲井間知事の「埋め立て承認」には「土砂の赤土などは10%前後」との条件があったのに沖縄防衛局の発注仕様書は「40%以下」。だから県は立入検査を要請したのです。現在まで拒否しているのは違法性が発覚して工事がストップすることを恐れたためだと望月さんは指摘しました。

 官邸のメディア支配の転換点は2014年11月の総選挙前に、自民党総裁特別補佐官だった萩生田氏が「公平、公正、中立な報道を」と文書要請したこと。米国なら一蹴されているところですが抗議は一部に限られたため報道が萎縮。望月さんは「そもそもメディアは権力とどう対峙し、何のために自分たちはジャーナリズムをやっているのかその原点が問われている」と指摘。また海外から見ると「日本の報道の“圧力”は非常に分かりにくい」そうです。海外では圧力は弾圧そのものだからです。

 官邸の「質問妨害」などの動きに対して新聞労連が抗議声明を出し、批判記事が13の地方紙に掲載され、全国紙も地方紙も社説で批判。これを市民、弁護士などが後押し、今年3月には「官邸前抗議行動」が開かれ、現役の記者たちも参加して訴えた。そして質問妨害が止まりました。望月さんは「報道の自由、知る権利を守るためにはマスコミ同士がつながり、市民とつながることが大切」と述べました。

 「新聞人は第二次大戦時、大本営発表に則ってひたすら報道して大政翼賛会的となり、結果として多くの市民を戦争に扇動していった大きな負の歴史を背負っている。だから戦争に手を貸さないことを基本に据え、権力側が隠そうとすることを明るみに出すことを自分のテーマにしている」と、新聞記者としての思いを語りました。

(2019年7月15日)